タイムオーバー (競馬)

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タイムオーバーとなった競走馬(右端)

タイムオーバーTime Over)とは競馬競走において、競走馬が1位に入線した馬から一定の時間をおくか、制限時間を超えて決勝線(ゴール板)を踏破すること。またその競走馬に対して一定期間の出走停止処分を科す制度のことである。

中央競馬

中央競馬では「調教不十分な馬の出走を防止」[1]し「立て直すための調整期間を与える」[2]との理由で、サラブレッド系の平地競走を対象に[1]1973年から[1][2]実施されている。

当初は1着馬の走破タイムからコースでは4ダートコースと砂コースでは5秒を超過した場合にタイムオーバーとされた[1]。2003年より距離別に区分され[3]、2012年は芝コースの場合、距離が1400メートル未満ならば3秒、1400メートル以上2000メートル未満ならば4秒、2000メートル以上ならば5秒と設定されており、ダートコースの場合はそれぞれ1秒増しとなる[4]。2005年夏以降[5]新馬戦では制限が緩和され[4]、秋季競馬(通常9月)における3歳未勝利戦(いわゆるスーパー未勝利)では制限が強化される。2019年の変更では、距離区分が、芝コースの場合、1400メートル以下ならば3秒、1400メートル2000メートル未満ならば4秒、2000メートル以上ならば5秒となった。また、制限が強化されていた、秋季競馬における3歳未勝利戦が廃止となった。

国際招待競走[6][4]、コースレコードタイムが更新された競走[6]、および障害飛越の失敗による影響が大きい障害競走[6]にはタイムオーバーは適用されない。国内の平地重賞競走[1][6][4]では2019年(平成31年)より、未出走馬および未勝利馬が出走した場合に限りタイムオーバーが適用されることとなった(後述)。

タイムオーバーとは別に「タイム失格」制度があり、走破タイムが3000メートル以下の距離で5、3001メートル以上で7分を超過した場合失格となる(障害競走を含む)[7][8]

制裁

平地競走に出走し
タイムオーバーとなったスプリングゲント(右端)
3週間後に中山大障害に出走した

1973年の導入当初は一律1か月の出走停止処分が科されていた[1]。2002年より未勝利馬に対する制裁が強化され[9]、2012年現在は未勝利馬のタイムオーバー1回目は1か月、2回目は2か月、3回目以上は3か月、それ以外は一律で1か月の出走停止となる[4]。制裁は競走の翌日から適用される[6][4]

ただし競走中の疾病や競走中に他馬の影響を受けて遅れて入線した場合などで、裁決委員がやむを得ないと認めた場合には出走停止処置を行わない場合がある[1][4]。例として、2010年1月11日の中山競馬第4競走における9頭落馬事故で落馬に巻き込まれて遅れて入線したナンヨービクトリーは「他馬の影響を受けた」として出走停止処置をまぬがれている[10]。こうした例外措置は2000年6月より成績表に記載されるようになった[11]

上記の出走停止措置は平地競走のみに適用され[4]、平地のタイムオーバーで出走停止中の馬も障害競走には出走できる。

タイム失格の場合には上記の制裁は適用されない[7]

エピソード

後の有馬記念勝ち馬ダイユウサクは初戦(デビュー戦)で勝ち馬から遅れること13秒という惨敗だったが、当時の規定により初戦馬はタイムオーバーの適用を除外されていたため問題はなかった。しかし2戦目も勝ち馬に7秒3遅れ、その際には出走停止処分(当時は全馬一律で1か月)を受けた。

2018年(平成30年)3月4日の弥生賞(GII)では、未出走馬のヘヴィータンクが出走し、走破タイムは2分23秒9で大差の最下位で入線。1着ダノンプレミアムから22秒9、ブービーのアサクサスポットからは20秒7も離された[12]。「春のクラシック競走のトライアルには未出走・未勝利馬も出走可能」という番組規定によりこの挑戦が出来たもので、なおかつ平地の重賞競走には従来タイムオーバーが適用されてこなかったが、2019年から、「平地重賞競走であっても未出走馬・未勝利馬が出走する場合、その馬に限って」タイムオーバーを適用すると制度を改めた。

