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{{Rough translation|英語}}
{{改名提案|ヒトを対象にした研究|date=2019年5月}}
[[File:National_Advisory_Committee_for_Aeronautics_wind_tests_(1946).webm|右|サムネイル|風圧が人体に及ぼす影響を調査する米軍による1946年の実験の被験者]]
'''ヒトを対象とする研究'''([[英語|英]]: Human subject research、ヒトを主題とする研究)は、「介入」(「試験」)または「観察」(「被験物質」を持たない)いずれかの体系的な科学的調査であり、[[ヒト]]を研究主題として含んだものを指す<ref name="uci" />。


ヒトを対象とした研究は、医学的研究([[臨床研究]])と非医学的研究(例えば社会科学)にも分けられる<ref name="uci">{{Cite web|url=http://www.research.uci.edu/ora/hrpp/definition.htm|title=Definition of Human Subject Research|publisher=Research Administration, [[University of California, Irvine]]|accessdate=2012-01-04}}</ref>。これらは特定の課題の答えを得るため、体系的な調査としてデータ収集と分析が行われる。
[[File:National Advisory Committee for Aeronautics wind tests (1946).webm|thumb|right|300px|1946年に行われた風圧により人体が受ける影響を調査した実験の動画]]
'''人体実験'''(じんたいじっけん)とは、「非倫理的・非人道的な『人体実験』」と、その他「人間を被験者とする研究」に分けられる。


医学的研究は、[[標本 (分類学)|生物標本]]の分析、[[疫学|疫学的]]および行動学的な研究、カルテレビューによる研究などが多く<ref name="uci" />、特定の(そして特に厳しく規制されているタイプの)医学的なヒトを主題とした研究は「[[臨床試験]]([[治験]])」である。そこでは薬、ワクチン、そして医療機器が評価される。一方、社会科学における人間の主題とした研究は、特定のグループの人々に対する質問からなる調査である事が多い。[[調査]]方法には、アンケート、[[インタビュー]]、および[[フォーカスグループ]]が含まれる。
== 歴史 ==
非人道的な臨床実験は第二次世界大戦以前、日本の[[731部隊]]や[[九州大学生体解剖事件]]や、[[第二次世界大戦]]中[[ナチス・ドイツ|ドイツ]]での[[強制収容所 (ナチス)|強制収容所]]等における収容者に対する、非人道的な人体実験が行われたことが[[ニュルンベルク裁判]]で裁かれ、[[1947年]]「[[ニュルンベルク綱領]]」が採択され、臨床実験における[[医療倫理]]が医療者において確認され、[[ヘルシンキ宣言]]、[[ジュネーブ宣言]]、[[東京宣言]]、[[リスボン宣言]]などを経て、[[インフォームド・コンセント]]導入、またWHOや欧州条約、国連、ユネスコ、などにおける国際条約及び人権条約において、[[患者の権利]]の確立へと動くに至った。


ヒトを対象とした研究は、[[生物学]]、 [[医学]]、 [[看護|看護学]]、 [[心理学]]、 [[社会学]]、 [[政治学]]、[[人類学]]などの分野で実施されている。研究が形式化されるにつれて、世界の学術界は、主にヒトを主題とする研究の乱用に対処するため、「ヒトを主題とした研究("human subject research")」の正式な定義を定めている。
== 概説 ==
人間を被験者とする実験には、「非倫理的・非人道的な『人体実験』」と、その他[[治験]]なども含め、「人間を被験者とする研究」に分けられる。人体への実験を避けて通ることが出来ない部分が存在するからである。


== ヒト被験者 ==
もちろん、[[実験動物|動物]]などを使った研究も行われるが、動物と人間では異なる部分も多く、最終的には人体で扱われる技術である以上、当然のことながら、人間で試験を行わなければならない部分も存在する。[[病原体]]の研究では、人間にしか[[感染]]しない病原体が少数ではあるが存在し、その研究のために人間を使った例<ref>{{cite journal |author = Marshall BJ |title = Helicobacter pylori in peptic ulcer: have Koch's postulates been fulfilled? |journal = Ann Med. |year = 1995 |volume = 27 |issue = 5 |pages = 565-8 |pmid=8541033 }}</ref>がいくつか知られる。
'''アメリカ合衆国'''


[[アメリカ合衆国保健福祉省]](HHS)は、「ヒトを主題とした研究」を、研究者(専門家であろうと学生であろうと)が、生きている個人から、以下の方法でデータを取得する研究、として定義している。( {{CodeFedReg|32|219|102|(f)}} )(Lim、1990) <ref name="utexas">{{Cite web|url=http://www.utexas.edu/research/rsc/humansubjects/whatis.html|title=What is Human Subjects Research?|publisher=[[University of Texas at Austin]]|accessdate=2012-01-04|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120207032034/http://www.utexas.edu/research/rsc/humansubjects/whatis.html|archivedate=2012-02-07}}</ref>
現代社会においては個人の生命をより尊重する方向に進んでおり、いかなる理由であっても非倫理的な人体実験を許容することはない。
しかし、歴史上を遡れば、異民族や異人種に対して人権を尊重しない風潮に、死刑が比較的簡単に行われた社会的背景、個人が死ぬことに対してもそれほど問題視しなかった事情が存在していたために、倫理に反する人体実験が行われた例が数多く見られた。


# 介入(インターベンション)または相互作用 または、
また、[[アメリカ合衆国]]が自国の兵士などに対し行ったとされる[[放射線]]人体実験など、被験者に危険性を知らせなかったり、被験者を騙して行った例もあった。いわゆる[[ロボトミー]]手術など、特に理論もはっきりしないままに方法が提出され、ひとたび人体実験で「効果」が確認されれば、リスクの評価もきちんとなされないまま即座に実用化された。その他、1955年から1975年まで、[[アバディーン性能試験場|エッジウッド]]では[[サリン]]や[[VXガス]]のような致死性のある物質、身体能力を奪う物質の人体実験が行われた。[[アメリカ軍]]は、被験者となる軍人を集めるため、好条件の任務であると募集をかけ、いざ実験に入ると刑務所行きや[[ベトナム戦争|ベトナム]]行きになるなどと脅したとされる<ref>{{cite news |title=退役軍人、米軍の極秘人体実験について語る |newspaper=[[CNN]] |date=2014-3-17 |url=http://www.cnn.co.jp/usa/30005941.html|accessdate=2014-6-1}}</ref>。
# 識別可能な個人の情報


各用語は、HHS規制で以下の通り定義されている。
しかし、次第にそのようなことは許されなくなり、危険を説明した上で、それでも志願するものを対象とするようになった。その他、学者が自らの体で実験を行うことがある。古くは、[[華岡青洲]]などの例のように、近親者が志願して行なわれた例もあり、それらは美談として語り伝えられている。


<nowiki/>*「インターベンション(介入)」 - データを収集するための物理的手順、および研究目的のための被験者および/またはその環境の操作[ {{CodeFedReg|45|46|102|(f)}} ] <ref name="utexas">{{Cite web|url=http://www.utexas.edu/research/rsc/humansubjects/whatis.html|title=What is Human Subjects Research?|publisher=[[University of Texas at Austin]]|accessdate=2012-01-04|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120207032034/http://www.utexas.edu/research/rsc/humansubjects/whatis.html|archivedate=2012-02-07}}</ref>
2008年の時点において、[[北朝鮮]]では[[政治犯]]を人体実験の対象としていると[[脱北者]]は証言している<ref>[http://www.chosunonline.com/article/20081013000032 脱北者の悲痛な訴え、弁護士協会が人権白書] (朝鮮日報 2008/10/13)</ref>。


<nowiki/>*「相互作用」 - 研究者と被験者の間のコミュニケーションまたは対人関係[ {{CodeFedReg|45|46|102|(f)}} ]) <ref name="utexas" />
== 実際におこなわれる場合 ==
現在では[[臨床試験]]([[治験]])の名称で実験が行われている。ただし、これには厳しい規制が存在し、十分被験者の健康に配慮し対象となる人物には参加に先立ち[[インフォームド・コンセント]]が行われ、参加は自由意志によって行われる。また、可能な限り安全性を保つように行われる。臨床研究において得られた個人情報の取り扱いに際しては、十分なプライバシー保護のための配慮を行う必要もある。


