銀の匙 Silver Spoon

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銀の匙 Silver Spoon
ジャンル 学園漫画
漫画
作者 荒川弘
出版社 小学館
掲載誌 週刊少年サンデー
発表期間 2011年19号 - 連載中
巻数 1巻(2011年7月現在)
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銀の匙 Silver Spoon』(ぎんのさじ シルバースプーン)は、荒川弘による日本漫画作品。『週刊少年サンデー』(小学館2011年19号より連載中。作者にとって初の週刊誌連載作品である。

概要

北海道農業高等学校を舞台とした学園漫画作品。北海道の酪農家の生まれで、農業高校卒業生でもある作者の実際の体験が多く反映されている[1]。作中の舞台である大蝦夷農業高等学校は、帯広農業高等学校をモデルにしている[2][3]。また作者の荒川は、自身の農業での実体験を題材としたエッセイ漫画『百姓貴族』(月刊ウィングス)を本作と並行して連載している。

前作となる『鋼の錬金術師』を連載していた『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)から、出版社を越えて掲載誌を変えたことについて、サンデー編集長・縄田正樹は、『コミックナタリー』のインタビューにて「話の内容で他誌よりも『サンデー』を選んでもらえたんだと思います」と発言しており、前作とは違ったジャンルの話を描ける場だからこそ『サンデー』での連載を始めたという[4]

キャッチコピーは「汗と涙と土にまみれた青春物語」。

ストーリー

北海道に所在する大蝦夷農業高等学校(おおえぞのうぎょうこうとうがっこう、通称:エゾノー)は、農業に従事することを目指す農家の子供が多く通う学校であった。

進学校として名高い中学出身でありながら、低偏差値校であるエゾノーにわけあって入学した八軒勇吾は、他のエゾノー生徒たちの多くが明確に将来の夢を持つ中、一人だけ何も夢を持っていないことに焦燥を感じ始める。

