サン・パウロ (空母)
艦歴 | ||
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就役 | ||
退役 | ||
その後 | ||
除籍 | ||
性能諸元 | ||
排水量 | 基準 30,884t、満載 33,673t | |
全長 | 265m | |
全幅 | 51.2m | |
吃水 | 8.2m | |
機関 | 蒸気タービン2軸推進(126,000hp) | 4基 |
ディーゼルエンジン | 6基 | |
速力 | 30ノット | |
乗員 | 1,700名(航空要員670名含む) | |
武装 | ミストラル艦対空ミサイル2連装シンバッド発射機 | 3基 |
12.7mm機銃 | 5門 | |
レーダー | DRBV-23B対空レーダー | 1基 |
DRBV-15対水上レーダー | 1基 | |
NRBA-50精測進入レーダー | 1基 | |
DRBI-10 3次元対空レーダー | 1基 | |
DRBC-32C火器管制レーダー | 数基 | |
DRBN-34航海レーダー | - | |
搭載機 | AF-1 ファルカン | 10- 16機 |
SH-3 シーキング | 4- 6機 | |
UH-13 エスキーロ またはUH-14シュペルプーマ |
2機 3機 | |
モットー | "Non ducor, duco" | |
言語 | 表記 | |
日本語 | サン・パウロ | |
ポルトガル語 | NAe São Paulo | |
英語 | NAe São Paulo |
サン・パウロ(São Paulo, A12)は、ブラジル海軍の航空母艦。艦名は同国のサン・パウロ州またはその州都であるサン・パウロ市に由来する。現在、ブラジル海軍の旗艦であり、この名を冠したブラジル海軍艦としては4代目。
モットーは"Non ducor, duco" 「我は導かれず。我こそが導く」であり、サン・パウロ市並びにかつてこの名を冠していた戦艦サン・パウロのモットーと同じである。
艦歴
元はフランス海軍の空母「フォッシュ」である。ブラジル海軍の前任空母「ミナス・ジェライス」は、第二次世界大戦時の建艦であったため老朽化が進んでおり、1990年代頃からその後継艦をどうするかという問題が重要になってきた。自国での新規建艦案も検討されたが、推定で完成までに5億USドルもの予算と8年もの期間が必要であることなどから、「ミナス・ジェライス」と同じく中古空母の購入にてまかなわれることとなった。
対象となったフランス海軍空母「フォッシュ」は1957年から1960年にかけて建艦されたクレマンソー級航空母艦2番艦であり、予定されていた退役時期を数年残して2000年の9月におよそ1200万USドルでブラジルに売却された。同年11月15日にフランスのブレスト港にてブラジルに引き渡されると同時にブラジル海軍に編入されている。数ヶ月の修理と武装の撤去後、16日かけて大西洋を横断し、2001年2月17日にリオデジャネイロ市に到着した。
フランスにおいて、「フォッシュ」時代に装備していた100mm単装砲とクロタル空対空ミサイル発射機は全撤去されている。ミストラル空対空ミサイル6連装発射機サドラル2基については、撤去されたか残置されたか定かでない。
「サン・パウロ」としての最初の3年の間にこの艦は様々な任務を遂行しており、その幾つかはARAEXやTEMPEREXのような海外合同作戦であった。その作戦に置いて、「ベインティシンコ・デ・マヨ」が退役して以来空母を保持していないアルゼンチン海軍の艦載機、シュペルエタンダールやS-2Tターボトラッカーの空母上での運用訓練がサン・パウロ艦上で行われた。
老齢艦であり、2005年にボイラーの蒸気配管から蒸気漏れを起こし3人の死者を出す事故となった。この修復に2年を要した。
また復帰後も推進軸の異常振動問題が発生し、毎年のように長期のドック入りを余儀なくされている。
2010年にはオーバーホールが行われ、この際にミストラル空対空ミサイル2連装発射機シンバッドが3基新たに搭載された(仮にフランスから購入時にサドラルが残置されていたとすると、この時に撤去されている)。また一部のレーダーもしくは通信アンテナの更新も行われており外見に少しの変化が生じている。
2012年2月、リオ・デ・ジャネイロ軍港に停泊中に火災事故を起こし水兵1名が死亡した。
軍が予算削減の問題に面している一方で、この艦は今のところ作戦可能状態を維持している。
概要
「ミナス・ジェライス」に比べて速度は50%増、搭載可能機数は倍加しており、ブラジル海軍の機動部隊の中核をなしている。艦名として NAe São Paulo と記載されるが、NAeは所属海軍を表しているのではなく、ポルトガル語で空母を意味する"Navio-Aeródromo"の頭文字である。「ミナス・ジェライス」の場合 NAeL Minas Gerais であり、軽空母を意味する"Navio-Aeródromo Ligeiro"だったが、サン・パウロでは軽(Ligeiro)という語が無くなっており、名実共に正規空母である事を示している。
現在のところ航空母艦もしくは飛行甲板をもった揚陸艦を所有する9ヶ国(アメリカ・イギリス・イタリア・インド・スペイン・タイ・フランス・ブラジル・ロシア)の中で、CTOL機の運用能力を持つ空母を持つのは4ヶ国のみであり、「サン・パウロ」を有するブラジルもその一つである(ブラジルの他は米・仏・露)。他の5ヶ国は全てSTOL/VTOL機のみ運用が可能となっている。
艦載機は、各種ヘリコプターの他に、「ミナス・ジェライス」の時代に7000万USドルでクウェートから購入したA-4スカイホークを引き続き搭載している。ブラジルではA-4スカイホークはAF-1ファルカン(ファルカン"Falcão" とはポルトガル語でハヤブサまたはタカの意)と名付けられている。スカイホークはロケットランチャー・自由落下爆弾・サイドワインダー空対空ミサイル等の装備が可能であるが、目下のところパイロットの空母上での作戦訓練がサン・パウロの主な任務である。
当時のブラジル大統領フェルナンド・エンリケ・カルドーゾは、引渡式典で次のように述べている。「空母サン・パウロの就役は、国家の利益を防護する能力に置いて、重要な拡大を我らが海軍力にもたらした。我が国のように、7,000km以上にわたる長大な海岸線を持つ国家は、国際社会に置いてその水準に相応しい海軍力を必要とする。今日ブラジルは、以前のように、その主権の尊重の保証を国家に提供する具体的な対策の履行について懸念している。我々は今も、そしてこれからも常に平和のために戦う国民である。しかしそれは適切な抑止力を授かった近代的軍備なしに可能である事を意味しない。今日に置いても、海上航空戦力を効率的に運用できる国は非常に少ない。ブラジルがその数少ない国の一つであり続けることは重要なことである」
第二次世界大戦時の設計だった「ミナス・ジェライス」に比べればはるかに状態は良く、当初からジェット艦上機の運用を念頭に置いた設計であったので、「ミナス・ジェライス」の時のような大規模な改装は必要なかった。現在の状態でも、予見しうる未来に置いてその役割を効果的に果たすことが期待されるが、臨戦態勢になるにはさらなる近代化改装の努力が予期される。
2011年にブラジル海軍高官は、「サン・パウロ」にさらなる対空早期警戒能力と対潜哨戒能力を追加するために中古のS-2トラッカーを10機弱購入し、半数に早期警戒機改装を施して、両者を「サン・パウロ」で運用するプランがあることを明かした。
この艦は、回転翼機ならびに固定翼機の操縦資格試験(およそ500回のカタパルト射出を含む)や、ブラジル初の空母発艦機による攻撃作戦の訓練に、積極的に使われている。