<nowiki/>*「個人情報」 - 観察または記録が行われていないと個人が合理的に予想することができる状況で発生する行動に関する情報、および個人によって特定の目的のために提供され個人が合理的に公開されないと想定されるもの[ {{CodeFedReg|45|46|102|(f)}} ])] <ref name="utexas" />
== 突発的な事例 ==
[[ロベルト・コッホ]]による[[コレラ菌]]の発見に際して、[[マックス・フォン・ペッテンコーファー]]は培養されたコレラ菌を飲んで見せた([[自己実験|自飲実験]])。彼は発病しなかったが、その理由は明らかでない。


<nowiki/>*「識別可能な個人情報」 - 個人を識別するために使用できる特定の情報<ref name="utexas" />。
似た例として、[[水俣病]]の原因が[[チッソ|新日本窒素肥料]](現チッソ)水俣工場の排水ではないかと疑われた際に、ある工場長がそれを否定して工場排水を飲んで見せた、と言う事件があった。もっとも、この場合は有害物質の蓄積が問題なので、一杯飲んで見せてもその疑惑を否定することにはならない。


'''日本'''{{節スタブ|<nowiki />
== 人体実験の例 ==
*日本における法的位置づけ・定義|date=2019年5月}}
=== ヨーロッパ ===
*[[エドワード・ジェンナー]]による[[種痘]]の実験
*[[マックス・フォン・ペッテンコーファー]]の[[コレラ菌]]自飲実験
*[[ナチス・ドイツの人体実験]]
:*[[ヨーゼフ・メンゲレ]]らによる、[[アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所]]での一連の実験


=== アメリカ ===
=== 被験者たるヒトの権利 ===
'''アメリカ合衆国'''
*[[ミルグラム実験]]
*[[アトミック・ソルジャー]] - [[アメリカ軍]]が実施した[[核戦争]]を想定した[[兵士]]の被爆演習。[[1946年]]から[[1962年]]までの計11の作戦で1030発の核爆弾が使用され、数十万もの兵士が被曝した
*[[スタンフォード監獄実験]]
*[[タスキギー梅毒実験]] - 1932年から1972年にかけてアラバマのタスキーギで[[貧困]]層の[[黒人]]性病患者約400人が生体実験の対象として未治療のまま放置<ref name="minichi2010">毎日新聞2010年10月2日「米政府:40年代に生体実験 受刑者らに性病感染」記事</ref>。1997年にクリントン大統領が謝罪。
*[[グアテマラ人体実験]] - 1946年から1948年にかけて[[グアテマラ]]における、アメリカ政府による[[ペニシリン]]の薬効確認のための[[梅毒]]集団接種<ref>[http://sankei.jp.msn.com/world/news/110830/amr11083014190008-n1.htm 性病の人体実験で83人が死亡 グアテマラで米科学者ら]</ref>
*[[MKウルトラ計画]] - [[LSD (薬物)|LSD]]を使った洗脳実験
* [[ハンセン病]]の感染実験 - [[ハワイ王国]]で死刑囚に癩腫を右前腕に移植する人体実験が行われた。


2010年に、米国の国立司法研究所(National Institute of Justice in the United States)は、人間の主題の推奨される権利を発表した。
=== 日本 ===
*[[華岡青洲]]による[[全身麻酔]]の実験
*[[海軍生体解剖事件]]
*[[九州大学生体解剖事件]]
*[[新潟大学におけるツツガムシ病原菌の人体接種問題]]
*[[関東軍防疫給水部]](731部隊) - [[石井四郎]]軍医中将の主導により主任務である防疫給水の他、化学・生物兵器の研究開発も行った。その過程で1000~3000人とされる捕虜を用いて病原菌の実験や生体解剖を行ったとされる。遺跡は[[侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館]]として現存。
*[[被爆者]]を対象とした調査 - 日本政府の主導で広島と長崎の[[原子力爆弾]]による被爆者に医学調査が行われた。[[東京帝国大学]]を始め全国の大学や病院などから1300人以上の医師や科学者が集まったが、調査内容には[[アドレナリン]]を注射し反応を調べるなど治療とは無関係な内容も含まれていたという。また当初から結果は日本では公開せずにアメリカへ提供することが決定されていた<ref>[http://www.nhk.or.jp/peace/library/program/20100806_02.html "''NHKスペシャル 封印された原爆報告書''", NHK]</ref><ref>[https://www.amazon.co.jp/NHK%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB-%E5%B0%81%E5%8D%B0%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E5%8E%9F%E7%88%86%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8-DVD-%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%BC/dp/B004YV05OW "''NHKスペシャル 封印された原爆報告書''", NHKエンタープライズ]</ref>。
<!--
<div style="margin:1em 2em;padding:1em 2em;background-color:#f8f8f8;border:1px black solid;">
字幕:昭和20年8月6日、広島。昭和20年8月9日、長崎。
ナレーター:広島と長崎に相次いで投下された原子爆弾、その年だけで、合わせて20万人を超す人たちが亡くなりました。原爆投下直後、軍部によって始められた調査は、終戦と共に、その規模を一気に拡大します。国の大号令で全国の大学などから、1300人を超す医師や科学者たちが集まりました。調査は巨大な国家プロジェクトとなったのです。2年以上かけた調査の結果は、181冊。1万ページに及ぶ報告書にまとめられました。大半が、放射能によって被曝者の体にどのような症状が出るのか、調べた記録です。日本はその全てを英語に翻訳し、アメリカへと渡していました。
</div>
<div style="margin:1em 2em;padding:1em 2em;background-color:#f8f8f8;border:1px black solid;">
字幕:東京大学


* 自発的な[[インフォームド・コンセント]]
ナレーター:日本が国の粋を集めて行った原爆調査。参加した医師は、どのような思いで被曝者と向き合ったのか。山村秀夫さん90歳、都築教授が率いる東京帝国大学調査団の一員でした。当時、医学部を卒業して2年目の医師だった山村さん。調査は全てアメリカのためであり、被曝者のために行っている意識は無かったと言います。
* 人としての尊重:[[オートノミー|オートノミーな自主的]]主体として扱われる
* 研究への参加をいつでも終了する権利<ref name="socra">{{Cite web|url=http://materiais.dbio.uevora.pt/MA/Modulo2/Artigos/SoCRA-Perlman.pdf|author=Perlman|first=David|title=Ethics in Clinical Research a History Of Human Subject Protections and Practical Implementation of Ethical Standards|publisher=Society of Clinical Research Associates|date=May 2004|accessdate=2012-03-30}}</ref>
* [[身体的インテグリティ|身体的完全性]]を保護する権利<ref name="socra" />
* メリットは代償を上回るべき。
* 肉体的、精神的および精神的危害からの保護
* 研究に関する情報へのアクセス<ref name="socra" />
* プライバシーと[[ウェルビーイング]]の保護<ref>{{Citation|url=http://www.nij.gov/funding/humansubjects/|title=Human Subject & Privacy Protection|publisher=[[National Institute of Justice]]|date=2010-04-20|access-date=2012-03-30}}</ref>


'''日本'''{{節スタブ|<nowiki />
山村さん:もういっさいだって、結果は日本で公表することももちろんダメだし、お互いに持ち寄って相談するということもできませんですから。とにかく自分たちで調べたら全部向うに出すと。
*日本における被験者の権利|date=2019年5月}}


== 倫理ガイドライン ==
ナレーター:山村さんが命じられたのは、被曝者を使ったある実験でした。報告書番号23、山村さんの論文です。被曝者にアドレナリンと言う血圧を上昇させるホルモンを注射し、その反応を調べていました。12人の内6人は、わずかな反応しか示さなかった。山村さんたちは、こうした治療とは関係のない検査を毎日行っていました。調べられることは全て行うのが、調査の方針だったと言います。
研究における人間の主題の使用を管理する倫理ガイドラインは、比較的新しい概念である。 1906年に、対象を虐待から守るために、米国でいくつかの規制が導入された。1906年の純粋食品医薬品法の可決後、 [[アメリカ食品医薬品局|食品医薬品局]] (FDA)や[[治験審査委員会]] (IRB)などの規制[[治験審査委員会|機関]]が徐々に導入された。これらの機関が実施した方針は、参加者の精神的および/または身体的ウェルビーイングへの害を最小限に抑えるのに役立つものであった。


