百姓貴族

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百姓貴族』(ひゃくしょうきぞく)は荒川弘による日本漫画作品。 季刊少女漫画誌『ウンポコ』(新書館2006年 vol.8より連載開始、同誌がvol.17で休刊した後は、月刊漫画雑誌『月刊ウィングス』(現・ウィングス)に移籍して2009年9月号より連載中。話数カウントは「○頭目」。

概要[編集]

北海道十勝酪農畑作を営む農家に生まれ、農業高校卒業からマンガ家になるまでの七年間を、農業に従事していた[1]作者の実体験に基づいたエッセイ漫画

『働かざるもの食うべからず』を家訓に掲げている、作者・荒川弘の実家「荒川農園」(仮称)が主な舞台。幼少期から目の当たりにしていた農家の日常を紹介するとともに、酪農や耕作の実態や荒川の家族の事を主に日本の農業を笑いや薀蓄、仮説を織り交ぜて描かれている。

『百姓貴族』というタイトルに関しては、単行本第1巻の発行後に荒川が度々「よく“百姓”というタイトルを付けられたね」と訊かれているが、荒川自身は「巷では百姓という言葉が差別用語的に言われているが、農業従事者である自分達は平気で“百姓”と言っているし、神経質すぎるのもどうかと思う」「差別がどうこう気にしすぎて、言葉本来の意味が死んだり無かった事にされちゃうのは悲しい」と語っている[2]

荒川は本作と並行して農業高校を舞台とした学園漫画銀の匙 Silver Spoon』(週刊少年サンデー)を2011年から連載しており、本作と共通する話題が描かれることもある。

主な登場人物[編集]

荒川をはじめ、荒川の両親や姉弟が多く登場する。荒川の自画像がを模した牛人間であるため、親族も倣って牛人間の姿をしており、体色や模様、装飾品などで描き分けられる。他に友人や知人、担当者なども登場するがその多くは普通の人間として描かれている。一部の友人は動物を模した姿の場合もある。また、人物ではないが、荒川農園で飼育されている動物の中にも個性的な行動をするものがいるため、それらも併せて描かれている。

進行[編集]

荒川弘
容姿は『鋼の錬金術師』など他の連載作品でも使われている自画像である、メガネをかけた[3]白黒斑模様の人間。
作者の荒川本人で荒川家の四女。ヒグマと見間違えた親牛に咄嗟に草刈り鎌で立ち向かおうとしたり、「飢えたくなければ、銀座でベコ(牛)飼え。ヒルズを耕せ」など、血の気の多い農民気質の偏った言動で、たびたび担当のイシイを怒らせたり度肝を抜いたりする。
イシイ
本作を担当する女性編集者。農業に関しては全くの素人で、荒川の偏った常識や桁外れな話に困惑したり、突っ込みを入れたりしているが、連載が進むにつれ、農業やそれらに関連する知識も身につけており、荒川の嘘には簡単に騙されなくなっている。口癖は「農家の常識は社会の非常識」。
元アシスタントである杜康潤のエッセイ漫画にも、同一人物らしき担当編集が登場している。

荒川家[編集]

