明治文化全集

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

明治文化全集(めいじぶんかぜんしゅう)は、「明治文化研究会」の編集により、明治時代の基本的文献を集成した叢書である。1927年から1932年にかけて日本評論社から刊行(全24巻)されたが、その後も新たな文献を収録して新版の刊行がなされ、1967年1974年刊行の第3版(全32巻)が決定版となっている。

概要[編集]

1924年11月、吉野作造(会長)を始めとして尾佐竹猛宮武外骨石井研堂ら8名により明治文化研究会が結成された。この会は関東大震災による史料・文献の散逸を憂慮して結成されたが、明治時代の史料・文献のなかから近代日本形成に影響を及ぼした特に重要なものを選定・編集し刊行したのが『明治文化全集』(日本評論社)である。

各巻は文献に加えて研究者による文献解題、関係文献の年表を付す構成をとっている。収録文献は、明治維新から大日本帝国憲法発布・議会開設に至る明治前期のものを中心に約450点であり、現在では稀覯書となっている刊本や、公刊されなかった報告書・意見書・建白書など貴重な史料・文献を多数含み、明治史研究者にとっては最も基本的な文献の一つとなっている。内容的には自由民権篇・文明開化篇・社会篇を配するなど、社会史・民衆史的な関心が現れている点が注目され、大正デモクラシー的な史観で明治の多様な文化を掘り起こそうとする企図が顕著である。

1910年代までの日本史研究は、もっぱら江戸時代までを対象とするものであり、特に官学のアカデミズム史学は同時代史としての)明治維新前後を研究対象として扱うことがなかった(アカデミズム以外では、福地桜痴徳富蘇峰竹越三叉らによる維新史論があり、明治末期に『防長回天史』のような旧諸藩の幕末維新史編纂、『幕末百話』を初めとする新聞記者による故老の聞き書きなどが進められている)。しかしこの全集の刊行が一つの呼び水となって歴史資料の整備が進み、大政奉還から丁度60年後の1927年(“明治60年”)には明治節が制定され、これ以後は本格的な明治時代ブーム(復権)が到来した。

書誌[編集]

1927年から1932年にかけて刊行された初版は全24巻(24篇)で構成されていた。しかし、第二次世界大戦後の1955年1957年刊の再版は、当時の社会事情もあって初版のうち皇室篇など11巻を割愛し、新たに3巻を加え巻次を変更するなどの改版のうえ全16巻で構成された。1967 - 74年の第3版は、初版の全巻と第2版刊行時に追補された3巻を復刻し、さらに5巻を追補して全32巻からなっている。

1992年には第3版の復刻版が刊行されたが、この版ではさらに巻構成が再編され、巻数の整理で全28巻・別巻1となった、加えて新たに「付録」出版で『「明治文化全集(旧版)」月報総集』(初版・再版刊行時の月報)、『「明治文化全集」埋草一覧』の2冊が刊行された。

各版の刊行元はいずれも日本評論社(再版時のみ、社名変更で日本評論新社)。以下は、第3版による刊行書目。

  1. 憲政篇
  2. 自由民權篇
  3. 政治篇
  4. 新聞篇
  5. 雜誌篇
  6. 社會篇
  7. 外國文化篇
  8. 風俗篇
  9. 正史篇(上)
  10. 正史篇(下)
  11. 外交篇
  12. 經濟篇
  13. 法律篇
  14. 自由民權篇(続) - 再版で追補。
  15. 社會篇(続) - 再版で追補。
  16. 婦人問題篇 - 再版で追補。
  17. 皇室篇 - 再版では割愛。
  18. 教育篇 - 再版では割愛。
  19. 宗教篇 - 再版では割愛。
  20. 文學藝術篇 - 再版では割愛。
  21. 時事小説篇 - 再版では割愛。
  22. 飜譯文藝篇 - 再版では割愛。
  23. 思想篇 - 再版では割愛。
  24. 文明開化篇 - 再版では割愛。
  25. 雜史篇 - 再版では割愛。
  26. 軍事篇・交通篇 - 再版では割愛。
  27. 科學篇 - 再版では割愛。
  28. 憲政篇(続) - 第3版で追補。
  29. (別巻)明治事物起源 - 第3版で追補。
  30. (補巻1)維氏美学 - 第3版で追補。
  31. (補巻2)國法汎論 - 第3版で追補。
  32. (補巻3)農工篇 - 第3版で追補。

関連文献[編集]

関連の刊行叢書[編集]

1959年から1963年にかけて大久保利謙桑原伸介らの編集により風間書房から刊行された『明治文化資料叢書』(全12巻全13分冊)は、産業篇・経済篇・法律篇・外交篇・社会主義篇・社会問題篇・書目篇・教育篇・翻訳文学篇・スポーツ篇・世相篇・新聞篇からなり、文化史を中心とした叢書であるが、明治文化全集では手薄な明治後期の文献も収録している(大久保によれば『明治文化全集』を継承する意図があったようである)。

1988年から1992年にかけて岩波書店から刊行されたアンソロジー『日本近代思想大系』(全23巻・別巻1)は、『日本思想大系』の後続企画であり、明治文化全集とほぼ同じ時期の文献を収録対象としているが、比較的短い文献(長いものについては抜粋・抄録)が収録されている。

関連項目[編集]