五島産業汽船

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株式会社五島産業汽船
GOTO SANGYO KISEN CO.,LTD.
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
857-4211
長崎県南松浦郡新上五島町有川郷字中筋578番地10
設立 1990年5月[1]
業種 海運業
法人番号 3310001006920
事業内容 海上運送業、一般旅客定期航路事業、レンタカー事業[1]
代表者 破産管財人 山下俊夫[2]
資本金 1,000万円[1]
従業員数 35名[1]
決算期 4月(年1回)[1]
特記事項:2018年10月2日に事業停止。2018年11月13日に破産手続開始決定
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五島産業汽船株式会社
GOTO SANGYO KISEN Co., Ltd.
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
853-3321
長崎県南松浦郡新上五島町鯛ノ浦郷209番地1
北緯32度57分8.2秒 東経129度6分5.1秒 / 北緯32.952278度 東経129.101417度 / 32.952278; 129.101417座標: 北緯32度57分8.2秒 東経129度6分5.1秒 / 北緯32.952278度 東経129.101417度 / 32.952278; 129.101417
設立 2018年10月10日
業種 海運業
法人番号 5310001015787
事業内容 一般旅客定期航路事業
代表者 藤原圭介
資本金 1,500万円
従業員数 19名
決算期 9月(年1回)
外部リンク www.goto-sangyo.co.jp ウィキデータを編集
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五島産業汽船株式会社(ごとうさんぎょうきせん)は、長崎上五島中通島鯛ノ浦)を結ぶ航路を運行する日本の海運会社である。

長崎・佐世保と上五島を結ぶ航路を運航していた[3][4]株式会社五島産業汽船が経営破綻により2018年10月2日に運航を休止。その後、元従業員が同年10月10日に五島産業汽船株式会社を設立し、同社が一部航路を引き継ぎ、10月19日より長崎 - 鯛の浦航路での運航を再開した。

本記事では株式会社五島産業汽船五島産業汽船株式会社の双方について記述する。

航路[編集]

現在運航中の航路[編集]

株式会社五島産業汽船時代に運航していた航路[編集]

以下は運休時点で運航していた航路。

  • 佐世保港(鯨瀬ターミナル) - 上五島有川港
    • フェリー2往復、高速船2往復を運航する。就航船は「フェリーありかわ」「ひまわり」
  • 佐世保港 - 下五島福江港
    • 2017年5月1日より運航を開始した。高速船2往復を運航する。就航船は「ありかわ8号」
  • 長崎港 - 天草市﨑津漁港
    • 2017年7月7日より2018年3月31日まで国土交通省が実施する「船旅活性化モデル地区」の指定を受け社会実験として運航を開始。高速船1往復を運航する。就航船は「びっぐあーす」。
    • 2018年4月1日以降も運航休止まで運航が続けられた。

以下は運休前に廃止された航路。

  • 高松港 - 小豆島 - 神戸港中突堤) - 大阪港天保山) - USJ
    • 廃止された関西汽船加藤汽船ジェットフォイルの航路を引き継ぎ、2000年から高松 - 大阪(天保山)間で運航を開始した。当初は、高速船「びっぐあーす」の1日2往復で就航したが、2001年3月からUSJへ航路を延長、「びっぐあーす2号」を投入して1日5往復の運航となった。しかし利用は低迷した上、折からの原油価格の高騰も重なり、減便による「びっぐあーす2号」の上五島航路への転配、USJへの寄港廃止、小豆島 - 高松間の廃止などを経て、2006年4月27日に航路廃止となった。

船舶[編集]

現在の船舶[編集]

V(ファイブ)アイランド
びっぐあーす
 • V(ファイブ)アイランド[6]
1994年10月竣工、 熊本ドック建造
登録長22.73 m、型幅5.30 m、型深さ1.90 m、ディーゼル2基、機関出力1,990 ps、航海速力30ノット[7]、58総トン、定員79名[8]
2018年10月に株式会社五島産業汽船から購入[9]2019年(令和元年)に「ありかわ8号」より改名[8]
 • びっぐあーす
新上五島町の所有。2018年11月16日から五島産業汽船株式会社が指定管理者となった上で就航再開[2]三井造船双胴型軽合金船、三井スーパーマランシリーズCP-30型で、もと徳島高速船「ねぷちゅーん」[10]
航海速力42ノット、定員300名[7]

株式会社五島産業汽船時代の船舶[編集]

