日本国憲法第20条
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本国憲法 第20条は日本国憲法第3章にあり、信教の自由と政教分離原則について規定している。
目次 |
[編集] 条文
- 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。[1]
- 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
- 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
[編集] 解釈
「信教の自由」には、以下の点挙げられる。
- 内心における宗教上の信仰の自由 - 特定の宗教を信じる自由、信仰を変える自由、宗教を信じない自由。
- 宗教的行為の自由 - 礼拝、祈祷、その他の宗教上の行為、祝典、儀式または行事を行い、参加し、もしくはこうした行為を行わない自由、布教の自由。
- 宗教上の結社の自由 - 宗教団体を設立し、加入する自由、活動する自由、または加入せず活動しない自由[2][3]。
また、憲法20条1項後段、2項、3項、および89条は、政教分離原則を規定している。 判例は絶対的分離ではなく、相対的分離とし、「宗教的文化財への補助」、 「宗教系私学への補助」、「教誨活動」などを許容し、目的効果基準を採用し個別に判断している。
「国及びその機関」の範囲[4] 。
[編集] 沿革
参考文献情報
- 1889年(明治22年)2月11日公布、1890年(明治23年)11月29日に施行された憲法。1947年(昭和22年)5月3日に日本国憲法が施行されたことにより失効。
- 憲法改正要綱[1]
- 1946年(昭和21年)2月8日、松本烝治国務大臣・憲法問題調査委員会委員長が連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に対して、憲法改正案として提出・説明した文書。松本国務大臣が、そのときまでの委員会審議等を踏まえて作成した「憲法改正私案(一月四日稿) 」を要綱化した文書で、「松本試案」とも呼ばれる。閣議で議論にかけられ、天皇に奏上したものの、閣議等での正式な決定を経た文書ではない。
- マッカーサー三原則(マッカーサー・ノート)[2]
- 1946年(昭和21年)2月3日、ダグラス・マッカーサー連合国軍最高司令官が、GHQ内部の憲法改正草案作成にあたって必ず盛り込むよう指示した三項目の要件。草案作成の担当を命じられたコートニー・ホイットニー民政局長に対して示された。第一に天皇の地位、第二に戦争の放棄、第三に貴族制度(華族制度)に関して簡潔に述べている。
- 1946年(昭和21年)2月13日、GHQから日本政府に対して、憲法改正草案として提示された文書。GHQ民政局が作成した原案に対して、ダグラス・マッカーサー連合国軍最高司令官が指示した修正を行ったものである。先に提出した「憲法改正要綱」に対する回答を聴取するため来訪した吉田茂外務大臣と松本烝治国務大臣に、コートニー・ホイットニー民政局長が手交した。日本政府は、同月22日の閣議においてGHQ草案の事実上の受け入れを決定し、同月26日の閣議においてGHQ草案に沿った新しい憲法草案を起草することを決定した。なお、GHQ草案全文の仮訳が閣僚に配布されたのは、同月25日の臨時閣議の席であった。
- 憲法改正草案要綱[4]
- 1946年(昭和21年)3月6日、内閣から国民に対して、憲法改正草案として発表された文書。内閣でGHQ草案の受け入れを決定した後、松本烝治国務大臣は、佐藤達夫内閣法制局第一部長、入江俊郎内閣法制局次長とともに、憲法改正案(「3月2日案」)を起草した。「3月2日案」をもとに、GHQとの折衝を経て成立した原案が、憲法改正草案として閣議決定され(「3月5日案」)、これを入江俊郎内閣法制局次長が中心となって、要綱の形にまとめたのが「憲法改正草案要綱」である。
- 憲法改正草案[5]
- 1946年(昭和21年)4月17日、内閣から国民に対して発表された文書。GHQの了承、閣議の了解を得た上で、元の「憲法改正草案」をひらがな口語体の文章にしたものである。同日、昭和天皇は、同案を内閣からの憲法改正案として枢密院に諮詢した。その後、幣原内閣から第1次吉田内閣へ交替したため一旦枢密院への諮詢が撤回され、字句を修正した上で、同年5月27日に再諮詢された[6]。同年6月8日、「憲法改正草案」は、枢密院本会議において美濃部達吉顧問官を除く賛成多数で可決された。
- 帝国憲法改正案[7]
- 1946年(昭和21年)6月20日、第90回帝国議会の開院式当日(召集日は同年5月16日)に、大日本帝国憲法第73条の憲法改正手続により、勅書をもって議会に提出された憲法改正案。同年6月25日に衆議院本会議に上程され、6月28日に芦田均を委員長とする帝国憲法改正案委員会に付託。委員会審議を経て、同年8月24日、衆議院本会議において賛成421票、反対8票という圧倒的多数で可決され、同日貴族院に送られた。同年8月26日に貴族院本会議に上程され、8月30日に安倍能成を委員長とする帝国憲法改正案特別委員会に付託。委員会審議を経て、同年10月6日、貴族院本会議において賛成多数で可決された。同日、貴族院での修正が加えられた改正案は衆議院に回付され、翌7日、衆議院本会議において圧倒的多数で可決。その後「帝国憲法改正案」は、同年10月12日に枢密院に再諮詢され、2回の審査の後、同年10月29日に2名の欠席者を除き全会一致で可決。「帝国憲法改正案」は、昭和天皇の裁可を経て、同年11月3日に「日本国憲法」として公布された。
