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インフルエンザウイルスの中で鳥類に感染するのはA型であり、抗原型では (H1~H16)×(N1~N9) と多くの組み合わせがある。
インフルエンザウイルスの中で鳥類に感染するのはA型であり、抗原型では (H1~H16)×(N1~N9) と多くの組み合わせがある。


ヒトインフルエンザで、現在まで流行を繰り返してきた型は、(H1, H2, H3)×(N1, N2) である(ヒトには、B型・C型も感染する)。その他、家畜の[[ブタ]]・[[ウマ]]・[[ミンク]]、野生の[[アザラシ]]・[[クジラ]]の感染が知られている。ヒトに感染するタイプのウイルスは、水鳥起源のウイルスが[[ブタ]]に感染し、ブタの体内でウイルスが変異(交差)したという仮説があり、[[遺伝子]] ([[RNA]]) 解読による[[進化]]系統分析の裏付け研究がなされている。
ヒトインフルエンザで、現在まで流行を繰り返してきた型は、(H1, H2, H3)×(N1, N2) である(ヒトには、B型・C型も感染する)。その他、家畜の[[ブタ]]・[[ウマ]]・[[ミンク]]、野生の[[アザラシ]]・[[クジラ]]の感染が知られている。ヒトに感染するタイプのウイルスは、水鳥起源のウイルスが[[ブタ]]に感染し、ブタの体内でウイルスが変異(交差)したという仮説があり、[[遺伝子]] ([[リボ核酸|RNA]]) 解読による[[進化]]系統分析の裏付け研究がなされている。


種の壁があるため、ヒトにはヒトインフルエンザ、鳥類にはトリインフルエンザのみが感染すると見られてきたが、近年、ヒトに感染する高病原性トリインフルエンザ (HPAI) が現れた。
種の壁があるため、ヒトにはヒトインフルエンザ、鳥類にはトリインフルエンザのみが感染すると見られてきたが、近年、ヒトに感染する高病原性トリインフルエンザ (HPAI) が現れた。

2006年10月14日 (土) 12:52時点における版

高病原性トリインフルエンザウイルス, 長期間継代培養したトリインフルエンザウイルスの透過電子顕微鏡像。 (Source: Dr. Erskine Palmer, Centers for Disease Control and Prevention Public Health Image Library)

トリインフルエンザ (Avian influenza, bird flu) とは、A型インフルエンザウイルス鳥類に感染して起きる鳥類の感染症。中でも、ニワトリなどの家禽類に感染して、宿主を死に至らしめる高病原性トリインフルエンザHighly Pathogenic Avian Influenza, HPAI家禽ペスト)を指すことが多い。ヒトインフルエンザの原因になるウイルス(ヒトインフルエンザウイルス)と、トリインフルエンザの原因になるウイルス(トリインフルエンザウイルス)では、感染対象となる動物(宿主)が異なるため、一般的にはトリインフルエンザウイルスがヒトに感染する能力は低く、また感染してもヒトからヒトへの伝染は起こりにくいと考えられている。しかし大量のウイルスとの接触や、宿主の体質などによってヒトに感染するケースも報告されている。また、ヒトインフルエンザウイルス自体、水鳥のトリインフルエンザウイルスが何らかの過程で変異して生まれたものだと考えられている。そのため、トリインフルエンザから新型インフルエンザが発生する危険性も指摘されている。なお俗に、これらの原因となるトリインフルエンザウイルスのことを略してトリインフルエンザと呼ぶこともある。

トリインフルエンザウイルスは、元々、野生の水鳥(アヒルなどのカモ類)を宿主として存在している。若鳥に20%の感染が見出されることもある。水鳥の管で増殖し、鳥間では(水中の)を媒介に感染する。

水鳥では感染しても宿主は発症しないが、家禽類のニワトリ・ウズラ七面鳥等に感染すると非常に高い死亡率をもたらすものがあり、そのタイプを高病原性トリインフルエンザと呼ぶ。ウイルスの病原性は、OIEの定める判定基準に従って判定される。日本における法律(家畜伝染病予防法)に於いては、H5及びH7亜型のウイルスにあっては高病原性トリインフルエンザウイルスと定義される。現在、世界的に養鶏産業の脅威となっているのはこのウイルスである。このうちH5N1型ウイルスでは家禽と接触した人間への感染、発病が報告されている。ヒトインフルエンザウイルスと混じり合い、人間の間で感染する能力を持つウイルスが生まれることが懸念されている。