以下は運航休止時点で運航していた船舶。

 • びっぐあーす2号[注釈 1]
三井造船双胴型軽合金船、三井スーパーマランシリーズCP-30型で、もと徳島高速船「びーなす」[10]
航海速力42ノット、定員300名[7]
2023年現在は新上五島町が所有、九州商船の佐世保 - 上五島航路に就航。
 • フェリーありかわ
1995年12月竣工、山中造船建造(第577番船)、元・伊平屋村村営フェリー「フェリーいへや」。
498総トン、全長68.52 m、型幅12.0 m、型深さ7.50 m、ディーゼル2基、機関出力4,000 PS、航海速力18.00ノット、旅客定員252名
 • ひまわり
1992年3月30日竣工、三井造船玉野事業所建造、元・大阪市広報船「夢咲」。
187総トン、全長34.2 m、型幅8 m、最大速力31.0ノット、旅客定員140名

過去の船舶[編集]

 • えれがんと1号[6]
1997年12月竣工、熊本ドック建造
71総トン、登録長25.88 m、型幅5.80 m、型深さ2.20 m、ディーゼル2基、機関出力3,880 ps、航海速力34ノット、旅客定員150名[7]
 • えれがんと2号
熊本ドック建造、航海速力34ノット、131総トン、定員230名[7]
 • アルティア1号
1997年竣工、沖新船舶工業建造、元・安田産業汽船
2005年6月から10月にかけてセラヴィリゾート泉郷に用船され名古屋 - 神島 - 鳥羽航路に就航、2008年潮プランニングへ売却
 • ありかわ1号
 • ありかわ2号
 • フレッシュありかわ
1995年7月進水、限定沿海、軽合金製
19総トン、全長20.20 m、型幅4.20 m、型深さ1.71 m、ディーゼル2基、機関出力935.56 kW(連続最大)、3翼固定ピッチプロペラ2軸、旅客12名、乗組員3名[12]

突然の運航休止[編集]

上述のように2018年10月2日より「会社都合」を理由として運休していた。五島産業汽船が長崎県に運休を伝えたのが前日の10月1日であり、突然の事態となった。なお、長崎新聞日本経済新聞が報じるところによれば、運休となった10月2日以降、五島産業汽船とは連絡が付かない状態になったほか、従業員は一部を除き同日までに全員解雇されており、また8月中旬に1回目の不渡りを出し、その後も福岡銀行の支援の下運航を継続してきたが、2回目の不渡りを出した10月1日に銀行取引停止処分となっている模様だという[13][14]。その後10月4日になって社長が記者会見を行い、五島産業汽船は10月中にも破産を申請する予定であることを明かし[14]、11月13日に関連会社の有限会社ジィ・エス・ケイとともに長崎地方裁判所から破産手続開始決定を受けた[2][15]

なお、10月1日までに長崎 - 﨑津間と佐世保 - 有川間の各航路の廃止届、長崎 - 鯛ノ浦間と佐世保 - 福江間の各航路の休止届(2018年10月31日より2019年10月末まで)が九州運輸局に提出されている[13][16]。佐世保 - 有川間で競合していた九州商船は、10月18日に上五島航路のダイヤ改正を九州運輸局に申請したことを明らかにし、2018年11月は暫定ダイヤで運航される[17]

運航再開へ[編集]

元従業員は2018年10月10日に、株式会社五島産業汽船が運航していた航路を引き継ぐため、新会社として「五島産業汽船株式会社」(以下新社)を設立。新社は10月15日に長崎県庁で記者会見を行い、高速船「ありかわ8号」と鯛ノ浦港にあるターミナルを購入し、長崎港 - 上五島(鯛ノ浦港)航路を譲受するための許可申請を九州運輸局へ提出したことを明らかにした。認可が下りた場合は、1日2往復での運航となる。

その後10月18日に九州運輸局は新社に対して長崎 - 鯛ノ浦航路の事業引継ぎを認可したことから、翌19日より同航路の運航が再開された[18]。新社は10月16日に新上五島町に対して「びっぐあーす」の指定管理を受けられるよう要請し[9][19]、新上五島町は10月29日に、新社と九州商船を指定管理者とした上で、新上五島町が保有する2隻を、1隻ずつ新社と九州商船へ無償貸与することを明らかにした[20]。新社は、11月16日から「びっぐあーす」の無償貸与を受けた上で、長崎 - 鯛ノ浦航路を1日2便から3便へと増便した。

なお旧会社(株式会社五島産業汽船)は、2018年11月13日に長崎地方裁判所に破産を申請、同日破産開始決定を受けた[21]

株式会社五島産業汽船の関連会社 [編集]

