コンテンツにスキップ

「接続 (微分幾何学)」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
m 外部リンクの修正 http:// -> https:// (books.google.com) (Botによる編集)
m リンク先とリンク文が同一
 
(5人の利用者による、間の33版が非表示)
1行目: 1行目:
{{Pathnavbox|{{Pathnav|[[数学]]|[[幾何学]]|[[多様体論]]|[[微分幾何学]]}}}}
{{要改訳}}
{{otheruses|平行移動の概念によって特徴づけられる接続概念の一般論|カルタン接続|カルタン幾何学|その他の用法|接続}}
[[微分幾何学]]において、'''接続'''(せつぞく、{{lang-en-short|connection}})の考え方により、曲線や曲線の族にそって'''平行'''で整合性を持つデータの移動の考え方を詳しく示すことができる。 現代の幾何学には多くの種類の接続の考え方があり、移動したいデータが何であるかに依存する。例えば、[[アフィン接続]]は接続の最も基本的なタイプであるが、この接続はある曲線に沿ってある点から別な点へ多様体の[[接ベクトル空間|接ベクトル]]を移動することを意味する。アフィン接続は、典型的には[[共変微分|共変]]な微分形式として与えられ、[[ベクトル場]]の[[方向微分]]、つまり与えられた方向へのベクトル場の無限小移動をとることを意味する。


[[微分幾何学]]において'''接続'''(せつぞく、{{lang-en-short|connection}})とは、[[多様体]]の[[ファイバーバンドル]]上に'''平行移動'''の概念を定義する事ができる数学的構造である。ただし数学的な取り扱いを容易にするため、平行移動の概念で直接的に接続を定義するのではなく、実質的に等価な別概念を用いて接続を定義する。
現代の幾何学では接続は非常に重要である。大きな理由は、接続によりある点での局所幾何学と別な点での局所幾何学を比較することが可能となるからである。[[微分幾何学]]は、接続の考え方のいくつかの変形を持っている。大きなグループ分けをすると 2つのグループがあり、局所の理論と無限小の理論である。局所理論は、{{仮リンク|平行移動 (微分幾何学)|label=平行移動|en|parallel transport}}や{{仮リンク|ホロノミー|en|holonomy}}の考え方に最初から関係する。無限小の理論は、幾何学的なデータの微分と関係する。このように、共変微分は多様体上のベクトル場を他のベクトル場に沿った[[微分]]として特定することである。{{仮リンク|カルタン接続|en|Cartan connection}}は、[[微分形式]]や[[リー群]]を使い接続の理論をある側面から定式化する方法である。{{仮リンク|エーレスマン接続|en|Ehresmann connection}}は、許される場の運動方向を特定することによる[[ファイバーバンドル]]、あるいは[[主バンドル]]での接続のことを言う。{{仮リンク|Koszul接続|en|Koszul connection}}は、[[ベクトルバンドル]]へ一般化したときの接続である。(本記事では、ベクトルバンドルについて接続を考えるとき、「Koszul接続」という単語を用いることとする.)


接続概念は[[ゲージ理論]]や[[チャーン・ヴェイユ理論]]で用いられる。特にチャーン・ヴェイユ理論の特殊ケースとして、曲面に関する古典的な[[ガウス・ボネの定理|ガウス・ボンネの定理]]を[[一般ガウス・ボネの定理|一般の偶数次元多様体に拡張]]するのに役立つ。
さらに接続は、[[曲率]]や[[捩れテンソル]]ような、'''幾何学的不変量'''をうまく定式化することにも使われる([[リーマン曲率テンソル|曲率テンソル]]や[[曲率形式]]も参照)。


接続は元々は[[エルヴィン・クリストッフェル|クリストッフェル]]並びに[[トゥーリオ・レヴィ=チヴィタ|レヴィ-チヴィタ]]、[[グレゴリオ・リッチ=クルバストロ|リッチ]]によって<ref>{{citation|title=Méthodes de calcul differéntiel absolu et leurs applications|author=C.G. Ricci, T. Levi=Civita|year=1901}}(絶対微分学の方法とその応用)[[#矢野(1971)|矢野(1971)]] 和訳pp.17-95</ref>[[リーマン多様体]]上に導入された概念([[レヴィ・チヴィタ接続|レヴィ-チヴィタ接続]])であるが、一般の[[ベクトル束|ベクトルバンドル]]上の接続([[接続 (ベクトル束)|Koszul接続]]{{refn|group="注"|人名「Koszul」を「コシュール」と訳している文献<ref>{{Cite journal|和書|author=板場綾子 |date=2018-04 |url=https://hdl.handle.net/2433/241849 |title=自己移入的Koszul多元環に対する有限条件(Fg) (有限群のコホモロジー論とその周辺) |journal=数理解析研究所講究録 |ISSN=1880-2818 |publisher=京都大学数理解析研究所 |volume=2061 |page=33 |hdl=2433/241849 |naid=120006645349 |CRID=1050001202603941760}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://marine.shinshu-u.ac.jp/~kuri/ALG_TOP2015/Algebraic_and_Geometric_Models_for_Spaces_and_Related_Topics_2015_files/15_Model_Matsuoka.pdf |title=Koszul duality for factorization algebras and extended topological field theories |access-date=2023/10/19}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.f.waseda.jp/homma_yasushi/homma2/download/Einstein-kougi20200803.pdf |format=PDF |title=2020年度 幾何学 B アインシュタイン計量の幾何学 -リーマン幾何学入門とアインシュタイン計量の幾何学への応用- |access-date=2023/10/19 |page=75}}</ref>があるため、「コシュール接続」と読むと思われるが、「コシュール接続」と訳した文献を発見できなかったので本項では「Koszul接続」と表記した。なお、Wikipediaの英語版には「{{IPA-fr|kɔsyl|lang}}」とある。|name=コシュール}})や主バンドルの接続([[接続 (微分幾何学)#主バンドルの接続|主接続]])にも拡張され、さらに[[接続 (ファイバー束)|一般のファイバーバンドルの接続]]へと拡張された。ただし実際に研究が進んでいるのは、ベクトルバンドルとその主バンドルに対する接続概念である。
本記事では、接続の概念を考察する動機について述べ、そのさまざまな定式化について簡潔に触れる。各々の定式化の詳細については個別記事に譲る。


以下、本項では特に断りがない限り、多様体、関数、バンドル等は全て{{mvar|C{{sup|∞}}}}級の場合を考える。よって紛れがなければ「{{mvar|C{{sup|∞}}}}級」を省略して単に多様体、関数、バンドル等という。また特に断りがない限りベクトル空間は実数体上のものを考える。
==動機:座標の不適切さ==
[[File:Connection-on-sphere.png|frame|球面上の(黒い矢印の)平行移動。青と赤の矢印は、それぞれ異なる方向への平行移動を表しているが、右下の同じところで終わっている。2つの矢印が同じ方向を向いて終わっていないことが、球面上の曲率の持っている意味である。]]
次の問題を考えてみよう。球面 S の接ベクトルが球面の北極で与えられたときに、このベクトルを球面の他の点へ整合性を持って移動、'''平行移動'''の意味での移動を定義することである。ナイーブに考えると、これは平行[[座標系]]を使ってできそうに見える。しかしながら、特別な注意を払わない限り、ある座標系で定義された平行移動は他の座標系で定義されたものとは一致しない。より適切な平行移動系は、球面の回転対称性を利用する。北極点であるベクトルが与えられると、回転軸方向を持たない曲線に沿って北極が移動するような方法で球面を回転させることで、このベクトルを曲線に沿って移動させることができる。これの平行移動の意味は、球面上の[[レヴィ・チヴィタ接続]]である。2つの異なる曲線の始点と終点が一致していて、ベクトル v が正確に回転より作られる第一の曲線に沿っているとすると、終点での結果として現れるベクトルは、第二の曲線に沿って正確に移動した v の結果として現れるベクトルとは'''異って'''いる。この現象は、球面の[[曲率]]を反映している。平行移動を可視化することに使える単純な力学的な装置が、[[指南車]]である。


== 概要 ==
例えば、S に[[ステレオ投影|立体射影]]による座標を入れたとし、S を '''R'''<sup>3</sup> の中の単位ベクトルからなると仮定すると、S は座標の対を持つことになる。一つは北極の近傍を覆い、もうひとつは南極を覆う。写像
[[多様体]]{{Mvar|M}}上のベクトル場{{Mvar|Y}}と{{Mvar|M}}上の<math>c(t)</math>に対し、{{Mvar|Y}}の<math>c(t)</math>に沿った「方向微分」を定義することを考える。ユークリッド空間における微分を参考にすると、
:<math>
:<math>
\lim_{\Delta t \to 0}{Y_{c(t + \Delta t)}- Y_{c(t)} \over \Delta t}
\begin{align}
\varphi_0(x,y) & =\left(\frac{2x}{1+x^2+y^2}, \frac{2y}{1+x^2+y^2}, \frac{1-x^2-y^2}{1+x^2+y^2}\right)\\[8pt]
\varphi_1(x,y) & =\left(\frac{2x}{1+x^2+y^2}, \frac{2y}{1+x^2+y^2}, \frac{x^2+y^2-1}{1+x^2+y^2}\right)
\end{align}
</math>
</math>
のように定義するのがよいように思えるが、多様体上では<math>
は、北極の近傍 U<sub>0</sub> と南極の近傍 U<sub>1</sub> をそれぞれ覆う。X, Y, Z を '''R'''<sup>3</sup> に付属する周りの座標とすると、φ<sub>0</sub> と φ<sub>1</sub> は、逆写像
c(t + \Delta t)
</math>と<math>
c(t)
</math>は別の点なので、両者の差<math>
Y_{c(t + \Delta t)}- Y_{c(t)}
</math>は意味も持たない。しかし'''<math>
Y_{c(t + \Delta t)}
</math>を<math>
c(t)
</math>まで「平行移動」できれば'''、平行移動の結果'''<math>
\tau_t{}^{t+\Delta t}(Y_{c(t + \Delta t)})
</math>'''と<math>
Y_{c(t)}
</math>の差を取る事で「方向微分」を定義でき、これを{{Mvar|Y}}の<math>c(t)</math>に沿った'''共変微分'''<math>\tfrac{\nabla}{dt} Y_{c(t)} </math>という。


逆に<math>c(t)</math>に沿った共変微分<math>\tfrac{\nabla}{dt} Y_{c(t)} </math>が定義できていれば、
:<math>
:<math>
\frac{\nabla}{dt} Y_{c(t)}=0
\begin{align}
\varphi_0^{-1}(X,Y,Z)&=\left(\frac{X}{Z+1}, \frac{Y}{Z+1}\right), \\[8pt]
\varphi_1^{-1}(X,Y,Z)&=\left(\frac{-X}{Z-1}, \frac{-Y}{Z-1}\right),
\end{align}
</math>
</math>
が恒等的に成立している事をもって、{{Mvar|Y}}は<math>c(t)</math>に沿って'''平行'''と呼ぶことで平行の概念を定義できる。
を持つので、座標変換の函数は[[反転幾何学|円に関する反転]]


:<math>\varphi_{01}(x,y) = \varphi_0^{-1}\circ\varphi_1(x,y)=\left(\frac{x}{x^2+y^2},\frac{y}{x^2+y^2}\right)</math>
となる。


ここで、ベクトル場を導き出された座標系に対する成分として表現しよう。P が U<sub>0</sub> ⊂ S の点であれば、ベクトル場は、次のプッシュフォワードで表現される。


このように平行移動と共変微分は実質的に同値な概念であり、多様体のベクトル場に対して平行移動・共変微分を定義できる構造を多様体(の[[接束|接バンドル]])の'''接続'''という。
:<math>v(P) = J_{\varphi_0}(\varphi_0^{-1}(P))\cdot {\mathbf v}_0(\varphi_0^{-1}(P)). \qquad(1)</math>


ここに、<math>J_{\varphi_0}</math> は φ<sub>0</sub> の[[ヤコビ行列]]を表し、'''v'''<sub>0</sub>&nbsp;=&nbsp;'''v'''<sub>0</sub>(x,&nbsp;y) は、'''v'''により一意的に決定される '''R'''<sup>2</sup> 上のベクトル場である。さらに、座標系の交叉である U<sub>0</sub> ∩ U<sub>1</sub> の上では、φ<sub>1</sub> に関して同じベクトルを表現することができる。


接続概念から定まる平行移動により、(何ら構造が定義されていない)多様体では無関係なはずの点<math>c(t+ \Delta t)</math>におけるベクトル<math>
:<math>v(P) = J_{\varphi_1}(\varphi_1^{-1}(P))\cdot {\mathbf v}_1(\varphi_1^{-1}(P)). \qquad (2) </math>
Y_{c(t + \Delta t)}
</math>を<math>c(t)</math>におけるベクトル<math>
Y_{c(t)}
</math>と「接続」して関係づける事ができ、これが「接続」という用語の語源である<ref>[[#Spivak]] p.251. 「this possibility of comparing, or "connecting", tangent spaces at different points gives rise to the term "connection".」</ref>。


成分 '''v'''<sub>0</sub> と '''v'''<sub>1</sub> を関係づけるためには、[[連鎖律]]を等式 φ<sub>1</sub> = φ<sub>0</sub> o φ<sub>01</sub> に適用して


:<math>J_{\varphi_1}(\varphi_1^{-1}(P)) = J_{\varphi_0}(\varphi_0^{-1}(P))\cdot J_{\varphi_{01}}(\varphi_1^{-1}(P)). \, </math>
を得る。これの行列の等式の両辺を '''v'''<sub>1</sub>(φ<sub>1</sub><sup>&minus;1</sup>(P)) へ適用し、(1) と (2) を使うと、
:<math>{\mathbf v}_0(\varphi_0^{-1}(P)) = J_{\varphi_{01}}(\varphi_1^{-1}(P))\cdot {\mathbf v}_1(\varphi_1^{-1}(P)). \qquad (3)</math>
を得る。


上では接バンドルに対する接続を説明したが、より一般にベクトルバンドルの接続、あるいはさらに一般にファイバーバンドルの接続を考える事ができる。上述のように平行移動と共変微分は実質的に同値な概念なので、平行移動・共変微分のうち、定義しやすい方をもとにして接続概念を定義すればよい。
ここで、曲線に沿って平行にベクトル場をどのように平行に移動するのかという主要な問題へ至る。P(t) を S の中の曲線と仮定する。ナイーブには、曲線に沿ってベクトル場の座標成分が定数であれば、ベクトル場は平行であると考えることが可能である。しかしながら、直ちに曖昧さがでてくる。'''どの'''座標系に対して、これらの成分を定数とすべきなのか?


そこでベクトルバンドルの場合は共変微分を、一般のファイバーバンドルの場合は平行移動をベースにして接続概念を定義する。
例えば、v(P(t)) が座標系 U<sub>1</sub> で定数である、すなわち、函数 '''v'''<sub>1</sub>(φ<sub>1</sub><sup>&minus;1</sup>(P(t))) は定数であるあったと仮定する。しかし、[[積の微分法則]]を (3) へ適用し、d'''v'''<sub>1</sub>/dt = 0 を使うと次式を得る。


:<math>\frac{d}{dt}{\mathbf v}_0(\varphi_0^{-1}(P(t)))=\left(\frac{d}{dt}J_{\varphi_{01}}(\varphi_1^{-1}(P(t)))\right)\cdot {\mathbf v}_1(\varphi_1^{-1}(P(t))).</math>


接続によって定まるもう一つの重要概念として'''[[曲率]]'''があり、これはファイバーバンドルの「曲がり具合」を表している。特に接ベクトルバンドルの曲率は多様体それ自身の「曲がり具合」とみなせる。曲率概念は歴史的には3次元ユークリッド空間<math>\mathbb{R}^3</math>内の曲面に対して定義されたものだが、実は「外の空間」である<math>\mathbb{R}^3</math>がなくても定義できる[[Theorema Egregium|曲面に内在的な量である事が示された]]ので、これを一般のリーマン多様体(の接ベクトルバンドル)、さらには一般のファイバーバンドルに対して拡張したものである。多様体に内在的な量としてみなしたとき、曲率の幾何学的意味は、閉曲線に沿ってベクトルを一周平行移動したとき、もとのベクトルとどの程度ずれるかを測った量であるとみなせる。
しかし、<math>\left(\frac{d}{dt}J_{\varphi_{01}}(\varphi_1^{-1}(P(t)))\right)</math> はいつも非特異行列であるので(曲線 P(t) は定常でなくなり)、'''v'''<sub>1</sub> と '''v'''<sub>0</sub> は曲線に沿って同時には決して定数では'''ありえない'''。


== ベクトルバンドルの接続 ==
===問題の解決策===
本節ではまずリーマン多様体の接続であるレヴィ-チヴィタ接続の定義を述べ、次により一般的なベクトルバンドルに対する接続の定義を述べる。
上に現れた問題は、通常の[[ベクトル解析]]の[[方向微分]]は、ベクトル場の成分へ適用すると、座標系の変換の下ではうまく振る舞わないという問題である。これは、実際にベクトル解析のような考え方が全く意味を持たないとすると、ベクトル場の平行な変換をどのように記述するかは非常に困難な問題となるということである。この問題の解決には、2つの基本的に異なった方法がある。


=== レヴィ-チヴィタ接続の定義 ===
第一のアプローチは、方向微分を一般化して座標変換の下で「うまく振る舞わせる」には何が必要かを試すことである。このアプローチは接続に[[共変微分]]という戦術を使うことである。うまく振る舞うことは、[[ベクトルの共変性と反変性|共変性]]に同じである。ここで、線型作用素の成分は[[クリストッフェル記号]]と呼ばれる、ベクトル場自体の上の微分を意味しないある[[線型作用素]]による方向微分の変形を考える。座標系 φ での方向 '''u''' のベクトル '''v''' 成分の方向微分 D<sub>'''u'''</sub>'''v''' は、'''共変微分'''
{{Main|レヴィ・チヴィタ接続}}
''{{Mvar|M}}''を<math>\mathbb{R}^n</math>の部分多様体とし、<math>c(t)</math>を''{{Mvar|M}}''上の曲線とし、さらに<math>v(t)</math>を<math>c(t)</math>上定義された''{{Mvar|M}}''のベクトル場とし(すなわち各時刻''{{Mvar|t}}''に対し、<math>v(t)</math>は<math>v(t)\in T_{c(t)}M</math>を満たすとし)、


:<math>\nabla_{\mathbf u} {\mathbf v} = D_{\mathbf u} {\mathbf v} + \Gamma(\phi)\{{\mathbf u},{\mathbf v}\}</math>
: <math>{\nabla \over dt}v(t):=\mathrm{Pr}_{c(t)}\left({d \over dt} v_{c(t)}\right)
</math>


