ゆで卵

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固ゆで卵の卵黄断面
エッグスタンドに立てられた半熟卵

ゆで卵(ゆでたまご、茹で卵)は、料理の一つ。鳥類の卵、特に鶏卵を、殻のままゆでて凝固させたもの。地域により「うで卵」、近畿地方では固ゆで卵を「煮抜き卵」・「煮抜き」とも呼ぶ。

調理法

殻を割らない状態で鶏卵ウズラの卵などをの水に入れ、火にかけて、沸騰した湯で数分ゆでて作る。ゆでる際には、殻が割れて中身が出た時に固まりやすいように食塩を水に入れることもある。ゆであがったあと、卵の殻をむき、食塩,マヨネーズなどをつけて食したり、他の料理の材料とする。

水からゆでる場合、水の量や火力、気温により温度の上がり方が変わるためタイミングをはかるのが難しい。これをはかるために「エッグメーター」と呼ばれる一種の温度計を一緒にゆでる方法がある。また、常に一定の時間で仕上げるために、多めのお湯をあらかじめ沸騰させておき、そこに卵を入れてしまう方法もある。この場合、あらかじめ圧を逃がすための穴(後述)を空けておかないと割れて白身が漏れてしまうことが多い。

ゆでる時間の加減により、黄身に火が半分通った半熟卵、完全に火が通った固茹で卵に分類できる。また、湯を沸騰させずに、70℃前後の比較的低温を保って数十分ゆでると、黄身と白身の凝固温度の違いから、白身は固まらず黄身だけが固まる特殊な状態になる。これは温泉卵と呼ばれ、広い意味でのゆで卵の一種である。

ゆであがった卵は、数分冷水にさらし、更に水の中(もしくは流水内)で揉むようにして殻に細かくひびを入れると簡単にむくことができる。しかし、産卵直後の新鮮な卵では、この方法でも薄皮は非常にむきにくく、きれいにはがすのは至難である。そのため、大量に新鮮な卵を入荷する店では、入荷から少し時間を置いて、鮮度を若干落とした卵をゆで卵に用いることが多い。無論、頂部等1箇所だけをむき、エッグスタンドに立ててスプーンで中をえぐって食べる方法であれば、殻のむきやすさを気にする必要がなく、新鮮であればあるほど良いことになる。

新鮮な卵が剥きにくいのは、卵白に含まれている炭酸ガスが気化・膨張することにより内部の圧力が高まり、卵白と薄皮がくっついたまま凝固するためである。そのため、ゆでる前に気室側に画鋲の針などで小さな穴を空けておくとガスが抜け、また加熱完了後に水が内部に入るのでむきやすくなる。小さめの火力で加熱することにより、急激な圧力上昇を防ぐことも有効である。

卵と卵が十分没する量の水を入れた器を電子レンジにかけてゆで卵を作ることもできるが、卵が破裂する可能性があるので注意が必要である(爆発卵の項を参照)。 また、冷蔵庫から取り出したばかりの冷たい卵を急激に加熱すると、やはり破裂することがある。これは、内部の空気や液体の膨張による内圧の急上昇が原因である。地鶏卵よりも殻が薄いケージ飼いの量産卵でとくに起こりやすい。

長時間高温でゆでた場合、白身から発生した硫化水素と、黄身の鉄分とが化合して、黄身の外端が黒緑色となるが、健康には害がないとされる。また、なべ底に接していた温度の高い部分のみが茶褐色に変色し、「硫黄焼け」を起こす場合がある。さらに加熱時間を長くすると、白身全体が褐色をおび、硫化水素臭により、味も落ちる。

熱を加えているため、ゆで卵のほうが生卵よりも保存がきくと考える人も存在するが、生卵に含まれる酵素のひとつであるリゾチームが熱により破壊されるため、同条件下ではゆで卵のほうが早く腐敗する。

ゆで卵を利用した料理

おでん
ゆで卵はおでんの具としても一般的に用いられる。殻をむいておでんの出汁に入れ一緒に煮ることで、味を含ませる。ただし半熟で茹でて殻をむかずに出汁で弱火で煮るのが本来のやり方とも言われる。[要出典]
煮卵、味付け卵(「味玉」)
叉焼の煮汁やタレで煮れば煮卵となる。冷たい煮汁にゆで卵を入れ沸騰させ短時間煮た後、汁ごと長時間かけて冷やすなどにより味を染み込ませ作る。ラーメンのトッピングとしてゆで卵の代わりに煮卵がメニューに加えらえている店もある。ゆで卵を半熟に仕上げ、冷たい汁の中に入れて以降は加熱せずに味付けする「半熟煮卵」(厳密には「煮卵」ではないが)が出されることもある。また、醤蛋(ジャンタン)とも呼ばれる。
爆弾
ゆで卵を魚のすり身で包んだ薩摩揚げ
スコッチエッグ
ゆで卵をひき肉で包んだフライ

その他みじん切りにしたゆで卵はマヨネーズとの相性も良く、サンドウィッチの具にしたりタルタルソースの材料にしたりすることがある。

ゆで卵と科学

ゆで卵をテーブルの上などで高速回転させると、次第に起き上がって回転するようになる。この力学は下村裕[1]とKeith Moffatt(en:Keith Moffatt)が解明し、2002年3月28日の『ネイチャー』に掲載された[2]。また、三井[3]と下村らにより、回転する卵が非常にごくわずかだがジャンプするという予測について、現象が確認され、2006年に発表された[4]

日本の小学校でよくおこなわれる理科の実験に、牛乳瓶の口にゆで卵を乗せ、あらかじめ温めておいた中の空気を冷やすなどして中の空気を収縮させて圧力低下し、大気圧との圧力差で、ゆで卵が瓶中に吸い込まれるというものがある。

生卵とゆで卵を割らずに判別する方法に、卵を寝かせてテーブルの上で勢いをつけて回転させ、指で短時間回転を止めた後再び指を離すというものがある。指を離すと再び微妙に回転し始める方が生卵で、これは殻の回転を短時間止めても流体状の中身が慣性で回転を続けたままであるために起きる現象である。もっとも同様の理由で回転させようとした時点で回転しにくく、それだけでも判別できる。

その他

鹹蛋

脚注