使用と言及の区別
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使用と言及の区別(しようとげんきゅうのくべつ、英語: use–mention distinction)とは、主に英語圏の言語哲学や言語学の用語で、語句を使用(use)すること、すなわち語句を普通に使うことと、語句に言及(mention)すること、すなわち語句そのものについて語ること、の区別を指す。つまり例えば、
- Jim went to Paris.[1](ジムはパリへ行った)
という文は Jim という語句を使用しているのに対し、
- ‘Jim’ has three letters.[1](「ジム」はアルファベット三文字である)
という文は Jim という語句に言及している。言及される語句は引用符やイタリックで強調される場合が多い[2]。「対象言語とメタ言語の区別」とも言い換えられる[2]。
用例
[編集]使用と言及の区別は、様々な文脈で論じられる。例えば、20世紀前半のレシニェフスキ[3]やクワイン[4][1]は、数理論理学においてこの区別を軽視すべきでないとしている。デイヴィドソンは1979年の論文 "Quotation" で「引用符とは何か」に対する答えの一つとしてこの区別を論じている[5]。デリダは1970年代のデリダ-サール論争の中で論じている[6]。ライオンズはこの区別を紹介するにあたり、「use」と「mention」という日常語を専門用語として使うことに批判的態度を取っている[2][7]。
関連項目
[編集]- James while John had had had had had had had had had had had a better effect on the teacher
- メタ言語
- シニフィアンとシニフィエ
- 意義と意味
- 地図-土地関係
- 引用符
- 皮肉の引用符
- ポインタ (プログラミング) [5]
脚注
[編集]- ^ a b c Cappelen, Herman; Lepore, Ernest; McKeever, Matthew (2023), “Quotation”, in Zalta, Edward N.; Nodelman, Uri, スタンフォード哲学百科事典 (Summer 2023 ed.), Metaphysics Research Lab, Stanford University 2023年7月22日閲覧。
- ^ a b c 北村一真『英文解体新書 構造と論理を読み解く英文解釈』研究社、2019年。ISBN 978-4327452926。「6-5 useとmentionの違い」
- ^ Simons, Peter (2020), “Stanisław Leśniewski”, in Zalta, Edward N., スタンフォード哲学百科事典 (Fall 2020 ed.), Metaphysics Research Lab, Stanford University 2023年7月22日閲覧。
- ^ 丹治信春『クワイン ホーリズムの哲学』平凡社〈平凡社ライブラリー〉(講談社〈現代思想の冒険者たち〉の増補版)、2009年(原著1997年)、20-25頁。
- ^ a b 木村大治『括弧の意味論』NTT出版、2011年。ISBN 978-4757142657。115頁。
- ^ ジャック・デリダ『有限責任会社』高橋哲哉; 増田一夫; 宮崎裕助訳、法政大学出版局〈叢書・ウニベルシタス〉、2002年、ISBN 9784588007521。74f頁。
- ^ Lyons, J. Semantics 1,2. Cambridge University Press, 1977
外部リンク
[編集]- Quotation - スタンフォード哲学百科事典「引用」の項目。