と定義する。ここで{{Math|Pr}}は''{{Mvar|M}}''の点{{Math|''c''(''t'')}}における<math>\mathbb{R}^n</math>内の接平面(と自然に同一視可能な{{Math|''T''{{sub|''c''(''t'')}}''M''}})への射影である。また''{{Mvar|X}}''、''{{Mvar|Y}}''を''{{Mvar|M}}''上のベクトル場とするとき、
により置き換えることができる。ここに Γ は座標系 φ に依存し、'''u''' と '''v''' について[[双線型形式|双線型]]である。特に、Γ は '''u''' あるいは '''v''' のいかなるをものも含んではいない。 この方法では、Γ は異なる座標系へ φ が変更されたときにも、所定の方法で変換される必要がある。この変換は、座標変換の'''一階の微分'''だけでなく'''二階の微分'''も含んでいないので、[[テンソル]]ではない。Γ の変換法則を特定するだけでは、Γ を一意的に決定するには充分ではない。他にも正規化条件を導入する必要があり、導入すべき正規化条件は、通常は考えている幾何学のタイプに依存する。[[リーマン幾何学]]の場合は、[[レヴィ・チヴィタ接続]]を導入すると、(ある対称性条件と同様に)[[リーマン多様体#リーマン計量|リーマン計量]]と整合性を持つ[[クリストッフェル記号]]が必要となる。これらの正規化を行うと、接続は一意に定義される。


: <math>
第二のアプローチは、空間の対称性の痕跡を捉えようとする[[リー群]]を使うアプローチである。これが、{{仮リンク|カルタン接続|en|Cartan connection}}のアプローチである。上記の球面上のベクトルの平行移動を特定する回転を使った例は、これに非常に良く似ている。
\nabla_XY|_P := {\nabla \over dt}Y_{\exp(tX)(P)}
</math>


と定義する。ここで<math>\exp(tX)(P) </math>は時刻''{{Mvar|0}}''に点<math>P \in M</math>を通る''{{Mvar|X}}''の[[積分曲線]]である。実はこれらの量は''{{Mvar|M}}''の内在的な量である事、すなわち<math>\mathbb{R}^n</math>から''{{Mvar|M}}''に誘導される[[計量テンソル|リーマン計量]](とその偏微分)のみから計算できる事が知られている。
== 定式化 ==
{{節スタブ|date=2018年12月}}


=== レヴィ・チヴィタ接続 ===
{{main|レヴィ・チヴィタ接続}}


具体的には{{Mvar|M}}に局所座標<math>(x^1,\ldots,x^m)</math>を取ると、以下のように書ける([[アインシュタインの縮約記法|アインシュタインの縮約]]で表記):
=== アフィン接続 ===
{{main|アフィン接続}}


:: <math>{\nabla \over dt}v(t)=\left({d \over dt}v^i(t)+{d x^j(t) \over dt}v^k(t)\Gamma^i_{jk}\right){\partial \over \partial x^i}</math> <math>\nabla_X Y=\left(X^j{\partial Y^i \over \partial x^j} + X^jY^k \Gamma^i_{jk}\right){\partial \over \partial x^i}</math>
=== ベクトル束の接続 ===
::    where <math> \Gamma^i_{jk} = \frac{1}{2} g^{i\ell} \left(
{{main|{{仮リンク|接続 (ベクトル束)|en|Connection (vector bundle)}}}}
{\partial g_{k\ell}\over \partial x^j}
+ {\partial g_{\ell j}\over \partial x^k}
- {\partial g_{jk}\over \partial x^{\ell}} \right) </math>


そこで<math>\tfrac{\nabla}{dt}v(t)</math>や<math>\nabla_XY</math>をリーマン多様体<math>(M,g)</math>に内在的な値とみなしたものを考える事ができる。<math>\nabla_XY</math>は以下の公理で特徴づけられる事が知られている:
=== 主束の接続 ===
{{main|接続 (主束)}}


{{math theorem|定理|{{mvar|M}}上のベクトル場の組に{{mvar|M}}上のベクトル場を対応させる汎関数{{mvar|∇}}で以下の5つの性質をすべて満たすものが唯一存在する<ref>[[#Andrews]] Lecture 10, p.2.</ref><ref>[[#Tu]] p.45.</ref>。このを<math>(M,g)</math>の[[レヴィ・チヴィタ接続|'''レヴィ-チヴィタ接続''']]といい、<math>\nabla_XY</math>をレヴィ-チヴィタ接続から定まる{{Mvar|Y}}の{{Mvar|X}}による'''共変微分'''という<ref>[[#Andrews]] Lecture 8 p.74, Lecture 10 p.98.</ref><ref>[[#新井]] p.304.</ref><ref>[[#Tu]] p.45.</ref>:
=== エーレスマン接続 ===
# <math>\nabla_{fX+gY}Z = f\nabla_{X} Z + g\nabla_{Y} Z</math> (関数に関する左線形性)
{{main|{{仮リンク|エーレスマン接続|en|Ehresmann connection}}}}
# <math>\nabla_X(aY+bZ) = a\nabla_{X} Y + b\nabla_{X} Z</math>(実数に関する右線形性) 
# <math>\nabla_X(fY) = X(f)Y + f\nabla_X Y</math> (ライプニッツ則)
# <math>\nabla_XY-\nabla_YX=[X,Y]</math> (捻れなし)
# <math>Z(g(X,Y))=g(\nabla_ZX,Y)+g(X,\nabla_Z Y)</math> (計量との両立)|note='''[[リーマン幾何学の基本定理]]'''{{Anchors|リーマン幾何学の基本定理}}}}
ここで''{{mvar|X}}''、''{{mvar|Y}}''、''{{mvar|Z}}''は''{{mvar|M}}''上の任意の可微分なベクトル場であり、''{{mvar|f}}''、''{{mvar|g}}''は''{{mvar|M}}''上定義された任意の実数値{{Mvar|C{{sup|∞}}}}級関数であり、''{{mvar|a}}''、''{{mvar|b}}''は任意の実数であり、<math>fY</math>は点<math>u \in M</math>において<math>f(u)Y_u</math>となるベクトル場であり、<math>X(f)</math>は''{{mvar|f}}''の''{{mvar|X}}''方向微分であり、<math>[X,Y]</math>は{{仮リンク|リー括弧|en|Lie bracket of vector fields}}である。


=== カルタン接続 ===
{{main|{{仮リンク|カルタン接続|en|Cartan connection}}}}


<math>\tfrac{\nabla}{dt}v(t)</math>は<math>\nabla_XY</math>を曲線上に制限したものとして定義できる。
== 接続の歴史 ==
接続は、歴史的にはまず[[リーマン幾何学]]において見出された。接続の概念のはじまりをどこに置くかについては諸説あるが、[[エルヴィン・クリストッフェル|クリストッフェル]]の研究をその淵源とする見方がある{{efn|これはFreeman{{sfn|Freeman|2011}}の立場。ほかには、たとえば岩波数学辞典は後出のレヴィ=チヴィタによる平行移動の発見を接続の概念のはじまりとしている{{sfn|日本数学会編|2007}}。}}。クリストッフェルは1869年の論文で、座標変換の導関数が満たす関係式の研究を通じ、現在[[クリストッフェル記号]]とよばれる量を発見した{{sfn|Christoffel|1869}}。これを用いて、[[グレゴリオ・リッチ=クルバストロ|リッチ]]はその学生である[[トゥーリオ・レヴィ=チヴィタ|レヴィ=チヴィタ]]とともに、彼らが{{仮リンク|リッチ解析|label=絶対微分学|en|Ricci calculus}}とよんだ、[[共変微分]]を用いる今でいう[[テンソル解析]]の計算の手法をつくりあげた{{sfn|Levi-Civita|1900}}。


=== ベクトルバンドルの接続の定義 ===
レヴィ=チヴィタはまた、1916年に、リーマン幾何学における[[接ベクトル空間|接ベクトル]]の[[平行移動]]の概念を発見し、これが共変微分によって記述されることをみつけた{{sfn|Levi-Civita|1916}}([[レヴィ・チヴィタ接続|レヴィ=チヴィタ接続]]の名前はこのことによる)。1918年に[[ヘルマン・ワイル|ワイル]]はそれを一般化して、[[アフィン接続]]の概念に到達した{{sfn|Weyl|1918}}{{efn|正確には、現在の言葉でいう捩れのないアフィン接続。}}。ここで「接続」にあたる語({{lang-de-short|''Zusammenhang''}})がはじめて使用された{{citation needed|date=2018年12月}}。
{{Main|接続 (ベクトル束)}}<math>\pi~:~E\to M</math>を可微分多様体{{mvar|M}}上のベクトルバンドルとし({{mvar|E}}、{{mvar|M}}のいずれにもリーマン計量が入っているとは限らない)、<math>\Gamma(E)</math>を{{Mvar|E}}の切断全体の集合とし、<math>\mathcal{X}(M):=\Gamma(TM)</math>を{{mvar|M}}上のベクトル場全体の集合とする。


ベクトルバンドルの接続は前述した[[#リーマン幾何学の基本定理|レヴィ-チヴィタ接続の公理的特徴づけ]]の5つの性質のうち3つを使って定義される。
それからすぐに、[[エリ・カルタン]]によって、さらなる一般化が行われた。カルタンは[[フェリックス・クライン|クライン]]の[[エルランゲン・プログラム]]の局所化を試みていたのである。1920年代にカルタンは、[[微分形式]]を用いた記述によって、現在{{仮リンク|カルタン接続|label=カルタン接続|en|Cartan connection}}と呼ばれるものを発見していった{{sfn|Cartan|1926}}。カルタンのこの仕事により、リーマン幾何学だけでなく、{{仮リンク|共形幾何学|en|Conformal geometry}}、[[射影幾何学]]などのさまざまな幾何学を研究するための基礎が築かれた。


{{math theorem|定義|関数
しかしカルタンの記述は、微分幾何学の他の基本的概念の整備が進んでいない当時、理解されづらいものだった。その仕事をよりわかりやすいものにして発展させるために、カルタンの学生にあたる{{仮リンク|チャールズ・エーレスマン|label=エーレスマン|en|Charles Ehresmann}}は、1940年代から[[主束]]や[[ファイバー束]]を研究した。1951年の論文でエーレスマンは、主束の接続を、{{仮リンク|接分布|en|Distribution (differential geometry)}}を用いる方法と微分形式による方法の両方で定義した{{sfn|Ehresmann|1950}}({{仮リンク|エーレスマン接続|en|Ehresmann connection}})。
: <math>\nabla~:~(X,s)\in \mathfrak{X}(M) \times \Gamma(E) \mapsto \nabla_Xs \in \Gamma(E)</math>
で以下の性質を満たすものを{{mvar|E}}上の'''Koszul接続'''<ref group="注" name="コシュール" />({{lang-en-short|Koszul connection}})<ref>[[#Spivak]] p.241.</ref><ref>{{Cite web |url=https://empg.maths.ed.ac.uk/Activities/Spin/Lecture5.pdf |title=Lecture 5: Connections on principal and vector bundles |access-date=2023/01/12 |page=40 |author=José Figueroa-O'Farrill |work=PG course on Spin Geometry}}</ref>あるいは単に'''接続'''({{lang-en-short|connection}})といい<ref>[[#森田]] p.213.</ref><ref>[[#Tu]] p.72.</ref>、<math>\nabla_Xs </math>を接続<math>\nabla</math>が定める{{mvar|s}}の{{mvar|X}}方向の'''共変微分'''という:
# <math>\nabla_{f_1X+f_2 Y}s = f_1\nabla_{X} s + f_2 \nabla_{Y} s </math> (関数に関する左線形性)
# <math>\nabla_X(as_1+bs_2) = a\nabla_{X} s_1 + b\nabla_{X} s_2</math>(実数に関する右線形性) 
# <math>\nabla_X(fs) = X(f)s + f\nabla_X s</math> (ライプニッツ則)


{{mvar|M}}の接ベクトルバンドル{{mvar|TM}}の接続の事を特に'''アフィン接続'''({{lang-en-short|affine connection}})という<ref>[[#小林]] p.76.</ref>。|note=ベクトルバンドルの接続{{Anchors|Koszul接続の定義}}}}
その一方で、1950年に{{仮リンク|ジャン・ルイ・コシュル|label=コシュル|en|Jean-Louis Koszul}}は、ベクトル束の接続の代数的定式化を与えた{{sfn|Koszul|1950}}({{仮リンク|接続 (ベクトル束)|en|Connection (vector bundle)}})。コシュルの定式化によると、クリストッフェル記号を明示的に用いる必要は必ずしもなくなり、接続の取り扱いは容易になった{{citation needed|date=2018年12月}}。
ここで{{mvar|X}}、{{mvar|Y}}は{{Mvar|M}}上の任意のベクトル場であり、{{mvar|s}}、{{mvar|s{{sub|1}}}}、{{mvar|s{{sub|2}}}}は{{mvar|E}}の任意の切断であり、{{mvar|a}}、{{mvar|b}}は実数であり、{{mvar|f}}、{{mvar|f{{sub|1}}}}、{{mvar|f{{sub|2}}}}は{{mvar|M}}上定義された任意の実数値可微分関数であり、<math>fs</math>は点{{mvar|u}}において<math>f(u)s_u </math>となる{{mvar|E}}の切断であり、<math>X(f)</math>は{{mvar|f}}の{{mvar|X}}方向微分である。


上述の定義から、一般のベクトルバンドルの接続もレヴィ-チヴィタ接続と同様、
==可能なアプローチ==


:: <math>\nabla_X s =\left(X^j{\partial s^i \over \partial x^j} + X^js^k \Gamma^i_{jk}\right)e_i</math>
*直接的なアプローチは、[[微分作用素]]として[[ベクトル場]]の[[環上の加群|加群]]の元に[[共変微分]]がどのように作用するかを特定することである。より一般的には、同様なアプローチを任意の[[ベクトルバンドル]]の{{仮リンク|接続 (ベクトルバンドル)|label=接続|en|connection (vector bundle)}}へ適用することである。
という形で書ける。ここで<math>(x^1,\ldots,x^m)</math>は{{Mvar|M}}の局所座標であり、<math>(e_1,\ldots,e_n)</math>は{{Mvar|E}}の局所的な基底である<ref group="注">接続{{Mvar|∇}}は{{Mvar|M}}の'''全域'''で定義されたベクトル場と切断に関するものなので、このような局所的に定義された座標で表示できるか否かは非自明である。しかし{{Mvar|∇}}が「局所演算子」という性質を満たすことにより、局所的な座標で表示可能な事を示すことができる。詳細は[[接続 (ベクトル束)]]の項目を参照されたい。</ref>。ただしもちろんレヴィ-チヴィタ接続と違い<math>\Gamma^i{}_{jk}</math>は計量で書けるとは限らない。
*伝統的なインデックスの記法は、成分によって接続を特定する。[[クリストッフェル記号]]を参照('''注意''':クリストッフェル記号は 3つのインデックスをもっているが、[[テンソル]]では'''ない'''。)

*[[リーマン幾何学]]や[[擬リーマン多様体|擬リーマン幾何学]](pseudo-Riemannian)では、[[レヴィ・チヴィタ接続]]は、[[計量テンソル]]に付随する特別な接続である。

*これらは[[アフィン接続]]の例である。また{{仮リンク|射影接続|en|projective connection}}の考え方もあり、そこでは[[複素解析]]の{{仮リンク|シュワルツ微分|en|Schwarzian derivative}}が例である。さらに一般的には、アフィン接続も射影接続も両方とも{{仮リンク|カルタン接続|en|Cartan connection}}の一種である。
さらに以下の定義をする:
*[[主バンドル]]を使い、接続を[[リー代数]]に値を持つ[[微分形式]]として、記述することができる。[[接続 (主バンドル)]]を参照。
{{math theorem|定義|
*「データ」(その内容がどのようなものでも)の移動の考え方を直接使う接続のアプローチが、{{仮リンク|エーレスマン接続|en|Ehresmann connection}}である。
* {{Mvar|E}}上に計量{{Mvar|g}}が定義されているとき、[[#リーマン幾何学の基本定理|レヴィ-チヴィタ接続の公理的特徴づけ]]の4番目の性質を満たす<math>\nabla</math>を{{Mvar|g}}と'''{{仮リンク|計量接続|en|metric connection|label=両立する接続}}'''という<ref>[[#Tu]] p.75.</ref>
*最も抽象的アプローチは[[アレクサンドル・グロタンディーク]]の示唆したものかもしれない。そこでは{{仮リンク|グロタンディーク接続|en|Grothendieck connection}}は、[[対角線]]の無限小近傍からの{{仮リンク|デサント (圏論)|label=デサント|en|descent (category theory)}}(descent)であるデータとみなすことができる。{{harv|Osserman|2004}}
* <math>E=TM</math>である場合、すなわち<math>\nabla</math>がアフィン接続の場合、[[#リーマン幾何学の基本定理|レヴィ-チヴィタ接続の公理的特徴づけ]]の5番目の性質を満たす<math>\nabla</math>を'''[[捩率テンソル|捩れ]]なし'''であるという。
}}

[[#リーマン幾何学の基本定理|リーマン幾何学の基本定理]]から、レヴィ-チヴィタ接続とは、唯一の計量と両立する捻れなしのアフィン接続として特徴づけられる。

==== 曲線上の微分 ====
{{mvar|M}}の曲線<math>c(t)=(x^1(t),\ldots,x^m(t))</math>上に切断<math>s(t)</math>が定義されているとき、接続の成分表示の<math>X=X^i\tfrac{\partial}{\partial x^i}</math>を形式的に<math>\tfrac{dc}{dt} = \tfrac{dx^i}{dt}\tfrac{\partial}{\partial x^i} </math>に置き換えた
: <math>{\nabla \over dt} s
= \left({dx^j \over dt}{\partial s^i \over \partial x^j} + {dx^j \over dt}s^k \Gamma^i_{jk}\right){\partial \over \partial x^i}</math>
を、'''曲線<math>c(t)</math>に沿った共変微分'''という。この定義は基底の取り方によらず[[well-defined]]である。

== 平行移動 ==
[[File:Connection-on-sphere.png|frame|球面上の平行移動。大円で囲まれた三角形上でベクトルを一周平行移動すると、もとに戻ってきたときに元のベクトルには戻らない。]]<math>\pi~:~E\to M</math>をベクトルバンドルとし、{{Mvar|M}}の曲線<math>c(t)</math>上定義された{{Mvar|M}}上のベクトル場<math>v(t)</math>が
: <math>{\nabla \over dt}v(t)=0</math>
を恒等的に満たすとき、<math>v(t)</math>は<math>c(t)</math>上'''平行'''であるという<ref name="Tu263">[[#Tu]] p.263.</ref>。また、<math>c(t_0)</math>上の接ベクトル<math>w_0 \in T_{c(t_0)}M</math>と<math>c(t_1)</math>上の接ベクトル<math>w_1 \in T_{c(t_1)}M </math>に対し、<math>v(t_0)=w_0</math>、<math>v(t_1)=w_1 </math>を満たす<math>c(t)</math>上の平行なベクトル場<math>v(t)</math>が存在するとき、<math>w_1</math>は<math>w_0</math>を<math>c(t)</math>'''に沿って平行移動'''({{lang-en-short|parallel transportation along}} <math>c(t)</math>)した接ベクトルであるという<ref name="Tu263" />。


