ロジャー・ペンローズ

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ロジャー・ペンローズ(2005年)

ロジャー・ペンローズSir Roger Penrose, 1931年8月8日 - )は、イギリスエセックス州コルチェスター生まれの数学者、宇宙物理学理論物理学者。

科学上の業績

ペンローズの階段
ペンローズの三角形

その他の活動

量子脳理論

著書『皇帝の新しい心』にて、内の情報処理には量子力学が深く関わっているというアイデア・仮説を提示している。その仮説は「ペンローズの量子脳理論」と呼ばれている。放射性原子が崩壊時期を選ぶように、物質は重ね合わせから条件を選ぶことができるといい、意識は原子の振る舞いや時空の中に既に存在していると解釈する[2]

素粒子にはそれぞれ意識の元となる基本的で単純な未知の属性が付随しており[要出典]、脳内の神経細胞にある微小管で、波動関数が収縮すると、意識の元となる基本的で単純な未知の属性も同時に組み合わさり[要出典]、生物の高レベルな意識が生起するというのである(「意識」の項にその仮説の解説あり。参照のこと)。

この分野は未だ科学として十分に確立してはおらず、プロトサイエンス(未科学)の領域である。故国イギリスの大先輩の物理学者ニュートンが古典力学の科学的体系を構築しつつ、その片側で錬金術の研究に手を染めていた事を思い起こさせる、と評する者[誰?]もいる。

一方麻酔科医のスチュワート・ハメロフは生物学上の様々な現象が量子論を応用することで説明可能な点から少しずつ立証されていて20年前から唱えられてきたこの説を根本的に否定できた人はいないとハメロフは主張している。[3]

臨死体験の関連性について以下のように推測している。「脳で生まれる意識は宇宙世界で生まれる素粒子より小さい物質であり、重力・空間・時間にとらわれない性質を持つため、通常は脳に納まっている」が「体験者の心臓が止まると、意識は脳から出て拡散する。そこで体験者が蘇生した場合は意識は脳に戻り、体験者が蘇生しなければ意識情報は宇宙に在り続ける」あるいは「別の生命体と結び付いて生まれ変わるのかもしれない。」と述べている[4]

量子論上の観測問題

『皇帝の新しい心』以降の著書で、現在の量子力学の定式化では現実の世界を記述しきれていないという主張を展開している。(学術論文としても提出している)

量子論には波動関数のユニタリ発展(U)と、波束の収縮(R)の2つの過程が(暗に)含まれているが、現在の量子力学の方程式ではUのみを記述しており、それだけでは非線形なR過程は説明がつかない。すなわち、現在の量子力学の定式化はRが含まれていないため不完全であるとする。そして、Rに相当する未発見の物理現象が存在していると考え、量子重力理論の正しい定式化には、それが自ずと含まれているだろうと唱えた。

『皇帝の新しい心』の続編として出版された『心の影』では、上記の仮説をより進め、UとRを含む仮説理論として「OR理論(Objective-Reduction、客観的収縮)」を提唱した。量子レベルの世界から古典的なマクロ世界を作り出しているのは、重力であり、重力がRに相当する現象を引き起こすとする。量子的線形重ね合わせとは、時空の重ね合わせであり、重ね合わせ同士の重力的なエネルギー差が大きくなると宇宙は重ね合わせを保持できなくなって、ひとつの古典的状態に自発的に崩壊するというモデルである。

その後、著書『The Road to Reality』の中で、OR理論を検証するための実験(FELIX:Free-orbit Experiment with Laser-Interferometry X-rays)を提案している。

これらの主張は、量子論におけるいわゆる「観測問題」あるいは「解釈問題」と呼ばれる議論に関連している。

略歴

父は遺伝学者のライオネル・ペンローズロンドン大学ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジなどで数学を学ぶ。1952年、ロンドン大学卒業。1957年、ケンブリッジ大学で博士号取得。ロンドン大学、ケンブリッジ大学、プリンストン大学シラキュース大学テキサス大学コーネル大学ライス大学などで教鞭をとる。

1964年、スティーヴン・ホーキングと共にブラックホールの特異点定理を証明。1972年、王立協会会員に選出される。1973年、オクスフォード大学ラウズ・ボール教授職に就任。1994年、ナイトを叙勲。

受賞歴

著作リスト

物理学関係

  • ホーキングとペンローズが語る 時空の本質 (The Nature of Space and Time 1996) - ホーキングと共著
  • The Road to Reality : A Complete Guide to the Laws of the Universe (2004)

数学関係

  • ツイスターと一般相対論 (Twistors and General Relativity) - エルク・フラウエンディーナーと共著。『数学の最先端 21世紀への挑戦 第2巻』収録。
  • 20世紀および21世紀の数理物理学 (Mathematical Physics of the 20th and 21st Centuries) - 『数学の最先端 21世紀への挑戦 第4巻』収録。

その他

  • 皇帝の新しい心 コンピュータ・心・物理法則 (The Emperor's New Mind: Concerning Computers, Minds, and The Laws of Physics 1989)
  • 心の影 意識をめぐる未知の科学を探る (Shadows of the Mind: A Search for the Missing Science of Consciousness 1994)
  • 心は量子で語れるか (The Large, the Small, and the Human Mind 1997) - アブナー・シモニーナンシー・カートライトスティーヴン・ホーキング寄稿。
  • ペンローズの<量子脳>理論 心と意識の科学的基礎をもとめて (Beyond the Doubting of a Shadow 1997) - 日本独自編集。竹内薫茂木健一郎が翻訳・解説。

脚注

  1. ^ [対談]ロジャー・ペンローズ+佐藤文隆7/8”. 2015年10月25日閲覧。
  2. ^ ETV特集『科学は「意識」の謎を解けるか 第二回 意識を生むメカニズム』
  3. ^ モーガン・フリーマン 時空を超えて 第2回「死後の世界はあるのか?」
  4. ^ NHK ザ・プレミアム超常現象 さまよえる魂の行方