杉石

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
杉石
Sugilith
杉石
分類 ケイ酸塩鉱物
シュツルンツ分類 9.CM.05
Dana Classification 63.2.1a.9
化学式 K(Na,□)2Li3(Fe,Mn,Al,Zr)2Si12O30
結晶系 六方晶系
単位格子 a = 10Å、c = 14Å
モル質量 1,041.66
へき開 なし
モース硬度 5.5 - 6.5
光沢 ガラス光沢
桃色紫色鶯色
比重 2.74 - 2.79
光学性 一軸性
屈折率 nω = 1.610、nε = 1.607
複屈折 δ = 0.003
文献 [1][2]
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
テンプレートを表示

杉石(すぎせき)[3]は、欧米諸国でスギライト (Sugilite)、ルブライト (Lavulite)、ローヤルアゼール (Royal Azel)と呼ばれ、鉱物ケイ酸塩鉱物)の一種。化学組成(K,Na)(Na,H2O)2(Fe3+,Ca,Na,Ti,Fe,Mn)2(Al,Fe3+)Li2Si12O30結晶系六方晶系大隅石グループの鉱物。

日本の愛媛県岩城島杉健一らにより1944年に調査・採取され、1974年[1]国際鉱物学連合(国際新鉱物命名委員会IMA#1974-060)が新鉱物として認定。最初に発見し、新鉱物として申請した岩石学者村上允英の師でもあった杉に因み命名された。

産出地[編集]

産出量が多いのは南アフリカ共和国 ケープ州ウェッセルズ鉱山(現在の北ケープ州)で、他に日本(愛媛県・岩城島と砥部町古宮鉱山[3])、イタリア リグーリア州トスカーナ州オーストラリア ニューサウスウェールズ州インド マディヤ・プラデーシュ州中央アジア 天山山脈などでも産出される。

性質・特徴[編集]

モース硬度は5.5-6.5。比重は2.74-2.79。

最初に発見された日本産はうぐいす色だったが、宝石として用いられるのはピンク系の色。紫色の彩色はマンガンに起因する。南アフリカ産の一部はマンガンよりアルミニウムが卓越しており[4]、新鉱物の可能性が指摘されていたが[5]2019年イタリア産の分析から、アルミノ杉石(Aluminosugilite, KNa2Al2Li3Si12O30)が新種記載された[6]

用途・加工法[編集]

ルースとしての需要があり、杉石を使った装飾品が作られている。チャロアイトラリマーとともに世界三大ヒーリングストーンの一つとされ、パワーストーン愛好家に人気がある。

ギャラリー[編集]

サイド・ストーリー[編集]

村上允英らと共に岩城島産の杉石を報告した広渡文利は、1965年に古宮鉱山で黒色のブラウン鉱の隙間を埋める鮮やかな紫色鉱物を発見していた[7][8]。その時は成分を特定できなかったが、杉石が新種記載された後の1981年になって、ようやく杉石と判明した。

記載者の村上允英は1983年に櫻井賞を受賞し、1994年に地質学貢献と杉石の命名により、勲三等旭日中綬章受章・正四位に叙せられる。

南アフリカ・ウェッセルズ鉱山の紫色の杉石は1978年に発見され、当初はソグド石と誤認され[9]、後に杉石と判明した[10]。その後、杉石の最初の発見地である岩城島でもソグド石は発見されている[11]

脚注[編集]

  1. ^ a b Sugilite (英語), MinDat.org, 2011年11月9日閲覧 (英語)
  2. ^ Sugilite (英語), WebMineral.com, 2011年11月9日閲覧 (英語)
  3. ^ a b 松原聰宮脇律郎『日本産鉱物型録』東海大学出版会国立科学博物館叢書〉、2006年、121頁。ISBN 978-4-486-03157-4 
  4. ^ Armbruster T., Oberänsli R. (1988) Crystal chemistry of double-ring silicates: Structures of sugilite and brannockite. American Mineralogist, 73, 595-600.
  5. ^ 杉石 / Sugilite (1974-060)、浜根大輔、東京大学物性研究室
  6. ^ 新鉱物「アルミノ杉石」を発見!山口大学、2019年6月7日
  7. ^ 広渡文利, 福岡正人, 近藤裕而 (1981) 愛媛県古宮鉱山の含マンガン杉石. 日本鉱物学会1981年会講演要旨集, 113.
  8. ^ 広渡文利, 福岡正人 (1988) 日本のマンガン鉱物に関する2,3の問題. 鉱物学雑誌, 18, 347-365.
  9. ^ Bank H., Banerjee A., Pense J., Schneider W., Schrader W. (1978) Sogdianit-ein neues Edelsteinmineral?. Z. Deut. Gemmol. Ges., 27, 104-105.
  10. ^ Dunn P.J., Brummer J.J., Belsky H. (1980) Sugilite, a second occurrence; Wessels Mine, Kalahari manganese field, Republic of South Africa. Canadian Mineralogist, 18, 37-39.
  11. ^ 古本里菜, 福本辰巳, 皆川鉄雄, 浜根大輔 (2012) 岩城島エジリン閃長岩中のekanite, sogdianite. 日本鉱物科学会2012年年会, R1-P15.

参考文献[編集]

関連項目[編集]