[[ユークリッド空間]]の平行移動と異なる点として、'''どの経路<math>c(t)</math>に沿って平行移動したかによって結果が異なる事'''があげられる。この現象を'''{{仮リンク|ホロノミー|en|holonomy}}'''({{Lang-en-short|holonomy}})という<ref>[[#Tu]] p.113.</ref>。

右図はホロノミーの具体例であり、接ベクトルを大円で囲まれた三角形に沿って一周したものを図示しているが、一周すると元のベクトルと90度ずれてしまっている事が分かる。


'''<math>c(t)</math>'''に沿って<math>w_0 \in T_{c(0)}M</math>を<math>c(t)</math>まで平行移動したベクトルを<math>\varphi_{c,t}(v) \in T_{c(t)}M</math>とすると<math>\varphi_{c,t}~:~ T_{c(0)}M \to T_{c(t)}M </math>は線形変換である<ref>[[#Tu]] p.263.</ref>。また共変微分は平行移動で特徴づけられる:

{{math theorem|定理|多様体{{Mvar|M}}上の曲線<math>c(t)</math>と{{Mvar|M}}のベクトルバンドル{{Mvar|E}}の<math>c(t)</math>に沿った切断<math>s(t)\in E_{c(t)}</math>を考えるとき、<math>c(t)</math>に沿った平行移動を<math>\varphi_{a,t}</math>とすると、以下が成立する<ref>[[#Spivak]] p.251.</ref>:
: <math>{\nabla s\over dt}(a) </math><math> = \left.{d \over dt}\varphi_{a,t}{}^{-1}(s(t))\right|_{t=a}</math>|note=共変微分の平行移動による特徴づけ{{Anchors|共変微分の平行移動による特徴づけ}}}}

上述のように平行移動があれば共変微分が定義できるので、一般のファイバーバンドルではむしろ平行移動に基づいて接続概念を定義する。


{{Mvar|E}}上に計量{{Mvar|g}}が定義されていてしかも{{Mvar|∇}}が計量と両立しているとすると、以下が成立する:
{{math theorem|定理|
平行移動は計量を保つ。すなわち{{mvar|M}}上の曲線<math>c(t)</math>に沿った平行移動を<math>\varphi_{c,t}</math>とすると、任意の<math>v,w \in E_{c(0)}</math>に対し、以下が成立する:
: <math>g(\varphi_{c,t}(v),\varphi_{c,t}(w))=g(v,w)</math>
}}

== 接続形式{{Anchors|接続形式の節}} ==
本章では接続{{Mvar|∇}}の「接続形式」という概念を述べる。本章で述べるように、むしろ接続形式から接続を定義したほうが数学的な構造を探る上で有利な点があり、このアイデアに沿って接続を定式化したのが[[#主接続の節|後の章]]で述べる主バンドルの接続概念である。

=== 定義 ===
<math>(e_1,\ldots,e_m)</math>を開集合<math>U \subset M</math>上で定義された{{mvar|E}}の局所的な基底とするとき、接続形式を以下のように定義する:{{math theorem|定義|行列<math>\omega(X)</math>を
: <math>(\nabla_X e_1,\ldots, \nabla_X e_m)=(e_1,\ldots,e_m)\omega(X)</math>
により定義し、{{Mvar|X}}に<math>\omega(X)</math>を対応させる行列値の[[微分形式|1-形式<math>\omega=(\omega^i{}_j)_{ij}</math>]]を局所的な基底<math>(e_1,\ldots,e_m)</math>に関する接続{{mvar|∇}}の'''接続形式'''({{Lang-en-short|connection form}})という<ref>[[#小林]] p.38.</ref>{{refn|group="注"|成分<math>\omega^i{}_j</math>接続形式といい、{{Mvar|ω}}を'''接続行列'''({{lang-en-short|connection matrix}})と呼ぶ場合もある<ref>[[#Tu]] p.80.</ref>。}}
|note=接続形式}}接続形式が与えられれば
: <math>\nabla_X s =X(s^j)e_j + s^j \omega^i{}_j(X) e_i</math>
により接続を再現できるので、この意味において接続形式は接続{{mvar|∇}}の情報をすべて含んでいる。

=== 性質 ===
接続概念において重要な役割を果たす平行移動の概念は接続形式''{{Mvar|ω}}''と強く関係しており、底空間''{{Mvar|M}}''の曲線<math>c(t)</math>に沿って定義された局所的な基底<math>(e_1(t),\ldots,e_n(t))</math>を''{{Mvar|t}}''で微分したものが接続形式<math>\omega(\tfrac{dc}{dt}(0)) </math>に一致する。

よって特に(レヴィ・チヴィタ接続などの)''{{Mvar|∇}}''が''{{Mvar|E}}''の計量と両立する接続の場合、''{{Mvar|∇}}''による平行移動は回転変換、すなわち<math>SO(n)</math>の元なので、その微分である接続形式''{{Mvar|ω}}''は<math>SO(n)</math>のリー代数<math>\mathfrak{so}(n)</math>の元、すなわち[[交代行列|歪対称行列]]である<ref group="注">厳密には以下の通りである。''{{Mvar|M}}''の曲線<math>c(t)</math>に沿って定義された局所的な基底<math>e(t)=(e_1(t),\ldots,e_n(t))</math>を考え、<math>e(0)</math>を<math>c(t)</math>に沿って平行移動したものを<math>\bar{e}(t)=(\bar{e}_1(t),\ldots,\bar{e}_n(t))</math>として行列<math>A(t)</math>を <math>e(t) = \bar{e}(t) A(t)</math> により定義すると、接続形式の定義より、 <math>e(0) \omega\left({d c\over dt}(0)\right) </math><math> = \left.{\nabla \over dt}
e(t)\right|_{t=0}
</math><math> = \left.{\nabla \over dt}
\bar{e}(t)A(t)\right|_{t=0}</math><math>= \bar{e}(0) {dA \over dt}(0)</math><math>= e(0){dA \over dt}(0) </math> が成立する。ここで<math>{\nabla \over dt} e(t)</math>は成分ごとの微分<math>\left({\nabla \over dt}e_1(t),\ldots, {\nabla \over dt}e_n(t)\right)</math>の事である。 {{Mvar|∇}}が計量と両立すれば、<math>\bar{e}(t)</math>は正規直交基底である。よって <math>e(t)</math>が正規直交基底であれば、<math>e(t) = \bar{e}(t) A(t)</math>より<math>A(t)</math>は回転変換であり、<math>A(t)</math>の微分は歪対称行列である。</ref>:{{math theorem|定理|{{mvar|∇}}が{{mvar|E}}上の計量と両立するとき、<math>(e_1,\ldots,e_n)</math>を{{mvar|E}}の局所的な[[正規直交基底]]とすると、<math>(e_1,\ldots,e_n)</math>に関する接続形式{{mvar|ω}}は<math>\mathfrak{so}(n)</math>の元である。すなわち{{mvar|ω}}は[[交代行列|歪対称行列]]である。}}


このように接続形式を用いるとベクトルバンドルの構造群(上の例では<math>SO(n)</math>)が接続形式の構造をリー群・リー代数対応により支配している事が見えやすくなる。

上では回転群<math> \mathrm{SO}(n)</math>の場合を説明したが、<math>\mathrm{GL}_n(\mathbb{C})</math>(を自然に<math>\mathrm{GL}_{2n}(\mathbb{R})</math>の部分群とみなしたもの)や<math>\mathrm{U}_n(\mathbb{C})</math>、[[物理学]]で重要な[[斜交群|シンプレクティック群]]や[[スピン群]]に対しても同種の性質が証明でき、接続形式がリー群・リー代数対応により支配されている事がわかる。

こうした事実は接続概念を直接リー群と接続形式とで記述する方が数学的に自然である事を示唆する。[[#主接続の節|後で説明]]する、リー群の主バンドルに対する接続はこのアイデアを定式化したもので、主バンドルの接続は接続形式に相当するものを使って定義される。


そこで本項では、まずベクトルバンドルの接続と主バンドルの接続の両方を包括する概念である[[接続 (微分幾何学)#ファイバーバンドルの接続の章|ファイバーバンドルの接続概念を導入]]する。この概念は「そもそも平行移動とは何か」を直接的に定式化したもので、この概念それ自身が接続形式の言葉で記述されるわけではない。

そして次にファイバーバンドルの接続概念を用いて[[接続 (微分幾何学)#主接続の節|主バンドルの接続概念を定義]]すると同時に、主バンドルの接続を接続形式の言葉で再定式化し、ベクトルバンドルの接続と主バンドルの接続の[[接続 (微分幾何学)#Koszul接続と主接続の関係の章|接続形式の言葉で記述]]する。

== ファイバーバンドルの接続{{Anchors|ファイバーバンドルの接続の章}} ==
{{Main|接続 (ファイバー束)}}
主バンドルの接続を定義する前準備として、一般のファイバーバンドルに対する接続を定義する。[[#主接続の節|後述]]するように、主バンドルの接続はファイバーバンドルに対する接続で群作用に対して普遍になるものである。

すでに述べたように研究が進んでいるのばベクトルバンドルの接続なので、そのような目的のためにはこの一般の接続概念は必要ない。しかしファイバーバンドルの接続により、ベクトルバンドルの接続と次章に述べる主バンドルの接続とを統一的な視点から語る事ができるようになり、主バンドルの接続に基づいてベクトルバンドルの接続の性質をそれに対応する主バンドルの接続と対応付けて調べる事ができる。

=== 定義に至る背景{{Anchors|ベクトルバンドルの接続から一般の接続へ}} ===

<math>\pi~:~E \to M</math>をベクトルバンドルとし、{{mvar|∇}}をこのバンドルのKoszul接続とする。{{mvar|M}}上の任意の曲線{{math|''c''(''t'')}}と{{math|''c''(''t'')}}上の任意の切断{{math|''s''(''t'')}}で平行なものに対し、{{math|''s''(''t'')}}を{{mvar|E}}上の曲線とみなしたときに<math>\tfrac{ds}{dt}</math>が入る{{mvar|T{{sub|e}}E}}の部分空間を「'''水平部分空間'''」と呼ぶ。

以上のように接続{{mvar|∇}}から水平部分空間が定まるが、逆に水平部分空間の情報があれば接続を再現できる事も知られている<ref>[[#Spivak]] p.251.</ref>。

このことからベクトルバンドルの場合は接続概念は水平部分空間の概念は等価なので、一般のファイバーバンドルに対する接続を水平部分空間の概念を用いて定義する事にする。

=== 定義 ===
以上の考察を元に、ファイバーバンドルの接続を定義する。そのためにまず「垂直部分空間」という概念を定義する。<math>\pi~:~E \to M</math>をファイバー{{mvar|F}}を持つファイバーバンドルとし、{{math|''e''∈''E''}}を{{mvar|E}}の元とするとし{{mvar|π}}が誘導する写像を<math>\pi_*~:~TE \to TM</math>とするとき、
: <math>\mathcal{V}_e:=\{\xi \in T_eE \mid \pi_*(\xi)=0\} = T_e(E_{\pi(e)})</math>
を、{{mvar|e}}における{{mvar|T{{sub|e}}E}}の'''垂直部分空間'''({{lang-en-short|vertical subspace}})という<ref>[[#Tu]] p.256.</ref><ref>[[#Wendl3]] p.73.</ref>{{refn|group="注"|ここで<math>T_e(E_{\pi(e)})</math>は{{math|1=''π''(''e'')}}のファイバー<math>E_{\pi(e)}</math>の点{{mvar|e}}における接空間であり、包含写像<math>E_{\pi(e)} \subset E</math>が誘導する写像<math>T_eE_{\pi(e)} \hookrightarrow T_eE</math>により<math>T_eE_{\pi(e)}</math>を{{mvar|T{{sub|e}}E}}の部分空間とみなしている。}}。そしてファイバーバンドルの接続を以下のように定義する:

{{math theorem|定義|
ファイバーバンドル<math>\pi~:~E \to M</math>の({{mvar|C{{sup|∞}}}}級の)'''接続'''({{lang-en-short|connection}})<math>\{\mathcal{H}_e\}_{e\in E}</math>とは、{{mvar|E}}の各点{{mvar|e}}における{{mvar|T{{sub|e}}M}}の部分空間<math>\mathcal{H}_e</math>の[[族 (数学)|族]]で{{mvar|e}}に関して{{mvar|C{{sup|∞}}}}級であり{{refn|group="注"|name="HのC∞級に関して"|この「<math>\mathcal{H}_e</math>は{{mvar|e}}に関して{{mvar|C{{sup|∞}}}}級である」というのを厳密に定式化する方法は(同値な方法が)いくつかあるが、一つの方法は<math>\mathcal{H}=\cup_{e\in E}\mathcal{H}_e</math>を<math>\mathcal{H}_e</math>を<math>e \in E</math>上のファイバーとする{{mvar|TE}}の部分ベクトルバンドルとみなし、<math>\mathcal{H}</math>が{{mvar|TE}}の{{mvar|C{{sup|∞}}}}級の部分ベクトルバンドルである事を要請するというものである。}}、以下の性質を満たすものである<ref name="Wendl3-74">[[#Wendl3]] p.74.</ref>:
: <math>T_e E = \mathcal{V}_e \oplus \mathcal{H}_e</math>
<math>\mathcal{H}_e</math>を{{mvar|e}}における'''水平部分空間'''({{lang-en-short|horizontal subspace}})という<ref name="Wendl3-74" />。
|note=接続{{Anchors|一般の接続の定義}}}}

=== 名称に関して ===
ファイバーバンドルの接続のことを'''エーレスマン接続'''<ref>「エーレスマン接続」という訳語は[[#佐古]]を参考にした。[[#佐古]]に目次にこの名称が確認できる。</ref>({{Lang-en-short|Ehresmann conection}})と呼ぶ場合があるが<ref>[[#Epstein]] p.95.</ref>、[[#主接続の節|主バンドルに対する接続]]の事を「エーレスマン接続」と読んでいる書籍<ref>[[#Tu]] p.256.</ref>もあるので注意が必要である<ref>{{Cite web |url=https://ncatlab.org/nlab/show/Ehresmann+connection#note_on_terminology |title=Ehresmann connection |access-date=2023-08-30 |website=nLab}}</ref>。なお[[主バンドル]]上においても'''両者の概念は同値ではなく'''、ファイバーバンドルの接続のうち構造群の作用に関して不変なものを主バンドルの接続と呼ぶ。

両者の区別のため、一般のファイバーバンドルの接続を'''一般の接続'''({{lang-en-short|general connection}}<ref>[[#Kolar]] p.80.</ref>)、主バンドルの接続を'''主接続'''({{lang-en-short|principal connection}}<ref>[[#Kolar]] p.99.</ref>)と呼ぶ場合がある。

またファイバーバンドルの接続のうち、[[接続 (ファイバー束)#完備|完備]]なもののみを「エーレスマン接続」と呼ぶ場合もある<ref>[[#Kolar]] p.81.</ref>。なおエーレスマン自身による定義では完備性を仮定していた<ref>[[#Tuynman]] p.345.</ref>。

=== 平行移動、共変微分 ===

==== 平行移動 ====
<math>\pi~:~E \to M</math>をファイバーバンドルとし、<math>\{\mathcal{H}_e\}_{e\in E}</math>をその接続とする。
{{math theorem|定義|
{{mvar|M}}上の曲線<math>c(t)</math>上定義された切断<math>s(t)</math>が'''平行'''であるとは、
: <math>{ds \over dt}(t) \in \mathcal{H}_{s(t)}</math>
が任意の{{mvar|t}}に対して成立する事をいう。
}}

接続の定義から、
: <math>\pi_*|_{\mathcal{H}_e}:|~\mathcal{H}_e \to T_{\pi(e)}M</math>
はベクトル空間としての同型であるので、この逆写像
: <math>\mathrm{Lift}_e~:~T_{\pi(e)}M \to \mathcal{H}_e</math>
を考える事ができる。<math>\mathrm{Lift}_e(v)</math>を<math>v \in T_{\pi(e)}M</math>の{{mvar|e}}への'''水平リフト'''({{lang-en-short|horizontal lift}}<ref name="Wendl3-74" />)という。水平リフトの定義から明らかなように、切断<math>s(t)</math>が平行である必要十分条件は
: <math>\tfrac{d}{dt}s(t)=\mathrm{Lift}_{s(t)}\left(\tfrac{d}{dt}c(t)\right)</math>
を満たす事である<ref name="Wendl3-74" />。

==== 共変微分 ====
{{math theorem|定理|{{mvar|s}}を{{mvar|M}}の開集合上で定義された切断とし、{{mvar|X}}を{{mvar|M}}のベクトル場とするとき
: <math>\nabla_Xs =s_*(X) - \mathrm{Lift}(X)</math>
を{{mvar|s}}の{{mvar|X}}方向の'''共変微分'''<ref name="Wendl3-75">[[#Wendl3]] p.75.</ref>という。
}}同様に{{Mvar|M}}上の曲線<math>c(t)</math>に沿った切断<math>s(t)</math>に対し、<math>s(t)</math>の<math>c(t)</math>'''に沿った共変微分'''を

: <math>\frac{\nabla}{dt}s(t)=\frac{d}{dt}s(t) - \mathrm{Lift}_{s(t)}(\frac{d}{dt}c(t))</math>

により定義する。この事からすなわち、'''共変微分<math>\tfrac{\nabla}{dt}s(t)</math>とは、平行移動からのズレを表す量である'''事がわかる。

=== 一般の接続からベクトルバンドルの接続へ ===
ベクトルバンドルのKoszul接続から一般の接続概念が得られる事をすでに見たが、逆にベクトルバンドル上の(一般の)接続が定める共変微分がKoszul接続の公理を満たす条件は以下の通りである:{{math theorem|定理|<math>\pi~:~E\to M</math>をベクトルバンドルとし、<math>\{\mathcal{H}_e\}_{e\in E}</math>を<math>\pi~:~E\to M</math>のファイバーバンドルとしての接続する。さらに<math>\phi~:~\mathcal{V}_e \tilde{\to} E_{\pi(e)}</math>を垂直部分空間<math>\mathcal{V}_e</math>と<math>E_{\pi(e)}</math>の自然な同一視とする{{refn|group="注"|垂直部分空間の定義より<math>\mathcal{V}_e=T_eE_{\pi(e)}</math>であるが、<math>E_{\pi(e)}</math>はベクトル空間なので、<math>E_{\pi(e)}</math>と接空間<math>T_eE_{\pi(e)}</math>と<math>E_{\pi(e)}</math>は自然に同一視できる。}}。

このとき以下の条件は同値である{{refn|[[#Wendl3]] pp.76-78.}}{{refn|[[#Kolar]] p.110.}}:
* <math>\{\mathcal{H}_e\}_{e\in E}</math>が定義する共変微分を{{mvar|∇}}とすると、<math>\phi\circ \nabla</math>はKoszul接続の公理を満たす。
* 任意の<math>\lambda \in \mathbb{R}</math>、<math>e \in E</math>に対し、<math>\mathcal{H}_{\lambda e}= (m_{\lambda})_*(\mathcal{H}_e)</math>

