現代日本思想大系
現代日本思想大系(げんだいにほんしそうたいけい)は、1963年(昭和38年)から1968年にかけて筑摩書房から刊行された近代以降の日本思想史の叢書である。全35巻。
概要
幕末期から第二次世界大戦後に至るまでの日本思想史上の重要著作を収録し、各巻冒頭で編者による「解説」、巻末に各著作の「著者略歴」、「関係略年表」を付している(同じ頃、筑摩書房から刊行されていた『現代日本文学大系』(全97巻)がやはり明治維新以後の日本の文学作品を収録対象とした全集であり、姉妹企画としての位置づけがなされていたと思われる)。
巻構成は著者別編集の9巻(福沢諭吉・内村鑑三・鈴木大拙・河上肇・西田幾多郎・田辺元・和辻哲郎・柳田國男・三木清の著作を扱う)と、全巻の2/3以上を占める主題別編集の29巻に大別され、後者の編集にいくつかの新機軸が見られた。すなわち第9巻「アジア主義」のようにそれまで日本近代史上の負の遺産と考えられていたためきちんとした学問的研究がなされなかったもの、あるいは第10巻「権力の思想」のように狭義の思想史研究の視野に入ってこなかったものに独立した巻を充てている点などである。
第1巻配本は1963年6月刊の第15巻「社会主義」で、1968年2月刊の第22巻「西田幾多郎」をもって全巻の刊行が完結した。
全巻の内容
カッコ内は当該巻の編集および「解説」執筆者。
- 近代思想の萌芽(松本三之介)、1966年1月刊
- 福沢諭吉(家永三郎)、1963年9月刊
- 民主主義(家永三郎)、1965年12月刊
- ナショナリズム(吉本隆明)、1964年6月刊
- 内村鑑三(亀井勝一郎)、1963年11月刊
- キリスト教(武田清子)、1964年12月刊
- 仏教(吉田久一)、1965年5月刊
- 鈴木大拙(増谷文雄)、1964年10月刊
- アジア主義(竹内好)、1963年8月刊
- 権力の思想(神島二郎)、1965年11月刊
- 実業の思想(長幸男)、1964年5月刊
- ジャーナリズムの思想(鶴見俊輔)、1965年6月刊
- 文学の思想(中村光夫)、1965年3月刊
- 芸術の思想(矢内原伊作)、1964年8月刊
- 社会主義(大河内一男)、1963年6月刊
- アナーキズム(松田道雄)、1963年10月
- ヒューマニズム(小田切秀雄)、1964年3月刊
- 自由主義(多田道太郎)、1965年8月刊
- 河上肇(大内兵衛)、1964年2月刊
- マルキシズムⅠ(内田義彦・大塚久雄・松島栄一(解説))、1966年3月刊
- マルキシズムⅡ(竹内良知)、1965年10月刊
- 西田幾多郎(西谷啓治)、1968年2月刊
- 田辺元(辻村公一)、1965年4月刊
- 哲学思想(下村寅太郎・古田光)、1965年9月刊
- 科学の思想Ⅰ(井上健)、1964年4月刊
- 科学の思想Ⅱ(上山春平・川上武・筑波常治)、1964年9月刊
- 歴史の思想(桑原武夫)、1965年1月刊
- 和辻哲郎(唐木順三)、1963年7月刊
- 柳田國男(益田勝実)、1965年7月刊
- 民俗の思想(益田勝実)、1964年1月刊
- 超国家主義(橋川文三)、1964年11月刊
- 反近代の思想(福田恆存)、1965年2月刊
- 三木清(久野収)、1966年5月刊
- 近代主義(日高六郎)、1964年7月刊
- 新保守主義(林健太郎)、1963年12月
後継の出版企画
筑摩書房は本シリーズに続き、1968年 - 1971年には、第二次世界大戦後の著作を中心としたテーマ別編集の『戦後日本思想大系』(全16巻)、1969年 - 1972年には、上代から幕末までの人物を軸とした『日本の思想』(全20巻)を刊行。
1975年以降は、『現代日本思想大系』とほぼ同じコンセプトの『近代日本思想大系』が刊行し、1990年に全32巻で完結したが、こちらは戦後の著作も収録した現代日本思想大系と異なり、1945年の敗戦以前の著述刊行が対象であり、また巻構成もテーマ別編集をとらず著者別編集を主軸とするものであった(ただし著者別編集から漏れたものとしては、追補的な時代別アンソロジーとして「明治思想集」・「大正思想集」・「昭和思想集」が編まれ、そちらに収録された)。