ラテックス

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ラテックスを取っているところ。ゴムの製造に使われる
ゴム林(ベトナムハノイ近郊)

ラテックス (latex) は水中にポリマーの微粒子が安定に分散した系(エマルジョン)であり、自然界に存在する乳状の樹液や、界面活性剤で乳化させたモノマーを重合することによって得られる液を指す。様々な植物から得られる乳状の樹液は、空気に触れると凝固する。タンパク質アルカロイドタンニン樹脂天然ゴムを含む複雑なエマルジョンである。植物から分泌されるラテックスはほとんどの場合白いが、黄、オレンジ、緋色の場合もある。

樹液を加工して作られる、伸縮性にとんだ薄い材料のことも指す。

由来[編集]

ラテックスを作り出す細胞または道管は乳液系 (laticiferous system) を構成するが、これには2種類の異なる形式がある。多くの植物では、乳液系は茎または根の成長点に沿って列を成す細胞で構成されている。これらの細胞の間の細胞壁は固着して一続きの管となっており、これは乳管と呼ばれる。この形式はケシ科ゴムノキ、Cichorieae族の植物に見られる。Cichorieae族はキク科に分類される植物群の一種で、組織中にラテックスを含むことによって識別される。タンポポレタスホークウィードサルシファイ(セイヨウゴボウ)などがこの族に含まれる。

一方、トウワタ属(ミルクウィード)やトウダイグサ科の乳液系は全く異なる。乳細胞が種から生長する際に早期から分化し、植物体が育つに従って全体に広がっていく。成熟した植物体の全ての乳液系は、胚に存在する単独の、または数個集まった細胞から形成されたものである。乳液系は成体の根、導管、葉、まれに果実などあらゆる部分にわたって存在し、皮層に特によく見られる。

機能と利用[編集]

ラテックスは植物の様々な機能に関連付けられてきた。栄養を蓄えたものである、あるいは老廃物や排泄物であると考えられており、さらに、損傷を受けた場合に固化することによって菌類微生物の侵入を防ぎ、組織を保護する機能を持つと考える者もいる。同様に、いくつかの植物では非常に苦い、時に有毒なラテックスを分泌することから、草食動物から身を守るためのものである可能性もあるとされる。ラテックスは、それを分泌する数多くの植物に関して、その程度は異なるながらもこれらの機能を全て満たしている。

ラテックスは服飾や塗料など多くの用途を持つが、最も主要なのはゴムの製造である。これは最初の利用法でもあった。チューイングガムの原料として広く用いられるチクルもラテックスから作られる。ラテックス塗料には、結合剤として可燃性や悪臭を持たず乾燥した塗面を与える合成ラテックスを使用する。また、ケシのラテックスはアヘンやその誘導体の原料になる。

ラテックスとアレルギー[編集]

ラテックスはアレルゲン(アレルギーの抗原)でもある。重いラテックスアレルギーをもつ人々もおり、ゴム手袋コンドームなどのラテックス製品に触れるとアナフィラキシーを起こす。ラテックスはバナナアボカドクリなどに含まれるものと同じタンパク質を持つため、これらの両方に対してアレルギー反応(ラテックス・フルーツ症候群)を示さないかどうかに注意する必要があるとされる。グアユーレのラテックスは低アレルギー誘発性であるため、パラゴムノキラテックスなどの代替品として研究されている。また、二分脊椎症患者には小さいころから、医療用具に触れる機会が多いなどの理由で、ラテックスアレルギーの患者が多い。

関連項目[編集]