バルログ

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バルログ英語:Balrog)は、J・R・R・トールキンの『指輪物語』や『シルマリルの物語』などの創作に登場する怪物である。シンダール語で「力の悪魔」を意味し、「炎の災禍」とも呼ばれる。クウェンヤ語での呼称はヴァララウコ (Valarauko、複数形 Valaraukar) 。これらは複数名の総称であり、全体でどれくらい存在したのかは明らかでない。[1]。また、Úvanimor など バルログ以外の形をとった悪霊や怪物も非常に数多く存在したが、特にバルログなど堕落したマイアに関しては一部をのぞき厳密にどのような者々がいたのかは不明である。マイアールであったが、モルゴスに誘惑され、ヴァラールに離反した。サウロンらとともに最も強大なモルゴスの配下として描かれている[2]。とくに上古のエルフ族の天敵という部分が強く、歴史の中で様々な惨劇が生まれることとなった[3]

概要[編集]

全身に業火と煙、影を纏う大きな人のような姿をしている。瞳も恐ろしげな炎の如く輝きを放っている。怪力[4]だけでなく両手に獄炎で精製したそれぞれの得物をもち(鞭と剣)[5]、その吐息ですら全てを燃やすほどの熱風と炎となり触れる物や周囲の全てを焼き尽くすおそるべき破壊力の持ち主である。なお、最大限にはどれだけの能力を行使できたかは不明である。同じマイアで、力を大きく制限されているイスタリたちと比較すると、少なくとも同等以上の神力や魔法が発動できる可能性がある。バルログ自体はもとは高貴なマイアであるだけにクウェンヤや暗黒語をはじめ数々の言語、魔術を操ったとされるが、映像作品中では言葉を話す様子や武器の生成以外の魔法は見られない(戦闘場面しか描かれていないということもある)。ウンゴリアントがモルゴスを餌食にしようとした際には、多数のバルログがアングバンドより瞬時に飛来したが、仮にバルログに高速で飛ぶ能力がないとするなら、魔法を使った可能性がある。エルフ製など特殊な武器でないと歯が立たず、たとえばガンダルフが後述のドゥリンの禍に剣で対抗できたのも、彼自身が同じマイアであることや、使用していた武器がゴンドリンの剣であったことが大きいと思われる。

歴史[編集]

バルログたちはエルフの誕生以前に、エル・イルーヴァタールの「アイヌアの唄」に不協和音を奏でたメルコールの懐柔または強制的な歪落を経てヴァラールを離反し堕天、冥王モルゴスの配下となった。これらの事から、彼らは堕天使悪魔邪神魔神といった類に近い存在であるとも言える。モルゴスの最初の敗北のあとは、アングバンドでモルゴスの帰還を待っていたが、ラムモスでウンゴリアントにモルゴスが襲われた際、モルゴスの叫び声を聞きつけ、ウンゴリアントを撃退した。

ダゴール=ヌイン=ギリアスでは、フェアノールの軍勢により敗走したモルゴス軍の救援としてアングバンドから出撃し、突出して孤立したフェアノールを包囲し、首領のゴスモグがフェアノールに致命傷を与えた。ニアナイス・アルノイディアドでは上級王フィンゴンを討ち死にさせた。ゴンドリン攻略においても活躍したが、首領のゴスモグはエクセリオンと相討ちとなり、ほかのバルログもゴンドリン十二家の公子たちに多くが倒された。トゥオルも五体のバルログを倒している。怒りの戦いでは、竜や巨狼トロール吸血鬼や大蝙蝠をはじめ、その他の数多の闇の怪物(Úvanimorオーガ巨人など多数)や悪霊や闇の精霊(Kaukareldar など)ら、ドワーフや熊族など闇に堕ちた自由の民など多くの暗黒勢同様にほとんどが殲滅された。だが、堕落したとはいえマイアなので、肉体が滅んでも魂だけでの行動ができる可能性がある。

いずれの時代においてもサウロンとの力関係は不明であり、第三紀の肉体を失った状態のサウロンとドゥリンの禍の関係性も明らかではない。サウロンがこのバルログを指輪戦争に起用したであろうか否かも判明してはいない。

ゴスモグ[編集]

火龍の一体(おそらくゴンドリンの獣)に跨りエルフの都を攻めるゴスモグ

ゴスモグ (Gothmog) は、バルログの首領であり、アングバンドの総大将であった。知られる中で、最初のバルログの王(Lord of Balrogs)である。 ゴスモグは普段よりバルログを率いただけでなく、多数の戦いにおいても祖竜グラウルングと共に暗黒軍全体の要となった。フェアノール、フィンゴン、泉のエクセリオンなどの強力で著名なエルフらがゴスモグの犠牲になった。しかし最後は、ゴンドリンの陥落時にエクセリオンとの一騎打ちで相討ちとなり滅んだ[6]