高校としては日本一の広大な敷地面積を持ち、動物と自然に囲まれ、1年生の間は全寮制という慣習を持つエゾノーで、八軒の青春の日々が始まる。

登場人物

酪農科学科1年D組

八軒 勇吾(はちけん ゆうご)
本作の主人公。眼鏡をかけ、学生服にパーカーが基本スタイルの少年。クラスの実習班はA班。
進学校として有名な新札幌中学校に通っていたが、激しい学力競争に敗れ自信を喪失する。これがきっかけで家族と距離を置くようになり、「家に帰らなくて済むから」という理由で全寮制のエゾノーに一般入学した。特に農業関係の職に就きたいといった夢があるわけではなく、明確な夢を持つ周囲の生徒達に引け目を感じている。
実家は農家ではないごく普通の家庭で、数学などの基礎学力は他のエゾノー生徒たちよりも遥かに優秀だが、運動は苦手で農業の専門知識では他の生徒たちにはかなわない。後に休日返上で猛勉強を行い、一学期の中間考査で学年総合一位を取るが、それでも個々の教科では他の生徒たちに上回られる結果となる。お人好しで頼みごとを安請け合いする面があり、周囲からは「人にかまって損をするタイプ」「いい人」だと評される。クラスメートの御影アキに密かに想いを寄せており、より距離を縮めようと彼女の所属する馬術部に入部する。
御影 アキ(みかげ アキ)
ショートカットが特徴の、明朗で社交的な少女。清水第一中学校出身で、実家の酪農家を継ぐためにエゾノーに推薦入学した。農耕馬を乗りこなし、馬術部に入部する。八軒が迷子になった際には、巨大馬(農耕馬)に乗っていた事から「世紀末覇者」を連想させ恐怖させる。一般受験で入学した八軒に興味を持ち、何かと気に掛ける。
駒場 一郎(こまば いちろう)
短髪に鋭い目つき、大柄な体格が特徴の少年。クラスの実習班は八軒と同じA班。毎日の実習と部活にも耐え抜く豊富な体力と、男気のある性格の持ち主。アキと同じ清水第一中学校出身で、互いの実家も近く懇意の仲である。父親を早くに亡くしており、他になり手のいない実家の酪農家を継ごうと考えている。部活は野球部に所属し、甲子園出場を目指している。普段の授業ではほとんど寝てばかりおり、国語・数学など一般教科の成績は悪いが、「作物」など専門教科の成績は優秀である。
常盤 恵次(ときわ けいじ)
長めの髪を一つ結びにしている少年。クラスの実習班は八軒と同じA班。中札内南中学校出身。鶏農家の長男で、家業を継ぐことを目指している。教わったことを3歩歩いただけで忘れるほど頭が悪く(八軒いわくトリ頭)、特に数学はテストで二桁の点数を取ったことがないほど壊滅的である。後に八軒の猛特訓を受け、ようやく一桁の壁を越える(それでも10点)。鶏の生態や飼育法などの知識は豊富で、一学期中間考査では「畜産」で満点を取り、八軒を驚愕させる。
相川 進之介(あいかわ しんのすけ)
目が細く穏やかな風貌の少年。クラスの実習班は八軒と同じA班。幕別東中学校出身。幼少期から獣医師を目指している。このため「生物」や「畜産」、「バイオテクノロジー」を得意教科とし、一般教科の成績もおおむね優秀である。しかし、本人は血を見るのが苦手で、家畜の手術や屠殺の現場で失神するという、医師として致命的な欠点を抱えている。部活は授業外でも家畜を観察できるという理由でホルスタイン部に入部する。
稲田 多摩子(いなだ たまこ) / タマコ
卵のような肥満体の少女。クラスの実習班は八軒と同じA班(紅一点)。帯広西中学校出身。その体型からクラスの男子たちに女性として意識されていないが、肌艶や髪質、目鼻などのパーツ自体は美形の条件を満たしており、八軒たちから「トリミングしたら美人」と驚かれる。農業経営を学び、世界と渡り合える農業を築くことを目指している。得意教科は「農業経営」と「情報処理」で、一学期中間考査では数学を含めた3教科で満点の成績を収める。体型に似合わず身体能力は高く、体力自慢の駒場と卓球勝負で互角に打ち合うなどスタミナも豊富である。しかし、空腹になると力が出ず、朝食前の早朝実習では朝のおやつが欠かせない。
吉野 まゆみ(よしの まゆみ)
そばかす顔とツインテールの髪型が特徴の少女。下浦幌中学校出身。酪農家である実家の牛乳を使ったチーズ工房を立ち上げることが夢。このため「食品製造」を得意教科とし、一学期中間考査でも満点の成績を収める。

農業科学科

西川 一(にしかわ はじめ)
八軒のルームメイトの1年生。吊り目が特徴の飄々とした少年。実家の畑作農家を継ぐために農業科を志望した。家業の関係から、トラクターなど農業機械の操作技術と知識に長けており、これらの機械の部品を使ってロボットを作ることを夢見ている。漫画やアニメなどのサブカルチャーを好み、寮の部屋にさまざまな本や音楽・DVDソフト、アニメキャラクターのポスターを持ち込んでいる。

食品科学科

別府 太郎(べっぷ たろう)
八軒のルームメイトの1年生。坊主頭で恰幅の良い少年。体型のとおり食べることが好きで、良い食べ物を作るために食品科を志望した。
稲田(いなだ)
3年生でタマコの兄。八軒からは「スモークチキン先輩」の通称で呼ばれる。顔立ちは妹似の美形だが、こちらは標準体型。無添加食品の研究を行っており、食品添加物も使うべきと考えているタマコとたびたび衝突している。逃げた実習用鶏を捕まえてもらったことで八軒と知り合い、お礼に食べさせたスモークチキンを無添加食品と見抜いた八軒を気に入る。

