北京原人の逆襲

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北京原人の逆襲』(ぺきんげんじんのぎゃくしゅう)は、香港ショウ・ブラザーズ が製作し、1977年7月に公開した特撮映画作品。日本では1978年(昭和52年)3月11日に公開された。

目次

[編集] 解説

北京原人が最期を遂げた「ジャーディン・ハウス」(コンラート・ビル)

1975年当時、ディノ・デ・ラウレンティス製作のリメイク版『キングコング』(1976年)の話題は香港映画界にも届いていた。ショウ・ブラザーズはかねてより、「香港でもキングコングをやりたい」との願望があり、対抗の意を込めて製作に踏み切ることとなった。ショウ・ブラザーズが本作の準備にかかったのは1975年1月のことで、翌1976年6月にクランク・イン。20万フィート(37時間)のフィルムを費やし、1977年3月に2年2ヶ月がかりで完成した。制作費は500万ドル(2億6千500万円)で、日本円に換算すると約8億円強。ほとんどが日本人特撮スタッフのギャラだったという。

「女性ターザン」役を演じたイヴリン・クラフト[1]はスウェーデン出身の女優で、『女子警察』という主演作がある。特撮スタッフ再編成のため、一度撮影が中断され、帰国していたイヴリン・クラフトは、再開後にはすっかり太めになっていた。このため、衣装の鹿革のブラジャーから胸がはみ出すことがたびたびあったという。半裸に近い姿で10数ヶ月過ごしたことで、彼女のプロ根性を示すものとしてスタッフから称賛を浴びたという。

ジャングルの奥地で猛獣が登場するシーンがあるが、出演する虎達の爪はあらかじめ抜かれ、牙や歯には強力な粘着テープを巻いて撮影した。一度、助監督の立てた物音に驚いた豹が、この助監督に飛びかかるというアクシデントがあったという。村瀬継蔵ら有川組のスタッフは本作の撮影で、香港で正月を迎えることとなった。正月には、現地の日本大使館での餅つき大会に、全員が招待されたという。

こうして完成した本作は1977年7月に封切られるや、香港を中心に10億円を稼ぎ出し、イタリア、西ドイツ、ギリシャ、タイでも公開され、1978年には台湾の旧正月での興行で大ヒットを記録している。クエンティン・タランティーノ監督もお気に入りの作品だという。

[編集] 『北京原人』の特撮

本作の特撮は、日本人のスタッフが担当している。これは、『蛇王子』(1975年、日本未公開)という香港映画で、日本のコスモプロダクションが大蛇の造形を担当したことがきっかけだった。この映画で、手伝いとして参加した村瀬継蔵が、プロデューサーのチャイ・ランに評価され、「今度、『キングコング』みたいな大きな特撮映画をやるから、ぜひ造形を担当して欲しい。その時は香港に来てください」と頼まれた。その1年後、本作が製作されることとなり、再び村瀬が香港に呼ばれたのである。結局、村瀬はこの作品のため香港に1年半滞在することとなった。

ショウ・ブラザーズは当初、黒田義之ら、『大魔神』のスタッフに特撮を依頼した。しかし日本の映画人の念入りな撮影ペースは香港の映画人には遅すぎると判断され、撮影が一旦中断された。また彼らのビザは観光ビザだったので、3ヶ月を超えての延長も期限が切れ、第一陣の黒田らは全員帰国となった。

造形担当の村瀬継蔵は、先に就労ビザで香港に入っていたため一人残留。ショウ・ブラザーズは彼に代わりの日本人スタッフの選定を頼み、村瀬は有川貞昌東宝のスタッフをリストアップ。村瀬はリストに入れていなかったが、川北紘一も助監督として参加してくれることとなり、村瀬を驚かせた。こうして第二弾の日本人スタッフ6~10人が香港に滞在し、ショウ・ブラザーズの撮影所で126日間かけて特撮シーンを作り上げた。

劇場パンフレットによると、「ビルのミニチュア一つに木工10、鉄工5、塗装工8、背景・看板工8、建て込み工20、計51人が平均4ヶ月働き、大小130のミニチュア製作だけに述べ2万6千520人を動員、1億円以上を費やす人海戦術を採っただけに、見事な出来栄えは『人件費の比較的安い土地で、初めて出来たこと。本格的な特撮は“キングコング”よりも面白い』と、早くも評判を呼んでいる」という。

村瀬によると、香港の美術スタッフは精巧なミニチュアを非常に手際よく作ってくれたという。村落の巨大な仏像などは、香港の左官屋が一晩で作ったもの。高速道路を走る車両のミニチュアは1/25スケールで製作された。村落の建物など、一部は日本のコスモプロダクションが造形した。

[編集] 北京原人

50万年前の原始猿人が、巨獣となって現代に蘇ったもの。劇場パンフレットによると、体格、威力は次のようなものである。

  • 身長25m
  • 体重30t
  • 掌の長さ3m
  • 足の大きさ4m50

造形は村瀬継蔵による。ショウ・ブラザーズは当初、「キングコング」のリメイクを目論んだが、やはり版権の問題があり、原人の顔はアレンジを強いられた。村瀬は黒田監督やチャイ・ランPと打ち合わせを重ね、雪男風の造形など、数回にわたりテスト造形が行われ、3テイク目で落ち着いた。顔面はラバー製のマスクで、香港の歯科医が義歯を埋め込んで完成させた。顔面は、機械仕掛けで瞬きや口の開閉などの表情を出せるギニョール形式のものも作られた。

