ディンゴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。MerlIwBot (会話 | 投稿記録) による 2012年3月28日 (水) 05:25個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (ロボットによる 追加: lez:Динго)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ディンゴ
南オーストラリア州クリーランド自然保護公園のディンゴ
保全状況評価[1]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目(食肉目) Carnivora
亜目 : イヌ亜目 Fissipedia
下目 : イヌ下目 Cynoidea
: イヌ科 Canidae
亜科 : イヌ亜科 Caninae
: イヌ族 Canini
: イヌ属 Canis
: タイリクオオカミ C.lupus
亜種 : ディンゴ C. l. dingo
学名
Canis lupus dingo
Meyer1793
シノニム

本文を参照

和名
ディンゴ
英名
Dingo
生息域
生息域

ディンゴ(丁格犬、澳州野犬、学名Canis lupus dingo英語名:Dingo)は、オーストラリア大陸とその周辺に生息する、タイリクオオカミの1亜種であり、広義で言うところの野犬の一種。

生息域

現在、予想されているディンゴの移動ルート

アボリジニがオーストラリアに移住する際、一緒に連れてきたと考えられている(ただしその時期は最終氷期終了以降と思われる。最終氷期時にはオーストラリア大陸本土と繋がっていたタスマニア島にまでディンゴが生息を広げられなかったのは、最終氷期の終わりにオーストラリア大陸とタスマニア島が切り離された後にディンゴがオーストラリア大陸に入ったためであるとみられている)。ディンゴはアボリジニに家畜として飼われていたものの子孫である。イエイヌ混血ができるため、現在では交雑が進んでディンゴ・ハイブリッドとなっており純血を保つものは少ないといわれ、フレーザー島に生息するディンゴはオーストラリア東部では最も純血である[2]

呼称

C. l. dingoには学名、一般名ともに複数の呼称が与えられており、ディンゴがもっとも普通に使われる呼称である。さらに、オーストラリア大陸においてはwild dogが使われることもしばしばある。wild dogと呼ばれるときはディンゴのみならず、野犬や、野犬との混血種を指す[3][4]

学名

初めてヨーロッパに紹介されたディンゴのイラスト

最初の公式な学名は1792年につけられたCanis antarcticusであり、以降、ディンゴの学名は数回にわたり変更されている[5]

イエイヌの一亜種として、かつイエイヌがオオカミとは別の種として扱われ、ディンゴの学名がCanis familiaris dingoが50年以上にわたり使い続けられてきたが、現在の分類学では、Canis lupus dingoとしてイエイヌとは別のタイリクオオカミの一亜種と見なされている[3]Mammal Species of the Worldの現行の版においては、イエイヌとしてこれらの両亜種を分類している[5]。その上、オオカミやイヌから別種としてCanis dingoとして分類されたり[6][7]Canis lupus familiaris dingoとして扱い、イエイヌの品種として扱われる場合がある[8]

一般名

ディンゴという名称はもっとも普通に使われている言葉である。この言葉の起源はニューサウスウェールズ州へのヨーロッパ人の入植初期にまでさかのぼり、ポート・ジャクソン湾のアボリジニの一部族が彼らの飼育していた犬に対して使用していたtingoに由来するとされる[9]

ディンゴは異なるアボリジニの族により、JoogongMirigungNoggumBoolomoPapa-InuraWantibirriMalikiKalDwer-daKurpanyAringkaPalangamwariRepetiWarrigalなど様々な名称で呼ばれている[3]。またそれと同時に、ディンゴがどのように生活しているかによっても、呼称が異なる場合がある。たとえばYarralin族は飼育しているディンゴをWalakuと呼び、野生のディンゴをNgurakinと呼んでいる[10]。ディンゴの生息している地域により、オーストラリアのディンゴはしばしば高山ディンゴ(alpine dingoes)、砂漠ディンゴ(desert dingoes)、北部ディンゴ(northern dingoes)、ケープヨークディンゴ(Cape York dingoes)や熱帯ディンゴ(tropical dingoes)などと呼ばれることもある。また近年ではオーストラリア犬(Australian native dog)と呼んだり[11]Canis lupusの亜種であることから、オーストラリアオオカミ(Australian wolf)と呼ぶこともある[12]

生物的特徴

頭蓋骨の絵。犬と良く似ている。

体長(頭胴長)約103cmで、多くは黄褐色の体毛と垂直に立ったをもつ。中型から大型犬ほどの大きさで、性質は獰猛。オーストラリアの砂漠草原温帯林、林縁部に生息する。繁殖期には群れをつくり生活する。イエイヌとは違って吠えない。繁殖期は年に一度である。一部のディンゴはアボリジニのキャンプで飼われ、残飯の処理や抱いて寝ることで毛布代わりに使われていたという。

