ミスリル (フルメタル・パニック!)

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ミスリルは、賀東招二ライトノベルフルメタル・パニック!』およびそれを原作とするアニメに登場する架空の組織。

概要

近いうちに起こりうる第三次世界大戦を阻止するために創設された、いかなる国家にも属さない、軍事による平和維持活動を主とする対テロ極秘傭兵組織。軍事的な緊張状態にある紛争地帯などに出没し、テロリストや独裁政権に対し、アーム・スレイブなどを送り込み、これを殲滅していた。また、敵対組織の軍事的発展を防ぐため、『ウィスパード』とよばれる特殊能力者の人道的保護なども行っている。

長編7巻『つづくオン・マイ・オウン』にて主要拠点を『アマルガム』よって破壊され、その後は西太平洋戦隊の「トゥアハー・デ・ダナン」一隻のみが主要な戦力であり、組織的には壊滅している。

創設の真相は、アマルガムの管理者「ミスタ・Hg(マーキュリー)」でもあるロード・マロリーが、設立当初の理念を見失い暴走し、湾岸戦争において核使用をも厭わないほどに傲慢が頂点に達した組織の行動を制御できないジレンマから、『善と悪の天秤』の実現を意図して『そうあれかし』という希望を込めて、ある小説に出てくる架空の金属から名付けた組織を立ち上げたというものであり、ロード・マロリーの息子であるサー・エドモント・マロリー・ジュニアは、その背景を知らされないまま中核メンバーとして創設時から活動し、『ミスリル』壊滅後にその背信行為の真相を知った。

組織構成

作戦部情報部研究部からなり、作戦部はそれぞれ異なる地域を担当する4つの戦隊を擁していた(作戦本部はシドニーにある)。また、それぞれの戦隊がケルト神話に関連した名称をその名に冠している。 同じミスリルという組織にあって、作戦部・情報部の間では、かなりの反発・軋轢がある。前者は「前線任務」が主であるのに対し、後者は「情報収集」「情報分析」「後方支援」「諜報活動」が主であり、レイスなどが所属している。場合によっては、互いに情報操作を行い相手を欺くなど、足を引っ張り合うこともあった。

評議会
各部署の組織上層部がネットワークを通じて集まり、緊急課題などの会議の場。議長役であり組織の最高責任者は、マロリー卿。
作戦部
実際の作戦行動を担当する部署。本部は、オーストラリアのシドニーにあり、名目上は警備会社アルギュロスを名乗っている。作戦部には現在、四つの部隊が存在し、どの部隊もケルト神話の神の名から付けられている。責任者はジェローム・ボーダ提督。
情報部
情報収集・情報分析を行う部署。各国情報部とのコネクションを持ち、偵察衛星を多数保有している。世界中から得た情報を元に検討を重ねて、重要案件を作戦部に連絡し、作戦行動を起こすのが主な任務である。責任者はメイヤー・アミット将軍。
研究部
新兵器・ブラックテクノロジーの研究開発、各種戦略・戦術の立案や検討を行う部署。責任者はペインローズ博士。
人事部
エージェントや搭乗員、整備員、開発者、内勤スタッフなどの勧誘と、その人事などを担当する部署。

ミスリル作戦部に属していた各戦隊

  • 地中海戦隊「パルホーロン」
  • 南大西洋戦隊「ネヴェズ」
  • インド洋戦隊「フィル・フォルヴ」
  • 西太平洋戦隊「トゥアハー・デ・ダナン」

西太平洋戦隊について

メリダ島

メリダ島の座標は北緯20度50分、東経140度31分[1]にあり、この位置は、作者が参加した蓬萊学園シリーズネットゲーム90 蓬萊学園の冒険!の舞台、宇津帆島とまったく同じである(その他、この作品には蓬萊学園シリーズへのオマージュと思しき人物・表現が多数登場する)。他の3部隊の基地の所在は不明だが、地中海戦隊に関してはエーゲ海に存在することが本編に記述されている。

