LNER A4形蒸気機関車4468号機 マラード
マラード | |
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基本情報 | |
動力方式 | 蒸気機関車 |
設計者 | ナイジェル・グレズリー |
製造所 | LNER ドンカスター工場 |
製造番号 | 1870 |
製造日 | 1938年3月3日 |
主要諸元 | |
軸配置(ホワイト式) | 4-6-2 |
軌間 | 1,435 mm (4 ft 8½ in) |
全長 | 70 ft |
総重量 | 102.95ロングトン (104.6 t) |
含炭水車重量 | 1 165ロングトン (167.6 t) |
最高速度 | 126mph |
経歴 | |
形式 | A4 |
廃車 | 1963年4月25日 |
レストア | 1986年から1988年 |
ナンバー4468 マラード (4468 Mallard) はロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道 (LNER) の蒸気機関車である。マラードはLNER A4 クラスの蒸気機関車のうちで、最も有名な車両である。日本ではマラード号と呼ばれることが多い。この機関車はナイジェル・グリズリー卿(Sir Nigel Gresley)によって設計され、1938年イングランドのドンカスターで製造された。
風洞実験を利用して設計された空気力学的に優れた流線形の車体をもち、時速160 km(100 mph)以上の速度で走ることができた。1963年に引退するまでの間に走破した距離は、およそ240万キロ。1988年に50周年を記念して動態に復元されたが、2003年9月、ボイラーの検査に合格することができなくなったため再び引退した。現在はヨークにあるイギリス国立鉄道博物館のコレクションの一部として静態保存されている。マラード号の全長は21 m(70 ft)、総重量は165 t。車軸配置は4-6-2。
記録
マラード号は時速203 km という蒸気機関車の世界最高速度記録をもつ。この記録は1938年7月3日、イースト・コースト・メイン・ラインのグランサムにあるストーク・バンクの下り坂で樹立された。最高速度が記録された位置は、Little BythamとEssendineの間、901/4のマイル標(距離標)の地点である。これにより、ドイツ国鉄05形蒸気機関車が1936年に樹立した最速記録、時速200.4 km を塗り替えることに成功した。
マラード号は速度記録に挑むには最高の機関車であった。流線形に設計された車体は時速160 km 以上での走行を想定されており、内部の二本の煙突と二つのキルシャップブラストパイプは高速走行時の空気抵抗の軽減と、円滑な排気の流れを実現していた。また、高速走行時の安定性を高めるために三本のシリンダーを装備、動輪の直径は約2 m(6 ft 8 in)で、当時の技術で実現できた回転数に最適化してあった。最高速度を樹立するために、機関士には勇敢なことで有名だったジョセフ・ダディントン (Joseph Duddington) を、機関助士にはトーマス・ブライ (Thomas Bray) を選出した。
ストーク・バンクは1:178から1:200(5.6 - 5 ‰)の斜度を持つ下り坂であった。6両の客車に加え、記録計測車両 (Dynamometer car) を連結したマラード号は、坂の頂点を時速121 km で通過した後、加速しながら坂を下り、最初の1.6 km(1マイル)で141、155、167、172、179、187、そして192 km/h という速度を記録。そこから800 m(1/2マイル)の地点では194、197、198、200、最終的には201 km/h を記録した。このとき記録計測車両の計器は 125.88 mph(202.58 km/h)の瞬間最高速度を記録し、これが世界最速記録(126 mph〈203 km/h〉)となった。
最高速度記録を樹立した直後、マラード号はクランクピンのベアリングをオーバーヒートにより破損(焼きつき)したため、ドンカスターに戻って修理を受けた。このときグレズリー-ホルクロフト連動弁装置とよばれる、内部のシリンダーの弁装置の動きを外部のシリンダーに伝達する装置(連動てこ)に、機械加工と組み立て上の不具合が発見された。この装置は、構造上ほとんど修理不能な位置に取り付けられているものであった。この不具合により高速走行時に、外部の二つのシリンダーに比べて中央のシリンダーに大きな負荷がかかっており、これが故障の大きな原因となっていた。
その後
その後、ドイツの機関車がマラード号に迫る記録を出したものの、この世界最速記録が蒸気機関車によって破られることはついになかった。マラード号より高速な蒸気機関車に関する噂や伝説は多く存在するものの、十分な証拠のあるものはない。しかし、マラード号と同様に、ストーク・バンクのような長く緩やかな下り坂での走行であれば、他の蒸気機関車がマラード号を上回ることは可能であると思われる。列車の記録においては、自動車での記録とは異なり、二回の走行の記録を平均する必要がなく、勾配や風による補助も認められているという点に気をつける必要がある。
時速203 km の記録を上回ったと主張されている蒸気機関車はいくつか存在している。例えば、ペンシルバニア鉄道のS1(英語版)プロトタイプは時速225 km を記録したとされている。また、世界最速の定期貨物列車牽引用の蒸気機関車ミルウォーキー・ロード・クラスF7 (Milwaukee Road class F7) は時刻表上時速160 km を超える速度で運転されており、最高速度は時速190 km を超えることが知られている。
現在のところ、マラード号は未だにタイトルを保持しており、車体の側面にこれを記念するプレートがつけられている。もちろん、ギネス世界記録は「世界最速の蒸気機関車」として認定されている。
登場する作品
関連項目
- ビッグボーイ
- マラード (小惑星)(LNER Class A4 4468 マラードに因んで命名された)
出典
- Allen, Cecil J. (1949). The Locomotive Exchanges 1870 - 1948. Ian Allan Ltd A comprehensive book on locomotive exchanges, giving details of each trial and the locomotives involved.
- Clarke, David (2005). Locomotives in Detail: 3 Gresley 4-6-2- A4 Class. Ian Allan Publishing. ISBN 0-7110-3085-5 An overall history of the Gresley A4 class, as well as unparalleled details about the class and individual members.
- Yeadon, W.B. (2001). Yeadon's Register of LNER Locomotives: Volume Two: Gresley A4 and W1 classes. Booklaw/Railbus is association with Challenger. ISBN 1-871608-15-5 Histories of the A4 and W1 classes of locomotive with details of repairs and liveries etc.