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'''エオティラヌス'''([[学名]]:{{snamei|Eotyrannus}})は、[[ティラノサウルス上科]]に属する絶滅した[[獣脚類]]の[[恐竜]]の属。[[白亜紀]]前期にあたる[[イギリス]]の[[ワイト島]]の南西の海岸に位置する Wealden 層群 Wessex 層から化石が発見されている。植物の堆積した粘土単層から発見された幼体から亜成体までの標本 MIWG1997.550 は様々な頭骨・椎骨・付属肢から構成されており、[[2001年]]にハットらが記載した<ref name="huttetal01">{{cite journal | last1 = Hutt | first1 = S. | last2 = Naish | first2 = D. | last3 = Martill | first3 = D.M. | last4 = Barker | first4 = M.J. | last5 = Newbery | first5 = P. | year = 2001 | title = A preliminary account of a new tyrannosauroid theropod from the Wessex Formation (Cretaceous) of southern England | url = | journal = Cretaceous Research | volume = 22 | issue = | pages = 227–242 | doi=10.1006/cres.2001.0252}}</ref>。属名は本属が初期のティラノサウルス上科に分類されることあるいは「暴君トカゲ」に由来し、種小名は化石の発見者を称えたものである。
'''エオティラヌス'''は[[中生代]][[白亜紀]]前期に生息した[[獣脚類]][[恐竜]]の[[属 (分類学)|属]]。[[竜盤類|竜盤目]] - 獣脚亜目 - [[ティラノサウルス上科]]に属する。名前の由来は「夜明けの暴君」。イギリスの[[ワイト島]]で発見された。


== 形態 ==
D型の断面の歯、四肢や肩帯の構造などティラノサウルス科に似た形態を備えていた。しかし、前肢は長く、指が3本であるなど祖先的な特徴も持つ。<ref>[http://www.geocities.co.jp/NatureLand/5218/eothiranusu.html エオティラヌス・川崎悟司イラスト集]</ref>
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ホロタイプ標本に存在する数多くの特徴はエオティラヌス属特有のものとされた。[[歯骨]]の吻側の端は最も近心の歯槽が存在する窪みを持ち、窪みの吻側内側の縁には背側へ向いた突起が存在する。歯骨の側面には湾曲した横方向の筋が走る。[[上角骨]]の吻側背側の縁の近くには肥大した溝状の窪みが存在し、窪みの後端では上角骨に孔が貫通している。尾側背側に位置する窪んだ部位には上角骨の低い筋突起が存在する。[[尺骨]]と[[橈骨]]の軸中央の断面は涙滴形をなす。


ホロタイプ標本は化石化する前に繋がりが断たれ、数多くの骨が飛散した。一切の脊柱が繋がって保存されておらず、脊椎は分断された椎体と神経棘から構成され、1個体であることが推測されている。
== 脚注 ==
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骨格の保存状態が悪いため、数多くの破片の同定が困難な状況にある。未同定胴体部の骨は多く、[[脛骨]]の遠位部であると考えられていた尺骨も存在する。この骨が適切に同定される以前には、エオティラヌスはより長い脛骨を持つと考えられており、エオティラヌスの初期の復元に影響を及ぼした。
== 関連項目 ==
*[[ティラノサウルス]]
*[[ディロング]] - 初期のティラノサウルス類。


[[2001年]]のハットによる診断でエオティラヌス特有の形質とされた特徴には、実際には[[ティラノサウルス上科]]に広く共通する形質であることが判明したものもある。例を挙げると、[[前上顎骨]]のD字型断面の歯にある鋸歯状構造はエオティラヌス・レンギ特有の形質からは程遠く、[[前眼窩窓]]の卓越した隆起や水平方向に平坦化した[[上顎骨]]なども本属特有のものではなかった<ref>Naish, D., 2006. The Osteology and Affinities of Eotyrannus lengi and Other Lower Cretaceous Theropod Dinosaurs From England. Unpublished Ph.D. Thesis, University of Portsmouth.</ref>。
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エオティラヌスのホロタイプは全長4メートルほどと推定されている。