=== 基本共通ルール ===
山村さん:生きてる人は生前にどういう変化を起こしているかということを、少しでも何かの手掛かりは見つけて、調べるということだけでしたから、それ以外何にもないですね。あんまり他のことも考えれなかったですね。とにかくそれだけやると。
'''アメリカ合衆国'''


1991年に最初に発表された「'''Common Rule'''」、連邦規則 「人体保護のための連邦政策」 <ref name=":6">{{Cite web|url=https://www.hhs.gov/ohrp/regulations-and-policy/regulations/common-rule/index.html|title=Federal Policy for the Protection of Human Subjects ('Common Rule|date=2009-06-23|website=HHS.gov|language=en|accessdate=2019-04-30}}</ref>は、 [[アメリカ合衆国保健福祉省|アメリカ合衆国保健社会福祉省]]の人間保護保護局によって規定されている。 [[治験審査委員会]] (IRB)のガイドライン、[[インフォームド・コンセント]]の取得、および研究対象のヒト被験者参加者に対する「[[遵守保証]](Assurances of Compliance)」<ref name=":6" /> 。 2017年1月19日、2018年7月19日の公式発効日を伴う最終規則が''連邦登録'' <ref>{{Cite web|url=https://www.federalregister.gov/documents/2017/01/19/2017-01058/federal-policy-for-the-protection-of-human-subjects|title=Federal Policy for the Protection of Human Subjects|date=2017-01-19|website=Federal Register|accessdate=2019-04-30}}</ref>に追加された<ref>{{Cite web|url=https://www.hhs.gov/ohrp/regulations-and-policy/regulations/finalized-revisions-common-rule/index.html|title=Revised Common Rule|date=2017-01-17|website=HHS.gov|language=en|accessdate=2019-04-30}}</ref>。
NHKインタビューアー:今となってみたらどうお感じになりますか?そのことは。


'''日本''' {{節スタブ|<nowiki />
山村さん:(苦笑)、今となってみたらねぇ。そうですねえ、まあもっと他にいい方法があったのかも知れませんけど、だけど今と全然違いますからねぇ、その時の社会的な状況がね。
*日本における関連法規
</div>--->
*独自原則やガイドライン|date=2019年5月}}[[治験審査委員会]]


=== ニュルンベルク綱領 ===
== 脚注 ==
{{Main|ニュルンベルク綱領}} 1947年に、強制収容所の囚人に対して致命的または加害的な実験を行ったドイツ人医師達は、 [[ニュルンベルク裁判]]で戦争犯罪者として訴追された([[医者裁判]])。 同年、連合軍は[[ニュルンベルク綱領]]を公開。これは「人間の主題に関する自発的な同意が絶対に不可欠である」という概念を支持する最初の国際文書である。戦争捕虜、患者、捕虜、兵士が対象になることを強要されるのを防ぐために、ニュルンベルク綱領では個人の同意が強調された。さらに、実験のリスク - ベネフィットを参加者に知らせることも強調されている。
<references/>

=== ヘルシンキ宣言 ===
{{Main|ヘルシンキ宣言}} ヘルシンキ宣言は、ヒトを対象とした国際的な研究を規制するために採択された(初めに1964年に採択、その後なんども改訂されている)。[[世界医師会|世界医学会]]によって採択されたこの宣言は、ヒトを対象とする生物医学的研究を行う医師のためのガイドラインを提唱したものである。これらのガイドラインのいくつかは、「研究プロトコルは開始前に独立した委員会によってレビューされるべきである」また、「ヒトを用いた研究は実験動物および実験からの結果に基づくべきである」といった原則を含んでいる。

このヘルシンキ宣言は、人間の[[研究|研究倫理]]に関する基本文書と広く見なされている <ref>[http://www.wma.net/e/press/2000_8.htm WMA Press Release: WMA revises the Declaration of Helsinki. 9 October 2000] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20060927052340/http://www.wma.net/e/press/2000_8.htm|date=27 September 2006}}</ref> <ref name="Bošnjak">{{Cite journal|last=Snežana|first=Bošnjak|year=2001|title=The declaration of Helsinki: The cornerstone of research ethics|url=http://scindeks.ceon.rs/article.aspx?artid=0354-73100103179B&lang=en|journal=Archive of Oncology|volume=9|issue=3|pages=179–84}}</ref> <ref name="Tyebkhan 2003">{{Cite journal|year=2003|title=Declaration of Helsinki: the ethical cornerstone of human clinical research|journal=Indian Journal of Dermatology, Venereology and Leprology|volume=69|issue=3|pages=245–7|PMID=17642902}}</ref>。

=== ベルモント・レポート ===
{{Main|ベルモント・レポート}}{{See also|タスキギー梅毒実験|非倫理的な人体実験#アメリカ}} {{仮リンク|ベルモント・レポート|en|Belmont Report}}は、人間の主題とした研究についての倫理規範を規定するため、政府委員会「{{仮リンク|生物医学および行動研究のヒト対象の保護のための委員会|en|National Commission for the Protection of Human Subjects of Biomedical and Behavioral Research}}」によって作成されたものである。この報告書は、現在の米国のシステムで、研究試験でヒトを保護するために最も頻繁に使用されている<ref name=":6">{{Cite web|url=https://www.hhs.gov/ohrp/regulations-and-policy/regulations/common-rule/index.html|title=Federal Policy for the Protection of Human Subjects ('Common Rule|date=2009-06-23|website=HHS.gov|language=en|accessdate=2019-04-30}}</ref>。

主にヒトを対象とした生物医学的および行動学的研究に目を向けることによって、報告書は、倫理的基準がヒト被験者の研究において基準として従われる事を保証するために作成された<ref name=":0">{{Cite news|url=https://www.hhs.gov/ohrp/regulations-and-policy/belmont-report/index.html|title=The Belmont Report|date=2010-01-28|newspaper=HHS.gov|accessdate=2017-04-03|language=en}}</ref>。レポートが基準とする方法、および人間の被験者をどのように調査するかについては、3つの基準となる原則がある。それは、「人への敬意(respect for persons)」、「[[医療倫理#与益原則|与益]](beneficence)」 、そして「[[正義]]」。「[[医療倫理#与益原則|与益]](beneficence)」であり、倫理的で対象を危害から守ることによって、(1)人々の幸福を守り、(2)彼らの決断を尊重する、と述べられている。この2つの与益は研究からの益を最大にすることと、あらゆる可能な危険性を最小限に留めるためにある<ref name=":1">{{Cite web|url=http://ovidsp.tx.ovid.com.proxy2.cl.msu.edu/sp-3.24.1b/ovidweb.cgi?QS2=434f4e1a73d37e8ca9c2ed569e2a6bcb0f412b007c9b7e542466c49ab08d37370c8ea9c4c0a8f1ea8d16c7f33868d478f9d2dde9b127fdea5dd68cf032bf07e4da759c36ff1f61f73a08f600c3a2b9c113899a7d92abe8f3b6751ad5fcb460ff855a1e2c4c074aa7660812a2e4d3534035517d276e94f0409b7c3b19726bbab545c714b76a5e819efbb2ce50697c5319ae941d65e1436f97104a8e682dbd2b50577476329e92b732b6eb25118ceca6ee35dfd045fed78335c5beff50b56398701cc2c6feeb22e55aaa2decd62f2d13ad|title=MSU Authentication {{!}} Michigan State University|website=ovidsp.tx.ovid.com.proxy2.cl.msu.edu|accessdate=2017-04-03}}</ref>。人体研究の利点とリスクを人に知らせることは研究者の務めである。正義の原則は、研究者が自分たちの研究結果について公正であり、情報が良いか悪いかにかかわらず、発見したものを共有するために必要となるので重要である<ref name=":1" />。また、被験対象の選択プロセスは公平であるべきで、人種、性的指向または民族グループで区別してはならないとされている<ref>{{Cite web|url=http://www2.umf.maine.edu/irb/other-links/the-belmont-report/|title=The Belmont Report {{!}} Institutional Review Board|website=www2.umf.maine.edu|language=English|accessdate=2017-04-24}}</ref>。

