ホークアイ (審判補助システム)

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ホークアイ (Hawk-Eye) は、球技において、試合中にボールの位置や軌道を分析し、それらをコンピューターグラフィックスで再現することにより、審判が下す判定の補助を行うコンピューター映像処理システム。またボールの位置や軌道の統計を作成し画面に表示する。クリケットの試合やテニスウィンブルドン選手権等の国際大会で採用されており、他の球技にも応用可能とされる。

概要[編集]

本システムの名称は「The Hawk-Eye Officiating System」である[1]。 このシステムでは、競技場に設置された複数のカメラが捉えた映像からボールの最も妥当な軌道を再構築し[2]、コンピューターグラフィックスで瞬時に再現する。Hawk-Eyeは「の目」を意味し、またHawk-Eyeの名称は開発者の名前であるポール・ホーキンズ (Dr. Paul Hawkins) が由来である[3]

ホークアイは、脳手術およびミサイル追跡に元々使用されている技術を使用している[4] [5]1999年イギリスのRoke Manor Research社にて研究が開始され、ホーキンズ博士をリーダーとしてシステムの構想が生まれた。その後2001年9月にホーク・アイ・イノベーションズ社 (Hawk-Eye Innovations Ltd) が別会社として設立された[6]2011年3月7日にはソニーがホーク・アイ・イノベーションズを買収している[7][8]

クリケット[編集]

ホークアイが最初に名を揚げたのは、クリケットのテレビ放送でのことであった[9]国際クリケット評議会はホークアイを公式には採用していない。イギリス、インド南アフリカオーストラリアニュージーランドのチームは、トレーニングや作戦を練ることを目的として、ホークアイにより作られたデータを試合中に分析する[9]

テニス[編集]

テニスでは、コートの周囲に10台のカメラを設置し[10]、結果は2-3秒以内に画面に表示される[11]。コート上でボールが接地した位置とラインの関係を判定したり、プレーヤーが打球をした時のボールの位置、あるいはサーブの時などのボールの軌道やコートに接地した位置を記録し、それらの統計を表示するといった利用がなされる[11]

テニスでは、本システムを利用して審判の判定に異議を申し立てることを「チャレンジ」(challenge) と呼ぶ。選手は1セットにつき3回までチャレンジを行う権利を持つ。チャレンジにより、ボールの軌道、接地箇所、および判定結果が場内のスクリーンに映され、またテレビなどの放送でも利用される。システムの判定結果が選手の判断通り審判と異なっていた場合は、チャレンジを行える回数が保持され、審判の判定通りであった場合は回数が1回減る。

2005年10月、国際テニス連盟が本システムを導入することを承認。2006年3月22日からのナスダック100オープンで、テニス史上初のビデオ判定が行われ、Jamea Jacksonが初めてのチャレンジ権行使者となった。4大大会では、2006年8月28日からの全米オープンで初めて導入され、センターコートなど2会場で設置された。2007年には全豪オープンおよびウィンブルドン選手権でも導入された。日本では2008年に東レ パン・パシフィック・オープン・テニストーナメントにおいて、2010年にジャパン・オープン・テニス選手権においてそれぞれ初めて使用された。

同システムの導入をめぐっては、トップ選手であるロジャー・フェデラーレイトン・ヒューイットが反対の意向を示すなどして話題となった。

サッカー[編集]

2010 FIFAワールドカップにおいて審判による誤審が相次いだことから、「サッカーの判定は人間がするもの」、「試合の流れを妨げる」などの理由で、これまで機械での判定全てに反対の立場だったブラッターFIFA(国際サッカー連盟)会長も2011年12月5日にゴール判定に限り、新技術を早ければ2012年から導入すると表明した[12]。2012年3月3日英国のサリーで開催されたサッカーのルール等を決定する国際サッカー評議会(IFAB)年次総会で、2011年2月7日~2月13日にスイス・チューリッヒの研究機関で試験した10社の技術のうち2社分について2012年3~6月に最終試験(第2段階の実験)を行い、同年7月の特別会合でゴール判定技術(ゴールライン・テクノロジー「Goal line Technolojy」、略称GLT)を採用するかどうかを決定すると決まった[13]