ここで{{mvar|m{{sub|λ}}}}はベクトル<math>e \in E</math>を{{mvar|λ}}倍した<math>\lambda e \in E</math>に写す写像とする。|note=Koszul接続の条件{{Anchors|Koszul接続の条件}}}}Koszul接続から一般の接続概念を誘導する方法と(上記の定理の条件を満たす)一般の接続概念からKoszul接続を誘導する方法は「逆写像」の関係にあり、上記の定理の条件を満たす一般の接続概念とKoszul接続は1:1に対応する<ref>[[#Wendl3]] p.78.</ref>。

== 主バンドルの接続{{Anchors|主接続の節}} ==
{{Main|接続 (ファイバー束)#主接続の節}}

=== 定義 ===
主バンドルの接続は、ファイバーバンドルの接続で[[群作用]]に対して不変になるものである。すなわち、{{math theorem|定義|{{mvar|G}}をリー群とし、<math>\pi~:~P \to M</math>を構造群{{mvar|G}}を持つ主バンドルとする。<math>\pi~:~\mathcal{P} \to M</math>の{{mvar|C{{sup|∞}}}}級の(主バンドルとしての)'''接続'''({{lang-en-short|connection}})あるいは'''主接続'''({{lang-en-short|principal connection}})<math>\{\mathcal{H}_p\}_{p\in P}</math>とは、{{mvar|P}}の各点{{mvar|p}}における{{mvar|T{{sub|p}}M}}の部分空間<math>\mathcal{H}_p</math>の[[族 (数学)|族]]で{{mvar|p}}に関して{{mvar|C{{sup|∞}}}}級であり<ref group="注" name="HのC∞級に関して" />、任意の<math>p \in P</math>に対し以下の性質を満たすものである<ref>[[#Wendl3]] p.89.</ref>:
* <math>T_p P = \mathcal{V}_p \oplus \mathcal{H}_p</math>
* 任意の<math>g\in G</math>に対し、<math>(R_g)_*(\mathcal{H}_{p})=\mathcal{H}_{pg} </math>|note=主接続の定義{{Anchors|主接続の定義}}}}ここで<math>\mathcal{V}_p</math>は'''垂直部分空間'''<math>\mathcal{V}_e:=\{\xi \in T_eP \mid \pi_*(\xi)=0\} = T_e(P_{\pi(e)})</math>であり、<math>(R_g)_*</math>は<math>g\in G</math>の{{mvar|P}}への右からの作用<math>R_g ~:~p \in P \to pg \in P</math>が{{mvar|TP}}に誘導する写像である。<math>\mathcal{H}_p</math>を{{mvar|p}}における'''水平部分空間'''という。

=== リー代数を使った定式化 ===
本節では、前節で定義した主バンドルの接続概念をリー代数を使って特徴づける。後述するようにこちらの定義が自然にベクトルバンドルの接続と対応する。

そのために基本ベクトル場の概念を導入する。''{{mvar|G}}''をリー群とし、<math>\mathfrak{g}</math>をそのリー代数とし、さらに<math>\pi~:~P \to M</math>を''{{mvar|G}}''-主バンドルとするとき、リー代数の元<math>A \in \mathfrak{g}</math>と点<math>p\in P</math>に対し、

: <math>\underline{A}_p:=\left.\frac{d}{dt}(p\cdot \mathrm{exp}(tA))\right|_{t=0}\in T_p P </math>

により、{{mvar|P}}上のベクトル場<math>\underline{A}</math>を定義する。<math>\underline{A}</math>を{{mvar|A}}に対応する{{mvar|P}}上の'''{{仮リンク|基本ベクトル場|en|fundamental vector field}}'''({{lang-en-short|fundamental vector field on {{mvar|P}} associated to {{mvar|A}}}})という{{refn|[[#Tu]] p.247.}}{{refn|[[#Wendl3]] p.89.}}。



基本ベクトル場の定義より明らかに各<math>p \in P</math>に対し、写像

: <math>\zeta_p~:~A\in \mathfrak{g} \mapsto \underline{A}_p \in \mathcal{V}_p</math>

は全単射であるので、''{{mvar|ζ{{sub|p}}}}''の写像の逆写像を考えることができる。この逆写像を分解<math>T_p P = \mathcal{V}_p \oplus \mathcal{H}_p</math>の垂直部分空間への射影<math>V_p~:~T_p P \to \mathcal{V}_p</math>と合成する事で、

: <math>T_p P \underset{V_p}{\to} \mathcal{V}_p \underset{\zeta_p{}^{-1}}{\overset{\sim}{\to}} \mathfrak{g}</math>

を作る事ができる。この写像を<math>\mathfrak{g}</math>に値を取る1-形式とみなしたものを

: <math>\omega_p</math>

とし、各点''{{mvar|p}}''に''{{mvar|ω{{sub|p}}}}''を対応させる''{{mvar|P}}''上の<math>\mathfrak{g}</math>値1-形式の場''{{mvar|ω}}''を'''接続形式'''({{lang-en-short|connection form}})という{{refn|[[#Kolar]] p.100.}}。

以上の議論から明らかに垂直射影から''{{mvar|ω}}''が定まり、逆に''{{mvar|ω}}''から垂直射影が定まるので''{{mvar|ω}}''によって接続概念を定式化できる:{{math theorem|定義・定理|{{mvar|M}}を多様体、{{mvar|G}}をリー群とし、<math>\mathfrak{g}</math>を{{mvar|G}}のリー代数とし、さらに<math>P</math>を{{mvar|M}}上の{{mvar|G}}-主バンドルとする。<math>P</math>上定義された<math>\mathfrak{g}</math>-値の{{mvar|1}}-形式の{{mvar|C{{sup|∞}}}}級の[[テンソル場|場]]
: <math>\omega~:~TP \to \mathfrak{g}</math>
で以下を満たすものを<math>P</math>の'''接続形式'''という<ref>[[#Tu]] pp.255-256</ref><ref>[[#小林]] p.61.</ref><ref>[[#Wendl3]] p.90.なお本文献のみ「<math>(R_g)^*\omega_{p}</math>」ではなく「<math>(R_g)_*\omega_{p}</math>」になっているが、前後関係から「<math>(R_g)^*\omega_{p}</math>」の誤記と判断。</ref>:
# 任意の<math>A \in \mathfrak{g}</math>、<math>p \in P</math>に対し、<math>\omega_{p}(\underline{A}_{p})=A</math>
# 任意の<math>g\in G</math>、<math>p \in P</math>に対し、<math>(R_g)^*\omega_{p} = (\mathrm{Ad}g^{-1})\omega_{p}</math>|note=接続形式{{Anchors|接続形式の定義}}}}

ここで<math>(R_g)_*</math>は<math>g\in G</math>の{{mvar|P}}への右からの作用<math>R_g ~:~p \in P \to pg \in P</math>が{{mvar|TP}}に誘導する写像であり、{{Math|Ad}}は'''[[随伴表現]]'''({{lang-en-short|adjoint representation}})

: <math>\mathrm{Ad}(g)~:~\tfrac{dh}{dt}(0) \in \mathfrak{g} \mapsto \left. \tfrac{d}{dt}gh(t)g^{-1}\right|_{t=0} \in \mathfrak{g}</math>
である<ref>[[#Tu]] p.123.</ref>。

主バンドルとしての接続から前述の方法で{{mvar|P}}の接続形式が定まり、逆に接続形式{{mvar|ω}}が{{mvar|0}}になる方向を水平方向とすることで{{mvar|P}}に主バンドルとしての接続が再現できるので、両者の定義は同値である。

== ベクトルバンドルの接続と主バンドルの接続の関係性{{Anchors|Koszul接続と主接続の関係の章}} ==
{{Main|接続 (ファイバー束)#Koszul接続}}{{See also|接続 (ファイバー束)#同伴バンドルへの誘導の節}}
本節では[[#接続形式の節|接続形式の章]]で述べたアイデアに基づいて、ベクトルバンドルの接続(Koszul接続)と主バンドルの接続(主接続)の関係を述べる。

接続形式の章で見た<math>\mathrm{SO}(n)</math>のケースだけでなく<math>\mathrm{GL}_n(\mathbb{R}) </math>の部分リー群{{Mvar|G}}に対して両者の関係性を示すため、本章ではまず「{{Mvar|G}}-フレーム」、および「{{Mvar|G}}-{{仮リンク|フレームバンドル|en|frame bundle}}」という概念を導入する。「{{Mvar|G}}-フレーム」は{{Mvar|G}}が<math>\mathrm{SO}(n)</math>の場合は[[正規直交基底]]に相当するものであり、{{Mvar|G}}-フレームバンドルは{{Mvar|G}}-フレームを束ねてできるバンドルであり、自然に{{Mvar|G}}-主バンドルとみなせる。

次に本章では{{mvar|E}}のフレームバンドル上の接続から{{mvar|E}}のKoszul接続が定まる事を見る。そして構造群{{Mvar|G}}を持つベクトルバンドルの接続が{{Mvar|G}}と「両立する」事を定義し、最後に{{Mvar|G}}-フレームバンドルの接続の接続形式とベクトルバンドルの{{Mvar|G}}と両立する接続の接続形式が1対1の関係にある事を見る。

=== フレームバンドル ===
==== 定義 ====
「{{Mvar|G}}-フレーム」とは[[正規直交基底]]の概念を一般化したもので、{{Mvar|G}}が<math>\mathrm{SO}(n)</math>の場合、{{Mvar|G}}-フレームが正規直交基底に相当する。

{{math theorem|定義|{{Mvar|G}}を<math>\mathrm{GL}_n(\mathbb{R}) </math>の部分リー群とし、<math>\pi~:~E \to M</math>を構造群{{Mvar|G}}を持つベクトルバンドルとし、{{mvar|u}}を{{mvar|M}}の点とし、<math>e_1,\ldots,e_n</math>を{{mvar|E{{sub|u}}}}の基底とする。<math>e_1,\ldots,e_n</math>が{{mvar|E}}の{{mvar|u}}における{{Mvar|G}}-'''フレーム'''({{Lang-en-short|{{mvar|G}}-flame}})であるとは、{{mvar|E}}の{{mvar|u}}におけるバンドルチャート<math>U \times \mathbb{R}^n</math>と<math>g \in G</math>が存在し、このバンドルチャート上で
: <math>(e_1,\ldots,e_n)=(ge'_1,\ldots,g e'_n)</math>
が成立する事を言う。
}}
ここで<math>e'_1,\ldots,e'_n</math>は<math>\mathbb{R}^n</math>の標準的な基底であり、<math>ge_i</math>は線形変換<math>g \in G \subset \mathrm{GL}_n(\mathbb{R})</math>を{{mvar|e{{sub|i}}}}に作用させたものである。

構造群{{mvar|G}}を持つベクトルバンドルの定義から、{{Mvar|G}}-フレームの定義はバンドルチャートの取り方によらずwell-definedである。


<math>F^G(E)_u</math>を<math>u \in M</math>上の{{Mvar|G}}-フレーム全体の集合とすると、
:<math>
F^G(E) := \bigcup_{u\in M}F^G(E)_u
</math>
は自然に{{Mvar|M}}上の{{Mvar|G}}-[[主束|主バンドル]]をなし、<math>
F^G(E)
</math>を構造群{{Mvar|G}}に関する'''フレームバンドル'''という<ref>[[#Salamon]] p.5.</ref>{{Refn|なお 、[[#Salamon]]では<math>\mathbb{R}^n</math>の(標準的とは限らない)基底<math>(f_1,\ldots,f_n)</math>を<math>\mathbb{R}^n</math>から<math>\mathbb{R}^n</math>への線形写像{{mvar|f}}と自然に同一視し、各<math>u \in M</math>に対し、
:<math>\mathbb{R}^n \overset{f}{\to} E_x \overset{\varphi_{\alpha}}{\to} \{u\} \times \mathbb{R}^n \approx \mathbb{R}^n</math>
が{{mvar|G}}に属する事を持って{{mvar|G}}-フレームを定義しているが、この定義は本項で述べたものと同値である。|group=注}}。

=== 主接続からKoszul接続の誘導 ===
<math>\pi~:~E \to M</math>を{{mvar|G}}を構造群を持つベクトルバンドルとし、<math>F_G(E)</math>をそのフレームバンドルとする。さらに{{mvar|G}}-主バンドル<math>
F^G(E)
</math>に接続形式が<math>\omega=(\omega^i{}_j)_{ij}</math>の接続が入っているとする。開集合<math>U \subset M</math>上定義された{{Mvar|E}}の局所的な基底<math>e=(e_1,\ldots,e_n)</math>に対し、
: <math>\hat{\omega}:=e^*(\omega) </math>
を、{{Mvar|e}}を{{Mvar|U}}から{{Math|''F''{{sub|''G''}}(''E'')}}への写像と見たときの接続形式{{Mvar|ω}}の{{Mvar|U}}への引き戻しとし、<math>\hat{\omega} </math>を<math>\hat{\omega}=(\hat{\omega}^i{}_j)_{i,j} </math>と成分表示する。

{{math theorem|定理・定理|
記号を上述のように取る。{{Mvar|E}}の切断{{Mvar|s}}と{{Mvar|M}}上のベクトル場{{Mvar|X}}に対し、
: <math>\nabla_X s :=X(s^j)e_j + s^j \hat{\omega}^i{}_j(X) e_i</math>
と微分演算子{{Mvar|∇}}を定義すると、{{Mvar|∇}}は局所的な基底<math>e=(e_1,\ldots,e_n)</math>の取り方によらず[[well-defined]]で、しかも{{Mvar|∇}}はKoszul接続の公理を満たす。{{Mvar|∇}}を<math>\omega</math>から'''誘導される接続'''という。
}}

=== 構造群と接続の両立 ===
{{Mvar|G}}を<math>\mathrm{GL}_n(\mathbb{R}) </math>の部分リー群とする。構造群{{Mvar|G}}を持つベクトルバンドルの接続(Koszul接続)が{{Mvar|G}}と両立する事を以下のように定義する。直観的には平行移動が{{Mvar|G}}の元で書ける事を意味する:{{Math theorem|定義|{{mvar|M}}を連結な多様体とし、{{mvar|G}}を<math>\mathrm{GL}_n(\mathbb{R}^n)</math>の閉部分リー群とし、<math>\pi~:~E \to M</math>を構造群{{mvar|G}}を持つベクトルバンドルとし、{{mvar|∇}}を<math>E \to M</math>のKoszul接続とする。このとき、{{mvar|∇}}が{{mvar|G}}'''と両立する'''({{lang-en-short|{{mvar|G}}-compatible}})とは、<math>\pi~:~E \to M</math>の任意の局所自明化
: <math>\varphi~:~\pi^{-1}(U) \tilde{\to} V \times \mathbb{R}^n</math> where <math>U \subset M</math> open、<math>V \subset \mathbb{R}^m</math> open
に対し、{{mvar|U}}内の任意の曲線<math>u(t)</math>に沿った平行移動<math>E_{u(0)} \to E_{u(1)}</math>が{{mvar|G}}に属する線形変換である事を言う<ref>[[#Wendl3]] p.83.</ref>{{refn|group="注"|[[#Wendl3]]の定義は若干曖昧で単に「十分短い曲線」(sufficiently short path)に沿った平行移動が{{mvar|G}}と両立する自明化({{mvar|G}}-compatible connection)<math>v \to g(t)v</math> for <math>g(t) \in G</math>を持つとしか言っていないが、局所自明化可能な領域内の曲線がこのように書ければ十分なので、ここではそのように定義した。}}。|note=構造群と両立するKoszul接続{{Anchors|構造と両立する接続のホロノミーによる定義}}}}定義より明らかに以下が従う:{{Math theorem|定義|<math>\pi~:~E \to M</math>を構造群{{mvar|G}}を持つベクトルバンドルとする。このとき、{{mvar|G}}-フレームバンドル<math>F_G(E)</math>上の接続形式から誘導された{{mvar|E}}の接続は{{mvar|G}}と両立する。|note=}}接続が{{Mvar|G}}と両立する事は、接続形式が{{Mvar|G}}のリー代数に入っている事と同値である:{{Math theorem|定義|{{mvar|∇}}を{{mvar|E}}上定義されたKoszul接続とし、<math>\omega_e</math>をその接続形式とする。{{mvar|∇}}が{{mvar|G}}と両立する必要十分条件は、任意の局所的な基底<math>e=(e_1,\ldots,e_n)</math>に対し、
: <math>\omega_e \in \mathfrak{g}</math>
が成立する事を言う。|note={{mvar|G}}と両立するKoszul接続{{Anchors|構造群と両立するKoszul接続のリー代数による定義}}}}[[#接続形式の節|接続形式の章]]では平行移動が常に<math>\mathrm{SO}(n)</math>の元で表せるときに接続形式が<math>\mathrm{SO}(n)</math>のリー代数に入っている事を示したが、上記の定理はこの事実を<math>\mathrm{GL}_n(\mathbb{R}) </math>の任意の部分リー群に対して示したものである。

=== ベクトルバンドルの接続から主接続の接続へ ===
{{Mvar|G}}と両立する接続はフレームバンドルの接続に対応している:{{Math theorem|定理{{Anchors|ホロノミーによる主接続の関係の定理}}|{{mvar|G}}を構造群として持つベクトルバンドル<math>E \to M</math>のKoszul接続{{mvar|∇}}が{{mvar|G}}と両立するとき、フレームバンドル{{math|''F''{{sub|''G''}}(''E'')}}のある接続形式{{mvar|ω}}が存在し、{{mvar|∇}}は{{mvar|ω}}から{{mvar|E}}に誘導される接続と一致する。}}本章の成果をまとめると、以下の結論が得られる:{{Math theorem|定義|{{mvar|E}}上のKoszul接続で{{mvar|G}}と両立するものは<math>F_G(E)</math>の主接続と1 : 1で対応する。
さらに{{mvar|G}}と両立するにKoszul接続{{mvar|∇}}に対応する主接続の接続形式を{{mvar|ω}}とすると、任意の開集合<math>U \subset M</math>と{{mvar|U}}上で定義された<math>F_G(E)</math>の任意の局所的な切断<math>e=(e_1,\ldots,e_n)</math>に対し、
: <math>\hat{\omega}_e =e^*(\omega) </math>
が成立する。ここで<math>\hat{\omega}_e</math>は<math>e=(e_1,\ldots,e_n)</math>を局所的な基底とみなしたときの{{mvar|e}}に関する{{mvar|∇}}の接続形式であり、<math>e^*(\omega) </math>は{{Mvar|e}}を{{Mvar|U}}から{{Math|''F''{{sub|''G''}}(''E'')}}への写像と見たときの接続形式{{Mvar|ω}}の{{Mvar|U}}への引き戻しである{{refn|[[#Pasquotto]] p.84.にこの定理のアフィン接続が述べられており、Koszul接続の場合も同様である旨が書いてある。このKoszul接続の場合は他の文献の記述からも従う。実際、<math>G=\mathrm{GL}_n(\mathbb{R})</math>の場合に1:1対応する事は[[#森田]] pp.319-321従い、この場合に<math>\hat{\omega}_e =e^*(\omega) </math>となる事は[[#Tu]] p.268から従う。そして{{mvar|G}}が<math>\mathrm{GL}_n(\mathbb{R})</math>の部分リー群である場合に関しては[[#Kobayashi-Nomizu1]] p.83のRemarkより<math>\mathrm{GL}_n(\mathbb{R})</math>-主バンドル<math>F_{\mathrm{GL}_n(\mathbb{R})}(E)</math>上の接続形式が{{mvar|G}}-主バンドル<math>F_G(E)</math>にreduceする必要十分条件は{{mvar|ω}}が{{mvar|G}}のリー代数に値を取る事であるので、上記の事実から従う。}}。|note=主接続とKoszul接続の関係{{Anchors|主接続とKoszul接続の関係の定理}}}}

