コカイン

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コカイン
コカインの構造式
識別情報
CAS登録番号 50-36-2
KEGG D00110
特性
化学式 C17H21NO4
モル質量 303.35
外観 無色結晶
融点

195

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

コカイン (cocaine) は、コカノキに含まれるアルカロイドトロパン骨格を持ちオルニチンより生合成される。化学式は、C17H21NO4、分子量 303.35。無色無臭の柱状結晶。

作用

粘膜の麻酔に効力があり、局所麻酔薬として用いられる。 この作用は、電位依存性ナトリウムイオンチャネルの興奮を抑えることで、感覚神経の興奮を抑制することによる。また中枢神経に作用して、精神を高揚させる働きを持つ。

コカインを摂取した場合、中枢神経興奮作用によって快感を得て、とても爽快な気分になることができる。また、コカインは薬物依存症の原因になる。コカインによる依存症は極めて強い部類に含まれるが、主に精神依存であり、肉体依存は弱いと言われる。 このコカインの中枢作用は覚醒剤アンフェタミン類)と類似しており、モノアミントランスポーターの阻害により、カテコールアミンを遊離させ、カテコールアミン作動神経に作用するためだと考えられている。ただし、コカインは作用が強烈で短時間作用し、覚醒剤の作用はコカインより弱いが長時間作用する。

尚、コカイン中毒では対症療法により対処する。

アメリカやヨーロッパの各国で麻薬として、所持や使用が規制されている薬物の一つである。日本でも麻薬及び向精神薬取締法で規制対象になっている麻薬である。

歴史

コカインの性質が十分に理解されていなかった頃には、依存性がないと考えられたために、他の薬物依存症の患者に対し、コカインを処方することで治療できると考える者もいた。著名な心理学者であるフロイトもこのような考えから、自身および他者に対してコカインを処方し、他者に重大な依存症を引き起こした。

アーサー・コナン・ドイルの作品中に登場する、シャーロック・ホームズも作中でコカインを使用しており、友人のワトソン医師の働きかけによって使用を止めている。

清涼飲料として知られるコカ・コーラにも20世紀初頭までコカインの成分が含まれており、薬局などで売られていた頃はdope(ドープ)という麻薬の俗称で呼ばれていた(そもそもコカ・コーラの発明者であったジョン・ペンバートン自身が患っていたモルヒネ中毒の治療薬として開発したものであった)。コカインの有害性が明らかになると、1903年コカ・コーラはコカインの使用を中止し、代わりにカフェインが用いられるようになった。

しかし、規制後もコカインは裏で流通し続けていた。アメリカでは、ベトナム戦争時にアメリカ軍兵士が日常的にコカインを摂取しており、帰還兵が、アメリカ国内にそれを持ち込み、深刻な社会問題になった。1970年代前後のアメリカでは、コカイン摂取は、ベトナム帰還兵や裕福な白人層の「娯楽」として用いられるようになった。特に、シリコンバレーを代表とするハイテク関連企業の技術者や、その家族がコカインをしばしば用いていたとされる。1980年代に入り、コカインの供給量が増え、その路上販売価格が下がると、コカインの摂取は貧しい人々や若者にも広がるようになり、深刻な社会問題として表面化している。

1970~1980年代にかけて、パブロ・エスコバル率いるコロンビアの複合犯罪組織メデジン・カルテルの台頭が全世界のコカイン市場の大半を牛耳るようになると、危機感を抱いたアメリカは、これを壊滅させるべく国家安全保障局(NSA)中央情報局(CIA)による諜報活動のうえ、アメリカ軍を派兵し、連日にわたる拠点の空爆ミサイル攻撃、銃撃戦が繰り広げられた。また、その様子は各国のTVや新聞等のメディアでたびたび報じられた。

2009年、世界中でエナジードリンクとして販売されているレッドブルの姉妹品レッドブル・コーラから微量のコカインが検出され、ドイツでは販売が禁止された。[1]

関連項目

脚注

外部リンク

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