いずれの国家にも属しない対テロ傭兵部隊である、"ミスリル"の作戦部西太平洋戦隊「トゥアハー・デ・ダナン」の拠点となる島。両翼10km程度の半円形をした絶海の孤島であり、面積は東京都心部のそれに近い。

地理的には、ヘリを使用すれば容易にグアムサイパンに向かうことが可能な距離にある。そのため、西太平洋戦隊の隊員の中には、休暇をそちらで過ごす者や、妻子を住まわせている者もいる。

熱帯性気候の島であり、スコールにさらされることも珍しくない。地上は密林のごとき状況になっており、SRTのマオですら、コンパス無しではまともな針路をとることができない。森の中ではかつてヨーロッパ人が持ち込んだ豚が野生化している。この豚は演習場の保全のため、発見次第駆除することが隊の規定で定められている。また、宗介の愛猫(ベンガルトラ)のシロが放し飼いにされていたが、最終巻で何者かが捕らえて檻ごと輸送機に乗せており、テッサたちと共にメリダ島から脱出し、潜水艦《パサデナ》に収容されて、ハワイの動物園に引き取られた。

かつて海賊"キャプテン・アミーゴ"(後に付けられたあだ名であり、本当の名は不明)が財宝を隠しており、その評価額は1031万5500ドルである。ちなみにこの額は、宗介とクルツが壊してしまった中古のM6A2と同額。

『つづくオン・マイ・オウン』でトゥアハー・デ・ダナンが撤退した後はレナードが率いるアマルガムの支配下にあったが、最終作である長編12作目の『ずっと、スタンド・バイ・ミー -下-』において、アフガンソ連核基地より発射された核出力5.5MtのMIRVタイプICBMにより、「ラムダ・ドライバ」によって被害を避けたレーバテインを残し、クレーターだらけの岩塊と化した。

メリダ島基地

メリダ島基地は西太平洋戦隊の実質唯一の拠点であり、所属する将兵の居住区からASの格納庫、強襲揚陸潜水艦"トゥアハー・デ・ダナン"(TDD-1)のドック、航空機の滑走路などは地下に秘匿されている(各国諜報機関の偵察衛星の目から逃れるため)。地上は、歩兵やASの訓練場として利用されている。また、対空防衛施設の類は巧妙に配置されていたが、アマルガムの攻撃によって全滅。

基地の建造予算の多くはTDD-1のドックに回されており、結果として兵舎や娯楽室(置かれているのは卓球台とテトリスのみで、クルツ曰く「ひなびた温泉宿みたいで空しい」)、オフィス(雨漏りが発生する)など、その他の部分に関しては粗末な作りになっている。

なお、ミスリル自体が表沙汰には出来ない秘密組織であるため、その建造には通常の基地の設営を遙かに超える手間と予算がつぎ込まれている。ソ連が開発を断念した新型潜水艦であるプロジェクト985をTDD-1に改修する作業も基地の建造に合わせて行われたが、これらの作業は最小限の人員により秘密裏に行われている。工事目的の名目としては、「CIAの極秘施設」や「エリア51に代わる新たな秘密基地」等が挙げられている。

エージェント

ミスリルのエージェントの多くは、年俸契約などによる「傭兵」として雇われており、かなりの好待遇とされている。その代価として、エージェントには資質・経験の面で極めて高水準の能力が要求されるため、結果として作戦の成功率も高い。現在のところ、ミスリルに所属しているエージェントで、青二才や新米などの兵士は登場していないことからも、その質の高さは窺える。人命を最大限に尊重し、可能な限り居住区への破壊を最小限に留めることが要求される。

特殊工作、諜報活動、要人警護、アーム・スレイブなどの兵器によるテロリスト壊滅など、その任務は幅広い。中でも、主人公である宗介たちの所属するSRT要員(特別対応班、Special Response Teamの略)と呼ばれる者たちは、特にその能力が高く、一般兵士数人でも同一条件では取り押さえることは困難であるとされる。テッサはSRT要員について「彼らは善良な人間だが、同時にほとんど超人的な殺人技術の持ち主でもある」と語っている。