概要

インフルエンザウイルスの中で鳥類に感染するのはA型であり、抗原型では (H1~H16)×(N1~N9) と多くの組み合わせがある。

ヒトインフルエンザで、現在まで流行を繰り返してきた型は、(H1, H2, H3)×(N1, N2) である(ヒトには、B型・C型も感染する)。その他、家畜のブタウマミンク、野生のアザラシクジラの感染が知られている。ヒトに感染するタイプのウイルスは、水鳥起源のウイルスがブタに感染し、ブタの体内でウイルスが変異(交差)したという仮説があり、遺伝子 (RNA) 解読による進化系統分析の裏付け研究がなされている。

種の壁があるため、ヒトにはヒトインフルエンザ、鳥類にはトリインフルエンザのみが感染すると見られてきたが、近年、ヒトに感染する高病原性トリインフルエンザ (HPAI) が現れた。

高病原性トリインフルエンザのヒトへの感染例は少ない。しかし、感染者の死亡率は1997年の流行では30%であったが、2004年の流行では60~70%と極めて毒性が強力に変異している。しかし、これらの死亡率は血清学的調査が行われていないため、本来の意味としての「死亡率」とは異なると指摘する専門家もいる。

H5N1型のトリインフルエンザウイルスは、鳥から鳥に感染するものであり、まれに人に感染することがあるが、ヒトインフルエンザウイルスと異なり、ヒトからヒトへの感染は確認されていない。しかし、トリインフルエンザウイルスの感染が広域化・長期化しているため、豚やヒトの体内で突然変異する危険性が高まっている。多くのウイルス学者らは、すでに1980年代後半からヒト新型インフルエンザの発生が15-20年の周期で起きる可能性を示唆しており、最後の新型インフルエンザ発生にあたる1977年のソ連かぜから、20年後に発生した香港トリインフルエンザが新型ヒトインフルエンザとして大流行する危険性を指摘していた。世界保健機構 (WHO) も、香港1997年型の発生直後から、トリインフルエンザの監視体勢を強化しており、2005年には世界各地で流行しているトリインフルエンザが、いつ新型ヒトインフルエンザになって世界的な大流行(パンデミック)を起こしてもおかしくないと警告している。そうなった場合、世界で750万人が犠牲になるといわれいる。

人から人へ感染するウイルスへと変異した場合の人体に対する毒性であるが、現状存在するインフルエンザウイルスとの遺伝子交雑で生まれた新型インフルエンザウイルスの場合、毒性は減少すると考えられている。しかし、ヒトインフルエンザウイルスと交雑せずH5N1単体で突然変異を起こし、人への感染力を持った場合は、現状の強毒性を保ったままの可能性がある。 これは、スペイン風邪とソ連風邪のウイルス型が同一(H1N1型)であったにもかかわらず死者数に大きな違いがあったことの原因の一つではないかと考えられている。

ワクチン

鳥用ワクチンが開発されているが、感染予防には完全ではなく、ニワトリの感染を完全回避はできず、感染しても発症を低減できるのみである。そのため、トリインフルエンザウイルスの感染拡大の阻止には無力であると判断されている。また、ワクチンを使用すると、抗体検査による感染鶏区別が不能となり淘汰が困難となる。ワクチンを使用した地域ではウイルス撲滅に失敗している。

よって有効な撲滅法は、発生地点の5~10km範囲のニワトリ等を直ちに淘汰することである。[1]

トリインフルエンザウイルスが変異して人に感染する「新型インフルエンザ」が大流行した場合、一時的な対策としてウイルスの増加を抑制するスイスのロシュ社のタミフルが有効とされている。タミフルはスイスのロシュ社でしか製造されていないため、現在、アメリカやヨーロッパなど世界中から需要が集中し、日本が確保するのは困難な状況である。

現状ではワクチンはまだ臨床試験の段階で、存在しない。ワクチンの開発には「新型インフルエンザ」が発生してから最低半年はかかる。そのため「過労や寝不足を避ける」「手洗い・うがいをする」などの防衛策を日頃から徹底するしかない。

世界的な流行

1997年の香港でのHPAI(H5N1型)による死者発生の際には、直ちに香港全域の鶏淘汰の措置がとられ、パンデミックが回避された。


2003年~2004年の東アジア養鶏業でのトリインフルエンザの流行では、世界で1億羽のニワトリが淘汰された。

WHO・FAO・OIE共同声明

3機関は2004年1月27日、アジアでの鳥インフルエンザについて「世界的な流行を引き起こす、非常に危険な人間の伝染病に変異する可能性がある」と警告する共同声明を発表した。

2005年 東南アジアで猛威振るう

2005年、東南アジアで猛威を振るっている高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型が欧州でも相次ぎ確認され、世界的な危機が高まっている。世界保健機関の統計によると、東南アジア各国で11月までに鳥インフルエンザで62人が死亡している。また、アジアでは2003年後半以降、133人が高病原性鳥インフルエンザに感染し、68人が死亡している。現時点(2005年11月30日)では人と人との感染は確認されていない。

