カルタン幾何学

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カルタン幾何学[注 1](かるたんきかがく)(: Cartan geometry)とは、微分幾何学における概念で、多様体の各点における「一次近似」がクラインの幾何学とみなせるものの事である。カルタンの幾何学はクラインの幾何学とリーマン幾何学を包括する幾何学概念として提案された。

以下、本項では特に断りがない限り、単に多様体関数バンドル等といった場合はC級のものを考える。また特に断りがない限りベクトル空間は実数体上のものを考える。

概要[編集]

カルタン幾何学の背景にあるのはクラインエルランゲン・プログラムである。エルランゲン・プログラムは、当時「幾何学」、例えばユークリッド幾何学双曲幾何学球面幾何学射影幾何学等が乱立していた状況に対し、それらを統一する手法を提案したものであり、今日の言葉で言えば、これらはいずれも等質空間の概念を使う事で統一的に記述できる事を示した。

すなわちクラインの意味での幾何学(以下単にクライン幾何学と呼ぶ)とは、リー群Gとその閉部分リー群Hの組を等質空間上に「幾何学を保つ」変換群Gが作用しており、X上の一点の等方部分群Hであるとみなしたものである。

しかしエルランゲン・プログラムには、当時すでに知られていたリーマン幾何学が記述できない、という限界があった。実際リーマン多様体は等質空間にはなっていないので、エルランゲン・プログラムでは記述できない。

カルタンの意味での幾何学(以下単にカルタン幾何学と呼ぶ)は上記の事情を背景に、クラインの幾何学とリーマン幾何学を包含する形で定義された幾何学概念である[1]

ユークリッド幾何学 一般化  クラインの幾何学
 → 
 
   ↓一般化    ↓一般化
リーマン幾何学 一般化 カルタン幾何学
 → 
 

多様体自身にクライン幾何学の構造が入れば、すなわちであれば、Mの各点の接ベクトル空間は自然にと同型になる。ここではそれぞれGHリー代数である。

そこでちょうどリーマン幾何学の「一次近似」である接ベクトル空間がユークリッド幾何学になっているように、カルタン幾何学では、多様体Mの「一次近似」である接ベクトル空間に、クライン幾何学の「一次近似」であるを対応させる。このとき、多様体Mには等質空間モデル空間とするカルタンの幾何学の構造が入っている、という。

しかしあくまで「一次近似」がクラインの幾何学と等しいだけなので、実際にはカルタン幾何学はクライン幾何学とはズレる。このズレを図るのがの曲率である。

滑りとねじれのない転がし

カルタン幾何学を導入するもう一つの動機が滑りとねじれのない転がしである。これはm次元のリーマン多様体をm次元平面上「滑ったり」、「捻れたり」する事なく「転がした」ときにできる軌跡に関する研究である。

この軌跡はユークリッド幾何学をモデルにするカルタン幾何学を使うことで定式化が可能であり、曲線の発展という。ユークリッド幾何学はm次元平面上の幾何学であるので、m次元平面上の軌跡になるが、一般のクライン幾何学をモデルとするカルタン幾何学の発展は、上の軌跡となる。

定義の背後にある直観[編集]

本節では[2]を参考に、2次元ユークリッド幾何学をモデルとするカルタン幾何学を直観的に説明する。を2次元ユークリッド空間とし、合同変換群とする。すなわちを使ってと書ける変換全体の集合である。と同一視できる。

Mを2次元多様体とし、M上に人が一人立っているとする。人が立っている場所をとし、人の前方向をx軸、左方向をy軸とすると、接ベクトル空間の基底が定義できる。Mはユークリッド空間をモデルにしているので、その人は自分の近傍をユークリッド空間だと思っている。

正規直交基底全体の集合をとし、とすると、は自然にM上の-主バンドルとみなせる。以上の議論から、の元は、M上にいる人(とその向き)であるとみなせる[注 2]

M上にいる人をと表すとき、その人がM上の位置(=u)を変えずに向きだけを「無限小だけ」変えた場合、その向きの変化を表す速度ベクトルの元とみなせるが、これは人の向きを変えた回転変換微分なので、回転変換群の無限小変換群(=に対応するリー代数)であるの元であるともみなせる。

すなわち、の元をの元と対応させる事ができる:

