リアジェット

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リアジェット35

リアジェットLearjet )は、民間と軍の双方にビジネスジェット機を提供するアメリカの航空機メーカー。1950年代後半にスイス・アメリカン・アビエーションSwiss American Aviation Corporation )としてビル・リア(ウィリアム・パウエル・リア・ジュニア, William Powell Lear Jr.)によって設立された。1990年以来ボンバルディア・エアロスペースの傘下にあり、「ボンバルディア・リアジェット・ファミリー」として販売されている。

リアジェットは合併や買収によって一時は社名も変えられた時期もあったが、ブランドとしてビジネスジェットの名に使用され続けている。

またリアジェット社が製造する航空機もリアジェットと呼ばれる。また小型ビジネスジェット機というカテゴリーの黎明期における先駆者として、ビジネスジェット機の代名詞としてリアジェットの名称が用いられる事も多い。

時代によりさまざまな機種があるが、リアジェットシリーズはすべて6~10人乗り、航続距離が2500nmi (4600km)程度である。巡航速度マッハ0.78・巡航高度41000ft程度と、商用の大型ジェット機に比べてひけをとらない移動性能があり、企業が所有・チャーターして重役クラスを敏速に移動させる手段として活用され続けている。同クラスの他のビジネスジェットに比べ航続距離などでやや劣る場合があるが、上昇性能等に優れるため、軍用機としてのマイナーチェンジを施され、各国に納入されている実績もある。

社史[編集]

発明家として航空航法機器や自動操縦装置などの開発で巨万の富を手にしていたウィリアム・リアは1960年にスイス国内に転居しスイス・アメリカン・アビエーション・カンパニー Swiss American Aviation Companyを設立した。当時スイスではFFA(スイス航空機)が開発していた近接支援を主任務とする地上攻撃機FFA P-16が開発されていたが試作機の墜落事故等により政府が契約を打ち切り、試作機5機が製造されただけで終わっていた。そこでリアはP-16の主翼・主脚などのコンポーネントをビジネスジェット機へ転用する可能性を見出し、SAAC-23の名で開発を始めた。それと並行してビジネスジェットを製造するための機材が購入され、1962年にカンザス州ウィチタに工場が用意された。翌年に社名はリア・ジェット社 (Lear Jet Corporation) に改められた。また、SAAC-23の初飛行が成功し、1964年にリアジェット 23として販売された。その後もモデル 24モデル 25と高速ビジネスジェットの開発が進められた。この時期の機種はいずれもジェネラル・エレクトリックCJ610ターボジェットエンジンを搭載していた。当時のジェット旅客機に比肩する巡航性能や強力な上昇力など、高い飛行性能を有していた。また、この時期のリアジェット社の機種は大型のウイングチップ燃料タンクを装備しているのが外見上の特徴である。

ウィリアム・リアは1967年にリアジェット社の経営から離れ、1969年に同社はゲイツ・アビエーションと合併した。その結果、社名はゲイツ・リアジェット社 (Gates Learjet Corporation) に変えられた。合併後、モデル 25のエンジンをハネウェル TFE731に換装したリアジェット26が開発され、それを改良発展させたリアジェット35を販売した。1970年代も後継機のセールスは好調であったが、エアロスペース部門の設立にともなう転換でビジネスジェットの工場が整理された。1985年スペースシャトルのエンジン部品の生産に携わったが、経営は思わしかざる状態であった。

1987年にインテグレイテッド・アクイジションが買収し、翌年に社名はリアジェット社 (Learjet Corporation)に変更された。

1990年にボンバルディア・エアロスペースが買収し、同社の一部門としてボンバルディア・リアジェットの名でモデル40をアップグレードさせたモデル 40XRや中型ビジネスジェットモデル60の生産を行っている。

製品一覧[編集]

年は提供開始の公式年であり、初飛行はこれより1~2年早い。定員はクルーを含む最大人数(コンフィグレーションにより少なくなることがある)。

標準断面の胴体モデル[編集]