ヒトからヒトへ感染するようなウイルスの突然変異が起きた場合、多数の死者が出ると懸念されている。1918-1919年にかけて世界で数千万人の死者が出たスペイン風邪は鳥インフルエンザウイルスから直接の突然変異で生まれた新型ウイルスによるものと考えられている。

ベトナム

  • ベトナムのメコン・デルタ地域が鳥インフルエンザの発生と人への感染が顕著である。同地域は、家族単位で多数のニワトリやアヒルの放し飼いが一般的で、広範囲に移動するために鳥インフルエンザウイルスが伝染しやすく、衛生管理が出来にくいので家禽飼育の計画化や衛生管理を徹底することが急務であるといわれている。
  • 2003年12月以来、3回の鳥インフルエンザの流行があり、合計5000羽の家禽が殺処分された。人間への感染は91人、その内41人が死亡するなど東南アジアの中では最大の死者が出ている。
  • 今年冬の鳥インフルエンザの流行を想定して、夏から家禽へのワクチン接種を開始しているが、輸入が追いつかず冬までずれ込むと予想されている。
  • 820万人の感染を想定しているが、抗ウイルス薬の備蓄は約3%に過ぎない。
  • 2005年10月はじめから家禽にH5N1型鳥インフルエンザが発生した地域は8省2都市に広がった。バクリュウ、ドンタップ、バクザン、クアンナム、タインホア、ハイズオン、フンイエン、ニンビンの各省と首都ハノイ及びハイフォン市で鳥インフルエンザ感染が確認されている。これまでに、15の省・都市で9600万羽に鳥インフルエンザのワクチン接種を終えている。また、ベトナム政府は、感染した家禽の処分では1羽に付き15000ドン(約100円)を補償している。しかし、農民からは少なすぎるとの声があがっている。
  • ベトナム政府は、2005年11月4日、都市と地方の市街地域、特にハノイとホーチミン市の市街地での家禽飼育を禁止した鳥インフルエンザ防止緊急対策を発表した。
  • 2005年11月には、家禽に鳥インフルエンザに感染した地域は13の省・都市に広がった。新たに感染が見つかったのはクアンガイ、ビンフック、バクニンの3省。
    • 11月19日、閣僚会議で家禽の鳥インフルエンザ発生地域は17省・都市に広がったと報告された。新たに発生したのは北部タイビン省。農業・地域開発省は10月はじめから17省・都市62県114村で発生し、約90万羽が処分されたと報告。北部各省で家禽の感染が拡大傾向にあるという。保健省はH5N1型ウイルスの人への感染が2003年12月の最初の患者発生以降、32省・都市で92件発生し、42人が死亡したと報告。10月24日以降は新たな患者はいない。

新型か?

2006年8月16日、ベトナム保健省は、同国で今月、鳥インフルエンザによく似た症状で死亡した30代の二人の男性患者が、検査の結果、いずれも高病原性H5N1型ウイルス陰性だったことが判明したことを受けて、鳥インフルエンザの新型ウイルスが存在する疑いがあるとして警戒を呼びかけた。また、同省次官は、H5N1型ウイルスが検出されなかったのはウイルスの変異か遺伝子交換で新型ウイルスが出来た可能性があると述べた。

ベトナム政府は、8月8日、鳥インフルエンザ対策とH5N1型ウイルスの対人感染予防対策の強化を指示した。

インドネシア

  • インドネシアでも鳥インフルエンザウイルスが人にも感染し、死者が出ていることが知られていた。世界保健機関 (WHO) の協力で、2005年になって鳥インフルエンザでの死者が12月までに9人出ているこことが分かった。
  • 2005年12月に入って新たに8歳の少年と39歳の男性が、鳥インフルエンザで死亡したことが分かった。鳥インフルエンザによる死者は11人となった。世界保健機関の検査で確認された。
  • 2006年5月に、北スマトラ州で同じ親族が相次いで鳥インフルエンザに感染して死亡した。世界保健機関(WHO)が「限定的かつ非持続的なヒトからヒトへの感染」があったことを確認した。同国で確認されたのは初めて。今回のケースについてはH5N1型ウイルスの変異があったものの、極めて軽微な変異であり、重大な懸念や警戒を発するに当たらないとの認識を同当局者が示した。
  • 2006年8月、インドネシア保健省は、新たに16歳の少年少女が二人の死亡を確認した。