=== 共変微分の対応関係 ===
ベクトルバンドル<math>E \to M</math>の切断''{{Mvar|s}}''が与えられたとき、<math>F_G(M)</math>上の関数

: <math>\psi_s~:~(e_1,\ldots,e_n)\in F_G(M) \mapsto (s^1,\ldots,s^n) \in \mathbb{R}^n</math>, where <math>s =s^ie_i</math>

を定義できる。このとき次が成立する:{{Math theorem|定理|{{mvar|M}}上の任意のベクトル場{{mvar|X}}に対し、以下が成立する<ref>[[#Kobayashi-Nomizu-1]] p.127.</ref>:
: <math>\psi_{\nabla_Xs}=\mathrm{Lift}(X)\psi_s</math>}}ここで<math>\mathrm{Lift}(X)\psi_s</math>は<math>F_G(M)</math>上のベクトル場<math>Y:=\mathrm{Lift}(X)</math>により<math>F_G(M)</math>上の<math>\mathbb{R}^n</math>値関数<math>\psi_s</math>の各成分を微分した<math>Y(\psi_s)</math>の事である。

== 曲率 ==
=== 一般のファイバーバンドルの曲率 ===
{{Main|接続 (ファイバー束)#曲率の節}}
ファイバーバンドル<math>\pi~:~E \to M</math>の'''接続'''({{lang-en-short|connection}})<math>\{\mathcal{H}_e\}_{e\in E}</math>が与えられているとき、{{Mvar|E}}の接ベクトル空間は<math>T_e E = \mathcal{V}_e \oplus \mathcal{H}_e</math>と分解できた。そこで
:<math>V_e~:~T_eE \to \mathcal{V}_e</math>、<math>H_e~:~T_eE \to \mathcal{H}_e</math>

をそれぞれ垂直部分空間、水平部分空間への射影とする。曲率概念はこの''{{mvar|V{{sub|e}}}}''、''{{mvar|H{{sub|e}}}}''を使って定義する:{{math theorem|定義|{{mvar|E}}上のベクトル場{{mvar|ξ}}、{{mvar|η}}に対し、
: <math>\Omega(\xi,\eta):=-V([H(\xi),H(\eta)])</math>
をファイバーバンドル{{mvar|E}}の接続<math>\{\mathcal{H}_e\}_{e\in E}</math>に関する'''曲率形式'''という<ref name="Wendl5-121">[[#Wendl5]] p.121.</ref>。|note=ファイバーバンドルの曲率形式}}ここで<math>[\cdot,\cdot]</math>は{{仮リンク|リー括弧|en|Lie bracket of vector fields}}である。{{mvar|Ω}}は<math>C^{\infty}(E)</math>-線形であり<ref name="Wendl5-121">[[#Wendl5]] p.121.</ref><ref>[[#Kolar]] p.77.</ref>{{refn|ここで<math>\Omega(\xi,\eta)</math>が<math>C^{\infty}(E)</math>-線形であるとは、通常の線形性を満たすのみならず関数{{mvar|f}}に対して<math>f\cdot \Omega( \xi,\eta)</math><math>=\Omega(f\cdot \xi,\eta)</math><math>=\Omega(\xi,f\cdot \eta)</math>を満たす事を指す<ref name="Tu49">[[#Tu]] p.49</ref>。<math>C^{\infty}(E)</math>-線形である事は、<math>\Omega(\xi,\eta)</math>の各点<math>e \in E</math>における値が{{mvar|ξ}}、{{mvar|η}}の点{{mvar|e}}における値{{mvar|ξ{{sub|e}}}}、{{mvar|η{{sub|e}}}}のみで決まること、すなわち{{mvar|Ω}}が各点における双線形写像のテンソル場とみなせる事と同値である事が知られている<ref>[[#Tu]] p.56,58</ref>。|group="注"|name="C∞-線形"}}{{refn|[[#Kolar]]における曲率の定義はここに書いたものと符号が反対だが、[[#Kolar]] p.73.にあるように[[#Kolar]]の定義だと「通常の曲率と符号が反対」になるので、[[#Wendl5]] p.121の方の符号を採用した。|group="注"|name="曲率の符号"}}、よって{{mvar|Ω}}は双線形写像

: <math>\Omega~:~TE \times TE \to \mathcal{V}</math>

であるとみなせる<ref name="C∞-線形" group="注" />。

[[フロベニウスの定理 (微分トポロジー)|フロベニウスの定理]]を用いると、曲率形式が恒等的に0である事は超平面の族<math>\{\mathcal{H}_e\}_{e\in E}</math>が'''[[フロベニウスの定理 (微分トポロジー)|可積分]]'''である事と同値である事を示せる<ref>[[#Wendl5]] pp.119,121.</ref>。したがって'''曲率形式は水平部分空間 <math>\{\mathcal{H}_e\}_{e\in E}</math>が可積分ではない度合いを表す量である'''。

=== 主接続の曲率 ===
{{Main|接続 (ファイバー束)#主接続の曲率の節}}
本節では、主接続の場合に対し、上記で定義した曲率形式をリー代数の言葉で書き換える。{{mvar|G}}をリー群とし、<math>\mathfrak{g}</math>を{{mvar|G}}のリー代数とし、さらに<math>\pi~:~P \to M</math>を{{mvar|G}}-主バンドルとし、{{mvar|ω}}を{{mvar|P}}の主接続とする。リー代数<math>\mathfrak{g}</math>におけるリー括弧を使って

: <math>[\omega,\omega]_{\mathfrak{g}}(X,Y):=[\omega(X),\omega(Y)]_{\mathfrak{g}}</math>

と定義し{{refn|[[#Kolar]] pp.100-101.|name="Kolar100-101"}}、さらに[[#主接続の節|前の章]]と同様、リー代数の元に基本ベクトル場を対応させる写像

: <math>\zeta_p~:~A\in \mathfrak{g} \mapsto \underline{A}_p \in \mathcal{V}_p</math>

を考える。紛れがなければ添字''{{mvar|p}}''を省略し単に''{{mvar|ζ}}''と書く。{{math theorem|定理|曲率形式{{mvar|Ω}}は以下を満たす{{refn|[[#Tu]] p.270}}{{refn|name="森田302"|[[#森田]] p.302.}}<ref name="Kolar100-101" />{{refn|group="注"|name="Kolarのミス"|[[#Kolar]] p.100-101.のみ右辺第二項は<math>\tfrac{1}{2}[\omega,\omega]_{\wedge}=[\omega,\omega]</math>となっているが、これは[[#Kolar]]の間違いであると判断した。実際[[#Kolar]] p.100の一番下にある<math>[\cdot,\cdot]_{\wedge}</math>の定義式に<math>p=q=1</math>を代入すると<math>[\omega,\omega]_{\wedge}=[\omega,\omega]</math>となり、<math>\tfrac{1}{2}[\omega,\omega]_{\wedge}=[\omega,\omega]</math>とはならない。またこの[[#Kolar]] p.100の一番下の係数<math>\tfrac{1}{p!q!}</math>は[[#森田]]の1巻のp.95.では<math>\tfrac{1}{(p+q)!}</math>になっているため、[[#Kolar]]が<math>[\cdot,\cdot]_{\wedge}</math>の定義式を間違えた可能性が高い。[[#Tu]] p.285も参照。}}:
* ('''構造方程式'''<ref name="森田302" />)<math>\zeta{}^{-1}(\Omega) = d\omega + {1 \over 2}[\omega,\omega]_{\mathfrak{g}} \in \mathfrak{g}</math>

紛れがなければ<math>\zeta{}^{-1}(\Omega)</math>を単に{{mvar|Ω}}と書き、接続形式{{mvar|ω}}の'''曲率形式'''という。|note=主バンドルの接続の曲率}}

=== ベクトルバンドルの接続の曲率 ===
{{Main|接続 (ファイバー束)#Koszul接続の曲率の節|接続 (ベクトル束)#曲率}}

==== 定義 ====
Koszul接続が定義されたベクトルバンドルの曲率を以下のように定義する:

{{math theorem|定義・定理|
ベクトルバンドル<math>\pi ~:~E \to M</math>の接続<math>\nabla</math>に対し、
: <math>R(X,Y)s:=\nabla_X\nabla_Ys-\nabla_Y\nabla_Xs-\nabla_{[X,Y]}s</math> for <math>X,Y \in \mathfrak{X}(M), s\in \Gamma(E)</math>
を<math>\nabla</math>に関する'''曲率'''({{lang-en-short|curvature}})もしくは'''曲率テンソル'''({{lang-en-short|curvature tensor}})という<ref name="小林43">[[#小林]] p.43.</ref>。|note=曲率|}}{{mvar|R}}は{{mvar|X}}、{{mvar|Y}}、{{mvar|s}}に関して<math>C^{\infty}(M)</math>-線形であり<ref name="小林432">[[#小林]] p.43.</ref>、よって{{mvar|R}}は各点<math>P\in M</math>に対し、

: <math>R_P \in T^*M \otimes T^*M \otimes E^* \otimes E</math>

を対応させるテンソル場とみなせる。


さらにKoszul接続の曲率形式を以下のように定義する:{{math theorem|定義|{{mvar|U}}を{{mvar|M}}の開集合とし、<math>e=(e_1,\ldots,e_n)</math>を{{mvar|U}}におけるフレームバンドル<math>F_G(M)</math>の切断とする。このとき、曲率テンソルを
: <math>R(X,Y)e_j=\hat{\Omega}^i{}_j(X,Y)e_i</math>
と成分表示し、<math>\hat{\Omega}_e:=(\hat{\Omega}^i{}_j)</math>とすると、{{mvar|Ω{{sub|e}}}}は一般線形群のリー代数
<math>\mathfrak{gl}_n(\mathbb{R})</math>に値を取る2-形式とみなせる。
<math>\hat{\Omega}_e</math>を{{mvar|e}}に関するKoszul接続{{mvar|∇}}の'''曲率形式'''({{lang-en-short|curvature form}})という<ref>[[#Tu]] p.80</ref>。}}

==== 一般の接続の曲率形式との関係 ====
[[接続 (ファイバー束)#ベクトルバンドルの接続から一般の接続へ|すでに述べたように]]ベクトルバンドル<math>\pi~:~E \to M</math>上のKoszul接続{{Mvar|∇}}には、それと対応するファイバーバンドルとしての接続<math>\{V_e\}_{e\in E}</math>が定義可能であるが、上述したKoszul接続の曲率は[[接続 (ファイバー束)#ファイバーバンドルの曲率の節|前述した]]一般のファイバーバンドルの曲率形式<math>\Omega(\xi,\eta)=-V([H(\xi),H(\eta)])</math>と以下の関係を満たす。ここで{{Mvar|H}}は水平部分空間への射影である。{{Math theorem|記号を上述のように取る。このとき、{{mvar|M}}上の点{{mvar|u}}、ベクトル<math>X,Y \in T_uM</math>、<math>s \in E_u</math>に対し、以下が成立する<ref>[[#Wendl5]] p.123.</ref>:
: <math>R(X,Y)s = -V(\mathrm{Lift}_s(X),\mathrm{Lift}_s(Y))</math>}}よって特にKoszul接続の曲率形式<math>\hat{\Omega}_e</math>とは以下の関係を満たす:

: <math>\Omega^i{}_j(X,Y) = -\langle e^i,V(\mathrm{Lift}_{e_j}(X),\mathrm{Lift}_{e_j}(Y))\rangle</math>

ここで<math>e=(e_1,\ldots,e_n)</math>であり、<math>(e^1,\ldots,e^n)</math>はその双対基底である。

==== 主接続の曲率との関係 ====
<math>E \to M</math>のフレームバンドル<math>F_G(M)</math>の曲率形式とKoszul接続の曲率形式は以下の関係を満たす:{{math theorem|定理|ベクトルバンドル<math>E \to M</math>のフレームバンドル<math>F_G(M)</math>に接続形式が{{mvar|ω}}の接続が定義されているとし、この接続の曲率形式を{{mvar|Ω}}とする。

さらにこの接続が{{mvar|E}}に誘導する接続が定義するKoszul接続を{{mvar|∇}}とし、<math>e=(e_1,\ldots,e_n)</math>を{{mvar|M}}の開集合{{mvar|U}}上定義された<math>F_G(M)</math>の切断とし、<math>\hat{\Omega}_e</math>を{{mvar|∇}}の{{mvar|e}}に関する曲率形式とする。このとき、以下が成立する<ref>[[#Tu]] p.270.</ref>:
: <math>\hat{\Omega}_e=e^*(\Omega)</math>}}

== ホロノミー群 ==

本節では特に断りのない限り、<math>\pi~:~E \to M</math>を'''完備な'''接続<math>\mathcal{H}=\{\mathcal{H}_e\}_{e\in E}</math>が定義されたファイバーバンドルで{{mvar|M}}が[[連結空間|連結]]なものとする。ここで接続が完備であるとは、{{mvar|M}}上の任意の曲線<math>c(t)</math>上に<math>c(0)</math>から<math>c(1)</math>までの平行移動を常に定義可能な事を指す。

=== 定義 ===

<math>x_0\in M</math>を{{mvar|M}}の点とし、<math>c(t)\in M</math>を{{mvar|x{{sub|0}}}}から{{mvar|x{{sub|0}}}}自身への区分的になめらかな閉曲線とすると、接続が完備なので{{mvar|x{{sub|0}}}}のファイバー<math>E_{x_0}</math>の任意の元{{mvar|e}}に対し、{{mvar|e}}を<math>c(t)\in M</math>に沿って一周平行移動してできた元を<math>\varphi_c(e) \in E_{x_0}</math>とする事で、<math>E_{x_0}</math>上の可微分同相写像
: <math>\varphi_{c}~:~E_{x_0} \to E_{x_0}</math>
を定義できる。
{{math theorem|定理・定義|
: <math>\mathrm{Hol}(E,\mathcal{H},x_0):=\{\varphi_c\mid c</math>は{{Mvar|x{{sub|0}}}}から出て{{Mvar|P}}自身への区分的になめらかな閉曲線<math>\}</math>
は閉曲線の連結に関して自然に群構造をなす。この群を{{mvar|E}}の<math>\mathcal{H}</math>に関する{{Mvar|x{{sub|0}}}}における'''ホロノミー群'''({{Lang-en-short|holonomy group}})という<ref name="Kolar82">[[#Kolar]] pp.82-83.</ref>。
|note=ホロノミー群}}

=== ホロノミーリー代数 ===

<math>u \in M</math>における接ベクトル<math>v \in T_uM </math>に対し、<math> e \in E_u</math>に<math>v</math>の{{mvar|e}}での水平リフトを対応させる
: <math> e \in E_{u} \mapsto \mathrm{Lift}_e(v) \in \mathcal{H}_e \subset T_eE</math>
をファイバー<math>E_{u}</math>上の切断とみなしたものを<math>\mathrm{Lift}(v_u) </math>と書く。

2つのベクトル<math>v_u,w_u \in T_u M </math>に対し、<math>\mathrm{Lift}(v_u) </math>、<math>\mathrm{Lift}(w_u) </math>はいずれも<math>E_{u}</math>上のベクトル場なので、曲率形式{{mvar|Ω}}に対して、
: <math>\Omega(\mathrm{Lift}(v_u),\mathrm{Lift}(w_u)) \in VE =T E_{u}</math>
を定義でき、これは<math>E_{u}</math>上のベクトル場とみなせる<ref name="Kolar82" />。さらに<math>u_0 \in M</math>をfixし、{{Mvar|u}}から<math>u_0</math>までつなぐ曲線<math>c(t)</math>に沿って<math>\Omega(\mathrm{Lift}(v_u),\mathrm{Lift}(w_u)) </math>を平行移動したものを<math>\Omega_{c}(\mathrm{Lift}(v_u),\mathrm{Lift}(w_u)) </math>と書く。

{{math theorem|定理・定義|
<math>E_{u_0}</math>上のベクトル場全体の集合<math>\mathfrak{X}(E_{u_0})</math>を{{仮リンク|リー括弧|en|Lie bracket}}に関する「無限次元リー代数」とみなしたとき、
:<math>\{\Omega_c(\mathrm{Lift}(v_u),\mathrm{Lift}(w_u))|x \in M,v,w \in T_{u}M, c</math>は{{mvar|x}}から{{mvar|x{{sub|0}}}}までつなぐ{{mvar|M}}上の曲線<math>\}</math>
を含む最小の({{mvar|C{{sup|∞}}}}-位相に関する)閉部分線形空間
: <math>\mathrm{hol}(E,\mathcal{H},x_0)</math>
と書くとき、<math>\mathrm{hol}(E,\mathcal{H},x_0)</math>は<math>\mathfrak{X}(E_{x_0})</math>の部分リー代数になっている。

<math>\mathrm{hol}(E,\mathcal{H},x_0)</math>を'''ホロノミーリー代数'''({{lang-en-short|holonomy Lie algebra}})という<ref name="Kolar82" />。
}}

実は以下の定理が成立する。なお、以下の定理は主バンドルに対する[[:en:Holonomy#Ambrose–Singer theorem|Ambrose–Singerの定理]]を任意のファイバーバンドルに一般化したものである:
{{math theorem|定理|ホロノミーリー代数<math>\mathrm{hol}(E,\mathcal{H},x_0)</math>が有限次元であれば、以下が成立する:
* ホロノミー群<math>G:=\mathrm{Hol}(E,\mathcal{H},x_0)</math>は<math>\mathrm{hol}(E,\mathcal{H},x_0)</math>をリー代数として持つリー群である<ref name="Kolar82" />。
* ある{{mvar|G}}-主バンドル<math>\pi'~:~P \to M</math>、および{{mvar|G}}のファイバー<math>E_{x_0}</math>への作用が一意に存在し、<math>\pi'~:~P \to M</math>と<math>E_{x_0}</math>への{{mvar|G}}作用を使って作った<math>E_{x_0}</math>バンドルは<math>\pi~:~E \to M</math>と同型である<ref name="Kolar82" />。
* 主バンドル<math>\pi'~:~P \to M</math>には主バンドルとしての接続([[#主接続の定義|詳細次章]])が一意に存在し、この接続が上述の<math>E_{x_0}</math>バンドルに[[#接続の誘導|誘導する接続]]は<math>\pi~:~E \to M</math>との接続と同一である<ref name="Kolar82" />。
|note=Ambrose-Singerの定理の一般化{{Anchors|Ambrose-Singerの一般化}}}}

