タピオカ

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タピオカ(パール、乾)[1]
乾燥状態のタピオカパール
100 gあたりの栄養価
エネルギー 1,486 kJ (355 kcal)
87.8 g
食物繊維 0.5 g
0.2 g
ミネラル
ナトリウム
(0%)
5 mg
カリウム
(0%)
12 mg
カルシウム
(2%)
24 mg
マグネシウム
(1%)
3 mg
リン
(1%)
8 mg
鉄分
(4%)
0.5 mg
亜鉛
(1%)
0.1 mg
(1%)
0.01 mg
他の成分
水分 11.9 g
水溶性食物繊維 0.2 g
不溶性食物繊維 0.2 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

タピオカ (: tapioca: 木薯粉[2]) は、トウダイグサ科キャッサバ根茎から製造したデンプンのこと。菓子の材料や料理のとろみ付けに用いられる他、つなぎとしても用いられる。の強度を上げるための薬剤の原料としても重要である。

概要

キャッサバは、南米、北東ブラジルが原産だが、根茎に多くのデンプンを持つことから世界各地で重要な作物として栽培されていて、食用や工業原料として広く利用されている。

キャッサバデンプンをタピオカと呼ぶのは、ブラジルの先住民トゥピ語で、でんぷん製造法を「tipi'óka」と呼ぶことによる。

タピオカには小麦粉が含むグルテンがなく、タンパク質もほとんどない。水分を加えて加熱すると糊化しやすく、抱水力が強いのが特徴である。現在では「タピる」などの言葉も流行している。

利用

食用

食品の増粘剤として糊化したものが用いられる。また、ライスヌードル、冷凍うどんなどの麺類菓子などの食感調整、品質維持にも用いられる。ミスタードーナツポン・デ・リング、白い鯛焼きなど、もちもちした食感の菓子を作るのに重要な役割を持つ。

タピオカパール

タピオカのスターチボール
タピオカティー(スターチボールを入れたミルクティー)

糊化させたタピオカを容器に入れ、回転させながら雪だるま式に球状に加工し、乾燥させたものは「スターチボール」、「タピオカパール」などと呼ばれ、中国語で「粉円」(繁体字: 粉圓簡体字: 粉圆拼音: fěnyuán フェンユアン)と呼ぶ。煮戻してデザート飲料かき氷コンソメスープの浮身などに用いられる。黒、白、カラフルなタイプとさまざまな色が着けられた製品がある。

タピオカパール、スターチボールをミルクティーに入れたタピオカティー: 珍珠奶茶)は、発祥の地である台湾はもとより、現在では日本や他の東南アジア欧米諸国などでも広く親しまれている。 乾燥状態で直径5mm以上の大きな粒の場合、煮戻すのに2時間程度かかる。また、水分を少なめにして煮ると粒同士が付きやすくなるので、型に入れて冷やし、粒々感のあるゼリーの様なデザートを作ることもできる。欧米では、カスタード風味のタピオカプディングがよく知られている。

中華点心では小粒のものを煮てココナッツミルクに入れて甘いデザートとして食べる。他に、ぜんざい白玉のように豆類を甘く煮た汁と合わせたり、果汁と合わせたりもする。

タピオカパールと同様の食品として、サゴヤシのでん粉で作られるサゴパールが有る。サゴパールは「西穀米」(繁体字: 西穀米簡体字: 西穀米拼音: xīgǔmǐ シーグーミー)「西米」(拼音: xīmǐ シーミー)と呼ばれていたが、現在は安価なタピオカパールに切り換えられているものが多く、「西米」という呼称も避けられている。

また日本ではタピオカパールの代用品として「こんにゃく」が使用されることが多い。タピオカパールは茹でた状態で水中に放置した場合、水分を吸収してぶよぶよに膨張し、もちもちとした食感は失われる。また空気中に放置した場合は水分が再度蒸発して乾燥してしまう。このため「茹でてあるタピオカパールを注文を受けたその場でドリンク内に投入したりデザートにトッピングする」以外の「工場でドリンク内に投入されたりデザートにトッピングされパックされた状態で店舗へ納品されてくる」タイプの飲食製品に、本来のタピオカを使用することは不可能である。これを補うため、「甘い味付けとイカスミなどの色素による着色を施したこんにゃく(もちもち食感を出すために原料に少量のキャッサバを含める場合もある)」が代用品として使用されている。この代用こんにゃくタピオカを食した場合は、本来のタピオカパールを食した際であれば発生し得ないアレルギー反応などを生じることがあるため、日本においては商品名にタピオカと書いてあっても、原材料名やアレルゲン表示を確認する必要がある。

食品加工

デンプンには米ぬかを吸着する性質があるため、乾燥状態の硬さがちょうどいいことからも、無洗米を作るための方法の一つのNTWP(ネオ・テイスティ・ホワイト・プロセス)加工法に用いられる。

工業利用

酵素によるカチオン化処理を経て製紙用の乾燥紙力増強剤として利用される。使用する際には水を加えて加熱し、化した上でパルプの中に混ぜたり、紙の層の間にスプレーする。また、紙の表面に塗布して、吸水しにくくするための表面サイズ剤としても用いられる例がある。チューブのりの原料としても利用されている[3]

日本での歴史

同志社女子大学食文化を研究する長友麻希子によると、江戸時代後期の蘭学者高野長英はタピオカに「答必膃加」の字を当てて医薬書を翻訳したという[4]

明治時代半ばには高級な食材として知られ、大正時代の料理の本に紹介された[4]。戦中は前線の兵士の代わりに空腹をいやした[4]。戦後も食品の加工に使われてきたという[4]

脚注

  1. ^ 日本食品標準成分表2015年版(七訂), 文部科学省, https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm 2017年11月5日閲覧。 
  2. ^ 樹薯粉・木薯粉・タピオカ澱粉200g”. 海外雑貨屋・台湾食品食材通販ショップ. 2020年6月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月13日閲覧。
  3. ^ タピオカと学童用のりに深い関係 定番文具「ヤマト糊」の原料だった”. 神戸新聞. 2019年12月10日閲覧。
  4. ^ a b c d 空前のタピオカブーム”. 天声人語朝日新聞朝刊) (2019年11月12日). 2019年11月15日閲覧。

関連項目