ルンゴルシン[編集]

ルンゴルシン (Lungorthin)は、『シルマリルの物語』の初期稿に見られる個体で、ゴスモグ同様にバルログの王の名を冠した。アングバンドの守衛の要であり、ゴスモグと変わらぬ忠誠を冥王に誓っていたとされる。現在、ゴスモグとルンゴルシンが別個体であったか否かは不明である。

ドゥリンの禍[編集]

ドゥリンの禍 (Durin's Bane) とは、第三紀に、モリアを荒廃させ、支配したバルログである。「怒りの戦い」の生き残りが地下で数千年にもわたる悠久の眠りについていたと思われる。 ミスリルを求めてモリアの坑道をドワーフはあまりにも貪欲に深く掘り進んだため、ドゥリン6世の治世に坑道の奥深くで眠っていたバルログの一体を目覚めさせてしまった。ドゥリン6世とその子ナインは殺され、モリアは荒廃して、ドワーフはモリアから逃げ去った。このため、このバルログは「ドゥリンの禍」と呼ばれている。ナインの息子スライン一世は、はなれ山エレボールを開拓し、山の下の王となった。後に、アザヌルビザールの合戦でドワーフが勝利したときも、ドゥリンの禍はモリアの中に居て、ドワーフがモリアを回復することはできなかった。

指輪戦争において、指輪の仲間がモリアを西から東へと抜けようとした際、ドゥリンの禍とオークやトロルの集団が一行を襲撃した。このバルログは、大剣と炎の鞭を振るって魔法使いガンダルフと闘った。両者ともに橋から深淵に落下したときは、水につかって火は消えてしまったが力は衰えず、締め付け攻撃に切り替えてなおも戦闘を続行した。複雑で広大なモリアの構造をすべて把握しており、撤退時には坑道の最下層から山頂に空いた窓までを駆け抜けた。最期はガンダルフと相打ちとなって滅んだ[7]

その他[編集]

原作中の表現と後の諸映像作品とでは容姿に大きな差がある。アニメ作品と実写映画作品にみられるような翼を持っていたかについては、現在でも議論の的となり決着はついていない。 映像作品では、とくに後年の実写作品版では巨大な怪物としての要素を強めたが、原作ではより人型の魔物に近い印象を受ける[8]

また、状況に応じて身体構造を自在に変化させる能力もあり、原作でのガンダルフとの死闘の際には、ドゥリンの禍が水に落ちた後に身体をゲル状にさせて水から這い上がる描写があるが、これも映像化作品の中ではオミットされて見られない設定である。アニメ作品では当初、ライオンのような頭部を持つ黒色の怪物として現れ、ガンダルフと共に墜落した後は悪魔のような上半身に蛇のような胴と下半身を持つ深い青緑色に姿を変えた。

ドゥリンの禍はアニメ作品にて‎オークらを従えていたのだが、ロード・オブ・ザ・リングシリーズに登場したドゥリンの禍はモリアの軍勢とは個別に現れ、オークたちはバルログの存在を恐れて逃げ惑う状態だった[9]。また、原作ではドゥリンの禍の出現時、バルログと伝えたガンダルフの言葉を聞いただけで、レゴラスギムリは各々の弓と戦斧を思わず手から落すほどに取り乱した。決着をつけたジラク・ジギルの塔先端での戦闘時も、原作では快晴の陽の下での戦いだったのが、実写作品では吹雪の中での決着となっている。

脚注[編集]

  1. ^ トールキンの子息は全盛期ですら7体を超えたことはないと後年に口述しているが、トールキン自身の「シルマリルの物語」ではバルログの「軍勢」が見られる
  2. ^ 竜とバルログは共に暗黒軍の二強であり、竜にバルログが跨ったり、各々が戦線を指揮したりすることも多々あった。
  3. ^ 竜が不意討ちで腹を突かれて倒されることの多い一方、バルログの場合にも敵との心中や共倒れに終わるというジンクス的な結末が多い。また、描写が記載されている限りでは、落下や水没などの「堕」の描写を必ずと言って良いほど伴うのも特徴である。
  4. ^ 下記の「ドゥリンの禍」はセレブディルの階段を一体だけで大規模に破壊した。
  5. ^ 第一紀のバルルグの頭首ゴスモグは燃え盛る戦斧を用いていた。
  6. ^ エクセリオンがゴスモグを泉の中に引き込み、共に水中で果てた。
  7. ^ ガンダルフは一度死んだ後、甦った
  8. ^ 原作中で「その身に纏う煙と影」が翼のように広がるという描写はあるものの、戦闘自体の描写は短くまとめられていることもあり、翼の有無までは確認ができない。
  9. ^ 第一紀では、バルログはオークを指揮する立場にあった。