日本国憲法第79条
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本国憲法 第79条(にほんこくけんぽうだい79条)は、日本国憲法第6章司法にある条文の1つであり、最高裁判所の裁判官、国民審査、定年、報酬について規定している。
目次 |
[編集] 条文
第七十九条[1] 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
- 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
- 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
- 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
- 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
- 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
[編集] 沿革
参考文献情報
- 1889年(明治22年)2月11日公布、1890年(明治23年)11月29日に施行された憲法。1947年(昭和22年)5月3日に日本国憲法が施行されたことにより失効。
- 憲法改正要綱[1]
- 1946年(昭和21年)2月8日、松本烝治国務大臣・憲法問題調査委員会委員長が連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に対して、憲法改正案として提出・説明した文書。松本国務大臣が、そのときまでの委員会審議等を踏まえて作成した「憲法改正私案(一月四日稿) 」を要綱化した文書で、「松本試案」とも呼ばれる。閣議で議論にかけられ、天皇に奏上したものの、閣議等での正式な決定を経た文書ではない。
- マッカーサー三原則(マッカーサー・ノート)[2]
- 1946年(昭和21年)2月3日、ダグラス・マッカーサー連合国軍最高司令官が、GHQ内部の憲法改正草案作成にあたって必ず盛り込むよう指示した三項目の要件。草案作成の担当を命じられたコートニー・ホイットニー民政局長に対して示された。第一に天皇の地位、第二に戦争の放棄、第三に貴族制度(華族制度)に関して簡潔に述べている。
- 1946年(昭和21年)2月13日、GHQから日本政府に対して、憲法改正草案として提示された文書。GHQ民政局が作成した原案に対して、ダグラス・マッカーサー連合国軍最高司令官が指示した修正を行ったものである。先に提出した「憲法改正要綱」に対する回答を聴取するため来訪した吉田茂外務大臣と松本烝治国務大臣に、コートニー・ホイットニー民政局長が手交した。日本政府は、同月22日の閣議においてGHQ草案の事実上の受け入れを決定し、同月26日の閣議においてGHQ草案に沿った新しい憲法草案を起草することを決定した。なお、GHQ草案全文の仮訳が閣僚に配布されたのは、同月25日の臨時閣議の席であった。
- 憲法改正草案要綱[4]
- 1946年(昭和21年)3月6日、内閣から国民に対して、憲法改正草案として発表された文書。内閣でGHQ草案の受け入れを決定した後、松本烝治国務大臣は、佐藤達夫内閣法制局第一部長、入江俊郎内閣法制局次長とともに、憲法改正案(「3月2日案」)を起草した。「3月2日案」をもとに、GHQとの折衝を経て成立した原案が、憲法改正草案として閣議決定され(「3月5日案」)、これを入江俊郎内閣法制局次長が中心となって、要綱の形にまとめたのが「憲法改正草案要綱」である。
- 憲法改正草案[5]
- 1946年(昭和21年)4月17日、内閣から国民に対して発表された文書。GHQの了承、閣議の了解を得た上で、元の「憲法改正草案」をひらがな口語体の文章にしたものである。同日、昭和天皇は、同案を内閣からの憲法改正案として枢密院に諮詢した。その後、幣原内閣から第1次吉田内閣へ交替したため一旦枢密院への諮詢が撤回され、字句を修正した上で、同年5月27日に再諮詢された[6]。同年6月8日、「憲法改正草案」は、枢密院本会議において美濃部達吉顧問官を除く賛成多数で可決された。
- 帝国憲法改正案[7]
- 1946年(昭和21年)6月20日、第90回帝国議会の開院式当日(召集日は同年5月16日)に、大日本帝国憲法第73条の憲法改正手続により、勅書をもって議会に提出された憲法改正案。同年6月25日に衆議院本会議に上程され、6月28日に芦田均を委員長とする帝国憲法改正案委員会に付託。委員会審議を経て、同年8月24日、衆議院本会議において賛成421票、反対8票という圧倒的多数で可決され、同日貴族院に送られた。同年8月26日に貴族院本会議に上程され、8月30日に安倍能成を委員長とする帝国憲法改正案特別委員会に付託。委員会審議を経て、同年10月6日、貴族院本会議において賛成多数で可決された。同日、貴族院での修正が加えられた改正案は衆議院に回付され、翌7日、衆議院本会議において圧倒的多数で可決。その後「帝国憲法改正案」は、同年10月12日に枢密院に再諮詢され、2回の審査の後、同年10月29日に2名の欠席者を除き全会一致で可決。「帝国憲法改正案」は、昭和天皇の裁可を経て、同年11月3日に「日本国憲法」として公布された。
- 1946年(昭和21年)11月3日公布、1947年(昭和22年)5月3日に施行された憲法。
- 大日本帝国憲法
- 第十條
- 天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ條項ニ依ル
- 第五十八條
- 裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
- 裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ
- 懲戒ノ條規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