教職員

桜木(さくらぎ)
1年D組担任を務めるオールバックの壮年男性。担当教科は国語
八千代(やちよ)
畜産担当教師。スキンヘッドとめがねが特徴。「北海道の牛は全国平均より大きいために参考にならない」として教科書を使わず自分で作成した資料を生徒に配布し、前もって教科書で予習していた八軒を愕然とさせる。
ニワトリ先生(本名不明)
鶏舎棟の管理教師で、生徒たちの朝夕の当番実習を担当する。鶏冠のような髪型と嘴のような唇が特徴の中年男性。喫煙者。自分たちのヒエラルキーは家畜より下だと腐る八軒に対し、「おまえらは家畜のドレイだ」と斬り捨てる。
中島(なかじま)
馬術部顧問。奈良の大仏のような顔立ちとどじょう髭が特徴。普段は文字どおり仏のように温厚だが、休日は競馬場に足繁く通う筋金入りのギャンブラーでもある。勝負に熱狂する姿は、八軒から「汚い大人」と呼ばれ幻滅される。
富士(ふじ)
豚舎棟を管理する女性教師。キャップにサングラス、首には認識票という軍隊の教官のような服装と口調が特徴。侮蔑の代名詞である豚の賢い本質を生徒たちに説くが、当人は他人を罵倒する際に「ブタ」という単語を好んで使っている。
校長(本名不明)
コロポックルを思わせる、非常に小柄な男性。髪の毛を1本残して頭頂部が禿げ上がっている。「馬に興味がない」「将来に夢が持てない」という八軒の発言に対し、「それはいい」「楽しみだ」と返す。

エゾノーで飼育されている家畜たち

マロン号
馬術部で飼育されている騎乗馬。白く美しい毛並みを持つが、顔つきは不細工。知能は高く、初対面で自分の顔をけなした八軒を鼻で突き飛ばす。これ以降から八軒を完全に舐めており、悪戯をして彼を困らせることが多い。
豚丼
生まれて間もない子豚。兄弟との競争に敗れて発育がよくない彼を哀れんだ八軒が名付けようとしたところで情が移ることを心配した女子らのアドバイスで豚丼と名付けられるが程なく三ヵ月後にベーコンになることが決まる。

エゾノー外部の人物

白石(しらいし)
新札幌中時代の八軒の担任教師。学校内の競争に敗れ無気力となった八軒の心労を察し、エゾノーへの進学を勧めた。卒業後も八軒のことを気に掛けている。

作品舞台・用語

大蝦夷農業高等学校(おおえぞのうぎょうこうとうがっこう)
通称「エゾノー」。農業科学科・酪農科学科・食品科学科・農業土木工学科・森林科学科の5つの学科がある。家畜の飼育や農作物の育成も手掛けており、家畜の飼料を含め、全て校内で自給自足が可能な体制となっている。
実習農地・農林・牧場を含めた総敷地面積は全国最大規模を誇り、敷地の外周は約20キロメートルにもおよぶ。野球場やサッカー場は2面ずつあり、陸上用トラックもある。全生徒に部活動への参加が義務付けられているが、文化部はなくすべて運動部である。高校でありながら、受精卵移植やクローンなどの最先端研究設備を持ち、希望者は実践的な研究に参加できる。
大蝦夷工業高等学校(おおえぞこうぎょうこうとうがっこう)
大蝦夷農業高等学校と直線距離で6キロメートルの場所にある学校。年に1回、エゾノーとの間に「農工戦」と呼ばれる交流体育祭が開かれる。
ギガファーム(GIGA FARM)
タマコの実家。4軒の農家と従業員10数名で運営している共同経営農場。牧草地は300ヘクタール以上で、乳牛は800頭いる。

単行本

  • 荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』小学館〈少年サンデーコミックス〉、既刊1巻
  1. 2011年7月15日発売 ISBN 978-4-09-123180-2

脚注

  1. ^ 『週刊少年サンデー』2011年19号の巻末コメントにて、「フィクション…とも言いがたい学園漫画です」と語られている。
  2. ^ 北海道新聞 2011年4月25日付け夕刊 「帯農高モデルに連載」「実習、寮生活そのまま」との記述。
  3. ^ 十勝毎日新聞社ニュース
  4. ^ コミックナタリーのインタビュー