最後に、人を尊重することは、研究に関わっている人がいつでも参加したいのか、参加しないのか、あるいは研究から完全に撤退するのかを決定できる事を指す。この二つは、人の[[自主権]]([[オートノミー]])を尊重するためのもので、自主権が何らかの理由で損なわれている(囚人など)人もが保護を受ける権利が与えられるべき、ということを指す<ref name=":0" />。これらの原則の唯一の目的は被験者の自主性を確保し、環境が自分の管理下にないものがあるために自主性を維持することが難しい人々を保護することである<ref name=":0" />

== 倫理的な懸念 ==
科学と医学が進化するにつれて、[[生命倫理学]]の分野は、従うべき指針と規則の更新が間に合わず、困難に直面している<ref>Tsay, Cynthia. "Revisiting the Ethics of Research on Human Subjects." AMA Journal of Ethics 17, no. 12 (2015): 1105-107.</ref>。

また、臨床試験の規則や規制は国によって異なる <ref name=":7">Shuchman, Miriam. "Protecting Patients in Ongoing Clinical Trials." CMAJ: Canadian Medical Association Journal 182, no. 2 (2010): 124-126.</ref>。倫理問題を最小限に抑えるため、研究に関する情報を丹念に記録し、すべてが適切に文書化されるようにするための委員会を設置することが推奨されている <ref name=":7" /> <ref name=":8">{{Cite journal|last=Cook|first=Ann Freeman|last2=Hoas|first2=Helena|date=2015-02-20|title=Exploring the Potential for Moral Hazard When Clinical Trial Research is Conducted in Rural Communities: Do Traditional Ethics Concepts Apply?|url=http://dx.doi.org/10.1007/s10730-015-9270-z|journal=HEC Forum|volume=27|issue=2|pages=171–187|DOI=10.1007/s10730-015-9270-z|ISSN=0956-2737}}</ref> <ref name=":9">Wolfensberger, Wolf. "Ethical Issues in Research with Human Subjects." Science 155, no. 3758 (1967): 47-51.</ref>。研究チームが抱える懸念としては、たとえ規則は倫理的としても、研究には適合していないといったものもある。

=== 非都市部における研究 ===
近年、研究機関の施設や学術センターでの研究の実施から農村への移行が進んでいる。特にファンドの関与、研究される治療の全体的な有効性、そしてそのような研究を行うことがベストな倫理基準に基づいて行われるか参加者の特定人口統計との関連で議論があり、このトピックを取り巻く懸念が提示されている。

モンタナ大学心理学部のAnn CookとFreeman Hoasは、潜在的な被験者が臨床試験への参加に同意するかに対する影響を与えるものについて研究<ref name=":8">{{Cite journal|last=Cook|first=Ann Freeman|last2=Hoas|first2=Helena|date=2015-02-20|title=Exploring the Potential for Moral Hazard When Clinical Trial Research is Conducted in Rural Communities: Do Traditional Ethics Concepts Apply?|url=http://dx.doi.org/10.1007/s10730-015-9270-z|journal=HEC Forum|volume=27|issue=2|pages=171–187|DOI=10.1007/s10730-015-9270-z|ISSN=0956-2737}}</ref>を行った。彼らは2015年2月に調査結果を発表した。34人の医師や研究者と46の研究コーディネーターを調査し<ref name=":02">{{Cite journal|last=Cook|first=Ann Freeman|last2=Hoas|first2=Helena|date=2015-02-20|title=Exploring the Potential for Moral Hazard When Clinical Trial Research is Conducted in Rural Communities: Do Traditional Ethics Concepts Apply?|url=http://dx.doi.org/10.1007/s10730-015-9270-z|journal=HEC Forum|volume=27|issue=2|pages=171–187|DOI=10.1007/s10730-015-9270-z|ISSN=0956-2737}}</ref>、倫理研究訓練を受けていた医師はわずか17%であることが分かった。

Cook and Hoasは、投資ファンドが被験者の選択に重要な役割を果たしていることを発見し、それが被験者への補償にどれだけ繋がっているかの懸念も提示された <ref name=":02" />。

==== 道徳的問題 ====

この種の研究試験で発生する典型的な倫理的問題には、参加者の募集、医師が自分の患者を紹介する場合の強制の問題、および治療上の利点に関する誤解なども含まれる。地域医または信頼する医療提供者が試験を推奨する場合、患者は試験に参加する可能性が高くなる。「強制という言葉は使いたくありません。しかし、それはその方向に傾いているようなものです。なぜなら、基本的に彼らはここで縛られています。彼ら自身を委ねるのはこの人達です、彼らは非常に依存していて、医療は彼らから受けるのです」と述べている <ref name=":02" />。また、研究参加者が[[インフォームド・コンセント]]のために提供された文書を読んだり理解したりしていないと考える調査回答者が大量に存在していた <ref name=":02" /> 。それらの回答者はそれが倫理的に問題であるとは気が付いていなかった。

== 臨床試験・治験 ==
{{Main|治験|臨床試験}} [[英語|英]]: Clinical trials

[[臨床試験|臨床試験(Clinical trials)]]は[[臨床研究]]で行われるヒトを対象とする[[実験]]である。(日本では一般に製薬企業が行う臨床試験を特に区別して「[[治験|治験(Clinical trials)]]」と言う傾向がある)(また、[[ニュルンベルク綱領]]までは「[[人体実験]](Human Experimentation)」という用語が使われてきたが、医療行為の変化を反映し、[[臨床試験|臨床試験(Clinical trials)]]へと名称が変化した)

人間の参加者を対象としたこのような「{{仮リンク|前向き研究|en|Prospective study}}」とされる、生物医学的または行動研究は、新しい[[治療|治療法]](新規[[ワクチン]]、[[医薬品|薬物]]、食事療法、[[サプリメント|栄養補助食品]]、[[医療機器|医療機器など]])およびさらなる研究を正当化する既知の介入を含むそして比較。 臨床試験では[[安全|安全性]]と[[効能|有効性]]に関するデータを得ることが出来る<ref>{{Cite web|title=Clinical Trials|url=https://docs.gatesfoundation.org/documents/clinical_trials.pdf|publisher=Bill and Melinda Gates Foundation}}</ref>。

'''アメリカ'''

彼らは、治療の承認が求められている国で[[治験審査委員会|保健当局/倫理委員会の]]承認を受けた後にのみ実施される。これらの当局は、試験のリスク/ベネフィット比を吟味する責任が課されている - この承認は、治療が「安全」または効果的であることを意味するのではなく、試験が実施され得るということだけを意味している。

製品の種類および開発段階に応じて、研究者は最初にボランティアおよび/または患者を小規模の予備試験に参加させ、その後徐々に大規模な比較試験を実施。 臨床試験の規模や費用はさまざまで、1つの国または複数の国で1つの研究センターまたは複数の研究センターを対象とすることもある。臨床試験デザイン(Clinical study design)は、結果の科学的妥当性と[[再現性|再現]]性を確実にすることを目的として設計するものである。

'''日本'''{{節スタブ|<nowiki />
*日本における関連法規
*独自原則やガイドライン|date=2019年5月}}

== 心理学・社会学における被験者 ==

=== スタンフォード刑務所実験 ===
{{Main|スタンフォード監獄実験}} 1971年に[[フィリップ・ジンバルドー]]によって行われた研究は、 [[スタンフォード大学|スタンフォード大学の]]大学生に対する社会的役割の影響を調べた。 24人の男子生徒がスタンフォード大学の地下室で模擬刑務所を模倣するために囚人または警備員のランダムな役割に割り当てられた。