中国

中国は、家禽の飼育数が150億羽近くもあり、世界の五分の一を占めている。

  • 2005年5月に、青海省で渡り鳥6000羽余りが鳥インフルエンザで死んだほか、その年だけで5回にわたる家禽への鳥インフルエンザの感染があった。厳重な警戒を強めている。
  • 2005年10月には、内モンゴル自治区フフホト市、安徽省天長市、湖南省湘潭県で鳥インフルエンザが報告されている。安徽省の24歳の女性が鳥インフルエンザに感染し、10月1日に発病し、発熱、肺炎の症状を示し、10月10日には死亡した。
  • 中国東北部、遼寧省では10月下旬から鳥インフルエンザで鶏が大量に死んでいる。
  • 2005年11月にも遼寧省、湖北省などで家禽がH5N1型の鳥インフルエンザに感染し、300羽から2500羽が死んでいる。感染地域周辺3キロの家禽3万1千羽-250万羽を処分し、感染の拡大防止に努めている。また、同月16日に湖南省と安徽省でそれぞれ1人が、鳥インフルエンザの人への感染が確認された。中国政府は国内初の人への感染が確認されたことで鳥インフルエンザ対策をさらに強化した。
  • 10月以降、鳥インフルエンザの家禽への感染拡大防止のため、ワクチン接種に力を入れてきた。その結果約50億羽の家禽が免疫を持ったと中国農業省が2005年12月21日発表した。
  • 2006年までに、鳥インフルエンザの人への感染が広がり、これまで7人が感染し、三人が死亡している。

ロシア

  • ロシアでは、モスクワ周辺で鳥インフルエンザの感染が確認されていたが、ウクライナでの公式確認は2005年12月までなかった。ウイルスが見つかった地域に非常事態宣言を発令し、政府が、ウイルスの詳しい調査や住民の健康診断などを実施する。クリミア半島では、2005年12月に入って、農家の鶏やガチョウの大量死が発生し、二千羽以上が死んだという。

アメリカ

  • 2005年12月10日、米政府は、鳥インフルエンザが流行した場合の対応を検討するため、レビット厚生長官、チャートフ国土安保長官、ペース統合参謀本部議長ら20人が参加して、初の机上演習を行った。

鳥インフルエンザ対策国際会議

  • 世界の30カ国の政府高官による鳥インフルエンザ対策会議が、カナダのオタワで2005年10月25日から2日間の日程で開かれた。同会議では、感染発生や国連を初めとする国際機関の主導的役割の重要性を確認する全部で18項目の声明を発表した。同声明では、からヒトへのウイルスの感染に関する研究推進や関連機関同市のネットワーク拡充を勧告している。
  • 2006年ロシアサンクトペテルブルグで開催されるG8サミット(主要国首脳会議)で、アジアを中心広がる鳥インフルエンザへの対策を最優先課題になる予定である。
  • 「イラワジ・チャオプラヤー・メコン経済協力戦略(ACMECS)」に参加するタイカンボジアラオスミャンマー、ベトナムの5カ国の首脳会議が、2005年11月1-3日までタイのバンコクで開かれ、鳥インフルエンザ防止などで合意した。鳥インフルエンザ対策として、監視・対応システムの強化、家禽・家畜の監視、地域の監視即応ネットワーク、参加国間の情報交換で一致した。
  • 世界保健機関が2005年11月7-9日まで鳥インフルエンザ対策の専門家会議をジュネーブで開いた。北半球が冬を迎え、渡り鳥の渡来などで、世界的な感染拡大が懸念される。そのため、治療薬などの確保などの対策が話し合われた。また、アフリカ、南米など開発途上国での発生した場合の財政支援も課題に上った。米国が71億ドル(約8,200億円)の対策を打ち出している。

国連食糧農業機関 (FAO) の警告

  • 2005年11月29日、FAOは、鳥インフルエンザの人間への感染予防には、家禽の間でウイルス感染を防ぐことが重要であり、一部の感染国で行われている都市での野鳥駆除は鳥インフルエンザの予防として意味がなく、家禽の感染防止活動への注意をそらすものだと警告した。

世界保健機関の中国への警告

  • 2005年12月22日、世界保健機関の西太平洋地域事務局長は中国での感染の状況について、沈静化しつつあると見るのは、時期尚早であり、人の感染がさらに出ても驚くには当たらないと警告し、中国側に対策を強化するように促した。また、鳥インフルエンザに感染した鳥から採取した鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)のサンプルがまったく提供されていないことを明らかにした。