地方競馬

大井競馬

大井競馬では、距離別に制限タイムを設け、その制限タイムを超えて入線した馬が、また設けられていない距離の競走では、著しく遅れて入線した馬がタイムオーバーの対象となる。

タイムオーバーの対象となった馬は、2歳馬は3開催、3歳以上の馬は5開催、出走することができない。[13]

制限タイム

サラ系 距離 タイム
800m   55秒
1000m 1分09秒
1200m 1分23秒
1400m 1分37秒
1500m 1分44秒
1600m 1分51秒

なお(オープン競走を除く)特別指定競走は、その競走の出走頭数が9頭以上の場合は8着馬の走破時計から、8頭以下の場合は、5着馬の走破時計から、日本中央競馬会(JRA)の基準が適用される。

ばんえい競馬

詳細はばんえい競走#タイムオーバーを参照。

その他、愛知県競馬組合[14]笠松競馬場[15]などで導入されている。

脚注

  1. ^ a b c d e f g 「サークルだより『昭和48年度の主な施行方針』」『優駿』、日本中央競馬会、1973年1月、86頁。 
  2. ^ a b 矢内浩美 (2008年8月15日). “そこんとこ教えて 【44】タイムオーバーの馬はなんで出られない?”. スポーツニッポン. 2012年9月28日閲覧。
  3. ^ ニュースぷらざ「2003年度開催日程決まる」”. 競馬ブックコーナー. NECインターチャネル (2002年12月9日). 2012年9月28日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 競馬用語辞典「タイムオーバー」”. 日本中央競馬会. 2012年9月28日閲覧。
  5. ^ 平成17事業年度 事業報告書” (PDF). 日本中央競馬会. p. 7 (2006年). 2012年9月28日閲覧。
  6. ^ a b c d e 奥岡幹浩「ゆうしゅん広場『ウマにもわかる競馬本日快答』」『優駿』、日本中央競馬会、1999年7月、181頁。 
  7. ^ a b 奥岡幹浩「ゆうしゅん広場『馬にもわかる競馬本日快答』」『優駿』、日本中央競馬会、1999年8月、173頁。 
  8. ^ アラカルト”. 競馬ニホン (1998年11月8日). 2007年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年9月28日閲覧。 “再騎乗及ばず時計オーバーで失格”
    過去2例あり。
    (1)1975年12月7日阪神競馬場第5回4日目第5競走(3000m)・サカエフラッシュ。5分3秒7でゴールしたが、5分の時間切れのため。
    (2)1998年11月7日東京競馬場第5回1日目第5競走(3100m・障害)・レディーリベロ。落馬再騎乗をするが、7分の時間切れを1分25秒上回る8分25秒で8位入線するも失格
  9. ^ 野元賢一 (2002年3月18日). “専門記者の競馬コラム「“低資質馬整理”ルールと除外問題の行方」”. サラブnet. 日本経済新聞. 2012年9月28日閲覧。
  10. ^ 第1回 中山競馬” (PDF). 日本中央競馬会. p. 50 (2010年). 2012年9月28日閲覧。
  11. ^ アラカルト”. 競馬ニホン (2000年6月4日). 2012年9月28日閲覧。 “タイムオーバー適用除外理由を成績表へ記載”
  12. ^ 報知杯弥生賞 - 競馬データベース”. netkeiba. Net Dreamers Co., Ltd. (2018年2月27日). 2019年11月12日閲覧。
  13. ^ 平成25年度大井競馬番組[p26-27]. TCK. (平成26年). https://www.tokyocitykeiba.com/pdf/ooikeiba_bangumihyou_h25.pdf#search='%E5%9C%B0%E6%96%B9%E7%AB%B6%E9%A6%AC+%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC' 
  14. ^ 競馬番組要綱” (PDF). 愛知県競馬組合. p. 7 (2012年). 2012年9月28日閲覧。
  15. ^ 【お知らせ】本日の出来事”. 岐阜県地方競馬組合 (2012年5月23日). 2012年9月28日閲覧。