最終候補の2社分の内、1つはホークアイ(Hawk-Eye)システム。両ゴール裏や両ゴール付近に設置した6台から8台のハイスピードカメラがそれぞれ違う角度からボールの正確な位置を撮影し、映像ソフトウェアが瞬時に解析、正確な位置を三次元で割り出す。ボールがゴールラインを通過すると審判の腕時計に暗号化された信号が送られる仕組み。「試合の流れを妨げない」ようにとのFIFAの要求通り1秒以内に判定を下すことが出来る[14]。もう1つは、デンマークとドイツの合弁会社の「ゴールレフ(GoalRef)」システム。マイクロチップを埋め込んだボールを使用し、ゴール周辺の磁場の変化からボールの動きを感知する。ボールがゴールラインを完全に越えたとき、ボール内部に埋め込まれたコイルと、ゴールの枠内に発生させた磁場が反応し、ゴールの判定結果が電波によって審判の持つ時計に「GOAL」と表示され、通達される仕組みで、こちらもホークアイと同様に1秒以内に判定を下すことが出来る[14]。最終試験(第2段階の実験)は、「ホークアイ」は2012年4月にイングランド下部リーグのカップ戦決勝、5月9日のイングランド・サザンプトンでのセミプロの試合、6月2日の親善試合イングランド対ベルギー戦で行われ、「ゴールレフ」はデンマーク1部リーグ2試合、6月2日の親善試合デンマーク対オーストラリア戦で行われた[15][16][17][18]。ここまでのテストで100万ドル以上を費やしたという[18]

2012年7月5日、スイスチューリッヒのFIFA本部で行われたIFAB特別会合で、満場一致で前述の「ホークアイ」[19]と「ゴールレフ」の両方のゴール機械判定技術(ゴールライン・テクノロジー、略称GLT)採用が決定した。但し、ゴールラインテクノロジー(GLT)はあくまでも主審のジャッジを補助するためのものであり、主審の決定が最終決定なのは変わらない。また、観客に向け、場内のスクリーンやテレビで、ジャッジの模様を放映するようには作られていない(ソニーはホークアイでの判定時の映像リプレイも提供すると発表している[19])。費用はホークアイが1会場につき20万ドル(約1600万円)、ゴールレフはホークアイより若干安い[20]。大会や各国リーグの主催者がこれらGLTの費用を負担することになる為、GLTを採用するかどうかは大会や各国リーグ主催者が決定する[21]。さらに、GLTをその試合で実際に使用するかどうかは、試合開始90分前に審判団が判断する[22]。FIFA主催の大会では、日本開催のFIFAクラブワールドカップ2012で初めて採用され、2012年12月6日、横浜国際総合競技場で行われたクラブW杯2012開幕戦サンフレッチェ広島オークランド・シティ戦で、史上初めて公式戦でGLTの一つゴールレフが使用された[23]。FIFA主催の大会では、ブラジル開催のFIFAコンフェデレーションズカップ2013及び2014 FIFAワールドカップでも続けて採用される[24]。これらはFIFA主催の大会の為、FIFAがゴールラインテクノロジーの費用を負担する。IFAB特別会合では同時に、2011-12シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ及びUEFAヨーロッパリーグ2012年欧州選手権で試験導入されたゴール脇に1人ずつ置く追加審判採用も決定した[25]