- 憲法改正要綱[2]
- なし
- GHQ草案[3]
- (日本語)
- 第七十一条 最高法院ハ首席判事及国会ノ定ムル員数ノ普通判事ヲ以テ構成ス右判事ハ凡ヘテ内閣ニ依リ任命セラレ不都合ノ所為無キ限リ満七十歳ニ到ルマテ其ノ職ヲ免セラルルコト無カルヘシ但シ右任命ハ凡ヘテ任命後最初ノ総選挙ニ於テ、爾後ハ次ノ先位確認後十暦年経過直後行ハルル総選挙ニ於テ、審査セラルヘシ若シ選挙民カ判事ノ罷免ヲ多数決ヲ以テ議決シタルトキハ右判事ノ職ハ欠員ト為ルヘシ
- 右ノ如キ判事ハ凡ヘテ定期ニ適当ノ報酬ヲ受クヘシ報酬ハ任期中減額セラルルコト無カルヘシ
- (英語)
- Article LXXI. The Supreme Court shall consist of a chief justice and such number of associate justices as may be determined by the Diet. :All such justices shall be appointed by the Cabinet and shall hold office during good behavior but not after the attainment of the age of 70 years, provided however that all such appointments shall be reviewed at the first general election held following the appointment and thereafter at every general election held immediately following the expiration of ten calendar years from the next prior confirmation. Upon a majority vote of the electorate not to retain the incumbent the office shall become vacant.
- All such justices shall receive, at regular, stated intervals, adequate compensation which shall not be decreased during their terms of office.
- 憲法改正草案要綱[4]
- 第七十五 最高裁判所ハ法律ノ定ムル員数ノ裁判官ヲ以テ之ヲ構成シ此等ノ裁判官ハ凡テ内閣ニ於テ之ヲ任命シ満七十歳ニ達シタル時退官スルモノトスルコト
- 最高裁判所ノ裁判官ノ任命ハ其ノ任命後最初ニ行ハルル衆議院議員総選挙ノ際国民ノ審査ニ付シ爾後十年ヲ経過シタル後最初ニ行ハルル衆議院議員総選挙ノ際更ニ審査ニ付シ其ノ後ニ於テ亦同ジキコト
- 前項ノ場合ニ於テ投票者ノ多数ガ裁判官ノ罷免ヲ可トスルトキハ当該裁判官ハ罷免セラルベキモノトスルコト
- 審査ニ関スル事項ハ法律ヲ以テ之ヲ定ムルコト
- 此等ノ裁判官ハ凡テ定期ニ適当ノ報償ヲ受クルモノトス此ノ報償ハ在任中之ヲ減額スルコトヲ得ザルコト
- 憲法改正草案[5]
- 第七十五条 最高裁判所は、法律の定める員数の裁判官でこれを構成し、その裁判官は、すべて内閣でこれを任命し、法律の定める年齢に達した時に退官する。
- 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
- 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
- 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
- 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
- 日本国憲法
- 第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
- 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
- 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
- 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
- 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
- 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
[編集] 解説
最高裁判所の長たる裁判官(最高裁判所長官)の任命は、天皇によって行われる(日本国憲法第6条第2項)。最高裁判所の裁判官の員数は、発足以来長官を含めて15名であるが、当該人数については法律での規定に委ねられている(裁判所法第5条第3項)。
本条第2項ないし第4項の規定は、最高裁判所裁判官の国民審査に関する規定であり、最高裁判所裁判官国民審査法に詳細は規定される。裁判官の罷免に関する規定は日本国憲法第78条に規定されているが、最高裁判所の裁判官については、通常の分限・弾劾の方法に加えて憲法上明文にて国民審査において罷免を可とする意見が多数の場合に罷免される旨が規定されている。
最高裁判所の裁判官の定年についても法律事項であり、裁判所法により70歳と規定されている(裁判所法第50条)。なお、高等・地方・家庭裁判所の裁判官の定年は65歳と規定されている(同条)。
[編集] 判例
- 最高裁判所裁判官国民審査の効力に関する異議(最高裁判例 昭和27年02月20日)憲法79条1項,憲法79条4項,憲法15条,憲法19条,憲法21条
[編集] 脚注
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||