== 発見と命名 ==
ホロタイプ標本が発見された正確な場所は、その重要性と海岸線の後退により新たな化石が出土する可能性により明らかになっていない。記載論文での言及によると、ワイト島の南西部の海岸で[[1995年]]に Atherfield Point と Hanover Point の間で標本が発見され、地元の化石収集家ギャビン・レングが海岸で発見した鉤爪を Sandown のワイト島の地質博物館に勤務するスティーブ・ハットの下へ持参した。ギャビン・レングは鉤爪を発見した場所を公開し、その後数週間にわたって慎重な調査が進められ、化石が硬い母岩から取り出された。[[ポーツマス大学]]の科学者と[[ロンドン自然史博物館]]からの助手が、数年をかけて注意深く標本を調査した<ref>Price, T. (2018, November 26). Eotyrannus lengi. Retrieved from http://www.dinosaurisle.com/eotyrannus.aspx</ref>。

[[2000年]]にギャヴィン・レングの名誉にちなんでエオティラヌスが命名され、ハットらは[[2001年]]に手短に化石を記載した。[[2018年]]7月には、最初の記載に協力したハットの研究仲間であるダレン・ナイシュが、エオティラヌスの学術論文を公開するために GoFundMe fundraiser を作り、その目的が達成された。現在は[[オープンアクセス]]で閲覧可能である。

== 系統発生 ==
エオティラヌスの発見は、初期のティラノサウルス上科が長い四肢と3本の手の指を有した華奢な動物であることと、そしてその中ではエオティラヌスは幾分大型であることから、ティラノサウルス上科が初期の進化で大型化したかエオティラヌスが独自に大型化したことを裏付けている<ref name="holtz94">{{cite journal | last1 = Holtz | first1 = T. R. Jr. | authorlink = Thomas R. Holtz Jr. | year = 1994 | title = The phylogenetic position of the Tyrannosauridae: implications for theropod systematics | url = | journal = Journal of Paleontology | volume = 68 | issue = | pages = 1100–1117 }}</ref>。また、発見地がヨーロッパであったことにより、北アメリカの[[ストケソサウルス]]やヨーロッパの[[アヴィアティラニス]]とともにティラノサウルス上科のアジア起源説に一石が投じられた<ref name=Loewen13>{{Cite journal | last1 = Loewen | first1 = M.A. | authorlink = Mark Loewen| last2 = Irmis | first2 = R.B. | authorlink2 = Randall B. Irmis| last3 = Sertich | first3 = J.J.W. | authorlink3 = Joseph Sertich| last4 = Currie | first4 = P. J. | authorlink4 = Philip J. Currie| last5 = Sampson | first5 = S. D. | authorlink5 = Scott D. Sampson| year = 2013| title = Tyrant Dinosaur Evolution Tracks the Rise and Fall of Late Cretaceous Oceans | url = http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0079420| editor-last = Evans | editor-first = David C| editor-link = David C. Evans| journal = [[PLoS ONE]] | volume = 8 | issue = 11 | pages = e79420 | doi = 10.1371/journal.pone.0079420 | pmid = 24223179| pmc = 3819173| ref = {{sfnRef|Loewen ''et al.''|2013}}}}</ref>。

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== 古環境 ==
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エオティラヌスが発見された Wessex 層は、現在の[[地中海]]と同様に温暖で蒸し暑い環境だったと考えられている。しかしながら、エオティラヌスが生息していた[[バレミアン]]後期から[[アプチアン]]前期にかけて乾季が増加していた証拠が確認されている。Wessex 盆地においては堆積学的証拠である泥のひび割れといった化石が発見され、この地域が短い雨季を伴う年間平均気温20 - 25℃という温暖な古気候にあったことが示されている。ワトソンとアルヴィンによる[[1996年]]の論文ならびにアレンによる[[1998年]]の論文では、Wessex 層の植物相が耐火性と耐乾性を示し、顕著な乾季を伴う季節性の気候に適応していたとされている。なお、雨季が存在した根拠は、植物の堆積層から得られる植物のサンプルに腐敗した菌が高頻度で確認されることである<ref>Sweetman, Steven & N. Insole, Allan. (2010). The plant debris beds of the Early Cretaceous (Barremian) Wessex Formation of the Isle of Wight, southern England: Their genesis and palaeontological significance. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology. 292. 409-424. 10.1016/j.palaeo.2010.03.055.</ref>。


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== 脚注 ==
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2019年2月13日 (水) 04:29時点における版