なお、作中ではSRT要員の活躍ばかりが目立つが、実際にはSRT要員は「最後の砦」的な存在であり、初期対応班(PRT)と言われる部隊による偵察・潜入・警護・工作活動・対人戦闘などの任務により、事前解決が図られることも少なくない。

それまでの殺伐とした軍隊・傭兵をしていた者にとって、優れた人員と最新兵器をもって、より真の平和維持に貢献できるミスリルは、誇りと満足感を得られると評価する者が多い。他組織と比べ、道徳心・忠誠心などのモラルは非常に高いが、中には単に契約金の高さだけの理由でミスリルに入隊する者もおり、敵組織アマルガムの買収などによる「裏切り・情報漏洩」なども実際に起きている。

作中における動向

1948年夏頃に、米ソの冷戦開始後の『人類の未来』を憂いて設立された「アマルガム」(なお、設立者にはロード・マロリーの祖父も名を連ねている)は、当初はキューバ危機を回避するなどの紛争抑止機関として活動を開始したにもかかわらず、ベトナム戦争の頃から内部腐敗を起こし始め、1990年代初頭に湾岸戦争に端を発する第五次中東戦争とその後の『クウェート事件』(クウェートにおいてECS搭載核兵器が使用され、十数万人の死者が出た事件)等を起こす。

ロード・マロリーは「アマルガム」の管理者を祖父から受け継いだ後、内部からの組織崩壊を試みたが成功せず、設立から約半世紀を経て腐敗を極めた組織の暴走を止める「悪を打ち破る銀の剣」を創るべく、『クウェート事件』後にマロリー家の全財産・人脈を提供し、その真相を隠したまま息子のサー・マロリーを中心に「ミスリル」の設立を図る。この頃にメリダ島の基地化及びTDD-1の改修工事を開始し、ボーダ提督、ペインローズ博士を始めとする人員のヘッドハントも開始される。 なお、『ミスリル』という名は、『アマルガム(水銀合金)』に対するべく、『架空の銀』から取られた。

1997年8月26日にはTDD-1の改修が完了し、その後には最新鋭アーム・スレイブ、“M9 ガーンズバック”の運用を開始。地域紛争の火消しに水面下で尽力し、同時にウィスパードの保護も手掛ける。

本編開始時である『戦うボーイ・ミーツ・ガール』においてウィスパードを巡りアマルガムと対立することとなり、長編7作目の『つづくオン・マイ・オウン』にてアマルガムの総攻撃によって事実上壊滅したが、長編9作目の『つどうメイク・マイ・デイ』での活躍により残存勢力の集約・再組織化に成功し、アマルガムへの反撃を開始。アマルガム側の幾つかの重要な補給拠点を破壊するなどしている。

最終作である長編12作目の『ずっと、スタンド・バイ・ミー -下-』において、ほぼ全ての装備(AS、TDD-1)を失い、残存勢力をテッサが解雇した為、『ミスリル』は完全に消滅した。しかし、作戦部長であるボーダ提督は生存しており、『アマルガム』に対抗する組織を再興するかもしれないと話していたが、その後は不明である。ちなみに、ボーダがテッサに「TDD-2を作らないか」と問いかけた際、「まっぴらごめんです」ときっぱり断られている。

本編の十数年後の世界を描いた『フルメタル・パニック!アナザー』では、ミスリルの関係者が立ち上げた企業D.O.M.S.キャバリア・ダイナミクスが登場している。

ちなみに、本編とは無関係の短編集第1巻収録の「シンデレラ・パニック!」では、ファンタジーな世界観に合わせ、極秘の魔法使い協会となっている。任務は恵まれない人々の多角的支援だが、妙に硝煙の臭いが漂う、ファンタジー世界に似つかわしくないアイテムを多数保有している模様。下士官の魔法使いでは、テレポートなどの高尚な魔法は使えないそうである。

兵器

豊富な資金力により、世界の10年先を行くと噂されるほど、優れた科学兵器を持つ。

脚注

関連項目