当初、第一陣スタッフは北京原人のぬいぐるみの体毛に、山羊の毛を使ったが、毛質が硬く、撮影で抜けやすく、よい効果が出なかった。村瀬はこれに人毛の使用を思いつき、香港市民に髪の毛の提供を呼びかけ、集まった300人分の人毛で、三体分の原人の体毛を仕上げた。撮影所に送られてきた人毛は、山のように積み上がってかなり不気味だったそうである。ぬいぐるみは計3体作られ、撮影に使われた。

ぬいぐるみの他に、等身大の胸や肩も部分的に作られた。実物大の脛や腕が、クレーンのアームを芯に作られ、手の指にはピアノ線が仕込まれ、操演で動かされた。造形素材のラテックスやヘリコプターのミニチュア等、日本から取り寄せた造形素材は計300kgに上った。東京での現金支出だけで5千万円かかったという。

ラストで炎に包まれ、ビルから落ちる原人は、スタントマンが危険すぎると嫌がり、保険をかけてくれるよう交渉したが、会社側は「特別扱いできない」と突っぱねた。このためスタントマンがゴネてしまい、1週間ほど撮影が途切れてしまった。そこで造形担当の村瀬がスタントを名乗り出た。有川特技監督は心配したが、「自分で作ったものだから自分が一番わかる」と、村瀬はぬいぐるみにボンドを塗りつけて点火し、自ら危険なファイヤースタントを演じてみせた。無事カットを終えたとき、先述のスタントマンが真っ先に駆けつけて消火してくれたという。

[編集] ストーリー

興行師のルーは、ヒマラヤ奥地で起きた大地震の影響で眠りから目覚めた巨大な猿人「ペキンマン」を香港に連れてくるため、冒険家チェン[2]と共に捜索隊を編成してヒマラヤ奥地を目指す。しかし捜索隊は途中猛獣の襲撃や底なし沼、断崖絶壁など数々の難関に阻まれて次々と道半ばにして倒れ、ルーも捜索を放棄して逃げ出してしまった。そんな中、密林でただ一人さまよっていたチェンはヒョウさえ手懐ける美女アウェイ[3]と出会い、やがてペキンマンとの遭遇を果たす。いつしか互いに惹かれ合うチェンとアウェイ。そしてついにペキンマンが香港にやってくる。

[編集] スタッフ

  • 製作:ラミー・ショウ
  • プロデューサー:チャイ・ラン
  • 監督:ホー・メンホア
  • 脚本:ニー・クァン
  • 撮影:ツァオ・ホイチー、ウー・チョーホア
  • 美術:チェン・チンシェン、ジョンソン・ツァオ
  • 編集:チアン・シンロン
  • 音楽:チェン・ユンユー
  • スタント指導:ユエン・チョンヤン
  • 特技監督有川貞昌
  • 特技助監督:川北紘一
  • 北京原人造形・スタント:村瀬継蔵
  • 特技撮影:富岡素敬
  • 特技照明:森本正邦
  • 特殊効果:久米攻
  • 特技美術:鈴木儀雄、豊島睦、佐藤保、中村博、鈴木利幸、コスモプロダクション

[編集] キャスト

  • チェン・チェンフォン:ダニー・リー
  • アウェイ:イヴリン・クラフト
  • ワン・ツイホア:シャオ・ヤオ
  • ルー・ティエン:クー・フェン
  • チャン・シーユー:リン・ウェイツー
  • アロン:ツイ・シャオキョン
  • 歌手:チェン・ピン

[編集] 日本語吹替版キャスト

1981年1月9日『ゴールデン洋画劇場』にて放送

[編集] DVD

2004年10月6日 発売(¥4,935)

メーカー:キングレコード株式会社

映像特典

  • DISC1:「ゴールデン洋画劇場」放映時の日本語吹き替え版、村瀬継蔵によるオーディオコメンタリー、オリジナル劇場予告編、ニュートレーラー、フィルムギャラリー(静止画)
  • DISC2:メイキング・ドキュメンタリー「11人のサムライ かく戦えり!~メイキング・アゲインスト・ザ・ペキンマン」(60分)

ナレーション:杉田吉平

演出:吉田至次

監修:川北紘一

製作協力:ドリーム・プラネット・ジャパン

[編集] 脚注

  1. ^ 公開時は「エブリン・クラフト」と表記
  2. ^ 日本公開版では「ジョニー」
  3. ^ 日本公開版では「サマンサ」

[編集] 関連作品

[編集] 参考文献

  • 『北京原人の逆襲』劇場パンフレット
  • 『北京原人の逆襲DVD』付属ブックレット 発売元:キングレコード
  • 『怪獣とヒーローを創った男たち』(辰巳出版)


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