 • ジイ・エス・ケイ
旅行業などを営んでいた。2018年10月2日に事業停止[22][23]。同年11月13日に長崎地方裁判所から破産手続開始決定[2]
 • USAポートサービス
有川港 - 小値賀笛吹港(小値賀町) - 宇久平港(佐世保市宇久町)航路に高速船「ぽーと3」を1日2往復運航していた。なお、この航路も五島産業汽船と同時に2018年10月2日より運休した[13]

事故・インシデント[編集]

2010年6月9日13時37分ごろ、佐世保港から有川港へ向かっていた「フレッシュありかわ」が西海市金頭瀬北方沖を西進中、江島北西方の魚瀬に乗り揚げた。乗客1名および船長が負傷、「フレッシュありかわ」は船底部に破口を伴う凹損、プロペラ軸およびプロペラ翼に曲損などを生じた。 「フレッシュありかわ」は自力で離礁したが、沈没の恐れがあったため、現場に留まり、来援した巡視艇および僚船、瀬渡し船、および手配したタグボートの支援を受け、19時30分ごろ鯛ノ浦漁港に入港した。事故原因は船長の居眠りであった[12]

脚注[編集]

脚注

  1. ^ 2018年12月28日以降、所有者の新上五島町より指定管理者の指定を受けた九州商船へ無償貸与が決定している[11]

出典

  1. ^ a b c d e 会社沿革”. 株式会社 五島産業汽船. 2015年11月16日閲覧。
  2. ^ a b c d TSR速報(株)五島産業汽船ほか1社東京商工リサーチ 2018年11月14日
  3. ^ 五島産業汽船が運休 経営上の問題か 長崎新聞 2018年10月2日 同日閲覧
  4. ^ 五島産業汽船、突然の全船運休。再開時期は不明、経営上の問題か ハフィントンポスト 2018年10月2日 同日閲覧
  5. ^ 上五島(鯛ノ浦) ~ 長崎航路”. 五島産業汽船 株式会社. 2019年10月16日閲覧。
  6. ^ a b 日本船舶明細書 1999Ⅱ (日本海運集会所 1998)
  7. ^ a b c d e 奥野一生 2003, p. 46.
  8. ^ a b V長崎を応援 デザイン一新 五島産業汽船高速船”. 長崎新聞 (2019年9月11日). 2019年10月16日閲覧。
  9. ^ a b 上五島-長崎航路継承へ高速船購入 五島産業汽船の元従業員らが会見西日本新聞 2018年10月16日
  10. ^ a b 奥野一生 2003, p. 44.
  11. ^ KTNテレビ長崎 (26 November 2018). "新上五島町「びっぐあーす2号」九州商船が運航". テレビ長崎. 2018年11月27日閲覧
  12. ^ a b 運輸安全委員会(海事専門部会) (29 June 2012). 船舶事故等調査報告書 交通船フレッシュありかわ乗揚 (PDF) (Report). 運輸安全委員会. 2017年7月2日閲覧
  13. ^ a b c 五島産業汽船 突然の運休 経営破綻か 全離島航路を休廃止長崎新聞 2018年10月3日 同日閲覧
  14. ^ a b 長崎・五島産業汽船が破産へ 社長「判断甘かった」日本経済新聞 2018年10月4日(2018年10月5日閲覧)
  15. ^ 倒産・動向速報記事 株式会社五島産業汽船など2社帝国データバンク 2018年11月13日
  16. ^ 観光への影響懸念 関係自治体、五島産業汽船と連絡付かず長崎新聞 2018年10月3日 同日閲覧
  17. ^ 上五島航路高速船便ダイヤ変更のお知らせ九州商船 2018年10月18日
  18. ^ 長崎-鯛ノ浦きょう再開 新「五島産業汽船」長崎新聞 2018年10月19日 同年10月20日閲覧
  19. ^ 五島産業汽船「航路引き継ぎたい」元従業員ら新会社毎日新聞 2018年10月16日
  20. ^ 2社に1隻ずつ貸与 新会社と九州商船 町が議会提示へ長崎新聞 2018年10月30日
  21. ^ “(株)五島産業汽船ほか1社”. TSR速報(大型倒産情報・注目企業動向). (2018年11月14日). http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20181114_03.html 2018年12月13日閲覧。 
  22. ^ 営業停止のお知らせGSKトラベル 2018年10月3日
  23. ^ 有限会社ジィ・エス・ケイ(長崎県知事登録旅行業第2-176号)と取引をしたお客様へ日本旅行業協会

参考文献[編集]

外部リンク[編集]