- 1946年(昭和21年)11月3日公布、1947年(昭和22年)5月3日に施行された憲法。
- 大日本帝国憲法
- 第二十八條 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
- 憲法改正要綱[5]
- 九 第二十八条ノ規定ヲ改メ日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有スルモノトスルコト
- GHQ草案[6]
- (日本語)
- 第十九条 宗教ノ自由ハ何人ニモ保障セラル如何ナル宗教団体モ国家ヨリ特別ノ特権ヲ受クルコト無カルヘク又政治上ノ権限ヲ行使スルコト無カルヘシ
- 何人モ宗教的ノ行為、祝典、式典又ハ行事ニ参加スルコトヲ強制セラレサルヘシ
- 国家及其ノ機関ハ宗教教育又ハ其ノ他如何ナル宗教的活動ヲモ為スヘカラス
- (英語)
- Arlicle XIX. Freedom of religion is guaranteed to all. No religious organization shall receive special privileges from the State, nor exercise political authority.
- No person shall be compelled to take part in any religious acts, celebrations, rites or practices.
- The State and its organs shall refrain from religious education or any other religious activity.
- 憲法改正草案要綱[7]
- 第十八 信教ノ自由ハ何人ニ対シテモ之ヲ保障スルコトトシ如何ナル宗教団体モ国家ヨリ特権ヲ受クルコトナク且政治上ノ権力ヲ行使スルコトナカルベキコト
- 何人ト雖モ宗教上ノ行為、祝典、儀式又ハ行事ニ参加スルコトヲ強制セラレザルベキコト
- 国及其ノ機関ハ宗教教育其ノ他如何ナル宗教的活動ヲモ為スベカラザルコト
- 憲法改正草案[8]
- 第十八条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
- 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
- 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
- 日本国憲法
- 第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
- 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
- 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
[編集] 関連訴訟・判例
- 傷害致死被告事件(最高裁判例 昭和38年5月15日)
- 津地鎮祭訴訟 - 1977年(昭和52年)7月13日 最高裁 合憲
- 争点:地鎮祭は、第20条第3項で禁止されている宗教的活動か。
- 最高裁判決:社会の一般的慣習に従った儀式を行うという世俗的なもので、宗教的活動にはあたらない。
- 自衛官合祀訴訟 - 1988年(昭和63年)6月1日 最高裁 合憲
- 箕面忠魂碑訴訟 - 1993年(平成5年)2月16日 最高裁 合憲
- 大阪地裁:違憲。大阪高裁:合憲。最高裁判決:宗教施設に該当しない。慰霊祭への参列も宗教的活動にはあたらない。
- 剣道実技拒否訴訟 - 1996年(平成8年)3月8日 最高裁 原告勝訴
- 愛媛玉串料訴訟 - 1997年(平成9年)4月2日 最高裁 違憲
- 愛媛県は、靖国神社の例大祭やみたま祭りに玉串料等として公金を支出した。これに対し住民が知事らを相手取って住民訴訟を起こした。
- 争点:靖国神社への玉串料の支出は、宗教的活動か。
- 最高裁判決:宗教的活動にあたり違憲。
- その他、1990年(平成2年)に行われた大嘗祭の知事参列等をめぐる公金支出をめぐって、各地の住民が住民訴訟を提起したが、いずれも合憲としている。
[編集] 関連条文
- 日本国憲法第14条第1項(法の下の平等)
- 日本国憲法第44条(議員及び選挙人の資格)
- 教育基本法第3条第1項
- 大日本帝国憲法28条
[編集] 他の国々の場合
[編集] 脚注
[編集] 関連項目
|
|||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||