日本政府の鳥インフルエンザ対策

  • 2005年の鳥インフルエンザ世界的な広がりを受けて、日本政府は鳥インフルエンザ対策省庁会議を設けている。
  • 2005年10月、第5回鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議を開いた。これまでは国内の鶏での発生対応が目的であったが、今後は、人から人へ感染する新型インフルエンザ発生の危機が高まっていることから、人での発生を視野に入れ、政府あげて対応することになった。
  • 農水省の「高病原性鳥インフルエンザ感染経路究明チーム検討会」中間報告書(2005年10月31日)は、茨城県内で確認されたウイルスが、過去に中米メキシコグアテマラで採取されたものと近い型であると指摘している。また、農家が違法に未承認ワクチンを使用したことが、茨城県を中心に相次いでいる鳥インフルエンザ発生の原因とする確証が得られなかったとしている。
  • 厚生労働省の予測では、日本国内で約3200万人(人口の約25%)が発症し、最悪の場合、10万7000人が死亡するとしている。しかし、専門家から「過小評価すぎる」と批判が出ている。厚生労働省は、2500万人分のタミフルを備蓄する計画だが、実際に処方したタミフルを1人が5日間飲むとすると、実質1200万人分しかなく治療薬不足が起こるとされている。
  • 2005年11月30日、厚生労働省は、自治体の感染症担当者会議を開き、新型インフルエンザの発生にそなえて国の行動計画について説明した。
  • 2006年5月30日の閣議でH5N1型が指定感染症に定められた。公布は6月2日で施行は6月12日。これにより、H5N1型に感染および感染の疑いがあれば強制入院や就業制限が可能となった。施行期間は1年であり、1年に限り延長が可能となっている。

日本国内での鳥インフルエンザ状況

  • 2005年6月に、埼玉県で鳥インフルエンザウイルスが見つかったことから、農水省は全国的にウイルスの感染の見直しを実施した。茨城県から31カ所の養鶏場でウイルス感染歴を示す抗体陽性反応が確認された。そこで全国的に各養鶏所の鶏数十羽から気管の粘液などを採取し、ウイルスの有無を2週間毎に計6回検査する監視プログラムを実施した。2005年11月15日までに、茨城県の国内大手のイセファーム系列の採卵養鶏場(約77万羽)でウイルスが検出された。農水省の監視プログラムを実施した養鶏場から鳥インフルエンザウイルスが検出されたのは国内で初めてである。
  • 2005年12月9日、茨城県で新たにH5型の抗体陽性が確認された。以前からの検査には、検査材料を若い鳥からのみ採取していたことが発覚した。県は告発も視野に入れて検査に当たっている。

トキに与えた影響

  • 日中でトリインフルエンザが流行したため相互に鳥の輸入が禁止され、近親交配の弊害を避けるために予定していた日中のトキの交換が延期された。

トリインフルエンザの発生実態

1850~1900年代

  • 1874年: H3N8
  • 1890年: H2N2 ロシア風邪

1900~50年代

  • 1902年: H3N2
  • 1902年:イタリア HPAI(H7N1型)
  • 1922年:インドネシア HPAI(H7N7型)
  • 1924年:日本 HPAI(H7N7型)
  • 1934年:ドイツ HPAI(H7N1型)
  • 1959年:イギリス・スコットランド HPAI(H5N1型)(ニワトリ)

1960~80年代

  • 1962年:南アフリカ HPAI(H5N3型)
  • 1963年:イギリス・イングランド HPAI(H7N3型)(七面鳥)
  • 1966年:カナダ・オンタリオ州 HPAI(H5N9型)(七面鳥)
  • 1976年:オーストラリア・ビクトリア州 HPAI(H7N7型)(ニワトリ)
  • 1979年:ドイツ H7N7
  • 1979年:イギリス H7N7
  • 1979年:カナダオンタリオ州 H5N3?
  • 1983~85年:アメリカ・ペンシルバニア州 HPAI(H5N2型)(ニワトリと七面鳥)
  • 1983年:アイルランド HPAI(H5N8型)(七面鳥)
  • 1985年:オーストラリア・ビクトリア州 HPAI(H7N7型)(ニワトリ)

1990年代

  • 1991年:イギリス HPAI(H5N1型)(七面鳥)
  • 1992年:オーストラリア・ビクトリア州 HPAI(H7N3型)(ニワトリ)
  • 1993年:メキシコ H5N2
  • 1994年:オーストラリア・クイーンズランド州 HPAI(H7N3型)(ニワトリ)
  • 1994年:パキスタン HPAI(H7N3型)
  • 1994~95年:メキシコ(H5N2、低病原性→高病原性、ニワトリ)。感染拡大後に高病原性に突然変異。[2]
  • 1996年:北海道 H5N4
  • 1997年:オーストラリア・ニューサウスウェールズ州 HPAI(H7N4型)(ニワトリ)
  • 1997年:イタリア H5N2
  • 1997年:香港 HPAI(H5N1型、ニワトリ)。最初の人への感染(18人感染、うち幼児6人死亡)。
  • 1999年:H9N2型が人へ感染(香港)
  • 1999年3月:北イタリア(H7N1、低病原性→高病原性)。当初は低病原性で国の強権発動対策せず。しかし同年12月17日突然変異し高病原性型に。2000年4月までに1400万羽が感染。[3]
  • その他、日本国内にて1996年9月と12月に低病原性タイプと疑わしい事例が発生したがウイルスの分離特定はできなかった(H3型としている情報もある)。

