ジーヴォ

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ジーヴォ(Gevo, Inc.)
種類
Public
市場情報 NASDAQ: GEVO
業種 再生化学製品 バイオ燃料
設立 2005年
創業者 パトリック・グルーバー
フランシス・アーノルド
本社 ダグラス郡 (コロラド州)、米国
事業地域
世界中
主要人物
パトリック・グルーバー 会長兼最高経営責任者
製品 イソブチルアルコールバイオブタノール) and 炭化水素 誘導体
ウェブサイト www.gevo.com ウィキデータを編集


以下の情報は、2010年現在のものも含む。

ジーヴォ(Gevo, Inc. ) は、米国コロラド州ダグラス郡デンバーに本社をおく再生可能化学製品と先進的なバイオ燃料の生産会社。同社は、バイオテクノロジーと従来の化学を併用した技術により石油由来の製品に代わる代替バイオ製品(英語版)を開発する。サーキュラーエコノミーを基にした様々な資源からの再生エネルギーを使ったビジネルモデルにより、 旧式な製造工程の改良、改新的な農業 (資源の保護と農地改良による農耕方法 英語版)、土壌の炭素隔離 (長期間に土壌に溜まった二酸化炭素を取り出すこと 英語版)、広汎なシステムの効率化、同社の製品すなわち天然資源を保護をすることにより、環境学的な持続可能性 (サステイナビリティ) に注力する。アルゴンヌ国立研究所のGREETモデル(車両燃料等の排気ガス計測のためのモデル 英語版 ) を自社製品の持続可能性 (サステイナビリティ) の計測のために採用し[1]、高タンパク質飼料、トウモロコシ由来の油脂製品、高エネルギー液体炭化水素の生産を目指す。持続可能な環境で育てられた飼料用馬歯種トウモロコシ(英語版)を原材料として、高価値タンパク質、再生可能炭化水素の基になるイソブチルアルコール、再生可能燃料(ジェット燃料、ガソリン、軽油)を生産し、これらを現在使われている燃料や化学製品へ支障なく融合できると確信する。[2] 同社への出資会社は、Burrill & Company, Khosla Ventures(英語版), Lanxess(英語版), Osage University Partners, Total,  Virgin Green Fundなどである。

ジーヴォのサーキュラーエコノミー(循環経済)

ジーヴォのビジネスモデルは、様々な工程からの温室効果ガスの排除や再生可能エネルギー(光合成による太陽エネルギー風力バイオガス、再生可能天然ガス、等)を組み込むことでつくられ、それが同社のサーキュラーエコノミー(循環経済)の中核となっている。同社のサーキュラーエコノミーは、人類の努力を推進するのに長い間役立ってきた経済的な力に依存する。そして同社の経営目標は、大気中の炭素レベルのバランスを取り戻すための革新、設計、そしてその様な可能性を潜在的に持つプロジェクトへの投資の推進である。

同社のサーキュラーエコノミー (4ページ目参照)[3] は次の通り:

  • 持続可能 (サステイナブル )に育てられた飼料用トウモロコシが大気中の二酸化炭素を使い、土壌の炭素隔離 (土の中に溜まった二酸化炭素の除去 英語版)をする。
  • 農耕物へ良い影響を与えるプロバイオティクス微生物を土壌に加え、不耕起栽培を採用することにより土壌の炭素が増えて収穫量が増える。
  • 同社はこの様に栽培された飼料用トウモロコシを買い入れ、穀粒からタンパク質とデンプン質を分離する。
  • 分離されたタンパク質成分は高タンパク質飼料になり、乳牛、肉牛の餌になる。
  • 乳牛と肉牛は乳製品や食肉として、タンパク質と肥料を食物連鎖内へ供与する。
  • 農地の肥料はバイオリアクターに入れられ、その肥料から発生したメタンガスバイオガスとなる。
  • このバイオガスは発酵工程で熱源として使われる。
  • また、従来の電力系統への依存を減らすため、風力原動機による電力を使う。
  • 特許を持つ生体触媒と分離工程 GIFT(同社の統合発酵技術 Givo’s Integrated Fermentation Technology) でイソブチルアルコールがつくられる。そしてこのイソブチルアルコールが高エネルギーの液体炭素水素の基になリ、ガソリン、軽油、ジェット燃料用ブレンドストックになる。
  • メタン (CH4)を取り出した後にバイオリアクターに残った肥料にはまだ窒素リンカリウムが残っているため、次の作物のために農地に撒かれる。
  • 車、飛行機から大気中に排出された二酸化炭素 (CO2)は、上述の通りトウモロコシによってサーキュラーエコノミーに還元される。