=== ミルグラム実験 ===
{{Main|ミルグラム実験}} 1961年、 [[イェール大学|エール大学の]]心理学者[[スタンレー・ミルグラム|スタンリー・ミルグラム]]が一連の実験を主導し、個人が実験者の指示にどの程度従うかを決定するために行われた <ref>{{Cite journal|date=October 1968|title=Some conditions of obedience and disobedience to authority|journal=International Journal of Psychiatry|volume=6|issue=4|pages=259–76|ref=harv|DOI=10.1177/001872676501800105|PMID=5724528}}</ref> <ref name="ObedStudy">{{Cite journal|date=October 1963|title=Behavioral Study of Obedience|url=http://www.garfield.library.upenn.edu/classics1981/A1981LC33300001.pdf|journal=Journal of Abnormal Psychology|volume=67|issue=4|pages=371–8|DOI=10.1037/h0040525|PMID=14049516}}</ref> <ref>{{Cite journal|last=Blass|first=Thomas|year=1999|title=The Milgram paradigm after 35 years: Some things we now know about obedience to authority|journal=Journal of Applied Social Psychology|volume=29|issue=5|pages=955–978|ref=harv|DOI=10.1111/j.1559-1816.1999.tb00134.x}} [http://neuron4.psych.ubc.ca/~schaller/Psyc591Readings/Blass1999.pdf as PDF]</ref>。

=== アッシュの同調性実験 ===
1951年の心理学者[[ソロモン・アッシュ]]の古典的な同調性に関する実験<ref name="Asch1951">{{Cite book|year=1951|chapter=Effects of group pressure on the modification and distortion of judgments|title=Groups, Leadership and Men|pages=177–190|location=Pittsburgh, PA|publisher=Carnegie Press}}</ref>。この研究は[[社会的影響|社会的影響力]]と[[同調圧力]]に関する重要な証拠と見なされてきた<ref name="Milgram">Milgram, S. (1961). [https://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=milgram-nationality-conformity "Nationality and conformity"], ''Scientific America'', 205(6).</ref>。

=== ロバーズケーブ研究 ===
リアリスティックコンフリクト理論(Realistic conflict theory)の古典的な支持者であるMuzafer SherifのRobber's Cave実験は、集団競争がいかに敵意と偏見を助長するのかを明らかにした <ref>{{Cite book|title=The Psychology of Prejudice and Discrimination|year=2010|publisher=Wadsworth|location=Belmont, CA|pages=325–330}}</ref>。1961年の研究は、オクラホマ州のロバーズケーブ州立公園で行われたことに由来する <ref name="Mookref">{{Cite book|last=Mook|first=Douglass|year=2004|publisher=Greenwood Press|title=Classic Experiments in Psychology}}</ref> 。

=== 傍観者効果 ===


[[傍観者効果]]は、 Bibb LataneとJohn Darleyによる一連の有名な実験で実証された <ref name="Mookref">{{Cite book|last=Mook|first=Douglass|year=2004|publisher=Greenwood Press|title=Classic Experiments in Psychology}}</ref>。

=== 認知的不協和 ===
{{Main|認知的不協和}} 人間の被験者は、 [[レオン・フェスティンガー]]とMerrill Carlsmithによる画期的な研究の後、 [[認知的不協和]]の理論をテストする実験で一般的に使われてきた<ref name="Cooperref">{{Cite book|last=Cooper|first=Joel|year=2007|title=Cognitive Dissonance, Fifty Years of a Classic Theory|publisher=SAGE Publications}}</ref>。

=== 車両の安全性テスト ===
何年にもわたって人を対象とした研究は多くの業界で行われてきた。その1つが[[自動車産業|自動車業界]]であり、この研究により、設計者は自動車事故の際の人体の許容度に関するより多くのデータを照会し、自動車の安全機能をより向上させてきた。実施された試験のいくつかは、頭頸部の傷害を評価するそり滑走、[[エアバッグ]]試験、さらには[[軍用車両]]およびそれらの拘束システムを含む試験まで及んでいた。重要なことは、被験者を対象とした何千ものテストの結果、重大な怪我は持続していないことであり、すべての倫理的ガイドラインが守られ、被験者の安全と幸福を確実にするための研究者の準備努力によるものである。 この調査は、[[死体]]でのテストや[[ダミー人形|クラッシュテストのダミーテスト]]によって発見できないような、追加のデータである。[[死体]]と[[ダミー人形|衝突テスト用ダミー]]は、人間の能力を超えた、より高い許容度のテストをするときに使用される<ref>{{Cite book|title=Vehicle safety research integration: symposium|location=Washington|date=May 1973|publisher=proceedings. Washington: USGPO|pages=87–98}}</ref>。

=== ソーシャルメディア ===
研究者のためのデータソース(分析対象となる情報源)としての増加中の[[ソーシャルメディア|ソーシャルメディアの]]利用は、人間を主題とした研究の定義に関して新たな不確実性をもたらした。[[プライバシー]] 、[[守秘義務]]、および[[インフォームド・コンセント]]が重要なポイントとなるが、ソーシャルメディアのユーザーが人間の対象として適格であるかどうかは不透明である <ref name=":2">{{Cite journal|date=September 2013|title=Ethics of social media research: common concerns and practical considerations|journal=Cyberpsychology, Behavior and Social Networking|volume=16|issue=9|pages=708–13|DOI=10.1089/cyber.2012.0334|PMID=23679571|PMC=3942703}}</ref>。アメリカ合衆国連邦規制に従って、人間の主題とする研究の特徴を定義すると、研究者が被験者と直接対話するか、または被験者に関する識別可能な個人情報を入手するということになる<ref name="utexas">{{Cite web|url=http://www.utexas.edu/research/rsc/humansubjects/whatis.html|title=What is Human Subjects Research?|publisher=[[University of Texas at Austin]]|accessdate=2012-01-04|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120207032034/http://www.utexas.edu/research/rsc/humansubjects/whatis.html|archivedate=2012-02-07}}</ref>。ソーシャルメディア研究はこの定義を満たすかもしれないし、満たさないかもしれない。研究機関の[[治験審査委員会|審査委員会]] (IRB)は、人間の被験者に関する潜在的な研究を審査する責任を負うことが多いが、ソーシャルメディア研究に関するIRBプロトコルは曖昧または時代遅れの可能性がある <ref name=":2" />。

プライバシーとインフォームド・コンセントに関する懸念が、複数のソーシャルメディア研究に関して浮上し物議となった。 "Tastes、Ties、and Time"として知られている[[ハーバード大学|ハーバードの]]社会学者による研究プロジェクトは、 "匿名のアメリカ北東部のアメリカの大学"で[[Facebook]]のプロフィールから得たデータを[[Facebook|利用]]した<ref>{{Cite news|url=https://www.chronicle.com/article/Harvards-Privacy-Meltdown/128166|title=Harvard's Privacy Meltdown|date=2011-07-10|newspaper=The Chronicle of Higher Education|accessdate=2018-04-23}}</ref>。この問題が明らかになった直後に、このデータセットは公開データから削除されている<ref name=":3">{{Cite journal|last=Zimmer|first=Michael|date=2010-12-01|title="But the data is already public": on the ethics of research in Facebook|journal=Ethics and Information Technology|volume=12|issue=4|pages=313–325|DOI=10.1007/s10676-010-9227-5|ISSN=1388-1957}}</ref>。問題は、この研究プロジェクトは、[[アメリカ国立科学財団|国立科学財団]] から、部分的で資金が賄われていたという事実によって複雑になった、それは <ref name=":3" />情報共有を推し進めるというプロジェクトの性質を帯びていた。