エオティラヌス
生息年代: 白亜紀前期オーテリビアン, 130 Ma
エオティラヌスの発見された化石
地質時代
白亜紀前期オーテリビアン
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : コエルロサウルス類 Coelurosauria
上科 : ティラノサウルス上科 Tyrannosauroidea
: エオティラヌス Eotyrannus
学名
Eotyrannus
Hutt et al., 2001

エオティラヌス学名:Eotyrannus)は、ティラノサウルス上科に属する絶滅した獣脚類恐竜の属。白亜紀前期にあたるイギリスワイト島の南西の海岸に位置する Wealden 層群 Wessex 層から化石が発見されている。植物の堆積した粘土単層から発見された幼体から亜成体までの標本 MIWG1997.550 は様々な頭骨・椎骨・付属肢から構成されており、2001年にハットらが記載した[1]。属名は本属が初期のティラノサウルス上科に分類されることあるいは「暴君トカゲ」に由来し、種小名は化石の発見者を称えたものである。

形態

ホロタイプ標本とヒトの大きさ比較

ホロタイプ標本に存在する数多くの特徴はエオティラヌス属特有のものとされた。歯骨の吻側の端は最も近心の歯槽が存在する窪みを持ち、窪みの吻側内側の縁には背側へ向いた突起が存在する。歯骨の側面には湾曲した横方向の筋が走る。上角骨の吻側背側の縁の近くには肥大した溝状の窪みが存在し、窪みの後端では上角骨に孔が貫通している。尾側背側に位置する窪んだ部位には上角骨の低い筋突起が存在する。尺骨橈骨の軸中央の断面は涙滴形をなす。

ホロタイプ標本は化石化する前に繋がりが断たれ、数多くの骨が飛散した。一切の脊柱が繋がって保存されておらず、脊椎は分断された椎体と神経棘から構成され、1個体であることが推測されている。

骨格の保存状態が悪いため、数多くの破片の同定が困難な状況にある。未同定胴体部の骨は多く、脛骨の遠位部であると考えられていた尺骨も存在する。この骨が適切に同定される以前には、エオティラヌスはより長い脛骨を持つと考えられており、エオティラヌスの初期の復元に影響を及ぼした。

2001年のハットによる診断でエオティラヌス特有の形質とされた特徴には、実際にはティラノサウルス上科に広く共通する形質であることが判明したものもある。例を挙げると、前上顎骨のD字型断面の歯にある鋸歯状構造はエオティラヌス・レンギ特有の形質からは程遠く、前眼窩窓の卓越した隆起や水平方向に平坦化した上顎骨なども本属特有のものではなかった[2]

エオティラヌスのホロタイプは全長4メートルほどと推定されている。

発見と命名

ホロタイプ標本が発見された正確な場所は、その重要性と海岸線の後退により新たな化石が出土する可能性により明らかになっていない。記載論文での言及によると、ワイト島の南西部の海岸で1995年に Atherfield Point と Hanover Point の間で標本が発見され、地元の化石収集家ギャビン・レングが海岸で発見した鉤爪を Sandown のワイト島の地質博物館に勤務するスティーブ・ハットの下へ持参した。ギャビン・レングは鉤爪を発見した場所を公開し、その後数週間にわたって慎重な調査が進められ、化石が硬い母岩から取り出された。ポーツマス大学の科学者とロンドン自然史博物館からの助手が、数年をかけて注意深く標本を調査した[3]

2000年にギャヴィン・レングの名誉にちなんでエオティラヌスが命名され、ハットらは2001年に手短に化石を記載した。2018年7月には、最初の記載に協力したハットの研究仲間であるダレン・ナイシュが、エオティラヌスの学術論文を公開するために GoFundMe fundraiser を作り、その目的が達成された。現在はオープンアクセスで閲覧可能である。

系統発生

エオティラヌスの発見は、初期のティラノサウルス上科が長い四肢と3本の手の指を有した華奢な動物であることと、そしてその中ではエオティラヌスは幾分大型であることから、ティラノサウルス上科が初期の進化で大型化したかエオティラヌスが独自に大型化したことを裏付けている[4]。また、発見地がヨーロッパであったことにより、北アメリカのストケソサウルスやヨーロッパのアヴィアティラニスとともにティラノサウルス上科のアジア起源説に一石が投じられた[5]

以下は、大半のティラノサウルス上科の系統関係を示した Loewen による2013年のクラドグラム[5]

