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ボフォース57mm砲

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ボフォース57mm砲
FFH-337 フレデリクトン搭載のMk 2、発砲シーン。
種類 艦砲
原開発国  スウェーデン
運用史
配備期間 1966 - 現在
配備先 使用国と搭載艦艇を参照
開発史
開発者 ボフォース
開発期間 Mk 1: 1964年
Mk 2: 1981年
Mk 3: 1995年
製造業者 Bofors Defence (1966-2006年)
BAE Systems AB (2006年以降)
製造期間 Mk 1: 1966
Mk 2: 1985
Mk 3: 1998
派生型 Mk 1, Mk 2, Mk 3 (Mk 110)
諸元
重量 Mk 3: 14,000 kg (1,000発の砲弾を含む)

砲弾 57 mm x 438 mm (砲弾重量6.5 kg)
口径 70口径長 57 mm口径
仰角 Mark 1: -10°/+78°(40°/s)
Mark 2: -10°/+75°(40°/s)
Mark 3: -10°/+77°(44°/s)
旋回角 360°
Mark 1 & 2: 55°/s
Mark 3: 57°/s
発射速度 Mk 1: 200 発/分
Mk 2 & Mk 3: 220 発/分
初速 1,035 m/s (HE弾)
有効射程 8,500 m (HE弾)
最大射程 17,000 m (HE弾 at 45°)
装填方式 弾倉による:
Mk 1 - 弾倉に 40発, 砲塔内に即応弾 128発
Mk 2 - 弾倉に 120発, 揚弾ホイスト上に40発
Mk 3 - 即応弾 120発, 揚弾ホイスト上に40発, 砲塔内に予備弾 1000発
照準 Gyro-stabilized in local control.
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ボフォース57mm砲とはボフォース社が開発した対艦・対空両用の艦砲。優れた速射能力・追随能力を備え、 各国で使用されてきたほか、最新バージョンは、アメリカ海軍および沿岸警備隊での大量採用が決定している。

開発の開始

ボフォース57mm砲は元来、スウェーデン海軍より高速魚雷艇に搭載する両用砲としての要求を受けて、1964年より開発を開始したものである。従来は40mm砲を使用していたが、航空機の高速化に対し、これでは威力不足であると考えられた。

一方、中口径砲として広く用いられていた3インチ砲では、重量が過大すぎた。

このことから、ボフォース社は従来の40mm砲をベースにした57mm砲の新規開発を決定した。[1]

Mk 1 (SAK/L70)

スウェーデン海軍のスピカII級魚雷艇に装備されたボフォース57mmMk 1砲。

最初に開発されたMk 1 (SAK/L70)は、1966年にスウェーデン海軍に制式採用された。本砲は砲室内に人員の配置を要する有人砲で、砲手1名、装填手2名が配置されている。また、下部の弾庫には給弾手2名が配置されており、弾庫から揚弾筒への給弾、揚弾筒から砲室内の即応準備ラックへの給弾、即応準備ラックから砲尾弾倉への装填はすべて人力で行なわれる。

弾庫の給弾手は、2発ずつクリップにとめられた砲弾を揚弾筒に給弾する。揚弾筒は2本あり、給弾された砲弾は砲室内、砲の尾部左右に配置された揚弾口から取り出され、砲室内の即応準備弾ラックに収納される。即応準備弾ラックは左右に2基ずつ、計4基があり、計32発を収納できる。従って、即応準備弾は128発である。砲の尾部には大型の箱型弾倉が設置されており、左右に配置された装填手は、2発ずつのクリップをラックから取り出し、水平状態で弾倉上部より装填する。砲室は強化プラスチック製の箱型で、側部には2インチ対潜ロケットの発射レールが装備されている。

砲弾は、対空用の近接信管弾と、対水上用の遅発信管弾があるが、いずれも57 mm x 438 mm(砲弾全長は570mm)、重量は5.9キログラムである。

本砲の初の搭載例は、スウェーデン海軍のスピカI級高速魚雷艇であった。従来の魚雷艇の搭載する砲は40mm砲まであったが、スウェーデン海軍は、魚雷艇を砲艇としても運用するというコンセプトのもと、備砲の大型化を決定していた。また、優秀な運用成績から続くスピカII級、ヒュージン級にも搭載されたほか、海外にも輸出され、生産数は80基に達した。

使用国と搭載艦艇

 クロアチア海軍
Končar class
 フィンランド海軍
 インドネシア海軍
Mandau class韓国海軍 パエク級哨戒艇の改良型)
 マレーシア海軍
 オランダ海軍
 シンガポール海軍
 スウェーデン海軍
  • Hugin class
  • スピカ級魚雷艇
 タイ海軍
  • プラプロバラック級

Mk 2

Mk 1の成功を踏まえ、ボフォース社はこれを改良し、高性能化をはかることとした。その開発の主眼は、砲室内の完全無人化と、砲弾の改良による射程延伸と撃破効果の向上に置かれた。その開発は1982年に完了し、70口径57mm砲Mk 2として発表された。

本砲は砲塔が無人化された完全自動砲で、これにより、砲塔は大幅に小型化できた。弾庫内に2名の給弾手が配置され、2発ずつを2本の揚弾筒に給弾するところまでは同じだが、砲塔内の機構は完全に自動化されている。揚弾筒により砲室内に給弾された砲弾は、自動的に40度の装填角に押し上げられ、箱型弾倉に20発装填される。本砲はこの20発弾倉を左右の揚弾筒につきそれぞれ3個有しており、120発の即応準備弾を有することになる。また、給弾が2系統で行われることになるので、2種類の異なった弾種の砲弾を並行して射撃することができる。この機構により、本砲は220発/分の発射速度を実現した。

使用国と搭載艦艇

 カナダ海軍
 インドネシア海軍
 マレーシア海軍
 スウェーデン海軍
 メキシコ海軍

Mk 3

Mk 3は、砲の作動メカニズムはMk 2のものを流用しつつ、ボフォース社の画期的新砲弾である3P弾など新しいテクノロジーに対応するように改良したものである。

また、Mk 2と同様の通常型低体積砲塔に加え、新型のステルス砲塔も開発された。これは、射撃しないときには砲身に俯角をかけて砲塔内に格納するという思い切った手法によりステルス性を確保するもので、アメリカ海軍ズムウォルト級ミサイル駆逐艦において、Mk 110 CIGS (Close-In Gun System)の中口径砲として採用されている。

また、Mk 110 CIGSは、沿海域戦闘艦アメリカ沿岸警備隊バーソルフ級カッターにも採用されており、アメリカ海軍の新しい標準的な中口径砲として、近距離での対空・対水上戦闘に用いられることが予想される。

使用国と搭載艦艇

 フィンランド海軍
 スウェーデン海軍
 アメリカ海軍
 アメリカ沿岸警備隊

写真

出典・脚注

  1. ^ なお、画期的な軽量3インチ砲であるイタリア製のオート・メラーラ 76 mm 砲は本砲と同世代で、この時点ではまだ開発以前の段階であった。
  2. ^ a b c d e Naval vessels as built by Lurssen GmbH”. Lurssen.com. 2009年1月7日閲覧。
  • 梅野和夫『世界の艦載兵器 砲熕兵器篇』光人社、2007年。

外部リンク