2014年、[[米国科学アカデミー紀要|National Academy of SciencesのProceedingsに]]発表された[[Facebook]]および[[コーネル大学|コーネル大学の]]研究者による研究は、何十万ものFacebookユーザーからデータを収集しました <ref name=":4">{{Cite journal|date=June 2014|title=Experimental evidence of massive-scale emotional contagion through social networks|journal=Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America|volume=111|issue=24|pages=8788–90|DOI=10.1073/pnas.1320040111|PMID=24889601|PMC=4066473}}</ref>。多くの人がこれを人間を被験者とした研究におけるインフォームド・コンセントの必要条件違反と見なした<ref>{{Cite news|url=https://www.nytimes.com/2014/07/01/opinion/jaron-lanier-on-lack-of-transparency-in-facebook-study.html|title=Opinion {{!}} Should Facebook Manipulate Users?|date=2014-06-30|newspaper=The New York Times|accessdate=2018-04-23|language=en-US|issn=0362-4331}}</ref> <ref name=":5">{{Cite web|url=https://medium.com/@JamesGrimmelmann/illegal-unethical-and-mood-altering-8b93af772688|title=Illegal, Immoral, and Mood-Altering|author=Grimmelmann|first=James|date=2014-09-23|website=James Grimmelmann|accessdate=2018-04-23}}</ref>。データは、その個人情報保護方針およびユーザーの利用規約に一致する方法で、民間企業であるFacebookによって収集されたため、コーネル大学の倫理委員会は、この調査はその管轄に該当しないと判断した <ref name=":4" />。それにもかかわらず、この研究はインフォームド・コンセントに関する州法に違反することによって法律に違反したと主張されている <ref name=":5" />。この方法や調査結果を科学者や一般の人々と共有することは奨励されていない <ref>{{Cite news|url=http://www.talyarkoni.org/blog/2014/06/28/in-defense-of-facebook/|title=In defense of Facebook|date=2014-06-29|newspaper=|accessdate=2018-04-23|language=en-US}}</ref>。

ソーシャルメディア研究に推奨する考慮事項は、1)研究が対象研究として適格かどうかを判断する、2)コンテンツのリスクレベルを考慮する、3)ソーシャルメディアに取り組むときに研究および動機を正確に提示する、 5)同意プロセスを通じて連絡先情報を提供する、5)データが識別可能または検索可能でないことを確認する(オンライン検索で識別可能な直接の引用符を避ける)、6)事前にプロジェクトのプライバシーポリシーを策定することを検討する、7)州ごと地域ごとにインフォームド・コンセントに関する独自の法律を持っていることに注意する <ref name=":2">{{Cite journal|date=September 2013|title=Ethics of social media research: common concerns and practical considerations|journal=Cyberpsychology, Behavior and Social Networking|volume=16|issue=9|pages=708–13|DOI=10.1089/cyber.2012.0334|PMID=23679571|PMC=3942703}}</ref>。 これら倫理問題についてよく検討した上で行われるソーシャルメディアサイトの利用は、手の届きにくい研究対象やグループへのアクセスを提供し、対象の自然な「現実世界」の反応を捉え、手頃な価格で効率的なデータ収集方法を提供するため、データソースとして大きな可能性を提供していることはたしかといえる <ref name=":2" /> <ref>{{Cite web|url=https://www.theguardian.com/commentisfree/2014/jul/07/facebook-study-science-experiment-research|title=Stop complaining about the Facebook study. It's a golden age for research|author=Watts|first=Duncan J.|date=2014-07-07|website=the Guardian|accessdate=2018-04-23}}</ref>。

== 非倫理的な人体実験 ==
{{Main|非倫理的な人体実験}} [[英語|英]]: Unethical human experimentation

[[医療倫理|医療倫理の]]原則に違反するヒトを被験者とする実験。これには患者の[[インフォームド・コンセント]]の権利を否定することも含まれる。また「人種科学(race science)」等、[[疑似科学|偽科学的]]な枠組みを使用したり、研究を装って人々を拷問することなども非[[倫理]]的な人体実験とみなされる。[[731部隊]]や[[ヨーゼフ・メンゲレ]]のような個人の行為などを通して囚人や一般市民に対して残忍な実験が行われた。「[[ニュルンベルク綱領]]」はこれら犯罪を受けて戦後生まれたものである。

当時、諸国は取り残された人々に対して残忍な実験を行った。アメリカも 「[[MKウルトラ計画|プロジェクトMKUltra(NKウルトラ計画)]]」および「[[タスキギー梅毒実験]]」といった[[アメリカ合衆国における人体実験|非倫理的な人体実験]]を行った。カナダとオーストラリアでの先住民族の扱いの例もある。それらの上に、[[世界医師会|世界医学会]] (WMA)によって採択された「[[ヘルシンキ宣言]]」は、広く[[ヒト]]の[[研究倫理]]に関する布石となる文書と見なされるようになっている<ref>[http://www.wma.net/e/press/2000_8.htm WMA Press Release: WMA revises the Declaration of Helsinki. 9 October 2000] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20060927052340/http://www.wma.net/e/press/2000_8.htm|date=27 September 2006}}</ref> <ref name="Bošnjak2">{{Cite journal|last=Snežana|first=Bošnjak|year=2001|title=The declaration of Helsinki: The cornerstone of research ethics|url=http://scindeks.ceon.rs/article.aspx?artid=0354-73100103179B&lang=en|journal=Archive of Oncology|volume=9|issue=3|pages=179–84}}</ref> <ref name="Tyebkhan 20032">{{Cite journal|last=Tyebkhan|first=G|year=2003|title=Declaration of Helsinki: the ethical cornerstone of human clinical research|journal=Indian Journal of Dermatology, Venereology and Leprology|volume=69|issue=3|pages=245–7|PMID=17642902}}</ref>。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Div col|colwidth=27em}}
* [[動物実験]]
*[[Genie (feral child)]]
* [[自己実験]]
* [[Human radiation experiments]]
* [[治験]]
* [[Doctors' Trial]] (Part of the [[Nuremberg Trials]])
* [[海と毒薬]]([[遠藤周作]])
* [[Duplessis Orphans]]
* [[ニュルンベルク綱領]]
* [[Medical torture]]
* [[アメリカ合衆国における人体実験]]
* [[Unethical human experimentation in the United States]]
* [[Japanese human experimentations]]
* [[Nazi human experimentation]]
* [[Non-human primate experiments]]
* [[Statistical unit]]
* [[Institutional review board]]
* [[Military medical ethics]]
* [[Vivisection]]
* [[Chester M. Southam]]'s Cancer Injection Study
{{Div col end}}

== 出典 ==
{{Reflist|32em}}


== リンク ==
== 外部リンク ==
* [https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/1980/1980_2.html 「人体実験」に関する第三者審査委員会制度の確立に関する決議] - [[日本弁護士連合会]]


* [http://www.humansubjects.com/ "Human Research Report"] - 人体を保護するための月刊ニュースレター
* [https://web.archive.org/web/20071029120713/http://ohsr.od.nih.gov/guidelines/nuremberg.html ニュルンベルクコード]
* [https://www.hhs.gov/ohrp/humansubjects/guidance/belmont.htm ベルモントレポート]
* [https://www.webcitation.org/61BHsKgXN?url=http://www.wma.net/en/30publications/10policies/b3/index.html ヘルシンキ宣言] 、第6版
* [[国際連合教育科学文化機関|ユネスコ]]による[http://unesdoc.unesco.org/images/0014/001461/146180E.pdf 生命倫理と人権に関する世界宣言]
* [https://www.thestar.com/news/canada/2013/07/16/hungry_aboriginal_kids_used_unwittingly_in_nutrition_experiments_researcher_says.html 1940年代の政府実験で使われた空腹のカナダ人先住民の子供たち] 、2013年トロントスター


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2019年5月29日 (水) 09:30時点における版

風圧が人体に及ぼす影響を調査する米軍による1946年の実験の被験者

ヒトを対象とする研究: Human subject research、ヒトを主題とする研究)は、「介入」(「試験」)または「観察」(「被験物質」を持たない)いずれかの体系的な科学的調査であり、ヒトを研究主題として含んだものを指す[1]

ヒトを対象とした研究は、医学的研究(臨床研究)と非医学的研究(例えば社会科学)にも分けられる[1]。これらは特定の課題の答えを得るため、体系的な調査としてデータ収集と分析が行われる。