2013年2月25日、FIFAは、2005年9月のU-17世界選手権(現U-17W杯)で世界で初めてテストした「カイロス」社のGLT(以下カイロス)を3番目のGLTとして認可した。改良されたカイロスは、ゴール裏に磁場を構築し、ボールの中のセンサーが受信機にボールの位置情報を送信し、そこから審判にゴールが決まったか否かを1秒以内に伝える方式。続いて、同年3月1日、FIFAは独の企業が開発した「ゴールコントロール4D」を4番目のGLTとして認可した[26]。ゴールコントロール4Dは、スタジアムの高所に計14個の高速度カメラを設置し、1か所のゴールエリアにつき、7台のカメラがゴールエリアを監視し、ボールを補足する。審判の腕時計を振動させ、視覚的なシグナルも送ってゴール認定を知らせる。設置費用は、スタジアム1カ所当たり推定26万米ドル(約2548万円)。運用費用は1試合当たり4000ドル以下。2013年4月7日、FIFAは、現在4つあるGLTのうち、4番目に認可した「ゴールコントロール4D」をコンフェデレーションズカップ2013で採用すること、そして、コンフェデ杯での成果によってはブラジルワールドカップ2014でも続けてゴールコントロールを採用すると発表した[27]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Hawk-Eye Innovations Ltd. “Hawk-Eye”. 2012年7月2日閲覧。(英語)
  2. ^ Two British scientists call into question Hawk-Eye's accuracy”. AP通信、Sports.espn.go.com 『ESPN Wimbledon 2008』 (2008年6月19日). 2011年10月30日閲覧。(英語)
  3. ^ Peter Calder (2011年1月30日). “Tennis: Technology takes out doubt and fun”. New Zealand Herald. 2011年10月30日閲覧。(英語)
  4. ^ How does Hawk-Eye work?”. BBC SPORT『CRICKET』. 2011年10月31日閲覧。(英語)
  5. ^ Martin Williamson (2007年6月7日). “Hawk-Eye, hotspots and Daddles the Duck”. ESPN cricinfo. 2011年10月31日閲覧。(英語)
  6. ^ Hawk-Eye Innovations Ltd. “About Hawk-Eye”. 2012年7月2日閲覧。(英語)
  7. ^ Hawk-Eye ball-tracking firm bought by Sony”. BBC News (2011年3月7日). 2011年3月7日閲覧。
  8. ^ ソニーニュースリリース ソニー・ヨーロッパが英Hawk-Eye社(ホークアイ)を買収-ソニージャパン公式HP2011/3/7
  9. ^ a b Hawk-Eye Innovations Ltd. “Cricket”. 2012年7月2日閲覧。(英語)
  10. ^ Nick Crowther (2006年6月25日). “Hawk-Eye, hotspots and Daddles the Duck”. BBC SPORT『TENNIS』. 2012年7月2日閲覧。(英語)
  11. ^ a b Hawk-Eye Innovations Ltd. “Tennis”. 2012年7月2日閲覧。(英語)
  12. ^ ゴール判定技術、来季にも導入 FIFA会長語る”. 共同通信47NEWS (2011年12月6日). 2011年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月2日閲覧。
  13. ^ ゴール判定新技術、最終試験へ=4人目の交代は取り下げ-サッカー”. 時事ドットコム (2012年3月4日). 2012年7月2日閲覧。
  14. ^ a b 【図解】サッカー、ゴールライン・テクノロジー2方式-AFPBBニュース2013年2月20日
  15. ^ 2012年競技規則の改正について(12.06.21)-FIFA通達2012/6/21
  16. ^ サッカー=FIFA、6月の試合で「ゴール判定技術」検証へ-ロイター2012/5/25
  17. ^ FIFA、ゴール判定技術を実地検証へ[社会]-EUの経済ビジネス情報NNA.EU 2012/5/28
  18. ^ a b 史上初の導入となる『ゴールラインテクノロジー』(リンク先にゴールレフと腕時計写真有)-Goal.com日本語版2012/12/5
  19. ^ a b ソニー (2012年7月6日). “ホークアイのゴール判定技術をFIFA(国際サッカー連盟)が正式採用決”. 2012年7月24日閲覧。
  20. ^ 原田公樹 (2012年7月9日). “Premier Mood - 英国在住ライター原田公樹のプレミアシップコラム #187 ついにゴールラインテクノロジー導入”. J SPORTS. 2012年7月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月24日閲覧。
  21. ^ ゴール判定に先進技術 国際サッカー評議会”. 日本経済新聞 (2012年7月6日). 2012年7月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月24日閲覧。
  22. ^ FIFA事務局長、ゴール判定システムに自信-サンスポ2012年12月5日
  23. ^ ゴール判定システム導入も微妙シーンなし ゴールポスト裏にはめ込まれたゴール判定システム(ゴールレフ)写真=日産スタジアム-デイリースポーツ2012年12月7日
  24. ^ FIFA、ブラジルW杯でゴールラインテクノロジー導入を決断-Goal.com2013年2月20日
  25. ^ FIFA、GLT導入を正式決定 クラブ・ワールドカップから本格導入”. goal.com日本語版 (2012年7月6日). 2012年7月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月24日閲覧。
  26. ^ FIFA「ゴールコントロール」を認可-サンスポ2013年3月1日
  27. ^ ゴール判定技術、コンフェデ杯での採用方式決定 FIFA-CNNニュース2013年4月7日

外部リンク[編集]