掃除
掃除(そうじ)とは、掃いたり拭いたりすることによってゴミやシミなどの汚れを取りのぞくこと[1]。清掃とも言われる。
家事労働のうちの一つ。死馬牛の処理[2]や不要ファイルの削除を指す事もある。
掃除の目的・方法・注意点
掃除の基本的な目的は、ちり・ほこり・しみ等を除去することである。
基本的には帚、塵取り、ハタキ、モップ、雑巾、ブラシなどを用いて行われてきた。また現代では電気掃除機も用いられている。最近ではロボット掃除機も用いられることが増えてきた。
なお、ちり・ほこり・しみの主な原因は、人間、ペット、観葉植物などやその活動である。また、衣服・カーテン・カーペット類の劣化による繊維ごみもある。人やペットの体毛、皮脂、汗、糞尿。また食品の残滓やハネ。他にもインク類のハネこぼれや子供の落書き、区域外から持ち込まれたり舞い込んだりした土埃、粉塵、花粉などがある。
ちり・ほこり・しみ等は、ダニ・ノミ・雑菌類の繁殖培地となり、虫刺され、かぶれ、喘息や、各種炎症・感染症の原因となるほか、カビの発生、腐敗等により悪臭の原因や什器類の劣化の原因となる。私人の管轄外の公共部分の管理、例えば放流路(ドブ)や下水管の詰まり、ゴミ置き場の悪臭、地中に埋めたゴミ類の腐敗、焼却処理による粉塵、悪臭なども掃除の対象となる。
掃除に関する文化習慣
大掃除
徹底的に行う掃除を大掃除(おおそうじ)と言う。現代日本では特に年末に行うものを言う。一年分の汚れを除去し、新たな年に歳神を迎える準備をし、新年を新たな心持ちで始められるようにする意味がある。また、学校行事で学期末などに一斉に行う掃除も大掃除と呼ばれる。
日本の廃棄物の処理及び清掃に関する法律には、第5条第3項に「建物の占有者は、建物内を全般にわたつて清潔にするため、市町村長が定める計画に従い、大掃除を実施しなければならない。」と定められている[3]。同趣旨の条文は、1954年制定の旧清掃法から存在し[4]、1960年代頃までは実際に市町村が地区ごとの大掃除の計画(実施は年末に限らない)を立てることがあった[5]。
掃除用具の多機能化や高機能化により、日頃から多くの場所を掃除できるようになったため、大晦日前の住宅街などでも家族総出の大掃除は少なくなり、大掃除をしない家庭も増えてきた。
煤払い
煤払い(すすはらい)とは古くから続く日本の年中行事のことを指し、いわゆる大掃除のことである。現在でも、神社仏閣においては煤払いと称して歳末の恒例行事となっている。仏像の掃除は「御身拭い」とも呼ばれる。通常の箒や叩き が届かない建物・仏像の高所は、先に笹の葉を付けるなどした長さ数メートルの竹で浄めることが多い[6]
煤払いは本来、旧暦の12月13日に行われていた。これは徒弟などの奉公人が新年に里帰りできるよう、旅路の時間を考慮して行われていたからである。江戸時代には煤払いを終えると、冬場の重労働後の滋養強壮と長寿祈願を兼ねて「鯨汁(クジラ汁)」が日本各地で食されたことが、数々の川柳や書物、物売りの記録から残されており、その習慣は広く一般に普及していた。
江戸時代(中期以降)の大掃除は、押入れの奥から出てきたり、襖の下張りなどに使われていたのを見つけたりした浮世絵や瓦版を、ついつい読みふけってしまう、といった和やかな一面もあり、商家では、煤払いが終わると誰彼構わず胴上げを行うのが慣わしとなっていた。また、老人や病人、子供など掃除に参加しない者は、掃除を行っていない部屋に退避するか、外出して掃除の邪魔にならないようにしていた。
組織内での掃除
学校
世界的には少数であるが学校の教室等を児童や生徒が行う国がある[7]。日本では初等教育、中等教育の学校では教育の一環として一般的に行われる。台湾の小学校でも朝の時間帯に掃除の時間に上級生が登校して掃除を行っている例がある[8]。
アメリカ合衆国や欧州各国の多くの学校では、自分の手により掃除が行われる[9]。
アメリカ合衆国では用務員に当たるJanitor(ジャニター)が日常の校内清掃を行うことが多い[10]。子どもが掃除用の薬剤や道具で事故を負った場合の賠償責任の問題、掃除を行う要員の雇用機会の確保などが理由である[10]。ブラジルやオーストラリアでも掃除は専門業者が行うのが一般的である[7]。