親父殿
容姿は白黒斑模様の牛人間。首にはいつもタオルを巻いている。子供のころ農耕馬に蹴られて顎を骨折した際に出来た傷跡が左顎に残っている。他にも農作業中に起きた事故などで大怪我をした際に付いた傷が身体のあちこちに残っている。
荒川の実父。実子達ですら驚くような型破りな言動と行動が多く、エピソードに事欠かない。読者アンケートにおいても「人気がすごい」とのこと。
作中では死に至りかねない事態に陥ることが多く、その度に一命をとりとめては家畜(特に牛)が突然死するため、「親父殿の身代わり」と思われている。
おかん
容姿は頭頂部におばさんパーマのような巻き毛を生やし、「おかん」と書かれたエプロンを着けた牛人間。
荒川の実母。荒川農園専務。農繁期の手伝いから逃れたい荒川に対し、荒川を妊娠中に農繁期を迎え「陣痛が来るまでトラクターに乗っていた」事を明かして、荒川の反論を封じた(後に聞いたところ、「陣痛が来てから自分で車の運転をして病院に行き、ぷりっと産んだ」と語るほどの安産だったという)。
また、家事や育児と並行して農作業や家畜の世話、荒川農園の経理や営業、じいちゃんの介護、さらに自分の趣味の園芸に至るまであらゆる仕事をこなすという八面六臂の仕事ぶりに驚かれているが、おかんは「何でもできるんじゃなくて、何でもやらされるのよ!」と反論している。
じいちゃん
容姿はほっかむりをした、茶色い体の牛人間。
荒川の父方の祖父。何事にも動じない(鈍い?)性格。高齢にも関わらず木に登り作業中に転落、肋骨を折るも全く動じずにいたことから、「親父殿のやんちゃな気質はここから来ている」と思われている。
入浴中に釧路沖地震に遭ったことがあるが、それにも全く動じず湯船に浸かっていた。
晩年には認知症を患い、寝たきりの状態になった。
ばあさん
容姿は頭に手拭いを巻き、着物を着た牛人間。
荒川の父方の祖母。「百姓の女は何でもやるべきだ」という考えの持ち主で、荒川家に自転車が導入されると40代にして自転車の乗り方を覚え、トラクターが導入された時には還暦間際にしてトラクターの運転を覚えたという、非常にアクティブな人物。
なお、晩年は老齢のために体調も思わしくなくなり、最期はおかん(嫁)に一言だけ礼を言って息を引き取ったが、農閑期に合わせたかのように亡くなった事や、遺影に使えそうな写真をさりげなく用意してあったことから、亡くなってなお「ほんとに迷惑かけないばあさんだな!!」と家族に驚かれていた。また、生前に毎食後欠かさず牛乳を飲んでいたこともあり、火葬後の遺骨は火葬業者に絶賛されるほど綺麗に残っていた。
ひいじいちゃん
容姿は着物と股引を着た白い牛人間。
明治時代に生きた荒川の曽祖父。名は与作。親父殿から伝え聞いた話によると、明治時代、田中正造と一緒に足尾鉱毒事件を闘い、警官隊に果敢に腕力で立ち向かった武勇伝を持つ。それが原因で逮捕状が出てしまい、群馬県から北海道へと入植してきた。荒川曰く「犯罪者かよ!!」「ひいじいさんがやんちゃキングだった」。この件に関しては親父殿が「(当時の)北海道は、そんなの(犯罪者)も受け入れちゃう位おおらかだった」とフォローしている。
長女さん
容姿は頭にリボンを付けている牛人間。
荒川の姉。幼少時に「畑に連れて行って迷子になっても困る」と思った親父殿に、苦肉の策として「おんぶヒモで自宅の机の足に繋がれていた」ことがある。
ナスビ頭の公務員と結婚しており、娘も登場している。
特技は妹のサインの真似ができる。
次女さん
容姿は黒い(カラー頁では茶色い体の)牛人間。
荒川の姉。学生の頃に農機具に指を挟んで切断寸前になったが、親父殿の自家流の治療により、1ヶ月で完治した[4]
元バレー部で、セッターを務めていた。
三女さん
容姿は頭頂部に毛が生えた、丸眼鏡をかけている白黒(カラー頁では白茶)斑模様の牛人間。
荒川の姉。親父殿について聞いたところ、悩んだ末に「(色々な事があるので)何から話せば良いのやら」と答えた。
長男さん
容姿は顎にヒゲの生えた、白黒斑模様の牛人間。
荒川の弟(末っ子)。幼少時に、親父殿の運転するトラクターがバックしている時に轢かれて、後輪の下敷きになった事があるが、親父殿の冷静且つ慎重な運転により、奇跡的にかすり傷で済んだ。
祖父(じいちゃん)が寝たきりになったことを機に介護職を志望し、一浪して東京の大学に進学する。

単行本[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 荒川弘の『百姓貴族』からほとばしるフロンティアスピリット - eBook USER
  2. ^ 『百姓貴族』単行本第2巻・裏表紙(カバー裏)「タイトルの話」より。
  3. ^ 幼少期にはメガネをかけていない姿で描かれることもある。
  4. ^ 大まかな治療法が作中に記されているが、あくまでも自家流の治療法なので「よい子はほんとにマネしないでください!」という注意書きが書かれている。

外部リンク[編集]