医学的研究は、生物標本の分析、疫学的および行動学的な研究、カルテレビューによる研究などが多く[1]、特定の(そして特に厳しく規制されているタイプの)医学的なヒトを主題とした研究は「臨床試験治験)」である。そこでは薬、ワクチン、そして医療機器が評価される。一方、社会科学における人間の主題とした研究は、特定のグループの人々に対する質問からなる調査である事が多い。調査方法には、アンケート、インタビュー、およびフォーカスグループが含まれる。

ヒトを対象とした研究は、生物学医学看護学心理学社会学政治学人類学などの分野で実施されている。研究が形式化されるにつれて、世界の学術界は、主にヒトを主題とする研究の乱用に対処するため、「ヒトを主題とした研究("human subject research")」の正式な定義を定めている。

ヒト被験者

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)は、「ヒトを主題とした研究」を、研究者(専門家であろうと学生であろうと)が、生きている個人から、以下の方法でデータを取得する研究、として定義している。( 32 C.F.R. 219.102(f) )(Lim、1990) [2]

  1. 介入(インターベンション)または相互作用 または、
  2. 識別可能な個人の情報

各用語は、HHS規制で以下の通り定義されている。

*「インターベンション(介入)」 - データを収集するための物理的手順、および研究目的のための被験者および/またはその環境の操作[ 45 C.F.R. 46.102(f) ] [2]

*「相互作用」 - 研究者と被験者の間のコミュニケーションまたは対人関係[ 45 C.F.R. 46.102(f) ]) [2]

*「個人情報」 - 観察または記録が行われていないと個人が合理的に予想することができる状況で発生する行動に関する情報、および個人によって特定の目的のために提供され個人が合理的に公開されないと想定されるもの[ 45 C.F.R. 46.102(f) ])] [2]

*「識別可能な個人情報」 - 個人を識別するために使用できる特定の情報[2]

日本

被験者たるヒトの権利

アメリカ合衆国

2010年に、米国の国立司法研究所(National Institute of Justice in the United States)は、人間の主題の推奨される権利を発表した。

日本

倫理ガイドライン

研究における人間の主題の使用を管理する倫理ガイドラインは、比較的新しい概念である。 1906年に、対象を虐待から守るために、米国でいくつかの規制が導入された。1906年の純粋食品医薬品法の可決後、 食品医薬品局 (FDA)や治験審査委員会 (IRB)などの規制機関が徐々に導入された。これらの機関が実施した方針は、参加者の精神的および/または身体的ウェルビーイングへの害を最小限に抑えるのに役立つものであった。

基本共通ルール

アメリカ合衆国

1991年に最初に発表された「Common Rule」、連邦規則 「人体保護のための連邦政策」 [5]は、 アメリカ合衆国保健社会福祉省の人間保護保護局によって規定されている。 治験審査委員会 (IRB)のガイドライン、インフォームド・コンセントの取得、および研究対象のヒト被験者参加者に対する「遵守保証(Assurances of Compliance)」[5] 。 2017年1月19日、2018年7月19日の公式発効日を伴う最終規則が連邦登録 [6]に追加された[7]

日本

治験審査委員会

ニュルンベルク綱領

1947年に、強制収容所の囚人に対して致命的または加害的な実験を行ったドイツ人医師達は、 ニュルンベルク裁判で戦争犯罪者として訴追された(医者裁判)。 同年、連合軍はニュルンベルク綱領を公開。これは「人間の主題に関する自発的な同意が絶対に不可欠である」という概念を支持する最初の国際文書である。戦争捕虜、患者、捕虜、兵士が対象になることを強要されるのを防ぐために、ニュルンベルク綱領では個人の同意が強調された。さらに、実験のリスク - ベネフィットを参加者に知らせることも強調されている。

ヘルシンキ宣言

ヘルシンキ宣言は、ヒトを対象とした国際的な研究を規制するために採択された(初めに1964年に採択、その後なんども改訂されている)。世界医学会によって採択されたこの宣言は、ヒトを対象とする生物医学的研究を行う医師のためのガイドラインを提唱したものである。これらのガイドラインのいくつかは、「研究プロトコルは開始前に独立した委員会によってレビューされるべきである」また、「ヒトを用いた研究は実験動物および実験からの結果に基づくべきである」といった原則を含んでいる。

このヘルシンキ宣言は、人間の研究倫理に関する基本文書と広く見なされている [8] [9] [10]

ベルモント・レポート

ベルモント・レポートは、人間の主題とした研究についての倫理規範を規定するため、政府委員会「生物医学および行動研究のヒト対象の保護のための委員会英語版」によって作成されたものである。この報告書は、現在の米国のシステムで、研究試験でヒトを保護するために最も頻繁に使用されている[5]

主にヒトを対象とした生物医学的および行動学的研究に目を向けることによって、報告書は、倫理的基準がヒト被験者の研究において基準として従われる事を保証するために作成された[11]。レポートが基準とする方法、および人間の被験者をどのように調査するかについては、3つの基準となる原則がある。それは、「人への敬意(respect for persons)」、「与益(beneficence)」 、そして「正義」。「与益(beneficence)」であり、倫理的で対象を危害から守ることによって、(1)人々の幸福を守り、(2)彼らの決断を尊重する、と述べられている。この2つの与益は研究からの益を最大にすることと、あらゆる可能な危険性を最小限に留めるためにある[12]。人体研究の利点とリスクを人に知らせることは研究者の務めである。正義の原則は、研究者が自分たちの研究結果について公正であり、情報が良いか悪いかにかかわらず、発見したものを共有するために必要となるので重要である[12]。また、被験対象の選択プロセスは公平であるべきで、人種、性的指向または民族グループで区別してはならないとされている[13]

最後に、人を尊重することは、研究に関わっている人がいつでも参加したいのか、参加しないのか、あるいは研究から完全に撤退するのかを決定できる事を指す。この二つは、人の自主権オートノミー)を尊重するためのもので、自主権が何らかの理由で損なわれている(囚人など)人もが保護を受ける権利が与えられるべき、ということを指す[11]。これらの原則の唯一の目的は被験者の自主性を確保し、環境が自分の管理下にないものがあるために自主性を維持することが難しい人々を保護することである[11]

倫理的な懸念

科学と医学が進化するにつれて、生命倫理学の分野は、従うべき指針と規則の更新が間に合わず、困難に直面している[14]

また、臨床試験の規則や規制は国によって異なる [15]。倫理問題を最小限に抑えるため、研究に関する情報を丹念に記録し、すべてが適切に文書化されるようにするための委員会を設置することが推奨されている [15] [16] [17]。研究チームが抱える懸念としては、たとえ規則は倫理的としても、研究には適合していないといったものもある。

非都市部における研究

近年、研究機関の施設や学術センターでの研究の実施から農村への移行が進んでいる。特にファンドの関与、研究される治療の全体的な有効性、そしてそのような研究を行うことがベストな倫理基準に基づいて行われるか参加者の特定人口統計との関連で議論があり、このトピックを取り巻く懸念が提示されている。

モンタナ大学心理学部のAnn CookとFreeman Hoasは、潜在的な被験者が臨床試験への参加に同意するかに対する影響を与えるものについて研究[16]を行った。彼らは2015年2月に調査結果を発表した。34人の医師や研究者と46の研究コーディネーターを調査し[18]、倫理研究訓練を受けていた医師はわずか17%であることが分かった。

Cook and Hoasは、投資ファンドが被験者の選択に重要な役割を果たしていることを発見し、それが被験者への補償にどれだけ繋がっているかの懸念も提示された [18]

道徳的問題

この種の研究試験で発生する典型的な倫理的問題には、参加者の募集、医師が自分の患者を紹介する場合の強制の問題、および治療上の利点に関する誤解なども含まれる。地域医または信頼する医療提供者が試験を推奨する場合、患者は試験に参加する可能性が高くなる。「強制という言葉は使いたくありません。しかし、それはその方向に傾いているようなものです。なぜなら、基本的に彼らはここで縛られています。彼ら自身を委ねるのはこの人達です、彼らは非常に依存していて、医療は彼らから受けるのです」と述べている [18]。また、研究参加者がインフォームド・コンセントのために提供された文書を読んだり理解したりしていないと考える調査回答者が大量に存在していた [18] 。それらの回答者はそれが倫理的に問題であるとは気が付いていなかった。