== 接続の歴史 ==
接続は、歴史的にはまず[[リーマン幾何学]]において見出された。接続の概念のはじまりをどこに置くかについては諸説あるが、[[エルヴィン・クリストッフェル|クリストッフェル]]の研究をその淵源とする見方がある{{refn|group="注"|これはFreeman{{sfn|Freeman|2011}}の立場。ほかには、たとえば岩波数学辞典は後出のレヴィ=チヴィタによる平行移動の発見を接続の概念のはじまりとしている{{sfn|日本数学会編|2007}}。}}。クリストッフェルは1869年の論文で、座標変換の導関数が満たす関係式の研究を通じ、現在[[クリストッフェル記号]]とよばれる量を発見した{{sfn|Christoffel|1869}}。これを用いて、[[グレゴリオ・リッチ=クルバストロ|リッチ]]はその学生である[[トゥーリオ・レヴィ=チヴィタ|レヴィ=チヴィタ]]とともに、彼らが{{仮リンク|リッチ解析|label=絶対微分学|en|Ricci calculus}}とよんだ、[[共変微分]]を用いる今でいう[[テンソル解析]]の計算の手法をつくりあげた{{sfn|Levi-Civita|1900}}。

レヴィ=チヴィタはまた、1916年に、リーマン幾何学における[[接ベクトル空間|接ベクトル]]の[[平行移動]]の概念を発見し、これが共変微分によって記述されることをみつけた{{sfn|Levi-Civita|1916}}([[レヴィ・チヴィタ接続|レヴィ-チヴィタ接続]]の名前はこのことによる)。1918年に[[ヘルマン・ワイル|ワイル]]はそれを一般化して、[[アフィン接続]]の概念に到達した{{sfn|Weyl|1918}}{{refn|group="注"|正確には、現在の言葉でいう捩れのないアフィン接続。}}。ここで「接続」にあたる語({{lang-de-short|''Zusammenhang''}})がはじめて使用された{{citation needed|date=2018年12月}}。

それからすぐに、[[エリ・カルタン]]によって、さらなる一般化が行われた。カルタンは[[フェリックス・クライン|クライン]]の[[エルランゲン・プログラム]]の局所化を試みていたのである。1920年代にカルタンは、[[微分形式]]を用いた記述によって、現在{{仮リンク|カルタン接続|label=カルタン接続|en|Cartan connection}}と呼ばれるものを発見していった{{sfn|Cartan|1926}}。カルタンのこの仕事により、リーマン幾何学だけでなく、{{仮リンク|共形幾何学|en|Conformal geometry}}、[[射影幾何学]]などのさまざまな幾何学を研究するための基礎が築かれた。

しかしカルタンの記述は、微分幾何学の他の基本的概念の整備が進んでいない当時、理解されづらいものだった。その仕事をよりわかりやすいものにして発展させるために、カルタンの学生にあたる[[:en:Charles_Ehresmann|Charles Ehresmann]]は、1940年代から[[主束|主バンドル]]や[[ファイバー束|ファイバーバンドル]]を研究した。1951年の論文でEhresmannは、主バンドルの接続を、{{仮リンク|接分布|en|Distribution (differential geometry)}}を用いる方法と微分形式による方法の両方で定義した{{sfn|Ehresmann|1950}}([[接続 (ファイバー束)|ファイバーバンドルの接続]])。

その一方で、1950年に[[:en:Jean-Louis_Koszul|Jean-Louis Koszul]]は、ベクトル束の接続の代数的定式化を与えた{{sfn|Koszul|1950}}([[接続 (ベクトル束)|ベクトルバンドルの接続]])。Koszulの定式化によると、クリストッフェル記号を明示的に用いる必要は必ずしもなくなり、接続の取り扱いは容易になった{{citation needed|date=2018年12月}}。


==関連項目==
==関連項目==
*{{仮リンク|カルタン接続|en|Cartan connection}}
*[[接続形式]]
**{{仮リンク|射影接続|en|projective connection}}
*{{仮リンク|グロタンディーク接続|en|Grothendieck connection}}:[[対角線]]の無限小近傍からの{{仮リンク|デサント (圏論)|label=デサント|en|descent (category theory)}}(descent)であるデータとみなすことができる。{{harv|Osserman|2004}}
*{{仮リンク|接続 (ファイバー多様体)|en|Connection (fibred manifold)}}
*{{仮リンク|接続 (ファイバー多様体)|en|Connection (fibred manifold)}}
*{{仮リンク|接続 (アフィンバンドル)|en|Connection (affine bundle)}}
*{{仮リンク|接続 (アフィンバンドル)|en|Connection (affine bundle)}}
114行目: 498行目:


== 注 ==
== 注 ==
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
=== 出典 ===
{{Reflist}}
{{reflist|20em}}

=== 注釈 ===
{{reflist|30em|group="注"}}

==文献==

=== 参考文献 ===

*{{cite book | 和書 | editor=[[日本数学会]]編 | title=岩波数学辞典 | edition=第4版 | publisher=[[岩波書店]] | year=2007 | isbn=9784000803090 | ref=harv}}
*{{Cite web |url=https://maths-people.anu.edu.au/~andrews/DG/ |title=Lectures on Differential Geometry |access-date=2022/12/28 |publisher=Australian National University |author=Ben Andrews |ref=Andrews}}
*{{Cite book|洋書 |title=Differential Geometry: Connections, Curvature, and Characteristic Classes |date=2017/6/15 |publisher=[[シュプリンガー・サイエンス・アンド・ビジネス・メディア|Springer]] |author=[[:en:Loring W. Tu|Loring W. Tu]] |series=[[Graduate Texts in Mathematics]] |volume=275 |isbn=978-3319550824 |ref=Tu}}
*{{cite book|和書| |title=相対性理論の数理 |date=2021/6/22 |publisher=[[日本評論社]] |ref=新井 |author=新井朝雄 |isbn=978-4535789289}}
*{{cite book|洋書 |title=A Comprehensive Introduction to Differential Geometry |publisher=Publish or Perish, Incorporated |ref=Spivak |author=Michael Spivak |volume=VOLUME TWO |isbn=978-0914098805 |edition=Second Edition}}
*{{cite book|和書 |title=微分形式の幾何学1 |date=2001/05/23 |publisher=[[岩波書店]] |author=森田茂之 |series=岩波講座 現代数学の基礎 |volume=14[25] |isbn=978-4000110143 |url=https://www.iwanami.co.jp/book/b476178.html}}
*{{cite book|和書 |title=微分形式の幾何学2 |date=2001/05/23 |publisher=[[岩波書店]] |ref=森田 |author=森田茂之 |series=岩波講座 現代数学の基礎 |volume=14[26] |isbn=978-4000110143 |url=https://www.iwanami.co.jp/book/b480194.html}}
*{{citation | first=Shigeyuki|last= Morita | title=Geometry of Differential Forms | publisher=AMS | year=2001 | isbn = 0-8218-1045-6}} 上記の2つの書籍の英語版
*{{Cite book|和書 |title=接続の微分幾何とゲージ理論 |date=1989/5/15 |publisher=[[裳華房]] |author=[[小林昭七]] |isbn=978-4785310585 |ref=小林}}
*{{cite book | 和書 | author=矢野 健太郎 | title=接続の幾何学 | publisher=河出書房 | year=1948 | ref=矢野(1948) }}
*{{Cite web |url=https://www2.mathematik.hu-berlin.de/~wendl/Winter2016/DiffGeo1 |title=Differential geometrie I |access-date=2023/08/24 |author=Chris Wendl}}
**{{Cite web |url=https://www2.mathematik.hu-berlin.de/~wendl/Winter2016/DiffGeo1/connections_chapter3.pdf |title=Chapter 3: Connections |access-date=2023/08/24 |author=Chris Wendl |ref=Wendl3}}
**{{Cite web |url=https://www2.mathematik.hu-berlin.de/~wendl/Winter2016/DiffGeo1/connections_chapter4.pdf |title=Chapter 4: Natural constructions on vector bundles |access-date=2023/08/24 |author=Chris Wendl |ref=Wendl4}}
**{{Cite web |url=https://www2.mathematik.hu-berlin.de/~wendl/Winter2016/DiffGeo1/connections_chapter5.pdf |title=Chapter 5: Curvature on bundles |access-date=2023/08/24 |author=Chris Wendl |ref=Wendl5}}
*{{Cite book|洋書 |title=Differential Geometry: Basic Notions and Physical Examples |date=2014/7/15 |publisher=[[シュプリンガー・サイエンス・アンド・ビジネス・メディア|Springer]] |author=Marcelo Epstein |series=Mathematical Engineering |isbn=978-3319069197 |ref=Epstein}}
*{{Cite book|洋書 |title=Natural Operators in Differential Geometry |date=2009/12/28 |publisher=[[シュプリンガー・サイエンス・アンド・ビジネス・メディア|Springer]] |authors=Ivan Kolář, Jan Slovák, Peter W. Michor |isbn=978-3642081491 |ref=Kolar}}
*{{Cite book |title=Supermanifolds and Supergroups: Basic Theory |publisher=Springer |ref=Tuynman |author=Gijs M. Tuynman |series=Mathematics and Its Applications |volume=570 |isbn=978-9048166329}}
*{{Cite web |url=https://people.math.ethz.ch/~salamon/PREPRINTS/witsei.pdf |title=Spin Geometry and Seiberg-Witten invariants |access-date=2023/10/27 |publisher=[[チューリッヒ工科大学]] |author=Dietmar Salamon}}
*{{Cite web |url=https://www.few.vu.nl/~pasquott/course16.pdf |title=Linear G-structures by examples |access-date=2023/10/27 |publisher=[[アムステルダム自由大学]] |author=Federica Pasquotto |ref=Pasquotto}}
*{{cite book |series=Wiley Classics Library |title=[[:en:Foundations of Differential Geometry|Foundations of Differential Geometry]] Volume I |publisher=Wiley |date=2009 |orig-year=1963 |isbn=978-0-471-15733-5 |zbl=0119.37502 |author2=[[野水克己|Katsumi Nomizu]] |author=[[小林昭七|Shishichi Kobayashi]] |ref=Kobayashi-Nomizu-1}}
*{{cite book |author2=Katsumi Nomizu |author=Shishichi Kobayashi |series=Wiley Classics Library |title=Foundations of Differential Geometry Volume II |publisher=Wiley |location= |date=2009 |orig-year=1969 |isbn=978-0-471-15732-8 |zbl=0175.48504 |ref=Kobayashi-Nomizu-2}}
*{{cite thesis | type=MSc | last=Freeman | first=Kamielle | title=A Historical Overview of Connections in Geometry | date=2011 | publisher=Wichita State University | ref=Freeman}}
*{{SpringerEOM|title=Connection|author=Lumiste, Ü.|urlname=Connection}}
*{{citation|last=Osserman|first=B.|title=Connections, curvature, and p-curvature|url=http://math.berkeley.edu/~osserman/math/connections.pdf|format=PDF|year=2004}}
*{{Citation | last = Mangiarotti | first = L.
| last2 = [[Gennadi Sardanashvily|Sardanashvily]]
| first2 = G. | year = 2000
| title = Connections in Classical and Quantum Field Theory
| publisher = World Scientific | isbn = 981-02-2013-8
}}.
*{{Cite book|和書 |title=ゲージ理論・一般相対性理論のための 微分幾何入門 |date= 2021/9/30 |publisher=[[森北出版]] |author=佐古彰史 |ref=佐古 |isbn=978-4627078512}}


==参考文献==
=== 歴史的な文献 ===
* {{cite book | 和書 | editor=[[日本数学会]]編 | title=岩波数学辞典 | edition=第4版 | publisher=[[岩波書店]] | year=2007 | isbn=9784000803090 | ref=harv}}
* {{citation | first = Élie | last = Cartan | title = Les groupes d'holonomie des espaces généralisés | journal = Acta Math. | volume = 48 | year = 1926 | pages = 1–42 | doi=10.1007/BF02629755 | ref=harv}}
* {{citation | first = Élie | last = Cartan | title = Les groupes d'holonomie des espaces généralisés | journal = Acta Math. | volume = 48 | year = 1926 | pages = 1–42 | doi=10.1007/BF02629755 | ref=harv}}
* {{citation | last=Christoffel | first=Elwin B. | title=Ueber die Transformation der homogenen Differentialausdrücke zweiten Grades | journal=Journal für die reine und angewandte Mathematik | volume=70 | year=1869 | pages=46–70 | doi= | ref=harv}}
* {{citation | last=Christoffel | first=Elwin B. | title=Ueber die Transformation der homogenen Differentialausdrücke zweiten Grades | journal=Journal für die reine und angewandte Mathematik | volume=70 | year=1869 | pages=46–70 | doi= | ref=harv}}
* {{citation | last=Ehresmann | first=Charles | title=Les connexions infinitésimales dans un espace fibré différentiable| series=Colloque de Toplogie, Bruxelles | year=1950 | pages=29–55 | ref=harv}}
* {{citation | last=Ehresmann | first=Charles | title=Les connexions infinitésimales dans un espace fibré différentiable| series=Colloque de Toplogie, Bruxelles | year=1950 | pages=29–55 | ref=harv}}
* {{cite thesis | type=MSc | last=Freeman | first=Kamielle | title=A Historical Overview of Connections in Geometry | date=2011 | publisher=Wichita State University | ref=harv}}
* {{citation | last=Koszul | first=Jean-Louis | title=Homologie et cohomologie des algebres de Lie | journal=Bulletin de la Société Mathématique | volume=78 | year=1950 | pages=65–127 | ref=harv}}
* {{citation | last=Koszul | first=Jean-Louis | title=Homologie et cohomologie des algebres de Lie | journal=Bulletin de la Société Mathématique | volume=78 | year=1950 | pages=65–127 | ref=harv}}
* {{citation | last1=Levi-Civita | first1=Tulio | last2=Ricci | first2=M. M. G. | title=Méthodes de calcul différential absolu et leurs applications | journal=Math. Ann. B | volume=54 | year=1900 | pages=125–201 | doi=10.1007/BF01454201 | ref=harv}}
* {{citation | last1=Levi-Civita | first1=Tulio | last2=Ricci | first2=M. M. G. | title=Méthodes de calcul différential absolu et leurs applications | journal=Math. Ann. B | volume=54 | year=1900 | pages=125–201 | doi=10.1007/BF01454201 | ref=harv}}
130行目: 549行目:
* {{Citation | last=Weyl | first=Hermann | title=Reine Infinitesimalgeometrie | journal=Mathematische Zeitschrift | volume=2 | pages=384–411 | year=1918 | doi=10.1007/bf01199420 | ref=harv}}
* {{Citation | last=Weyl | first=Hermann | title=Reine Infinitesimalgeometrie | journal=Mathematische Zeitschrift | volume=2 | pages=384–411 | year=1918 | doi=10.1007/bf01199420 | ref=harv}}


=== 関連文献 ===
{{Reflist}}<!--added under references heading by script-assisted edit-->
*{{citation|last=Cartan|first=Élie|authorlink=Élie Cartan|title=Sur les varietes a connexion projective|journal=Bulletin de la Société Mathématique|volume=52|year=1924|pages=205–241}}
*{{citation|last=Cartan|first=Élie|authorlink=Élie Cartan|title=Sur les varietes a connexion projective|journal=Bulletin de la Société Mathématique|volume=52|year=1924|pages=205–241}}
*{{citation|last=Cartan|first=Élie|authorlink=Élie Cartan|title=Geometry of Riemannian spaces|publisher=Math Sci Press|year=1983|url=https://books.google.co.jp/books?id=-YvvVfQ7xz4C&printsec=frontcover&redir_esc=y&hl=ja|isbn=978-0-915692-34-7}}
*{{citation|last=Cartan|first=Élie|authorlink=Élie Cartan|title=Geometry of Riemannian spaces|publisher=Math Sci Press|year=1983|url=https://books.google.co.jp/books?id=-YvvVfQ7xz4C&printsec=frontcover&redir_esc=y&hl=ja|isbn=978-0-915692-34-7}}
*{{SpringerEOM|title=Connection|author=Lumiste, Ü.|urlname=Connection}}
*{{citation|last=Osserman|first=B.|title=Connections, curvature, and p-curvature|url=http://math.berkeley.edu/~osserman/math/connections.pdf|format=PDF|year=2004}}
*{{Citation | last = Mangiarotti | first = L.
| last2 = [[Gennadi Sardanashvily|Sardanashvily]]
| first2 = G. | year = 2000
| title = Connections in Classical and Quantum Field Theory
| publisher = World Scientific | isbn = 981-02-2013-8
}}.
* {{citation | first=Shigeyuki|last= Morita | title=Geometry of Differential Forms | publisher=AMS | year=2001 | isbn = 0-8218-1045-6}} 下記の2つの書籍の英語版
* {{citation | first=茂之|last= 森田 | title=微分形式の幾何学1 | publisher=岩波書店 | year=1996 | isbn = 4-00-010-639-2}}
* {{citation | first=茂之|last= 森田 | title=微分形式の幾何学2 | publisher=岩波書店 | year=1997 | isbn = 4-00-010633-3}}
* {{cite book | 和書 | author=矢野 健太郎 | title=接続の幾何学 | publisher=河出書房 | year=1948 | ref=矢野(1948) }}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
*[http://www.map.mpim-bonn.mpg.de/Connections Connections] at the Manifold Atlas
*[http://www.map.mpim-bonn.mpg.de/Connections Connections] at the Manifold Atlas


{{DEFAULTSORT:せつそく きかかく}}
{{DEFAULTSORT:せつそく}}
[[Category:数学に関する記事]]
[[Category:数学に関する記事]]
[[Category:微分幾何学]]
[[Category:微分幾何学]]

2023年12月18日 (月) 09:18時点における最新版

数学 > 幾何学 > 多様体論 > 微分幾何学 > 接続 (微分幾何学)

微分幾何学において接続(せつぞく、: connection)とは、多様体ファイバーバンドル上に平行移動の概念を定義する事ができる数学的構造である。ただし数学的な取り扱いを容易にするため、平行移動の概念で直接的に接続を定義するのではなく、実質的に等価な別概念を用いて接続を定義する。

接続概念はゲージ理論チャーン・ヴェイユ理論で用いられる。特にチャーン・ヴェイユ理論の特殊ケースとして、曲面に関する古典的なガウス・ボンネの定理一般の偶数次元多様体に拡張するのに役立つ。

接続は元々はクリストッフェル並びにレヴィ-チヴィタリッチによって[1]リーマン多様体上に導入された概念(レヴィ-チヴィタ接続)であるが、一般のベクトルバンドル上の接続(Koszul接続[注 1])や主バンドルの接続(主接続)にも拡張され、さらに一般のファイバーバンドルの接続へと拡張された。ただし実際に研究が進んでいるのは、ベクトルバンドルとその主バンドルに対する接続概念である。

