ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。
ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 | ||
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著者 | 辻村深月 | |
発行日 | 2009年9月14日 | |
発行元 | 講談社 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 四六判 | |
ページ数 | 390 | |
コード | ISBN 978-4-06-215761-2 | |
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『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』は、辻村深月による日本の小説。第142回直木賞候補作、第31回吉川英治文学新人賞候補作。
概要
『スロウハイツの神様』以来、約3年ぶりとなる書き下ろし作品で、講談社創業100周年記念企画「書き下ろし100冊」の1冊。
テーマは「女子」の「格差」で[1]、作者の故郷である山梨県を舞台に、30歳前後の女性たちの“息苦しさ”が描かれる。読者がそれぞれ属するコミュニティの中で、登場人物に近いイメージの友だちを想像できるように、登場人物の造形の描写はほとんどない。
あらすじ
すべての娘は、自分の母親に等しく傷つけられている。
幼なじみのチエミが母親を殺して逃げた。誰もが羨むほど仲が良かったあの親子に一体何があったのか……。どうして娘に殺される母親はうちの母親じゃなかったの……。母親を嫌い、地元を嫌い、過去を捨てるように上京し幸せな結婚生活を送っていたみずほは、あることに思い至り、逃げ続けるチエミの行方を追う。
第一章はチエミを探すみずほの視点で、第二章は逃亡中のチエミの視点で書かれる。
登場人物
- 神宮司 みずほ(じんぐうじ みずほ)
- 雑誌のライター。27歳の時に後の夫・啓太と出会い、29歳の時に結婚、東京で暮らす。子どもが出来にくい体質で、流産を経験する。父親は建設会社の役員。
- 望月 チエミ(もちづき ちえみ)
- みずほの幼なじみ。家が近所で、中学まで一緒だった。両親はさくらんぼの栽培農家。母娘仲が非常に良く、母には何でも話していた。母・千草を刺し殺したとして指名手配される。
- 古橋 由起子(ふるはし ゆきこ)
- チエミの小学校から高校までの同級生で手芸部仲間。
- 北原 果歩(きたはら かほ)
- 友達思いで、誰に対しても優しい。仲間内で一番可愛くて人気があった子。契約していた会社の妻子ある男と不倫をしている。
- 飯島 政美(いいじま まさみ)
- 合コンなどでいつも幹事役を引き受けていた子。仲が良すぎるチエミの家族を気味悪がる。
- 柿島 大地(かきしま だいち)
- みずほの大学時代のサークル仲間。山梨に赴任が決まった時、みずほからチエミを紹介され、一時期付き合っていた。
- 梁川 啓太(やながわ けいた)
- みずほの夫。「世界のマツバ」と呼ばれるマツバ電機に勤めている。みずほの兄の後輩。
- 添田 紀美子(そえだ きみこ)
- チエミの小学校6年時の担任教師。チエミが母親を殺した後、最初に向かった。
- 望月 康孝(もちづき やすたか)
- チエミの父親。町内会主催の旅行から帰り、居間で妻・千草の遺体を発見する。
- 塩田 利之(しおた としゆき)
- 山梨県警捜査一課警部補。
- 及川 亜理紗(おいかわ ありさ)
- チエミが働いていた建築会社・サガラ設計の正社員。建築士。事件直前にチエミと口論になった。
- 瀬尾 新一(せお しんいち)
- 富山の高岡育愛病院の産科医師。5年前に導入された『天使のベッド』(通称・赤ちゃんポスト)の閉鎖が論じられている。
- 山田 翠(やまだ みどり)
- 逃亡中のチエミを助けた富山の大学生。
幻のテレビドラマ化
本作品をNHKがテレビドラマ化し、2012年5月にBSプレミアム「プレミアムドラマ」枠にて4回シリーズで放送する予定だった。キャストも長澤まさみ、黒木華、佐藤江梨子、風吹ジュンらの起用が決まっていたが、同年2月、版元の講談社が大森寿美男の脚本の内容に納得せず、ドラマ化許諾の白紙撤回を申し出たことから、クランクイン当日になってドラマの制作並びに放送中止を余儀なくされた。
当時、本作では、講談社側がNHKと辻村との間での直接の話し合いを行わせるなどの仲介をしなかったこともあり、辻村自身の脚本に対する違和感の表明も講談社を通じた文書のみだった[2]。
NHKは講談社に対し同年6月21日、損害賠償を求める民事裁判を東京地方裁判所に提起したことを発表した。NHK側は約5982万円の支払いを求めていたが[3]、2015年4月28日、東京地方裁判所の岡崎克彦裁判長は「脚本の承認がされていない以上、許諾契約が成立したとは言えない。NHKには小説の主題に関する理解が十分でなかったきらいがある」として訴えを棄却した[4]。
脚注
- ^ 『IN★POCKET』(講談社)2009年10月号『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』インタビュー 「女子」たちのひみつ
- ^ 同時期にNHKでドラマ化した『本日は大安なり』では、版元と窓口が角川書店だったこともあり、辻村との直接の打ち合わせの場が持たれたという。
- ^ “NHKが講談社訴える ドラマ製作中止で”. 日刊スポーツ. (2012年6月21日)
- ^ “NHKの訴え棄却 原作のドラマ化契約解除巡り東京地裁”. 朝日新聞デジタル. (2015年4月28日). オリジナルの2019年5月3日時点におけるアーカイブ。