2001年

  • 2001年5月、香港・マカオ韓国で発生。HPAI(H5N1型)。香港で鶏大量死(120万羽処分)。

2002年

2003年

  • 2003年2~4月、オランダベルギー HPAI(H7N7型)。大流行。1000万羽以上処分。防疫従事者数十人が結膜炎に、十数人がインフルエンザ様症状示し、オランダの獣医師1名死亡。
  • 2003年12月10日、香港政府ヒトへの感染例を公表(H9N2型)。5歳の少年、11月27日入院 2日後退院
  • 2003年12月12日~、韓国 HPAI(H5N1型)。百数十万羽が死亡もしくは処分。
  • 2003年12月~、ベトナムの養鶏場で流行中、10万羽以上死亡。HPAI(H5N1型)。
    • ベトナムの感染者は22人、死者は15人(3月10日現在)。内、人から人への感染の疑い例もあるが未検証。淘汰処分された鶏は200万羽以上。

2004年

  • 2004年1月、日本・山口県阿東町の養鶏場で6千羽死亡。動物衛生研究所の分析にて国内発のHPAI(H5N1型)が検出。2/18終息宣言。淘汰処理された鶏は計3万5千羽。
  • 2004年1月16日、タイにて、HPAI(H5N1型)による死者発生。人から人への感染の可能性があるが未検証。
    • タイの感染者は12人、死者は8人(3月17日現在)。ペット猫2匹死亡。動物園のヒョウ1匹死亡。
    • 2004年1月、台湾にて、H5N2(弱病原性)発生。2月末迄に約40万羽淘汰処分。
  • 2004年1月26日、パキスタンのカラチ300万羽 (H7, H9)(ニワトリ)
  • 2004年1月27日、WHO/FAO/OIE 共同声明(前掲)
  • 2004年2月10日、デラウェア州(H7N2型)(ニワトリ)
  • 2004年2月16日、ペンシルバニア州ランカスター郡(H2N2型)(ニワトリ)
  • 2004年2月17日、大分県九重町にて死んだチャボより、HPAI(H5N1型)確認。近年の国内2例目。
  • 2004年2月16日、カナダブリティッシュ・コロンビア州 (H7)(ニワトリ)
  • 2004年2月20日、テキサス州HPAI(H5N2型)(ニワトリ)
  • 2004年2月27日、中国広西チワン族自治区南寧市の農場で200羽(アヒル)HPAI(H5N1型)。中国初めての公式報道、以後続々と報道
  • 2004年2月20日、京都府丹波町の浅田農産の養鶏場で鶏の大量死始まる(2/27まで無連絡、無対策)。
    • 2004年2月27日、京都府丹波町の上記養鶏場で28,000羽死亡。HPAI(H5N1型)が検出。2/28迄に累計で約7万羽死亡(2/20~3/2の累計、13万羽超死亡、計25万羽淘汰処分)。鶏全数を淘汰処理(埋設)。
    • 2004年2月28日、兵庫県八千代町へ出荷の上記養鶏場の生きた鶏の感染確認。
    • 2004年3月1日、香川県塩江町の飼料肥料加工会社へ出荷された上記養鶏場の羽毛から同ウイルスが検出。
    • 2004年3月3日、京都府丹波町の近接養鶏場Tで鶏の死20羽。HPAI(H5N1型)検出。Tの鶏全数を淘汰処理(埋設)。
    • 2004年3月5日、京都府丹波町浅田農産の養鶏場と園部町で死亡カラス各1羽発見。双方HPAI(H5N1型)検出 (3/9)。初の野鳥感染確認。
      • さらに3/4,3/5に丹波町で捕獲の衰弱カラス2羽からもHPAI(H5N1型)検出 (3/12)。
      • 3/5、大阪府茨木市上音羽で、衰弱したカラス1羽捕獲。後死亡。HPAI(H5N1型)確認 (3/15)。
      • 3/10に丹波町で回収の死亡カラス1羽、HPAI(H5N1型)確認 (3/16)。
      • 3/14に京都府亀岡市で回収の死亡カラス1羽、HPAI(H5N1型)確認 (3/20)。
      • 3/14に大阪府茨木市で回収の死亡カラス1羽よりトリインフルエンザ簡易検出 (3/18)[*]。カラス感染8例目。
    • 4/13午前0時、京都府が終息宣言
  • 2004年3月7日、メリーランド州 (H7)(ニワトリ)
  • 2004年3月16日、中国終息宣言 16省等、49カ所、900万羽処分
  • 2004年3月16日、日本政府、総合対策を発表
  • 2004年3月25日、南アフリカ、西ケープ州LPAI(H6型)
  • 2004年3月26日、カナダブリティッシュ・コロンビア州(H7N3型)検査官に感染。バンクーバー東南東60kmアボッツフォード付近5農場、37万羽。
  • 2004年8月18日、マレーシア農業省、感染確認。鳥の移動全面禁止。
    • 9月14日、マレーシア農業省、タイとの国境に近い州でH5型に感染した鳥見つかると発表。マレーシア保健省、26歳と8歳の兄妹、10歳の少女鳥インフルエンザ感染、隔離入院と発表。