以下、本項では特に断りがない限り、多様体、関数、バンドル等は全てC級の場合を考える。よって紛れがなければ「C級」を省略して単に多様体、関数、バンドル等という。また特に断りがない限りベクトル空間は実数体上のものを考える。

概要[編集]

多様体M上のベクトル場YM上のに対し、Yに沿った「方向微分」を定義することを考える。ユークリッド空間における微分を参考にすると、

のように定義するのがよいように思えるが、多様体上ではは別の点なので、両者の差は意味も持たない。しかしまで「平行移動」できれば、平行移動の結果の差を取る事で「方向微分」を定義でき、これをYに沿った共変微分という。


逆にに沿った共変微分が定義できていれば、

が恒等的に成立している事をもって、Yに沿って平行と呼ぶことで平行の概念を定義できる。


このように平行移動と共変微分は実質的に同値な概念であり、多様体のベクトル場に対して平行移動・共変微分を定義できる構造を多様体(の接バンドル)の接続という。


接続概念から定まる平行移動により、(何ら構造が定義されていない)多様体では無関係なはずの点におけるベクトルにおけるベクトルと「接続」して関係づける事ができ、これが「接続」という用語の語源である[5]


上では接バンドルに対する接続を説明したが、より一般にベクトルバンドルの接続、あるいはさらに一般にファイバーバンドルの接続を考える事ができる。上述のように平行移動と共変微分は実質的に同値な概念なので、平行移動・共変微分のうち、定義しやすい方をもとにして接続概念を定義すればよい。

そこでベクトルバンドルの場合は共変微分を、一般のファイバーバンドルの場合は平行移動をベースにして接続概念を定義する。


接続によって定まるもう一つの重要概念として曲率があり、これはファイバーバンドルの「曲がり具合」を表している。特に接ベクトルバンドルの曲率は多様体それ自身の「曲がり具合」とみなせる。曲率概念は歴史的には3次元ユークリッド空間内の曲面に対して定義されたものだが、実は「外の空間」であるがなくても定義できる曲面に内在的な量である事が示されたので、これを一般のリーマン多様体(の接ベクトルバンドル)、さらには一般のファイバーバンドルに対して拡張したものである。多様体に内在的な量としてみなしたとき、曲率の幾何学的意味は、閉曲線に沿ってベクトルを一周平行移動したとき、もとのベクトルとどの程度ずれるかを測った量であるとみなせる。

ベクトルバンドルの接続[編集]

本節ではまずリーマン多様体の接続であるレヴィ-チヴィタ接続の定義を述べ、次により一般的なベクトルバンドルに対する接続の定義を述べる。

レヴィ-チヴィタ接続の定義[編集]

Mの部分多様体とし、M上の曲線とし、さらに上定義されたMのベクトル場とし(すなわち各時刻tに対し、を満たすとし)、

と定義する。ここでPrMの点c(t)における内の接平面(と自然に同一視可能なTc(t)M)への射影である。またXYM上のベクトル場とするとき、

と定義する。ここでは時刻0に点を通るX積分曲線である。実はこれらの量はMの内在的な量である事、すなわちからMに誘導されるリーマン計量(とその偏微分)のみから計算できる事が知られている。


具体的にはMに局所座標を取ると、以下のように書ける(アインシュタインの縮約で表記):

   where

そこでをリーマン多様体に内在的な値とみなしたものを考える事ができる。は以下の公理で特徴づけられる事が知られている:

定理 (リーマン幾何学の基本定理) ― M上のベクトル場の組にM上のベクトル場を対応させる汎関数で以下の5つの性質をすべて満たすものが唯一存在する[6][7]。このをレヴィ-チヴィタ接続といい、をレヴィ-チヴィタ接続から定まるYXによる共変微分という[8][9][10]

  1. (関数に関する左線形性)
  2. (実数に関する右線形性) 
  3.  (ライプニッツ則)
  4. (捻れなし)
  5. (計量との両立)

ここでXYZM上の任意の可微分なベクトル場であり、fgM上定義された任意の実数値C級関数であり、abは任意の実数であり、は点においてとなるベクトル場であり、fX方向微分であり、リー括弧英語版である。


を曲線上に制限したものとして定義できる。

ベクトルバンドルの接続の定義[編集]

を可微分多様体M上のベクトルバンドルとし(EMのいずれにもリーマン計量が入っているとは限らない)、Eの切断全体の集合とし、M上のベクトル場全体の集合とする。

ベクトルバンドルの接続は前述したレヴィ-チヴィタ接続の公理的特徴づけの5つの性質のうち3つを使って定義される。

定義 (ベクトルバンドルの接続) ― 関数

で以下の性質を満たすものをE上のKoszul接続[注 1]: Koszul connection[11][12]あるいは単に接続: connection)といい[13][14]を接続が定めるsX方向の共変微分という:

  1. (関数に関する左線形性)
  2. (実数に関する右線形性) 
  3.  (ライプニッツ則)

Mの接ベクトルバンドルTMの接続の事を特にアフィン接続: affine connection)という[15]

ここでXYM上の任意のベクトル場であり、ss1s2Eの任意の切断であり、abは実数であり、ff1f2M上定義された任意の実数値可微分関数であり、は点uにおいてとなるEの切断であり、fX方向微分である。

上述の定義から、一般のベクトルバンドルの接続もレヴィ-チヴィタ接続と同様、

という形で書ける。ここでMの局所座標であり、Eの局所的な基底である[注 2]。ただしもちろんレヴィ-チヴィタ接続と違いは計量で書けるとは限らない。


さらに以下の定義をする:

定義 ― 

リーマン幾何学の基本定理から、レヴィ-チヴィタ接続とは、唯一の計量と両立する捻れなしのアフィン接続として特徴づけられる。

曲線上の微分[編集]

Mの曲線上に切断が定義されているとき、接続の成分表示のを形式的にに置き換えた

を、曲線に沿った共変微分という。この定義は基底の取り方によらずwell-definedである。

平行移動[編集]

球面上の平行移動。大円で囲まれた三角形上でベクトルを一周平行移動すると、もとに戻ってきたときに元のベクトルには戻らない。

をベクトルバンドルとし、Mの曲線上定義されたM上のベクトル場

を恒等的に満たすとき、平行であるという[17]。また、上の接ベクトル上の接ベクトルに対し、を満たす上の平行なベクトル場が存在するとき、に沿って平行移動: parallel transportation along )した接ベクトルであるという[17]


ユークリッド空間の平行移動と異なる点として、どの経路に沿って平行移動したかによって結果が異なる事があげられる。この現象をホロノミー英語版: holonomy)という[18]

右図はホロノミーの具体例であり、接ベクトルを大円で囲まれた三角形に沿って一周したものを図示しているが、一周すると元のベクトルと90度ずれてしまっている事が分かる。


に沿ってまで平行移動したベクトルをとするとは線形変換である[19]。また共変微分は平行移動で特徴づけられる:

定理 (共変微分の平行移動による特徴づけ) ― 多様体M上の曲線MのベクトルバンドルEに沿った切断を考えるとき、に沿った平行移動をとすると、以下が成立する[20]

上述のように平行移動があれば共変微分が定義できるので、一般のファイバーバンドルではむしろ平行移動に基づいて接続概念を定義する。


E上に計量gが定義されていてしかもが計量と両立しているとすると、以下が成立する:

定理 ―  平行移動は計量を保つ。すなわちM上の曲線に沿った平行移動をとすると、任意のに対し、以下が成立する:

接続形式[編集]

本章では接続の「接続形式」という概念を述べる。本章で述べるように、むしろ接続形式から接続を定義したほうが数学的な構造を探る上で有利な点があり、このアイデアに沿って接続を定式化したのが後の章で述べる主バンドルの接続概念である。

定義[編集]

を開集合上で定義されたEの局所的な基底とするとき、接続形式を以下のように定義する:

定義 (接続形式) ― 行列

により定義し、Xを対応させる行列値の1-形式を局所的な基底に関する接続接続形式: connection form)という[21][注 3]

接続形式が与えられれば

により接続を再現できるので、この意味において接続形式は接続の情報をすべて含んでいる。

性質[編集]

接続概念において重要な役割を果たす平行移動の概念は接続形式ωと強く関係しており、底空間Mの曲線に沿って定義された局所的な基底tで微分したものが接続形式に一致する。

よって特に(レヴィ・チヴィタ接続などの)Eの計量と両立する接続の場合、による平行移動は回転変換、すなわちの元なので、その微分である接続形式ωのリー代数の元、すなわち歪対称行列である[注 4]

定理 ― E上の計量と両立するとき、Eの局所的な正規直交基底とすると、に関する接続形式ωの元である。すなわちω歪対称行列である。


このように接続形式を用いるとベクトルバンドルの構造群(上の例では)が接続形式の構造をリー群・リー代数対応により支配している事が見えやすくなる。

上では回転群の場合を説明したが、(を自然にの部分群とみなしたもの)や物理学で重要なシンプレクティック群スピン群に対しても同種の性質が証明でき、接続形式がリー群・リー代数対応により支配されている事がわかる。

こうした事実は接続概念を直接リー群と接続形式とで記述する方が数学的に自然である事を示唆する。後で説明する、リー群の主バンドルに対する接続はこのアイデアを定式化したもので、主バンドルの接続は接続形式に相当するものを使って定義される。


そこで本項では、まずベクトルバンドルの接続と主バンドルの接続の両方を包括する概念であるファイバーバンドルの接続概念を導入する。この概念は「そもそも平行移動とは何か」を直接的に定式化したもので、この概念それ自身が接続形式の言葉で記述されるわけではない。

そして次にファイバーバンドルの接続概念を用いて主バンドルの接続概念を定義すると同時に、主バンドルの接続を接続形式の言葉で再定式化し、ベクトルバンドルの接続と主バンドルの接続の接続形式の言葉で記述する。

ファイバーバンドルの接続[編集]

主バンドルの接続を定義する前準備として、一般のファイバーバンドルに対する接続を定義する。後述するように、主バンドルの接続はファイバーバンドルに対する接続で群作用に対して普遍になるものである。

すでに述べたように研究が進んでいるのばベクトルバンドルの接続なので、そのような目的のためにはこの一般の接続概念は必要ない。しかしファイバーバンドルの接続により、ベクトルバンドルの接続と次章に述べる主バンドルの接続とを統一的な視点から語る事ができるようになり、主バンドルの接続に基づいてベクトルバンドルの接続の性質をそれに対応する主バンドルの接続と対応付けて調べる事ができる。

定義に至る背景[編集]

をベクトルバンドルとし、をこのバンドルのKoszul接続とする。M上の任意の曲線c(t)c(t)上の任意の切断s(t)で平行なものに対し、s(t)E上の曲線とみなしたときにが入るTeEの部分空間を「水平部分空間」と呼ぶ。

以上のように接続から水平部分空間が定まるが、逆に水平部分空間の情報があれば接続を再現できる事も知られている[23]

このことからベクトルバンドルの場合は接続概念は水平部分空間の概念は等価なので、一般のファイバーバンドルに対する接続を水平部分空間の概念を用いて定義する事にする。

定義[編集]

以上の考察を元に、ファイバーバンドルの接続を定義する。そのためにまず「垂直部分空間」という概念を定義する。をファイバーFを持つファイバーバンドルとし、eEEの元とするとしπが誘導する写像をとするとき、

を、eにおけるTeE垂直部分空間: vertical subspace)という[24][25][注 5]。そしてファイバーバンドルの接続を以下のように定義する:

定義 (接続) ―  ファイバーバンドルの(C級の)接続(: connection)とは、Eの各点eにおけるTeMの部分空間eに関してC級であり[注 6]、以下の性質を満たすものである[26]

eにおける水平部分空間: horizontal subspace)という[26]

名称に関して[編集]

ファイバーバンドルの接続のことをエーレスマン接続[27]: Ehresmann conection)と呼ぶ場合があるが[28]主バンドルに対する接続の事を「エーレスマン接続」と読んでいる書籍[29]もあるので注意が必要である[30]。なお主バンドル上においても両者の概念は同値ではなく、ファイバーバンドルの接続のうち構造群の作用に関して不変なものを主バンドルの接続と呼ぶ。

両者の区別のため、一般のファイバーバンドルの接続を一般の接続: general connection[31])、主バンドルの接続を主接続: principal connection[32])と呼ぶ場合がある。

またファイバーバンドルの接続のうち、完備なもののみを「エーレスマン接続」と呼ぶ場合もある[33]。なおエーレスマン自身による定義では完備性を仮定していた[34]

平行移動、共変微分[編集]

平行移動[編集]

をファイバーバンドルとし、をその接続とする。

定義 ―  M上の曲線上定義された切断平行であるとは、

が任意のtに対して成立する事をいう。

接続の定義から、

はベクトル空間としての同型であるので、この逆写像

を考える事ができる。eへの水平リフト: horizontal lift[26])という。水平リフトの定義から明らかなように、切断が平行である必要十分条件は

を満たす事である[26]

共変微分[編集]

定理 ― sMの開集合上で定義された切断とし、XMのベクトル場とするとき

sX方向の共変微分[35]という。

同様にM上の曲線に沿った切断に対し、に沿った共変微分

により定義する。この事からすなわち、共変微分とは、平行移動からのズレを表す量である事がわかる。

一般の接続からベクトルバンドルの接続へ[編集]

ベクトルバンドルのKoszul接続から一般の接続概念が得られる事をすでに見たが、逆にベクトルバンドル上の(一般の)接続が定める共変微分がKoszul接続の公理を満たす条件は以下の通りである:

定理 (Koszul接続の条件) ― をベクトルバンドルとし、のファイバーバンドルとしての接続する。さらにを垂直部分空間の自然な同一視とする[注 7]

このとき以下の条件は同値である[36][37]

  • が定義する共変微分をとすると、はKoszul接続の公理を満たす。
  • 任意のに対し、

ここでmλはベクトルλ倍したに写す写像とする。

Koszul接続から一般の接続概念を誘導する方法と(上記の定理の条件を満たす)一般の接続概念からKoszul接続を誘導する方法は「逆写像」の関係にあり、上記の定理の条件を満たす一般の接続概念とKoszul接続は1:1に対応する[38]

主バンドルの接続[編集]

定義[編集]

主バンドルの接続は、ファイバーバンドルの接続で群作用に対して不変になるものである。すなわち、

定義 (主接続の定義) ― Gをリー群とし、を構造群Gを持つ主バンドルとする。C級の(主バンドルとしての)接続(: connection)あるいは主接続: principal connectionとは、Pの各点pにおけるTpMの部分空間pに関してC級であり[注 6]、任意のに対し以下の性質を満たすものである[39]

  • 任意のに対し、

ここで垂直部分空間であり、Pへの右からの作用TPに誘導する写像である。pにおける水平部分空間という。

リー代数を使った定式化[編集]

本節では、前節で定義した主バンドルの接続概念をリー代数を使って特徴づける。後述するようにこちらの定義が自然にベクトルバンドルの接続と対応する。

そのために基本ベクトル場の概念を導入する。Gをリー群とし、をそのリー代数とし、さらにG-主バンドルとするとき、リー代数の元と点に対し、

により、P上のベクトル場を定義する。Aに対応するP上の基本ベクトル場英語版: fundamental vector field on P associated to A)という[40][41]


基本ベクトル場の定義より明らかに各に対し、写像

は全単射であるので、ζpの写像の逆写像を考えることができる。この逆写像を分解の垂直部分空間への射影と合成する事で、

を作る事ができる。この写像をに値を取る1-形式とみなしたものを

とし、各点pωpを対応させるP上の値1-形式の場ω接続形式: connection form)という[42]

以上の議論から明らかに垂直射影からωが定まり、逆にωから垂直射影が定まるのでωによって接続概念を定式化できる:

定義・定理 (接続形式) ― Mを多様体、Gをリー群とし、Gのリー代数とし、さらにM上のG-主バンドルとする。上定義された-値の1-形式のC級の

で以下を満たすものを接続形式という[43][44][45]

  1. 任意のに対し、
  2. 任意のに対し、

ここでPへの右からの作用TPに誘導する写像であり、Ad随伴表現: adjoint representation

である[46]

主バンドルとしての接続から前述の方法でPの接続形式が定まり、逆に接続形式ω0になる方向を水平方向とすることでPに主バンドルとしての接続が再現できるので、両者の定義は同値である。

ベクトルバンドルの接続と主バンドルの接続の関係性[編集]

本節では接続形式の章で述べたアイデアに基づいて、ベクトルバンドルの接続(Koszul接続)と主バンドルの接続(主接続)の関係を述べる。

接続形式の章で見たのケースだけでなくの部分リー群Gに対して両者の関係性を示すため、本章ではまず「G-フレーム」、および「G-フレームバンドル英語版」という概念を導入する。「G-フレーム」はGの場合は正規直交基底に相当するものであり、G-フレームバンドルはG-フレームを束ねてできるバンドルであり、自然にG-主バンドルとみなせる。

次に本章ではEのフレームバンドル上の接続からEのKoszul接続が定まる事を見る。そして構造群Gを持つベクトルバンドルの接続がGと「両立する」事を定義し、最後にG-フレームバンドルの接続の接続形式とベクトルバンドルのGと両立する接続の接続形式が1対1の関係にある事を見る。

フレームバンドル[編集]

定義[編集]

G-フレーム」とは正規直交基底の概念を一般化したもので、Gの場合、G-フレームが正規直交基底に相当する。

定義 ― Gの部分リー群とし、を構造群Gを持つベクトルバンドルとし、uMの点とし、Euの基底とする。EuにおけるG-フレーム: G-flame)であるとは、Euにおけるバンドルチャートが存在し、このバンドルチャート上で

が成立する事を言う。

ここでの標準的な基底であり、は線形変換eiに作用させたものである。

構造群Gを持つベクトルバンドルの定義から、G-フレームの定義はバンドルチャートの取り方によらずwell-definedである。


上のG-フレーム全体の集合とすると、

は自然にM上のG-主バンドルをなし、を構造群Gに関するフレームバンドルという[47][注 8]

主接続からKoszul接続の誘導[編集]

Gを構造群を持つベクトルバンドルとし、をそのフレームバンドルとする。さらにG-主バンドルに接続形式がの接続が入っているとする。開集合上定義されたEの局所的な基底に対し、

を、eUからFG(E)への写像と見たときの接続形式ωUへの引き戻しとし、と成分表示する。

定理・定理 ―  記号を上述のように取る。Eの切断sM上のベクトル場Xに対し、

と微分演算子を定義すると、は局所的な基底の取り方によらずwell-definedで、しかもはKoszul接続の公理を満たす。から誘導される接続という。

構造群と接続の両立[編集]

Gの部分リー群とする。構造群Gを持つベクトルバンドルの接続(Koszul接続)がGと両立する事を以下のように定義する。直観的には平行移動がGの元で書ける事を意味する:

定義 (構造群と両立するKoszul接続) ― Mを連結な多様体とし、Gの閉部分リー群とし、を構造群Gを持つベクトルバンドルとし、のKoszul接続とする。このとき、Gと両立する: G-compatible)とは、の任意の局所自明化

where open、 open

に対し、U内の任意の曲線に沿った平行移動Gに属する線形変換である事を言う[48][注 9]

定義より明らかに以下が従う:

定義 ― を構造群Gを持つベクトルバンドルとする。このとき、G-フレームバンドル上の接続形式から誘導されたEの接続はGと両立する。

接続がGと両立する事は、接続形式がGのリー代数に入っている事と同値である:

定義 (Gと両立するKoszul接続) ― E上定義されたKoszul接続とし、をその接続形式とする。Gと両立する必要十分条件は、任意の局所的な基底に対し、

が成立する事を言う。

接続形式の章では平行移動が常にの元で表せるときに接続形式がのリー代数に入っている事を示したが、上記の定理はこの事実をの任意の部分リー群に対して示したものである。

ベクトルバンドルの接続から主接続の接続へ[編集]

Gと両立する接続はフレームバンドルの接続に対応している:

定理 ― Gを構造群として持つベクトルバンドルのKoszul接続Gと両立するとき、フレームバンドルFG(E)のある接続形式ωが存在し、ωからEに誘導される接続と一致する。

本章の成果をまとめると、以下の結論が得られる:

定義 (主接続とKoszul接続の関係) ― E上のKoszul接続でGと両立するものはの主接続と1 : 1で対応する。 さらにGと両立するにKoszul接続に対応する主接続の接続形式をωとすると、任意の開集合U上で定義されたの任意の局所的な切断に対し、

が成立する。ここでを局所的な基底とみなしたときのeに関するの接続形式であり、eUからFG(E)への写像と見たときの接続形式ωUへの引き戻しである[49]

共変微分の対応関係[編集]

ベクトルバンドルの切断sが与えられたとき、上の関数

, where

を定義できる。このとき次が成立する:

定理 ― M上の任意のベクトル場Xに対し、以下が成立する[50]

ここで上のベクトル場により上の値関数の各成分を微分したの事である。

曲率[編集]

一般のファイバーバンドルの曲率[編集]

ファイバーバンドル接続(: connection)が与えられているとき、Eの接ベクトル空間はと分解できた。そこで

をそれぞれ垂直部分空間、水平部分空間への射影とする。曲率概念はこのVeHeを使って定義する:

定義 (ファイバーバンドルの曲率形式) ― E上のベクトル場ξηに対し、

をファイバーバンドルEの接続に関する曲率形式という[51]

ここでリー括弧英語版である。Ω-線形であり[51][52][注 10][注 11]、よってΩは双線形写像

であるとみなせる[注 10]

フロベニウスの定理を用いると、曲率形式が恒等的に0である事は超平面の族可積分である事と同値である事を示せる[55]。したがって曲率形式は水平部分空間 が可積分ではない度合いを表す量である

主接続の曲率[編集]

本節では、主接続の場合に対し、上記で定義した曲率形式をリー代数の言葉で書き換える。Gをリー群とし、Gのリー代数とし、さらにG-主バンドルとし、ωPの主接続とする。リー代数におけるリー括弧を使って

と定義し[56]、さらに前の章と同様、リー代数の元に基本ベクトル場を対応させる写像

を考える。紛れがなければ添字pを省略し単にζと書く。

定理 (主バンドルの接続の曲率) ― 曲率形式Ωは以下を満たす[57][58][56][注 12]

  • 構造方程式[58]

紛れがなければを単にΩと書き、接続形式ω曲率形式という。

ベクトルバンドルの接続の曲率[編集]

定義[編集]

Koszul接続が定義されたベクトルバンドルの曲率を以下のように定義する:

定義・定理 (曲率) ―  ベクトルバンドルの接続に対し、

for

に関する曲率: curvature)もしくは曲率テンソル: curvature tensor)という[59]

RXYsに関して-線形であり[60]、よってRは各点に対し、

を対応させるテンソル場とみなせる。


さらにKoszul接続の曲率形式を以下のように定義する:

定義 ― UMの開集合とし、Uにおけるフレームバンドルの切断とする。このとき、曲率テンソルを

と成分表示し、とすると、Ωeは一般線形群のリー代数 に値を取る2-形式とみなせる。 eに関するKoszul接続曲率形式: curvature form)という[61]

一般の接続の曲率形式との関係[編集]

すでに述べたようにベクトルバンドル上のKoszul接続には、それと対応するファイバーバンドルとしての接続が定義可能であるが、上述したKoszul接続の曲率は前述した一般のファイバーバンドルの曲率形式と以下の関係を満たす。ここでHは水平部分空間への射影である。

定理 ― 記号を上述のように取る。このとき、M上の点u、ベクトルに対し、以下が成立する[62]

よって特にKoszul接続の曲率形式とは以下の関係を満たす:

ここでであり、はその双対基底である。

主接続の曲率との関係[編集]

のフレームバンドルの曲率形式とKoszul接続の曲率形式は以下の関係を満たす:

定理 ― ベクトルバンドルのフレームバンドルに接続形式がωの接続が定義されているとし、この接続の曲率形式をΩとする。

さらにこの接続がEに誘導する接続が定義するKoszul接続をとし、Mの開集合U上定義されたの切断とし、eに関する曲率形式とする。このとき、以下が成立する[63]

ホロノミー群[編集]

本節では特に断りのない限り、完備な接続が定義されたファイバーバンドルでM連結なものとする。ここで接続が完備であるとは、M上の任意の曲線上にからまでの平行移動を常に定義可能な事を指す。

定義[編集]

Mの点とし、x0からx0自身への区分的になめらかな閉曲線とすると、接続が完備なのでx0のファイバーの任意の元eに対し、eに沿って一周平行移動してできた元をとする事で、上の可微分同相写像

を定義できる。

定理・定義 (ホロノミー群) ― 

x0から出てP自身への区分的になめらかな閉曲線

は閉曲線の連結に関して自然に群構造をなす。この群をEに関するx0におけるホロノミー群: holonomy group)という[64]

ホロノミーリー代数[編集]

における接ベクトルに対し、eでの水平リフトを対応させる

をファイバー上の切断とみなしたものをと書く。

2つのベクトルに対し、はいずれも上のベクトル場なので、曲率形式Ωに対して、

を定義でき、これは上のベクトル場とみなせる[64]。さらにをfixし、uからまでつなぐ曲線に沿ってを平行移動したものをと書く。

定理・定義 ―  上のベクトル場全体の集合リー括弧英語版に関する「無限次元リー代数」とみなしたとき、

xからx0までつなぐM上の曲線

を含む最小の(C-位相に関する)閉部分線形空間 を

と書くとき、の部分リー代数になっている。

ホロノミーリー代数: holonomy Lie algebra)という[64]

実は以下の定理が成立する。なお、以下の定理は主バンドルに対するAmbrose–Singerの定理を任意のファイバーバンドルに一般化したものである:

定理 (Ambrose-Singerの定理の一般化) ― ホロノミーリー代数が有限次元であれば、以下が成立する:

  • ホロノミー群をリー代数として持つリー群である[64]
  • あるG-主バンドル、およびGのファイバーへの作用が一意に存在し、へのG作用を使って作ったバンドルはと同型である[64]
  • 主バンドルには主バンドルとしての接続(詳細次章)が一意に存在し、この接続が上述のバンドルに誘導する接続との接続と同一である[64]

接続の歴史[編集]

接続は、歴史的にはまずリーマン幾何学において見出された。接続の概念のはじまりをどこに置くかについては諸説あるが、クリストッフェルの研究をその淵源とする見方がある[注 13]。クリストッフェルは1869年の論文で、座標変換の導関数が満たす関係式の研究を通じ、現在クリストッフェル記号とよばれる量を発見した[67]。これを用いて、リッチはその学生であるレヴィ=チヴィタとともに、彼らが絶対微分学英語版とよんだ、共変微分を用いる今でいうテンソル解析の計算の手法をつくりあげた[68]

レヴィ=チヴィタはまた、1916年に、リーマン幾何学における接ベクトル平行移動の概念を発見し、これが共変微分によって記述されることをみつけた[69]レヴィ-チヴィタ接続の名前はこのことによる)。1918年にワイルはそれを一般化して、アフィン接続の概念に到達した[70][注 14]。ここで「接続」にあたる語(: Zusammenhang)がはじめて使用された[要出典]

それからすぐに、エリ・カルタンによって、さらなる一般化が行われた。カルタンはクラインエルランゲン・プログラムの局所化を試みていたのである。1920年代にカルタンは、微分形式を用いた記述によって、現在カルタン接続と呼ばれるものを発見していった[71]。カルタンのこの仕事により、リーマン幾何学だけでなく、共形幾何学英語版射影幾何学などのさまざまな幾何学を研究するための基礎が築かれた。

しかしカルタンの記述は、微分幾何学の他の基本的概念の整備が進んでいない当時、理解されづらいものだった。その仕事をよりわかりやすいものにして発展させるために、カルタンの学生にあたるCharles Ehresmannは、1940年代から主バンドルファイバーバンドルを研究した。1951年の論文でEhresmannは、主バンドルの接続を、接分布英語版を用いる方法と微分形式による方法の両方で定義した[72]ファイバーバンドルの接続)。

その一方で、1950年にJean-Louis Koszulは、ベクトル束の接続の代数的定式化を与えた[73]ベクトルバンドルの接続)。Koszulの定式化によると、クリストッフェル記号を明示的に用いる必要は必ずしもなくなり、接続の取り扱いは容易になった[要出典]

関連項目[編集]

[編集]

出典[編集]

  1. ^ C.G. Ricci, T. Levi=Civita (1901), Méthodes de calcul differéntiel absolu et leurs applications (絶対微分学の方法とその応用)矢野(1971) 和訳pp.17-95
  2. ^ 板場綾子「自己移入的Koszul多元環に対する有限条件(Fg) (有限群のコホモロジー論とその周辺)」『数理解析研究所講究録』第2061巻、京都大学数理解析研究所、2018年4月、33頁、CRID 1050001202603941760hdl:2433/241849ISSN 1880-2818NAID 120006645349 
  3. ^ Koszul duality for factorization algebras and extended topological field theories”. 2023年10月19日閲覧。
  4. ^ 2020年度 幾何学 B アインシュタイン計量の幾何学 -リーマン幾何学入門とアインシュタイン計量の幾何学への応用-” (PDF). p. 75. 2023年10月19日閲覧。
  5. ^ #Spivak p.251. 「this possibility of comparing, or "connecting", tangent spaces at different points gives rise to the term "connection".」
  6. ^ #Andrews Lecture 10, p.2.
  7. ^ #Tu p.45.
  8. ^ #Andrews Lecture 8 p.74, Lecture 10 p.98.
  9. ^ #新井 p.304.
  10. ^ #Tu p.45.
  11. ^ #Spivak p.241.
  12. ^ José Figueroa-O'Farrill. “Lecture 5: Connections on principal and vector bundles”. PG course on Spin Geometry. p. 40. 2023年1月12日閲覧。
  13. ^ #森田 p.213.
  14. ^ #Tu p.72.
  15. ^ #小林 p.76.
  16. ^ #Tu p.75.
  17. ^ a b #Tu p.263.
  18. ^ #Tu p.113.
  19. ^ #Tu p.263.
  20. ^ #Spivak p.251.
  21. ^ #小林 p.38.
  22. ^ #Tu p.80.
  23. ^ #Spivak p.251.
  24. ^ #Tu p.256.
  25. ^ #Wendl3 p.73.
  26. ^ a b c d #Wendl3 p.74.
  27. ^ 「エーレスマン接続」という訳語は#佐古を参考にした。#佐古に目次にこの名称が確認できる。
  28. ^ #Epstein p.95.
  29. ^ #Tu p.256.
  30. ^ Ehresmann connection”. nLab. 2023年8月30日閲覧。
  31. ^ #Kolar p.80.
  32. ^ #Kolar p.99.
  33. ^ #Kolar p.81.
  34. ^ #Tuynman p.345.
  35. ^ #Wendl3 p.75.
  36. ^ #Wendl3 pp.76-78.
  37. ^ #Kolar p.110.
  38. ^ #Wendl3 p.78.
  39. ^ #Wendl3 p.89.
  40. ^ #Tu p.247.
  41. ^ #Wendl3 p.89.
  42. ^ #Kolar p.100.
  43. ^ #Tu pp.255-256
  44. ^ #小林 p.61.
  45. ^ #Wendl3 p.90.なお本文献のみ「」ではなく「」になっているが、前後関係から「」の誤記と判断。
  46. ^ #Tu p.123.
  47. ^ #Salamon p.5.
  48. ^ #Wendl3 p.83.
  49. ^ #Pasquotto p.84.にこの定理のアフィン接続が述べられており、Koszul接続の場合も同様である旨が書いてある。このKoszul接続の場合は他の文献の記述からも従う。実際、の場合に1:1対応する事は#森田 pp.319-321従い、この場合にとなる事は#Tu p.268から従う。そしてGの部分リー群である場合に関しては#Kobayashi-Nomizu1 p.83のRemarkより-主バンドル上の接続形式がG-主バンドルにreduceする必要十分条件はωGのリー代数に値を取る事であるので、上記の事実から従う。
  50. ^ #Kobayashi-Nomizu-1 p.127.
  51. ^ a b #Wendl5 p.121.
  52. ^ #Kolar p.77.
  53. ^ #Tu p.49
  54. ^ #Tu p.56,58
  55. ^ #Wendl5 pp.119,121.
  56. ^ a b #Kolar pp.100-101.
  57. ^ #Tu p.270
  58. ^ a b #森田 p.302.
  59. ^ #小林 p.43.
  60. ^ #小林 p.43.
  61. ^ #Tu p.80
  62. ^ #Wendl5 p.123.
  63. ^ #Tu p.270.
  64. ^ a b c d e f #Kolar pp.82-83.
  65. ^ Freeman 2011.
  66. ^ 日本数学会編 2007.
  67. ^ Christoffel 1869.
  68. ^ Levi-Civita 1900.
  69. ^ Levi-Civita 1916.
  70. ^ Weyl 1918.
  71. ^ Cartan 1926.
  72. ^ Ehresmann 1950.
  73. ^ Koszul 1950.

注釈[編集]

  1. ^ a b 人名「Koszul」を「コシュール」と訳している文献[2][3][4]があるため、「コシュール接続」と読むと思われるが、「コシュール接続」と訳した文献を発見できなかったので本項では「Koszul接続」と表記した。なお、Wikipediaの英語版には「フランス語: [kɔsyl]」とある。
  2. ^ 接続M全域で定義されたベクトル場と切断に関するものなので、このような局所的に定義された座標で表示できるか否かは非自明である。しかしが「局所演算子」という性質を満たすことにより、局所的な座標で表示可能な事を示すことができる。詳細は接続 (ベクトル束)の項目を参照されたい。
  3. ^ 成分接続形式といい、ω接続行列: connection matrix)と呼ぶ場合もある[22]
  4. ^ 厳密には以下の通りである。Mの曲線に沿って定義された局所的な基底を考え、に沿って平行移動したものをとして行列 により定義すると、接続形式の定義より、 が成立する。ここでは成分ごとの微分の事である。 が計量と両立すれば、は正規直交基底である。よって が正規直交基底であれば、よりは回転変換であり、の微分は歪対称行列である。
  5. ^ ここでπ(e)のファイバーの点eにおける接空間であり、包含写像が誘導する写像によりTeEの部分空間とみなしている。
  6. ^ a b この「eに関してC級である」というのを厳密に定式化する方法は(同値な方法が)いくつかあるが、一つの方法は上のファイバーとするTEの部分ベクトルバンドルとみなし、TEC級の部分ベクトルバンドルである事を要請するというものである。
  7. ^ 垂直部分空間の定義よりであるが、はベクトル空間なので、と接空間は自然に同一視できる。
  8. ^ なお 、#Salamonではの(標準的とは限らない)基底からへの線形写像fと自然に同一視し、各に対し、
    Gに属する事を持ってG-フレームを定義しているが、この定義は本項で述べたものと同値である。
  9. ^ #Wendl3の定義は若干曖昧で単に「十分短い曲線」(sufficiently short path)に沿った平行移動がGと両立する自明化(G-compatible connection) for を持つとしか言っていないが、局所自明化可能な領域内の曲線がこのように書ければ十分なので、ここではそのように定義した。
  10. ^ a b ここで-線形であるとは、通常の線形性を満たすのみならず関数fに対してを満たす事を指す[53]-線形である事は、の各点における値がξηの点eにおける値ξeηeのみで決まること、すなわちΩが各点における双線形写像のテンソル場とみなせる事と同値である事が知られている[54]
  11. ^ #Kolarにおける曲率の定義はここに書いたものと符号が反対だが、#Kolar p.73.にあるように#Kolarの定義だと「通常の曲率と符号が反対」になるので、#Wendl5 p.121の方の符号を採用した。
  12. ^ #Kolar p.100-101.のみ右辺第二項はとなっているが、これは#Kolarの間違いであると判断した。実際#Kolar p.100の一番下にあるの定義式にを代入するととなり、とはならない。またこの#Kolar p.100の一番下の係数#森田の1巻のp.95.ではになっているため、#Kolarの定義式を間違えた可能性が高い。#Tu p.285も参照。
  13. ^ これはFreeman[65]の立場。ほかには、たとえば岩波数学辞典は後出のレヴィ=チヴィタによる平行移動の発見を接続の概念のはじまりとしている[66]
  14. ^ 正確には、現在の言葉でいう捩れのないアフィン接続。

文献[編集]

参考文献[編集]

歴史的な文献[編集]

  • Cartan, Élie (1926), “Les groupes d'holonomie des espaces généralisés”, Acta Math. 48: 1–42, doi:10.1007/BF02629755 
  • Christoffel, Elwin B. (1869), “Ueber die Transformation der homogenen Differentialausdrücke zweiten Grades”, Journal für die reine und angewandte Mathematik 70: 46–70 
  • Ehresmann, Charles (1950), Les connexions infinitésimales dans un espace fibré différentiable, Colloque de Toplogie, Bruxelles, pp. 29–55 
  • Koszul, Jean-Louis (1950), “Homologie et cohomologie des algebres de Lie”, Bulletin de la Société Mathématique 78: 65–127 
  • Levi-Civita, Tulio; Ricci, M. M. G. (1900), “Méthodes de calcul différential absolu et leurs applications”, Math. Ann. B 54: 125–201, doi:10.1007/BF01454201 
  • Levi-Civita, Tulio (1916), “Nozione di parallelismo in una varietà qualunque e conseguente specificazione geometrica della curvatura riemanniana”, Rendiconti del Circolo Matematico di Palermo 42: 173–204, doi:10.1007/BF03014898 
  • Weyl, Hermann (1918), “Reine Infinitesimalgeometrie”, Mathematische Zeitschrift 2: 384–411, doi:10.1007/bf01199420 

外部リンク[編集]