ティラノサウルス上科
プロケラトサウルス科

プロケラトサウルス

キレスクス

グアンロン

シノティラヌス

ジュラティラント

ストケソサウルス

ディロング

エオティラヌス

バガラアタン

ラプトレックス

ドリプトサウルス

アレクトロサウルス

シオングアンロン

アパラチオサウルス

アリオラムス・アルタイ

アリオラムス・レモトゥス

ティラノサウルス科

2014年には、メガラプトルに近縁なメガラプトル類にエオティラヌスを分類する研究が発表された[6]

メガラプトル類

フクイラプトル

メガラプトル科

アウストラロベナトル

アエロステオン

unnamed

オルコラプトル

エオティラヌス

メガラプトル

古環境

ヒプシロフォドンを追うエオティラヌスの復元図。Wessex 層に由来する他の恐竜も背景に見える

エオティラヌスが発見された Wessex 層は、現在の地中海と同様に温暖で蒸し暑い環境だったと考えられている。しかしながら、エオティラヌスが生息していたバレミアン後期からアプチアン前期にかけて乾季が増加していた証拠が確認されている。Wessex 盆地においては堆積学的証拠である泥のひび割れといった化石が発見され、この地域が短い雨季を伴う年間平均気温20 - 25℃という温暖な古気候にあったことが示されている。ワトソンとアルヴィンによる1996年の論文ならびにアレンによる1998年の論文では、Wessex 層の植物相が耐火性と耐乾性を示し、顕著な乾季を伴う季節性の気候に適応していたとされている。なお、雨季が存在した根拠は、植物の堆積層から得られる植物のサンプルに腐敗した菌が高頻度で確認されることである[7]


Wessex 層には幅広い動物相が見られ、カルカロドントサウルス科ネオベナトルコンプソグナトゥス科アリストスクス、基盤的新鳥盤類ヒプシロフォドンマンテリサウルスならびにヴァルドサウルス竜脚類オルニトプシスエウカメロトゥスおよびイウティコサウルス曲竜類ポラカントゥスなどがいた。エオティラヌスが捕食していたとされる哺乳類も数多く共存しており、スパラコテリウム科ヤヴェルレステスエオバアタル科エオバアタルがいた。

脚注

  1. ^ Hutt, S.; Naish, D.; Martill, D.M.; Barker, M.J.; Newbery, P. (2001). “A preliminary account of a new tyrannosauroid theropod from the Wessex Formation (Cretaceous) of southern England”. Cretaceous Research 22: 227–242. doi:10.1006/cres.2001.0252. 
  2. ^ Naish, D., 2006. The Osteology and Affinities of Eotyrannus lengi and Other Lower Cretaceous Theropod Dinosaurs From England. Unpublished Ph.D. Thesis, University of Portsmouth.
  3. ^ Price, T. (2018, November 26). Eotyrannus lengi. Retrieved from http://www.dinosaurisle.com/eotyrannus.aspx
  4. ^ Holtz, T. R. Jr. (1994). “The phylogenetic position of the Tyrannosauridae: implications for theropod systematics”. Journal of Paleontology 68: 1100–1117. 
  5. ^ a b Loewen, M.A.; Irmis, R.B.; Sertich, J.J.W.; Currie, P. J.; Sampson, S. D. (2013). Evans, David C. ed. “Tyrant Dinosaur Evolution Tracks the Rise and Fall of Late Cretaceous Oceans”. PLoS ONE 8 (11): e79420. doi:10.1371/journal.pone.0079420. PMC 3819173. PMID 24223179. http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0079420. 
  6. ^ Juan D. Porfiri; Fernando E. Novas; Jorge O. Calvo; Federico L. Agnolín; Martín D. Ezcurra; Ignacio A. Cerda (2014). “Juvenile specimen of Megaraptor (Dinosauria, Theropoda) sheds light about tyrannosauroid radiation”. Cretaceous Research 51: 35–55. doi:10.1016/j.cretres.2014.04.007. 
  7. ^ Sweetman, Steven & N. Insole, Allan. (2010). The plant debris beds of the Early Cretaceous (Barremian) Wessex Formation of the Isle of Wight, southern England: Their genesis and palaeontological significance. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology. 292. 409-424. 10.1016/j.palaeo.2010.03.055.