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2020年7月1日 (水) 05:41時点における版

ミシシッピ州の旗(ミシシッピしゅうのはた、The flag of Mississippi)は、アメリカ合衆国ミシシッピ州州旗であるが、1894年に制定された州旗は2020年6月28日に廃止され、新しい州旗を策定中である。

1894年に採用された州旗[1]には、カントン(州法典では「ユニオン」と呼ばれる)の部分に南軍旗が描かれており、2020年時点で南軍旗を組み込んだ唯一の州旗でだった。チャールストン教会銃撃事件ジョージ・フロイドの死亡事件を受けて、コミュニティや州の議員は、南軍旗を含んだデザインに反対して新しい州旗のデザインを提案した[2]。州下院は2020年6月27日に賛成85、反対34で州旗の変更を承認し、州上院は旗に関する投票を6月28日に行うために、規則を一時停止することを賛成36、反対14で承認した。ミシシッピ州知事テイト・リーブス英語版は、法案が可決され提出されればそれに署名すると述べている[3]。州旗を直ちに廃止し、新しい州旗をデザインするための委員会を設置する法案が、2020年6月28日に州下院と州上院の両方で可決された。

歴史

州旗のデザインは1861年以降、公式2回に変更されている。1894年に採用された現在のバージョンが、最も長く使用されている[4]

最初の旗

ミシシッピ州旗(初代)
ミシシッピ州旗(初代)
名称マグノリアの旗
使用市民用陸上旗、政府用陸上旗 市民・政府陸上?
採用1861年3月30日 (1861-03-30)
廃止1865年8月22日 (1865-8-22)
デザイン赤い縁取りで、白地の中央にモクレン(マグノリア)の木。カントンには青地に白い五芒星が1つ描かれている。
デザイナーミシシッピ州議会 旗・紋章制定委員会
使用市民用陸上旗、政府用陸上旗 市民・政府陸上?
デザイン一般的に使用された、非公式の変種[5]

1861年以前、ミシシッピ州には公式の州旗がなかった。南北戦争開戦間近の1861年1月9日にミシシッピ州がアメリカ合衆国(ユニオン)からの離脱を宣言すると、傍聴席にいた傍聴人が議場のミシシッピ議会議員にボニーブルーの旗を手渡し[6]、独立の証として州都ジャクソン州会議事堂の上に掲げられた[7]。その夜、ジャクソンの住民はこの旗を掲げて通りを練り歩いた。アイルランド出身の歌手で劇作家のハリー・マッカーシー英語版は、その様子を見て、愛国歌『ボニー・ブルー・フラッグ』を作詞作曲した。この歌は、『ディキシー』に次いで当時のアメリカ連合国で人気のある歌であった[4][8]

ミシシッピ州の最初の州旗は別名「マグノリアの旗」として知られる。1861年3月30日から1865年8月22日まで公式の州旗だった[5]。1894年に現在の旗[注釈 1]が初めて採用されるまで、この旗は非公式に使用されていた[9]。1861年1月26日、州議会の議員たちは、州の紋章と「適切な旗」をデザインするために任命された特別委員会の報告書を承認した[6]。委員会が推奨した旗は「白地の旗、中央にマグノリアの木、左上隅に青地で中央に白星、旗は赤い縁取りと旗の端に赤いフリンジで仕上げる」であった[10]。時間的制約と「州の防衛のための手段」を調達しなければならないという圧力のため、代議員たちは1861年1月に公式に旗を採択をしなかったが、同年3月に再招集されたときに採択した[11]。南北戦争中は南軍の様々な旗の方が頻繁に掲揚されていたため、マグノリアの旗が広く使用されたり掲揚されたりすることはなかった[9]。南北戦争終結後、ジャクソンで開催されたミシシッピ州憲法制定会議は、1861年の議会で可決された多くの法律や決議を無効にした。無効化された法律の中には、1861年の「ミシシッピ州の紋章と旗を制定する」法律もあり、以降、ミシシッピ州には公式な州旗がない状態となっていた[12]

1894年の州旗

ミシシッピ州の旗(2代)
ミシシッピ州の旗
使用市民用陸上旗、政府用陸上旗 市民・政府陸上?
比率2:3
採用1894年2月7日 (130年前) (1894-02-07)
廃止2020年6月28日 (2020-6-28)
デザイン青、白、赤の水平の三色旗で、カントンには南軍旗が描かれている。
デザイナーEdward N. Scudder

1894年2月7日、ミシシッピ州立法府は、南北戦争時代のマグノリア旗[4]を、カントンに南軍旗を取り入れた新しいデザインに変更した。

の水平方向の三色旗であり、カントン(州法典では「ユニオン」と呼ばれる)の部分に南軍旗が描かれている。カントンには南北戦争時代の北バージニア州陸軍の戦闘旗が描かれており、この旗は時を経て旧アメリカ連合国を表すようになった。旗の上の13個の星は正式には「連邦の元の州の数」を表しているが、連邦から離脱した11州に、南軍と連邦の両方の統治機関を持っていたミズーリ州とケンタッキー州を合わせた13州を表していると考えられることもある[1]

1972年ミシシッピ州法典(Missississippi Code of 1972)のTitle 3, Chapter 3には、この旗について次のように記述されている。

§ 3-3-16. Design of state flag. The official flag of the State of Mississippi shall have the following design: with width two-thirds (2/3) of its length; with the union (canton) to be square, in width two-thirds (2/3) of the width of the flag; the ground of the union to be red and a broad blue saltire thereon, bordered with white and emblazoned with thirteen (13) mullets or five-pointed stars, corresponding with the number of the original States of the Union; the field to be divided into three (3) bars of equal width, the upper one blue, the center one white, and the lower one, extending the whole length of the flag, red (the national colors); this being the flag adopted by the Mississippi Legislature in the 1894 Special Session.[13][9]

§3-3-16 州旗のデザイン ミシシッピ州の公式の旗のデザインは、次の通りとする。幅は長さの3分の2とする。ユニオン(カントン)は正方形とし、その幅は旗の幅の3分の2とする。ユニオンの地は赤とし、その上に幅の広い青のX字型十字を置き、白で縁取り、元の連邦の州の数に対応する13個の五芒星で飾られているものとする。地は同じ幅の3つの部分に分割され、上は青、中央は白、下は旗の全長に渡って赤(ナショナルカラー)である。これは1894年の特別議会でミシシッピ州議会が採択した旗である。

州旗 (1894年-1996年) 現在使われていない歴史的な旗? 州旗 (1996年-2001年) 現在使われていない歴史的な旗? 州旗 (2001年-2020年) 現在使われていない歴史的な旗?
ミシシッピ・ウェルカムセンターに掲揚されたミシシッピ州旗(2016年)。

1906年、ミシシッピ州は立法府によって再制定されていない、または新しい法典に盛り込まれていない全ての一般法を廃止した改正法体系を採用した[14]。立法府は1894年の州旗についての言及を不注意から行わなかった。この見落としのため、1906年から2001年までは公式の州旗がない状態となったが、これは誰にも気づかれず、21世紀になってようやく判明した[15][13]。2000年にミシシッピ州最高裁判所は、1906年の州議会によって1894年の州旗の採用が廃止されていたことを確認した[16]。公式の州旗と考えられていたものは、それまでの94年間は慣習や伝統によってそうなっていたに過ぎなかったことになる[17]

2003年にジョージア州が新しい州旗を採用して以降、ミシシッピ州旗は南軍の戦闘旗を含む唯一の州旗となった。2001年には、北米旗章学協会英語版(NAVA)が実施した調査で、ミシシッピ州旗はカナダの州旗、アメリカの州旗、アメリカの領土旗の72の旗の中で、デザインの質で22位にランク付けされた[18]

2015年にサウスカロライナ州チャールストンで発生した教会銃乱射事件では、エマニュエルアフリカンメソジストエピスコパル教会の黒人信者9人が南軍崇拝者英語版で白人至上主義者のディラン・ルーフによって殺害された。これを受けて、南部の各州が公式の場での南軍旗の使用をやめるようになった[19]。これは、ミシシッピ州の州旗に対する批判の高まりにも繋がった。ミシシッピ州の8つ全ての公立大学と、ビロクシなどのいくつかの市・郡は、現在、南軍旗が取り除かれるまで州旗を掲揚することを拒否している。ニュージャージー州オレゴン州ペンシルベニア州フィラデルフィアにおける50州の全ての州旗の展示では、ミシシッピ州旗が除去されている[19][20][21][22][23]

2015年と2016年に20以上の州旗関連の法案が下院に提出されたが、いずれも委員会を通過しなかった[19]。州旗は「州が認めたヘイトスピーチ」に等しいと主張する2016年の連邦訴訟は、連邦地裁と第5巡回区控訴裁判所の両方で棄却された[24][25]連邦最高裁はこの訴訟を審理することを拒否した[26]

州旗の変更の提案

2001年の州民投票

案であり採用されなかった旗? 2001年に提案された旗

2001年1月、当時のロニー・マスグローブ英語版州知事は独立委員会を任命し、新しい州旗のデザイン案を作成させた[9][17]。提案された新しい州旗は、カントンの南軍旗を20個の星に置き換えるものだった。外側のリング状の13個の星は当初の13植民地を表し、6個の星のリングは、歴史的にミシシッピ州の領域において主権を持っていた6つの国(集団国家としての様々なネイティブアメリカン諸国、フランス帝国スペイン帝国大英帝国アメリカ合衆国アメリカ連合国)を表し、内側の少し大きめの星はミシシッピそのものを表している。

2001年4月17日、独立委員会が作成した新しいデザインを採用すべきかどうかを問う、法的拘束力のある[27][28]州民投票が、ミシシッピ州の有権者を対象に実施された[15]。結果は賛成64%(488,630票)、反対36%(267,812票)となり、1894年の州旗を維持することとなった[29]

ホスピタリティ・フラッグ

案であり採用されなかった旗? ミシシッピ州の新しい州旗として、2014年にローリン・ステニスがデザインし提案した「ホスピタリティ・フラッグ」。
2019年からは、ステニスの旗の提案を宣伝する特別ナンバープレートが購入可能になった。

2014年に元アメリカ上院議員ジョン・C・ステニスの孫娘である地元のアーティスト、ローリン・ステニスが、代替となる州旗のデザインを考案した[30]。彼女の提案は元々は"Declare Mississippi"(ミシシッピ宣言)と呼ばれていた旗で、彼女の名前を取って「ステニス・フラッグ」と呼ばれるようになった。ローリン・ステニスが旗に込めたメッセージは、「自分たちの過去を否定したり美化したりすることなく、自分たちの歴史と希望をより良く捉えられるイメージを作ること」であり、それを"HISTORY + HOPE + HOSPITALITY"(歴史+希望+ホスピタリティ)という言葉で表した[31]。2020年6月、ステニスは、自分の姓が旗の名前として使われていることによる潜在的な害を理由に、州旗を変更する運動から距離を置いた。その後、彼女のデザインは「ホスピタリティ・フラッグ」に改称された[32][33]

この旗は白地の中央に大きな青色の星が配されており、これはボニー・ブルー・フラッグの色を反転させたものである[34]。その星が、ミシシッピが連邦に加盟した時の州を表す19個の小さな星で囲まれており、これはまた、この地域の先住民が作った人工物からインスピレーションを得た「統一と連続性」を象徴している。中央の白い部分は「信仰と可能性」を表している。両側には垂直の赤いバーが並んでおり、これは「民間人や軍人を問わず、全ての人の自由と正義を追求するために名誉ある命を捧げたミシシッピの人々によって流された血」を表している[31]。ステニスはインタビューで、赤いバーは「ミシシッピに住む人の旗の問題に関する『情熱的な違い』を表している」と述べている[35]

この旗が提案されて以来、ステニスの旗を正式な州旗にするための多数の法案が立法府に提出されてきたが、今のところどれも可決されていない[36][37]。2019年4月17日、ミシシッピ州知事のフィル・ブライアントは新たな特別ナンバープレートを承認する法案に署名した。新しい特別ナンバープレートの1つに、ステニスの旗と"HISTORY + HOPE + HOSPITALITY"というフレーズが書かれたものがある。これは、ステニスの旗のデザインが公式な立場で使用されることについて、州が初めて行った裁可だった[38]

2020年の州旗変更

2020年6月9日、『ミシシッピ・トゥデイ』紙は、議員たちが州旗を変更するための集票と法案の起草を始めたと報じた。この行動は、ジョージ・フロイドの死亡事件の後の数週間に及ぶ全国的な抗議行動を受けてのもので、6月6日にはミシシッピ州知事邸の前でも抗議行動が行われていた[39]。これは、州旗を変更するための実質的な行動としては、2001年の住民投票以来初めてのことである。この法案は、ローリン・ステニスのデザインを新しいミシシッピ州旗として採用するものである。共和党所属の下院議長フィリップ・ガン英語版の支持を得て、議員たちはこの決議案を支持するよう共和党議員に呼びかけている。ガン下院議長は、30人の共和党員からの支持が確保されれば、45人の民主党議員とあわせて下院の委員会の通過が確実になるとしている[2]。6月10日の報道によると、議員たちは、州旗を変更するための決議案を支持する共和党議員を少なくとも20人確保したと考えているが、それ以上の20人の共和党員は反対しているという。議員たちの目標は、この会期での法案の審議を可能にするための規則の一時停止のために必要な、45人の民主党員とともに、少なくとも40人の共和党員を確保することである[40]。6月11日、上院の民主党議員たちは州旗を変更するための決議案を提出した[41]。6月24日、デルバート・ホセマン州副知事は新しい州旗への支持を表明した[42]。他に、リン・フィッチ司法長官、シャッド・ホワイト州監査官、アンディ・ギプソン農業委員、マイク・チェイニー保険委員も支持を表明している[43]

2020年6月27日、ミシシッピ州議会は州旗を再デザインするための委員会を設置する決議を可決した[44]。この決議は州下院で85-34、州上院で36-14の賛成多数で可決された。決議案では、"In God We Trust"というアメリカ合衆国の国是を再デザインされる州旗に入れることを要求している[45]

2020年6月28日、州下院は現在の州旗を直ちに廃止し、新しい州旗をデザインする9人の委員会を構成し、2020年11月に州民投票を行わせる法案、"House Bill 1796"を可決した[46][47]。州下院では賛成91、反対23[48]、州上院では賛成37、反対14[49]で可決された。テイト・リーブス州知事は、州議会で可決された州旗の法案には必ず署名して法律を成立させると表明している[50]

2つの旗プラン

複数の議員によって、ミシシッピ州の第二の州旗を作るプランが提案された。この旗は、南軍のイメージを含まないデザインで、現在の州旗と一緒に使用されることになる。テイト・リーブス知事は、このプランを分離すれども平等の法原理と比較して、もし実施された場合には「この議論のどちらの側をも満足させるものではない」と述べて、このプランを却下した[33]

脚注

注釈

  1. ^ この旗が最初に採用されたのは1894年2月のことである。しかし、1906年に廃止され、2001年4月に公式に再採用されるまで「事実上」の使用にとどまっていた。

脚注

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  48. ^ https://eu.clarionledger.com/story/news/politics/2020/06/28/live-mississippi-lawmakers-take-up-state-flag-bill/3275024001/
  49. ^ https://www.youtube.com/watch?v=1yRUagTaWT4
  50. ^ https://www.theroot.com/mississippi-governor-grudgingly-says-hell-sign-a-bill-t-1844196432

参考文献

外部リンク