リアジェット31A(中日新聞社取材機)
  • リアジェット23: 1964~。8人乗り。1376 nmi (2550 km)。ビジネスジェットという分類のはじめての航空機とされる。FAR Part23に適合する用設計された。32機製造。
  • リアジェット24 (24A/24B/24C/24D/24E/24F): 1967~。1100nmi (2052 km、24E)。リアジェット23の派生モデル。FAR.24適合へと変更されやや大型化されている。翼端タンクの形状や客室窓の形状などに変更が見られる。各型合わせ210機製造。
  • リアジェット25 (25A/25B/25C/26/25G): 1966~。1540nmi (2853 km、25B)。リアジェット24の胴体伸延モデル。CJ610エンジン搭載の初期型機の事実上の最終型。各型合わせ311機製造。
  • リアジェット35 (35/35A): 1974~。2004 nmi (3690 km)。米空軍C-21としても知られる。民間型35/35A合計で675機製造。
  • リアジェット36 (36/36A): 1974~。約2500nmi (約4600km)。リアジェット35のキャビンスペースを2座席分減じて胴体内燃料タンクを増設し長距離航行可能としたバージョン。海上自衛隊U-36としても知られる。民間型36/36A合計で60機製造。
  • リアジェット28/29: 1979~。1436nmi (2660km)。リアジェット25をベースとして新型の大面積の主翼を装備した。ジェット機ではじめてウィングレットを実用化した。主翼面積が拡張されたため運用高度限界は15,545m(51,000ft)に達する。29は28のキャビンスペースを小さくし胴体内に燃料タンクを増設して航続距離を延伸したタイプ。CJ610エンジンの騒音と高燃料消費が災いし、製造は28が5機、29は僅か2機にとどまった。
  • リアジェット31 (31/31A): 1988~。10人乗り。1455nmi (2695 km)。リアジェット35の胴体・エンジンに28の主翼を組み合わせ、失速特性を改善するデルタ・フィン装備などの改良を施したタイプ。本タイプの運用高度限界も15,544mである。31Aは31のフライトデッキ等を改良したモデル。高性能であることに加えターボファン・エンジン装備により燃料効率も良かった。31/31A合計で242機が製造された。
  • CJ610エンジンを搭載した初期の機種は戦闘機譲りの頑丈な主翼と主脚を持ち、就役から40年前後を経ても充分飛行可能な機体寿命を残しているものが多い。一方で、ターボジェットエンジンの大きな燃料消費と大騒音のため運用範囲が制限されることがあり、またアビオニクス機器も近年の航法支援機器への対応が難しくなっている事が目立つようになってきている。このため、独立系のベンチャー企業で、旧型の機体をオーバーホールしアビオニクス機器を最新世代のものに更新、エンジンを低燃費・低騒音のターボファンに換装して同サイズの新型機より低価格で提供するアップグレード事業を提案しているところがある。

新世代モデル[編集]

  • リアジェット45 (45/45XR): 1997~現行。9人乗り。2120 nmi (3926km)。基本的なレイアウトはモデル31によく似ているがほぼ完全な新設計である。従来の標準胴体モデルと異なり、主翼桁を胴体下面に設置してフェアリングで整形することにより、キャビン高を最大限確保している。エンジンはTFE731-20。
  • リアジェット40 (40/40XR): 2003~現行。6人乗り。1692 nmi (3156 km)リアジェット45の胴体を0.6m短縮したモデル。
  • リアジェット70/75  : (発表2012)リアジェット40/45の改良モデル。エンジンはTFE731-40BRを搭載し、特に離陸時の性能が向上しているほか、ヘッドアップディスプレイ(HUD)「Vision Flight Deck」が装備される。

広胴モデル[編集]

  • リアジェット55 (55B/55C/ 55C/LR): 1981~。9人乗り。2582 mi (4156 km)。商用ジェット機による6つの上昇率新記録を打ち立てた(1983年)。エンジンはTFE731-3Aまたは-3AR。各型合計140機製造。
  • リアジェット60 (60/60XR): 1993~現行。2499 nmi (4628 km)。リアジェット55をベースとして胴体を約1.1mストレッチした。それまでのシリーズと異なり、CFDによる設計、統合パネルなどの電子表示・制御を大きく進めた。エンジンはリアジェットシリーズで初めてP&Wカナダ製となりPW305Aが搭載された。最高飛行高度は5万1000フィートとなっているが、現実には4万5千フィートが最高巡航飛行高度。
  • リアジェット85: (発表2007、2012~ 予定) 10人乗り。3000nmi (5556 km)以上。ETOPS取得可能な初のビジネスジェットとして開発中。

外部リンク[編集]