21世紀になってから日本の学校での教室掃除がアラビア諸国などに知られるようになり、同地域の一部で教育の一環として行われるようになった。インドには日本式の教育を取り入れて掃除の時間がある学校もある[7]。
企業
アメリカ合衆国
アメリカの企業では、清掃は基本的に清掃業者や清掃の専任者が行う。アメリカは契約社会であり、漠然と会社の従業員になるのではなく、あらかじめ具体的な職種が指定されて雇用契約が結ばれるのであり、あらかじめ交わされる雇用契約書に「job description」などとして、行う職務がかなり具体的に列挙されており、一般にそこには「掃除」などというjobは書かれておらず、その契約書に書かれていないことを従業員にさせては重大な契約違反であるからである。もしも経営者が、従業員に対して、契約書に書かれていないようなオフィス全体や工場全体の掃除に参加することを強要したら、契約違反として裁判を起こされても当然だと見なされている。ただし、デスクワークの従業員が自分専用のデスク上の軽い掃除程度は行うことは一般的である。だがデスクワークの契約で雇用されている従業員が周囲の床の掃除機がけやモップがけは基本的に行わないのである。
日本
法令上は、事業者は日常行う清掃のほか、大掃除を、6月以内ごとに一回、定期に、統一的に行うこと、とされる(労働安全衛生規則第619条)。
大企業においてはオフィスなどは、基本的に外部の清掃業者が入り、定期的に(毎日、あるいは数日おきなどに)掃除をおこなっている。
工場では、生産ラインや工具の分解清掃は、製造工程の品質維持を目的とするほか、ラインや工具の耐久性向上、食品ラインなどにおける異物混入事故の予防や発見など通常業務における効果を期待して従業員によって行われる。さらに日本の工場では従業員教育の一環としても行われている面がある。その場合、未熟練作業者が品質に対する理解を深め、あるいはラインや製造工具、作業内容に対する知識を高めるための研修効果が期待されている。
宗教団体・宗教施設
宗教の種類や宗派ごとに異なるが、概して言えば、多数の信徒が参加して行う掃除や、修行者や僧侶が行う掃除がある。
- お身ぬぐい
- 煤払い
キリスト教の修道院では修道僧が基本的に自力で生活するので、掃除も自分で行う。
脚注
- ^ 大辞泉
- ^ 小林茂・他編『部落史用語辞典』柏書房1985年8月、185頁。
- ^ “廃棄物の処理及び清掃に関する法律(e-Gov)”. 総務省行政管理局 (2020年4月1日). 2020年5月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月25日閲覧。
- ^ “法律第七十二号(昭二九・四・二二)(清掃法)”. 衆議院 (1954年4月22日). 2018年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月25日閲覧。
- ^ 例・“伊万里市広報(第27号)” (pdf). 佐賀県伊万里市. p. 2 (1956年7月10日). 2020年5月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月25日閲覧。
- ^ ねぼとけさん、極楽ごくらく 福岡で「御身拭い」朝日新聞DIGITAL(2017年12月26日)
- ^ a b c “千里同風第5号”. 高岡市. 2020年12月5日閲覧。
- ^ “教育事情報告「台湾の小学生の生活」”. 鳥取県. 2020年12月5日閲覧。
- ^ 新井潤美『執事とメイドの裏表 イギリス文化における使用人のイメージ』(白水社2011年)によれば、「イギリスでは宿舎学校でも、自分たちの寝室を生徒が掃除することはない」という。
- ^ a b “相談窓口担当者のための「多文化」ってこういうこと”. 公益財団法人 愛知県国際交流協会. 2020年12月5日閲覧。