イソブチルアルコール生産の経済的観点

イソブチルアルコール(C4H10O) は、4つの炭素(C4)を持つアルコールで、特殊化学品(用途多様な化学薬品)(英語版)としてそのまま使われたり、付加価値燃料のブレンドストックとして使われる。 [4](ブレンドストックとはそれ自体では未完成のオイルのことで、他の未完成オイルと混合、精製され完成品となる。)イソブチルアルコールはまた、現在の石油化学産業で使われる精製化学技術でブテン(C4H8) に簡単に変えることもできる。ブテン炭化水素の主要な構成物質であり、プラスチック、繊維、ゴム、その他のポリマー(重合体化合物) 、炭化水素燃料の生産にも使われる 。再生可能な原材料から作られたイソブチルアルコールは、石油化学及び精製産業にとっては competitive price(適正価格:法外な高/安値でなく、売り手と買い手が同意し、死重損失が生じない長期均衡価格) の炭化水素の代替物質となるだろう。その理由は、その化学式 "C4 hydrocarbons" の形成が示すように、4つ炭素原子(C4)から構成されているため、石油天然ガスの主成分である炭化水素 (CH4) に容易に変換が可能。この過去十年間(2000年〜2010年)、発酵可能な糖類の価格変動幅は石油のものよりも狭い。これは石油価格の変動によるリスク回避を求める産業用イソブチルアルコール購買者にとって重要なことである。イソブチルアルコールとその派生品は、世界の石油化学製品の約4割に応用できる可能性がある。生産者は、 機材や生産工程を変更することなく、石油由来の原材料をイソブチルアルコール由来のものへ換えることが出来る。その上、イソブチルアルコール系原材料からできた最終製品は石油系原材料からできたものと化学的に同じ成分で、市場に受け入れられるまでの時間が短くなる可能性がある。[5]

技術、工学、生産

ジーヴォは、現存するエタノール生産工場を改造するだけでイソブチルアルコールを生産できる技術を開発した。同社の統合発酵技術 GIFT (Givo’s Integrated Fermentation Technology)[6] は、イソブチルアルコールの効率的な生産と分離ができる技術プラットホームのことである。GIFTとは、次の二つから構成される:(1) 生体触媒:複数の再生可能原料から取り出された糖質をイソブチルアルコールへ換えるもの。(特許取得済) (2)分離工程: 発酵過程で水からイソブチルアルコールを 継続的に分離するもの。(特許取得済) 同社は、自社の技術プラットフォームを現在の世界のエタノール生産容量の年間約200億ガロン に対応できる様に開発した。この数値は再生可能燃料協会(英語版)による2010年現在の概算。GIFTによるイソブチルアルコールの生産は、エタノール用の既存の生産設備を改造するだけで良いので、比較的設備投資費が低額で済む。これにより、迅速でコスト効率の良い再生可能材料の発酵からイソブチルアルコール生産までの工程が可能になる。[7] 同社はまた、バイオマスから出来た糖質をセルロース由来のイソブチルアルコールへ変えることが出来る酵素も開発中である。(これはこの技術で採算が取れればによる。) 同社は生産施設を拡張し、2014年までに5億ガロン以上のイソブチルアルコールの販売を予定する。