2005年

  • 2005年6月16日、インドネシア南スラウェシ州で三十代の男性が鳥インフルエンザ(H5N1型)に感染していると診断されたことを同国保健省が明らかにした。
  • 2005年6月26日、茨城県水海道市(現常総市)、H5N2型。
  • 2005年7月20日、インドネシアの保健相は、ジャカルタ郊外で鳥インフルエンザ(H5N1型)で父娘3人が死亡したと発表した。
  • 2005年8月12日、中国チベット自治区ラサ市郊外の養鶏場で、鳥インフルエンザ(H5N1型)発生。これまでに130羽が死んでいる。
  • 2005年8月18日、埼玉県鴻巣市で過去に鳥インフルエンザに感染していた抗体を確認。茨城県水海道市のH5N2型と同じ可能性。埼玉県は、約9万8千3百羽処分。
  • 2005年8月18日、ロシアのシベリアウラル地方の36居住地区で鳥インフルエンザ(H5N1型)確認、さらに67地区で感染の疑い。飼育および野生の鳥が1万1千羽以上死に、感染防止為12万1千羽以上を処分。
  • 2005年8月26日、ベトナムニンビン省クックホン国立公園で死亡したジャコウネコの血液から鳥インフルエンザウイルスH5N1型が確認された。
  • 2005年8月27日、茨城県小川町(現小美玉市)で鶏から鳥インフルエンザの抗体が確認された。H5型。
  • 2005年10月17日、中国湖南省の9歳の少年が、鳥インフルエンザに感染し、10月10日に発病し、発熱、肺炎の症状があり、10月12日に退院したが、同少年の姉が同症状で10月17日に死亡した。抗体検査で陰性を示し確定に至っていない。
  • 2005年10月19日、ロシアのトゥーラ州(モスクワから200キロ余りの南、ロシア欧州部)で鳥インフルエンザH5N1型のウイルス検出された。
  • 2005年10月20日、タイで今年初めての死者が出た。死者の合計13人。
  • 2005年10月23日、イギリスで死んだオウムから鳥インフルエンザウイルスH5N1型が検出された。
  • 2005年10月24日、モスクワ南東約400kmのロシア中部タンボブ州で鳥インフルエンザの発生が確認された。
  • 2005年10月28日、ルーマニアの農業省は、モルドバとの国境付近でサギの死体から、毒性の強いH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが検出されたと発表した。
  • 2005年10月31日、茨城県は、小川町(現小美玉市)の採卵養鶏場で感染暦を示す陽性反応の鶏が見つかり、鶏の殺処分を命じたと発表した。県内で発覚した抗体、ウイルス検査での陽性反応は31カ所目。
  • 2005年11月3日、ベトナムのバクザン省で呼吸困難になった患者一人が、鳥インフルエンザ感染の疑いで隔離された。
  • 2005年11月4日、農水省は、茨城県の養鶏場で、また新たに感染暦を示す抗体陽性の鶏が見つかったと発表した。同養鶏場の開放型鶏舎の18万羽に殺処分命令を出した。同県内で抗体陽性の鶏が見つかった養鶏場は32カ所と広がった。
  • 2005年11月4日、中国農業省は、同国東北部の遼寧省黒山県での鶏の大量死はH5N1型ウイルスによる鳥インフルエンザと発表した。鳥インフルエンザ発生の周辺で家禽約37万羽が処分された。
  • 2005年11月5日、世界保健機関は、インドネシアで19歳の女性が鳥インフルエンザに感染し死亡したことを確認した。これで鳥インフルエンザ感染による同国の死者は5人となった。
  • 2005年11月6日、中国衛生省は、鳥インフルエンザ(H5N1型)が発生した湖南省湘潭県で肺炎になった男女三人(うち一人死亡)について鳥インフルエンザに感染した可能性も考慮するとした。
  • 2005年11月7日、ベトナム保健省が、ハノイでH5N1型鳥インフルエンザウイルス感染による死者が10月末に出たと発表した。
  • 2005年11月10日、中国遼寧省北寧市の農村地帯でニワトリが鳥インフルエンザH5N1型に感染したと発表。
  • 2005年11月10日、中国安徽省で、24歳の女性が鳥インフルエンザに感染し、11月1日に発病し、発熱、肺炎の症状を示し、死亡した。