固有種であったフクロオオカミとはほぼ同じ体格・食性をしており、オーストラリア大陸ではニッチ(生態的地位)の上で競合した結果、フクロオオカミが絶滅し、ディンゴの生息しないタスマニア島にのみ残っていた。ディンゴがニッチの競合で勝ち残った理由として、単独で狩りをするフクロオオカミに対し、ディンゴは群れで狩りをするため生存競争に有利であったことによると考えられている。また、タスマニアデビルがオーストラリア大陸で絶滅し、タスマニアにのみ残っていることも、ディンゴの影響と考えられている[要出典]

分布

オーストラリア大陸ニューギニアインドネシアマレーシアタイミャンマーなど[1][13]

分類

現在(2000年代後半)の分類学的知見では、タイリクオオカミの1亜種 (Canis lupus dingo ) とする分類説と、独立種 (Canis dingo ) とする分類説が並立している。かつてはイエイヌを独立種として取り扱い、ディンゴをその1亜種 (Canis familiaris dingo ) と見なすなど、非常に多くの学説が存在した。

シノニム

ディンゴのシノニム(異名)を示す。太字で示したものは今(2000年代後半)も支持されている。

オーストラリア南東部はシドニー近郊(90%交雑地域)のディンゴ

人間との関わり

ディンゴ・フェンス

ヒツジなどの家畜を襲う被害がたびたび報告されている。そのため、毎年多くのディンゴが駆除され、この行為は環境保護団体から非難されている。オーストラリア南東部には「ディンゴ・フェンス」(英語版[en]、および右の画像を参照)」と呼ばれる総延長5,320kmにも及ぶフェンスが設けられているが、これはディンゴがヒツジなどを襲うという被害が相次ぐため、当地域へのディンゴの進出を阻止するためのものである[15]

また、家畜や農作物だけでなく、近年は人間が襲われることもあり、食い殺されたり、睾丸を食いちぎられるなどという被害が過去十年で6件以上報告されている[要出典]

画像

脚注

  1. ^ a b Corbett (2004). "Canis lupus ssp. dingo". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2006. International Union for Conservation of Nature. 2006年5月11日閲覧 Database entry includes justification for why this subspecies is vulnerable
  2. ^ Department of the Environment, Water, Heritage and the Arts. “Fraser Island - World heritage - more information”. 2009年4月22日閲覧。
  3. ^ a b c Laurie Corbett (2004年). “Dingo”. Canids: Foxes, Wolves, Jackals and Dogs. International Union for Conservation of Nature and Natural Resources. 2009年4月8日閲覧。
  4. ^ Since interbreeding of dingoes and other domestic dogs is regarded as widespread, occasionally hard to detect, and because no distinguishing feature is regarded as completely reliable, it is not clear whether the observed dogs are dingoes or not. Furthermore in some topics there is no distinction made between dingoes and other domestic dogs. Due to these problems the article will only use the terms "dingo" and "dingo-hybrid" (respectively "dingo-crossbreed") when the used literature named the respective dogs as such. Otherwise the terms dog or wild dog have been taken over from the used literature.
  5. ^ a b Wozencraft, W. Christopher (16 November 2005). "Order Carnivora (pp. 532-628)". in Wilson, Don E., and Reeder, DeeAnn M., eds. Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.). Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2 vols. (2142 pp.). pp. 575–577. ISBN 978-0-8018-8221-0
  6. ^ Gaisler, J.; J. Zejda (1997) (german). Enzyklopädie der Säugetiere. Verlag Werner Dansien. ISBN 3-7684-2750-1 
  7. ^ Macdonald, David (2004) (german). Die große Enzyklopädie der Säugetiere. Könemann in der Tandem Verlag GmbH. ISBN 3-8331-1006-6 
  8. ^ Dingo” (german). Brockhaus. 2009年5月17日閲覧。
  9. ^ Fleming, Peter; Laurie Corbett, Robert Harden, Peter Thomson (2001). Managing the Impacts of Dingoes and Other Wild Dogs. Commonwealth of Australia: Bureau of Rural Sciences 
  10. ^ Rose, Deborah Bird (1992). Dingo makes us Human, life and land in an Aboriginal Australian culture. ISBN 0-521-39269-1 
  11. ^ Dingo”. Dog Breed Info Center. 2009年5月17日閲覧。
  12. ^ CANIS LUPIS DINGO-THE AUSTRALIAN WOLF”. Western Australian Dingo Association. 2009年5月17日閲覧。
  13. ^ D.W.マクドナルド 『動物大百科1 食肉類』 平凡社 1986 ISBN 4-582-54501-7 p97
  14. ^ Canis lupus dingo”. Mammal Species of the world. bucknell. 2009年5月17日閲覧。
  15. ^ Dingoes - EPA Queensland GovernmentDingo fence

関連項目

Template:Link GA