  • セントジョセフ (ミズーリ州) の実証施設:2009年9月に、ジーヴォのバイオブタノール生産工程は、米国ミズーリ州セントジョセフにある ICM株式会社(エンジニアリング会社)の所有する採算可能量の生産ができる規模の工場(年間百万ガロンの生産可能)及び、エタノール生産装置を既にバイオブタノールへの生産が可能な装置への改造が済んだ工場で生産が実演された。[8] 実演プロジェクトは同社によりエタノール工場をイソブチルアルコール生産に再利用が可能なこと、またこれが迅速にに比較的小額な先行設備投資でできることを示した。
  • 最初の商業的生産施設:2010年9月に、同社はミネソタ州ルヴェーン市[英語版]にあるエタノール生産施設(2千2百万ガロン)の所有権を取得した。[9]2010年第四半期に装置の改造を開始予定。この施設でのイソブチルアルコールのこの商業生産開始は2012年前半を予定。[10]

焦点にする市場

今日の化学業界では、イソブチルアルコールをプラスチック、繊維、ゴム、その他のポリマー、炭化水素燃料へ換える技術の殆どは周知、実践されている。ジーヴォの商業化に向けた取り組みは次の市場に向けられている。

脚注

  1. ^ Argonne teams up with GEVO to apply lab’s GREET Model to company’s net-zero project” (英語). 2021年9月23日閲覧。
  2. ^ Leber, Jessica (2010年1月13日). “Biobutanol Firm Aims to Compete with Ethanol in 4 Years”. The New York Times. https://www.nytimes.com/cwire/2010/01/13/13climatewire-biobutanol-firm-aims-to-compete-with-ethanol-29682.html 2010年12月5日閲覧。 
  3. ^ The Circular Economy”. Gevo, Inc.. 2021年5月30日閲覧。
  4. ^ Leber, Jessica (2010年1月13日). “Biobutanol Firm Aims to Compete with Ethanol in 4 Years”. The New York Times. https://www.nytimes.com/cwire/2010/01/13/13climatewire-biobutanol-firm-aims-to-compete-with-ethanol-29682.html 2010年12月5日閲覧。 
  5. ^ Canter, Neil (2008年7月1日). “A Second-Generation Biofuel”. AllBusiness. http://www.allbusiness.com/energy-utilities/oil-gas-industry-oil-processing/11483714-1.html 2010年12月5日閲覧。 
  6. ^ Gevo | Our Technology”. 2010年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月6日閲覧。
  7. ^ Pentland, William (2008年3月20日). “Beyond Ethanol”. Forbes. https://www.forbes.com/2008/03/19/innovation-ethanol-fuel-tech-innovation08-cx_wp_0319innovation.html 2010年12月5日閲覧。 
  8. ^ “Gevo Announces First Retrofit of Ethanol Demonstration Plant to Biobutanol for the Oil and Chemical Industries”. Gevo. (2009年9月30日). http://www.gevo.com/news_Retrofit-Demo-Plant-pr_100509.php 2010年12月5日閲覧。 
  9. ^ “Mergers & Acquisitions”. Star Tribune. (2010年8月15日). http://www.startribune.com/business/100647364.html?elr=KArksUUUoDEy3LGDiO7aiU 2010年12月5日閲覧。 
  10. ^ Wald, Matthew L. (2011年3月10日). “Ethanol Plant Is Switching to Butanol”. New York Times. http://green.blogs.nytimes.com/2011/03/10/ethanol-plant-is-switching-to-butanol/?hp 2011年3月10日閲覧。 
  11. ^ “From 1st- to 2nd-Generation Biofuel Technologies”. International Energy Agency. (2008年11月). http://www.iea.org/papers/2008/2nd_Biofuel_Gen.pdf 2010年12月5日閲覧。 
  12. ^ “Gevo's isobutanol receives EPA registration”. Ethanol Producer Magazine. (2010年11月23日). http://www.ethanolproducer.com/article.jsp?article_id=7164 2010年12月8日閲覧。 
  13. ^ Gevo Inc. - News”. Gevo Inc. - News. 2021年5月15日閲覧。

参考文献

外部リンク

  • 公式ウェブサイト
  • ジーヴォのビジネスデータ: