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一般ユーザー向けのキャッチフレーズ的なニュアンスで、「'''ツインカム''' (TWINCAM) 」と呼ばれることもある。四輪では[[トヨタ自動車|トヨタ]]<ref>[[トヨタ・T型エンジン|2T-G]]系などが主力の時代はDOHCと称している。</ref>と[[日産自動車|日産]]<ref>[[日産・FJエンジン|FJ20]]系しかDOHCエンジンが無かった時代にはDOHCと称している。</ref>、スズキ、[[ダイハツ工業|ダイハツ]]が、二輪ではカワサキがこの呼称を採用している。
一般ユーザー向けのキャッチフレーズ的なニュアンスで、「'''ツインカム''' (TWINCAM) 」と呼ばれることもある。四輪では[[トヨタ自動車|トヨタ]]<ref>[[トヨタ・T型エンジン|2T-G]]系などが主力の時代はDOHCと称している。</ref>と[[日産自動車|日産]]<ref>[[日産・FJエンジン|FJ20]]系しかDOHCエンジンが無かった時代にはDOHCと称している。</ref>、スズキ、[[ダイハツ工業|ダイハツ]]が、二輪ではカワサキがこの呼称を採用している。


ただし厳密にはDOHC=ツインカムではない。これは[[V型エンジン|V型]]や[[水平対向エンジン|水平対向]]などシリンダーヘッドを2つ持つエンジンの場合、SOHCでカムシャフトが2本(2-OHC)になるため<ref>逆に、各Vバンク上に1本ずつのカムシャフトを持つが、それぞれが吸気または排気専用のカム列を持ち、SOHCを名乗りながらもシリンダー側から見るとDOHC類似のカムシャフト配置となる[[狭角V型エンジン]]のようなケースもある。</ref>。もっとも、これをツインカムと称する例はまず無いものと思われる。トヨタはシリンダーヘッドがふたつになるV型のDOHCエンジンに関しては「FOUR CAM(4-OHC)」と称していた。
世界的にはDOHC=ツインカムです。シリンダーヘッドを2つ持つエンジンの場合でも吸排気バルブを2本のカムで作動させる意味でツインカムと言われています、一部の国産車でSOHCの水平対向やV型エンジンでツインカムと表示しているのは、販売戦略用の表示で国際的には理解されるものではありません。購買者を惑わす表示メーカーは即刻表示を変更するべきです。
例外的に[[ハーレーダビッドソン]]は自社のカムシャフトが2本の[[V型2気筒]]OHVエンジンをTWINCAMと称している。これは自社の従来のエンジンのカムシャフトが1本だったことから、それらと区別するためである。
表記はトヨタが「TWINCAM24(4バルブ6気筒)」「TWINCAM16(4バルブ4気筒)」「TWINCAM20(5バルブ4気筒)」、日産は「TWINCAM 24VALVE(4バルブ6気筒)」「TWINCAM 16VALVE(4バルブ4気筒)」、ダイハツが「TWINCAM-16V(4バルブ4気筒)」「TWINCAM-12V(4バルブ3気筒)」となる。


また別名では、主に直列(並列)型エンジンがTWIN CAM、V型および水平対向型エンジンがそれぞれFOUR CAMなどと呼ばれる。TOHC(Twin OverHead Camshaft / ツイン・オーバーヘッド・カムシャフト )と表記されることもある<ref>鈴木孝『エンジンのロマン <small>発想の展開と育成の苦闘</small>』(三樹書房、2002年) ISBN 4-89522-287-X</ref>。
== マルチバルブ ==
== マルチバルブ ==
[[ポペットバルブ]]を持つ4ストロークエンジンにおいて1つの[[気筒]]あたり2より多いバルブを持つことをいい、そのエンジンのことをマルチバルブエンジンという。一部にSOHCやOHV(OHVの場合は一部の[[オートバイ|二輪車]]あるいは産業用、[[農業機械]]用を含む一部の[[ディーゼルエンジン]])のマルチバルブエンジンが存在するものの、ほとんどのマルチバルブエンジンはDOHCエンジンであり、前述のプジョーのレース車最初のDOHCエンジンも、同時に最初のマルチバルブエンジンでもあり、両者は密接な関係にある。{{Main|マルチバルブ}}
[[ポペットバルブ]]を持つ4ストロークエンジンにおいて1つの[[気筒]]あたり2より多いバルブを持つことをいい、そのエンジンのことをマルチバルブエンジンという。一部にSOHCやOHV(OHVの場合は一部の[[オートバイ|二輪車]]あるいは産業用、[[農業機械]]用を含む一部の[[ディーゼルエンジン]])のマルチバルブエンジンが存在するものの、ほとんどのマルチバルブエンジンはDOHCエンジンであり、前述のプジョーのレース車最初のDOHCエンジンも、同時に最初のマルチバルブエンジンでもあり、両者は密接な関係にある。{{Main|マルチバルブ}}

2009年12月23日 (水) 00:09時点における版

DOHC (ディーオーエィチシー) とは、Double OverHead Camshaft(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)の略で、レシプロエンジンにおける吸排気弁機構の形式の一つ。

特徴

DOHCエンジンのシリンダヘッド(直押し式)の断面
DOHCエンジン
排気バルブと吸気バルブが別々のカムによって開閉されている

シリンダー頭部の排気側と吸気側にそれぞれ独立したカム軸を持つ構造となっている。吸気弁と排気弁が別々のカムシャフトによって駆動されるため、カムシャフトの負荷が分散される。さらにOHVとの比較において、バルブを駆動するための機構、プッシュロッドおよびロッカーアームが不要になるため基本的に高回転化・高出力化が容易である、また一部のDOHCエンジンにバルブを開く量(バルブストロークまたはバルブリフト)を多くする為にロッカーアーム(スイングアーム)が使われているタイプや、DOHCと同じ直押し式を採用するSOHCエンジンもある。

バルブレイアウトは、吸気弁と排気弁が対向したレイアウトで吸排気効率の良い「クロスフロー」形か、あるいは吸気弁と排気弁を対角に配置したレイアウトの「カウンターフロー」形[1]かどちらかを選択可能であり、燃焼室形状の設計自由度が高いことなど、利点が多数あることから高性能エンジンの多くに採用されている。

プライベートチューンにおいては、バルブタイミングを吸気・排気別々に調整できるためにバルブタイミング設定の自由度が高い事なども特徴であるが、欠点としては部品点数が増える、カムシャフトが2本になるためエンジン上部が大型化する[2]ロッカーアームを使用しないエンジンの場合にはバルブリフト量を増加させる為にはカムシャフトの新造が必須になるなどの問題がある。

高度なレーシングエンジンの中にはカムシャフトが2本になる事による重量増加を嫌って敢えてSOHCOHVのレイアウトを採った事例も存在する[3]

歴史

1912年に、エルネスト・アンリがフランスプジョーのレーシングカーのために開発したのが最初であるとされるが、スペインイスパノ・スイザ社の設計者マルク・ビルキヒトによる着想を剽窃したという説もある。

部品点数が多く機構が複雑であることから、1950年代以前はレーシングカーや高級スポーツカーに限定された技術であった。

第二次世界大戦後、戦前からDOHCエンジンを積極的に手掛けてきたアルファ・ロメオ社が量産志向に転じたほか、ヨーロッパ日本の大手自動車メーカーは、従来の量産エンジンを元にヘッド部分をDOHC形に改造した高性能エンジンを開発、スポーツモデルに搭載して市場に送り出した。

日本で初めてDOHCエンジンを搭載した市販4輪自動車は、1963年に発表された軽トラックホンダ・T360である。T360が水冷4気筒2バルブDOHCを採用したことには特に意味はなく、ホンダが手持ちの自動車用エンジンは開発中であったSシリーズのDOHCエンジンしかなかったためである(ちなみに、TN360およびアクティはSOHC)。ただし当時の軽自動車2ストローク機関のものが多く存在し、それに4ストローク機関でカタログスペック上の馬力で対抗するという必要性はあった(次いで市販された軽乗用車のN360には空冷2気筒SOHC2バルブエンジンが採用されており、カタログスペック上の馬力ではなく、実用域での馬力重視に転換している)。その後、同様に2ストローク機関のものが数多く存在するオートバイにおいて、DOHCは広く採用されている。国産のオートバイでは1965年ホンダCB450KO、1972年にはカワサキの輸出専用車種Z1 900[4]などがDOHCエンジンを搭載した。

本来スポーツモデル向けの機構と見なされてきたDOHCであるが、トヨタ自動車は吸排気効率を高めつつ理想的な燃焼室形状を確保できる自由度の高さに着目、省燃費化・低公害化の手段として実用車向けの普及型DOHCエンジン(ハイメカツインカム)を開発し、1986年8月以降、同社のカムリビスタを皮切りに、カローラスプリンターコロナカリーナマークIIクラウンスターレット等のガソリンエンジン乗用車のほとんどに採用、1994年1月以降、カローラバンスプリンターバン等の一部のガソリンエンジン商用車に搭載するようになった。また、軽自動車の分野では2001年5月以降には実用車、商用車などにかかわらず、スズキの全ての軽自動車が、2007年12月以降には実用車、商用車などにかかわらず、ダイハツの殆どの軽自動車[5]が、それぞれDOHCエンジンを搭載するようになった。

以来、量産型DOHCエンジンは世界の多くのメーカーに普及している。 更に、ディーゼルエンジンにもDOHCを採用する例(三菱・パジェロ[6]=4M41、三菱ふそうキャンターローザエアロミディ日産・シビリアン=4M50(T5)、いすゞ・ビッグホーンいすゞ・ウィザード=4JX1[7]いすゞ・エルフ日産・アトラスマツダ・タイタン=4JJ1-TCS)も散見される。

他の名称について

一般ユーザー向けのキャッチフレーズ的なニュアンスで、「ツインカム (TWINCAM) 」と呼ばれることもある。四輪ではトヨタ[8]日産[9]、スズキ、ダイハツが、二輪ではカワサキがこの呼称を採用している。

ただし厳密にはDOHC=ツインカムではない。これはV型水平対向などシリンダーヘッドを2つ持つエンジンの場合、SOHCでカムシャフトが2本(2-OHC)になるため[10]。もっとも、これをツインカムと称する例はまず無いものと思われる。トヨタはシリンダーヘッドがふたつになるV型のDOHCエンジンに関しては「FOUR CAM(4-OHC)」と称していた。 例外的にハーレーダビッドソンは自社のカムシャフトが2本のV型2気筒OHVエンジンをTWINCAMと称している。これは自社の従来のエンジンのカムシャフトが1本だったことから、それらと区別するためである。 表記はトヨタが「TWINCAM24(4バルブ6気筒)」「TWINCAM16(4バルブ4気筒)」「TWINCAM20(5バルブ4気筒)」、日産は「TWINCAM 24VALVE(4バルブ6気筒)」「TWINCAM 16VALVE(4バルブ4気筒)」、ダイハツが「TWINCAM-16V(4バルブ4気筒)」「TWINCAM-12V(4バルブ3気筒)」となる。

また別名では、主に直列(並列)型エンジンがTWIN CAM、V型および水平対向型エンジンがそれぞれFOUR CAMなどと呼ばれる。TOHC(Twin OverHead Camshaft / ツイン・オーバーヘッド・カムシャフト )と表記されることもある[11]

マルチバルブ

ポペットバルブを持つ4ストロークエンジンにおいて1つの気筒あたり2より多いバルブを持つことをいい、そのエンジンのことをマルチバルブエンジンという。一部にSOHCやOHV(OHVの場合は一部の二輪車あるいは産業用、農業機械用を含む一部のディーゼルエンジン)のマルチバルブエンジンが存在するものの、ほとんどのマルチバルブエンジンはDOHCエンジンであり、前述のプジョーのレース車最初のDOHCエンジンも、同時に最初のマルチバルブエンジンでもあり、両者は密接な関係にある。

その他の動弁機構--歴史順

  • SV サイドバルブ
  • OHV オーバーヘッド・バルブ
  • RV ロータリーバルブ
  • SOHC シングル・オーバーヘッド・カムシャフト

関連項目

脚注

  1. ^ 一部のディーゼルエンジンのみこのレイアウトを採用する。
  2. ^ 例外としてトヨタのハイメカツインカム等に見られる狭角バルブのDOHCエンジンなど。
  3. ^ ペンスキーイルモアが1994年のインディ500に投入した3400ccメルセデスOHVエンジンなど
  4. ^ 翌年には排気量を750ccに変更した国内向けモデル750RS(Z2)が登場している。
  5. ^ 2009年4月現在、同社の福祉専用車両のミラ セルフマチック(L250S型)を除く。
  6. ^ 3代目モデルで初採用。モデル末期にはカタログ落ちしていたが、4代目モデルの2008年10月の一部改良に伴い復活した。
  7. ^ 2005年現在は生産終了。
  8. ^ 2T-G系などが主力の時代はDOHCと称している。
  9. ^ FJ20系しかDOHCエンジンが無かった時代にはDOHCと称している。
  10. ^ 逆に、各Vバンク上に1本ずつのカムシャフトを持つが、それぞれが吸気または排気専用のカム列を持ち、SOHCを名乗りながらもシリンダー側から見るとDOHC類似のカムシャフト配置となる狭角V型エンジンのようなケースもある。
  11. ^ 鈴木孝『エンジンのロマン 発想の展開と育成の苦闘』(三樹書房、2002年) ISBN 4-89522-287-X