臨床試験・治験

: Clinical trials

臨床試験(Clinical trials)臨床研究で行われるヒトを対象とする実験である。(日本では一般に製薬企業が行う臨床試験を特に区別して「治験(Clinical trials)」と言う傾向がある)(また、ニュルンベルク綱領までは「人体実験(Human Experimentation)」という用語が使われてきたが、医療行為の変化を反映し、臨床試験(Clinical trials)へと名称が変化した)

人間の参加者を対象としたこのような「前向き研究」とされる、生物医学的または行動研究は、新しい治療法(新規ワクチン薬物、食事療法、栄養補助食品医療機器など)およびさらなる研究を正当化する既知の介入を含むそして比較。 臨床試験では安全性有効性に関するデータを得ることが出来る[19]

アメリカ

彼らは、治療の承認が求められている国で保健当局/倫理委員会の承認を受けた後にのみ実施される。これらの当局は、試験のリスク/ベネフィット比を吟味する責任が課されている - この承認は、治療が「安全」または効果的であることを意味するのではなく、試験が実施され得るということだけを意味している。

製品の種類および開発段階に応じて、研究者は最初にボランティアおよび/または患者を小規模の予備試験に参加させ、その後徐々に大規模な比較試験を実施。 臨床試験の規模や費用はさまざまで、1つの国または複数の国で1つの研究センターまたは複数の研究センターを対象とすることもある。臨床試験デザイン(Clinical study design)は、結果の科学的妥当性と再現性を確実にすることを目的として設計するものである。

日本

心理学・社会学における被験者

スタンフォード刑務所実験

1971年にフィリップ・ジンバルドーによって行われた研究は、 スタンフォード大学の大学生に対する社会的役割の影響を調べた。 24人の男子生徒がスタンフォード大学の地下室で模擬刑務所を模倣するために囚人または警備員のランダムな役割に割り当てられた。

ミルグラム実験

1961年、 エール大学の心理学者スタンリー・ミルグラムが一連の実験を主導し、個人が実験者の指示にどの程度従うかを決定するために行われた [20] [21] [22]

アッシュの同調性実験

1951年の心理学者ソロモン・アッシュの古典的な同調性に関する実験[23]。この研究は社会的影響力同調圧力に関する重要な証拠と見なされてきた[24]

ロバーズケーブ研究

リアリスティックコンフリクト理論(Realistic conflict theory)の古典的な支持者であるMuzafer SherifのRobber's Cave実験は、集団競争がいかに敵意と偏見を助長するのかを明らかにした [25]。1961年の研究は、オクラホマ州のロバーズケーブ州立公園で行われたことに由来する [26]

傍観者効果

傍観者効果は、 Bibb LataneとJohn Darleyによる一連の有名な実験で実証された [26]

認知的不協和

人間の被験者は、 レオン・フェスティンガーとMerrill Carlsmithによる画期的な研究の後、 認知的不協和の理論をテストする実験で一般的に使われてきた[27]

車両の安全性テスト

何年にもわたって人を対象とした研究は多くの業界で行われてきた。その1つが自動車業界であり、この研究により、設計者は自動車事故の際の人体の許容度に関するより多くのデータを照会し、自動車の安全機能をより向上させてきた。実施された試験のいくつかは、頭頸部の傷害を評価するそり滑走、エアバッグ試験、さらには軍用車両およびそれらの拘束システムを含む試験まで及んでいた。重要なことは、被験者を対象とした何千ものテストの結果、重大な怪我は持続していないことであり、すべての倫理的ガイドラインが守られ、被験者の安全と幸福を確実にするための研究者の準備努力によるものである。 この調査は、死体でのテストやクラッシュテストのダミーテストによって発見できないような、追加のデータである。死体衝突テスト用ダミーは、人間の能力を超えた、より高い許容度のテストをするときに使用される[28]

ソーシャルメディア

研究者のためのデータソース(分析対象となる情報源)としての増加中のソーシャルメディアの利用は、人間を主題とした研究の定義に関して新たな不確実性をもたらした。プライバシー守秘義務、およびインフォームド・コンセントが重要なポイントとなるが、ソーシャルメディアのユーザーが人間の対象として適格であるかどうかは不透明である [29]。アメリカ合衆国連邦規制に従って、人間の主題とする研究の特徴を定義すると、研究者が被験者と直接対話するか、または被験者に関する識別可能な個人情報を入手するということになる[2]。ソーシャルメディア研究はこの定義を満たすかもしれないし、満たさないかもしれない。研究機関の審査委員会 (IRB)は、人間の被験者に関する潜在的な研究を審査する責任を負うことが多いが、ソーシャルメディア研究に関するIRBプロトコルは曖昧または時代遅れの可能性がある [29]

プライバシーとインフォームド・コンセントに関する懸念が、複数のソーシャルメディア研究に関して浮上し物議となった。 "Tastes、Ties、and Time"として知られているハーバードの社会学者による研究プロジェクトは、 "匿名のアメリカ北東部のアメリカの大学"でFacebookのプロフィールから得たデータを利用した[30]。この問題が明らかになった直後に、このデータセットは公開データから削除されている[31]。問題は、この研究プロジェクトは、国立科学財団 から、部分的で資金が賄われていたという事実によって複雑になった、それは [31]情報共有を推し進めるというプロジェクトの性質を帯びていた。

2014年、National Academy of SciencesのProceedingsに発表されたFacebookおよびコーネル大学の研究者による研究は、何十万ものFacebookユーザーからデータを収集しました [32]。多くの人がこれを人間を被験者とした研究におけるインフォームド・コンセントの必要条件違反と見なした[33] [34]。データは、その個人情報保護方針およびユーザーの利用規約に一致する方法で、民間企業であるFacebookによって収集されたため、コーネル大学の倫理委員会は、この調査はその管轄に該当しないと判断した [32]。それにもかかわらず、この研究はインフォームド・コンセントに関する州法に違反することによって法律に違反したと主張されている [34]。この方法や調査結果を科学者や一般の人々と共有することは奨励されていない [35]

ソーシャルメディア研究に推奨する考慮事項は、1)研究が対象研究として適格かどうかを判断する、2)コンテンツのリスクレベルを考慮する、3)ソーシャルメディアに取り組むときに研究および動機を正確に提示する、 5)同意プロセスを通じて連絡先情報を提供する、5)データが識別可能または検索可能でないことを確認する(オンライン検索で識別可能な直接の引用符を避ける)、6)事前にプロジェクトのプライバシーポリシーを策定することを検討する、7)州ごと地域ごとにインフォームド・コンセントに関する独自の法律を持っていることに注意する [29]。 これら倫理問題についてよく検討した上で行われるソーシャルメディアサイトの利用は、手の届きにくい研究対象やグループへのアクセスを提供し、対象の自然な「現実世界」の反応を捉え、手頃な価格で効率的なデータ収集方法を提供するため、データソースとして大きな可能性を提供していることはたしかといえる [29] [36]

非倫理的な人体実験

: Unethical human experimentation

医療倫理の原則に違反するヒトを被験者とする実験。これには患者のインフォームド・コンセントの権利を否定することも含まれる。また「人種科学(race science)」等、偽科学的な枠組みを使用したり、研究を装って人々を拷問することなども非倫理的な人体実験とみなされる。731部隊ヨーゼフ・メンゲレのような個人の行為などを通して囚人や一般市民に対して残忍な実験が行われた。「ニュルンベルク綱領」はこれら犯罪を受けて戦後生まれたものである。

当時、諸国は取り残された人々に対して残忍な実験を行った。アメリカも 「プロジェクトMKUltra(NKウルトラ計画)」および「タスキギー梅毒実験」といった非倫理的な人体実験を行った。カナダとオーストラリアでの先住民族の扱いの例もある。それらの上に、世界医学会 (WMA)によって採択された「ヘルシンキ宣言」は、広くヒト研究倫理に関する布石となる文書と見なされるようになっている[37] [38] [39]

関連項目

出典

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外部リンク

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