  • 2005年11月11日、クウェートで鳥インフルエンザに感染した渡り鳥のフラミンゴから高病原性のH5N1型ウイルスが検出されたことが明らかになった。ペルシャ湾岸地域で同型が見つかったのははじめて。中国でも湖北省京山県で家禽が鳥インフルエンザH5N1型に感染したことを発表した。
  • 2005年11月13日、茨城県美野里町(現・小美玉市)の鶏から鳥インフルエンザウイルスが確認された。約8万羽の殺処分。
  • 2005年11月17日、インドネシアで鳥インフルエンザにより新たに16歳と20歳の女性二人が死亡したことを世界保健機関が確認した。
  • 2005年11月19日、カナダの中部マニトバ州で渡り鳥からH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが検出された。この外、ブリティッシュコロンビア州、ケベック州でもH5N2、H5N3、H5N9の各種のウイルスが渡り鳥から検出された。
  • 2005年11月21日、ルーマニアドナウ川デルタ地帯の村で家禽から毒性の強いH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが検出された。10月にもH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが検出されている。
  • 2005年11月22日、ロシア南部のボルガ川デルタ地帯でH5型の鳥インフルエンザにより野生の白鳥約250羽が死んだ。アストラハニ近郊の地域が隔離された。
  • 2005年11月23日、中国農業省は、新彊ウイグル自治区米泉市で家禽が鳥インフルエンザ(H5N1型)に感染し、15日からこれまでに2,064羽が死んだと発表した。感染のあった現場周辺の84,000羽を処分した。
  • 2005年11月25日、中国農業省は、内モンゴル自治区北部の紮蘭屯市で鳥インフルエンザ(H5N1型)に感染した家禽が新たに発見されたと発表した。240羽の家禽餓死に、16,567羽が処分された。
  • 2005年11月29日、茨城県は、同県美野里町(現小美玉市)の採卵養鶏場(9鶏舎)の鶏から新たにウイルスを検出したと発表した。同県内では10例目。
  • 2005年12月3日、インドネシア保健局は、鳥インフルエンザ感染者の死亡が確認されたと発表した。同国では8人目。4日前に死亡したインドネシア人女性患者 (25) の感染を世界保健機関が確認した。
  • 2005年12月3日、ウクライナ農業政策省は、クリミア半島の農村部で鳥インフルエンザウイルスが検出されたことを明らかにした。
  • 2005年12月9日、茨城県は、同県小川町(現小美玉市)の採卵養鶏場(一鶏舎)でH5型の抗体陽性が新たに確認されたと発表した。
  • 2005年12月12日、インドネシアの保健相は、11月に死亡し35歳の男性を世界保健機関が鳥インフルエンザに感染していたことを確認したと発表した。
  • 2005年12月22日、インドネシアで新たに二人が鳥インフルエンザで死亡したことが、世界保健機関の検査で分かった。

2006年

  • 2006年1月3日、中国農業省は、四川省大竹県で、鳥インフルエンザ(H5N1型)が確認されたと発表した。
  • 2006年1月5日、トルコ当局は、高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型で14歳の少年が1日、同国東部の病院に入院していた15歳の少女が5日死亡したと発表した。
  • 2006年1月6日、トルコ東部の病院で鳥インフルエンザにより11歳の少女が死亡した。同国での鳥インフルエンザによる犠牲者が3人となった。
  • 2006年1月9日、トルコの保健当局者は、新たに鳥インフルエンザウイルスが検出されたことを明らかにした。高病原性のH5N1型かどうか不明。
  • ベトナムで、鳥インフルエンザによく似た症状で、2006年7月28日にベトナム南部キエンザン省の病院に入院した男性(35)患者が、8月8日に死亡した。ホーチミン市のパスツール病院で検査した結果、H5N1型陰性と判明した。
  • 2006年8月8日、インドネシア保健省は、新たに二人が死亡したことを確認した。同国での死者は44人になった。死亡したのはいずれも16歳の少年少女だった。

関連項目

外部リンク