また人がM上の位置uから無限小だけ歩いた場合は、歩いたことによるの変化の速度ベクトルはの元とみなせるが、その人は自分がユークリッド空間を歩いているのだと理解しているので、速度ベクトルをの無限小変換群(=のリー代数)であるの元であるとみなす。すなわちの元をと対応付けて考える。

結局、ユークリッド幾何学をモデルとするカルタン幾何学とは、M上の-主バンドルで、ファイバーごとの線形写像

を持ち、各に対し、uのファイバーの接バンドルへのωの制限が

を満たすもので「性質の良いもの」(後述)である。

準備[編集]

本節ではカルタン幾何学の定式化に必要となる用語を定義する。

基本ベクトル場[編集]

Gをリー群とし、をそのリー代数とし、さらにNGが右から作用する多様体(例えばG-主バンドルの全空間P)とする。

定義 (基本ベクトル場) ― リー代数の元と点に対し、

により、N上のベクトル場を定義する。Aに対応するN基本ベクトル場英語版: fundamental vector field on N associated to A)という[3][4]

なお、NG-主バンドルの全空間Pの場合にはは垂直部分空間の元である事が容易に示せる。

随伴表現[編集]

定義 (リー群の随伴表現) ― Gをリー群としをそのリー代数とする。このとき、Gの線形表現

に対し、

により定義し、AdG随伴表現: adjoint representation)という[5]

ここで上の線形同型全体のなすリー群である。随伴表現の定義はの取り方によらずwell-defninedである。

モーレー・カルタン形式[編集]

クライン幾何学の構造を調べる準備としてモーレー・カルタン形式を導入する。

定義 (モーレー・カルタン形式) ― Gをリー群とし、をそのリー代数とするとき、Gの各点gに対しG上の値1-形式

により定義し、ωGgGgにおけるモーレー・カルタン形式という[6][注 3]

ここでは群の左作用が誘導する写像である。

モーレー・カルタン形式は以下を満たす[6]

定理 ―  

ここで上のリー括弧であり、-値1-形式αβに対し、である。

上記の2式のうち下のものをモーレー・カルタンの方程式[7]: Maurer-Cartan equation)、もしくはリー群G構造方程式[8]: structure equation)という。

定義と基本概念[編集]

定義[編集]

リー群Gとその閉部分リー群の組連結になるものクライン幾何学、もしくは(カルタン幾何学のモデルになるので)モデル幾何学: model geometry)という[9][10]

をモデル幾何学とし、をそれぞれGHのリー代数とする。

定義 (クライン幾何学によるカルタン幾何学の定義) ―  多様体M上のタイプのカルタン幾何学: Cartan geomerty of type over M)とは、M上のH-主バンドルP上の-値1-形式

の組で以下の性質を満たすものの事である[11][12][13]

  1. 任意のに対し、は同型写像である。
  2. 任意のに対し、
  3. 任意のに対し、

ωH-主バンドルカルタン接続: Cartan connection)という。また紛れがなければMの事をカルタン幾何学という[12]

3つの条件の直観的な意味を説明する。

  • 1つ目の条件は、が同一視できる事を意味しており、前述した直観的説明のように、モデルがユークリッド幾何学であれば、Mにいる人は、自分の近傍がユークリッド空間であるとみなしているので、人の動きの速度ベクトルの集合が、無限小変換全体で記述可能である事を要請するのは自然である。
  • 2つ目の条件は、各に対し、ωが同型写像の逆写像である事を要請している。に定める無限小変換なので、前述した直観的説明からこれは自然な要請である。なお、この2つ目の条件から特に直観的説明のところで登場した以下の要件が従う:
  • 3つ目の条件は、前述した直観的説明からにいる人は自分の近傍がモデル幾何学に似ているとみなしているので、を右から乗じれば、の元はに移動してしまうので、左からもを乗じてに戻す随伴表現を作用させたものと等しくなる事を要請する。

なお、同型なので、M上定義できるカルタン幾何学には

という制約が課せられる事になる。

主接続との関係[編集]

カルタン接続の定義は主バンドルの接続(主接続)の接続形式の定義とよく似ているが、両者は似て非なる概念であり、H-主バンドルの主接続の接続形式Hのリー代数に値を取るが、カルタン接続はGのリー代数に値を取っている。しかし、をモデル幾何学とする多様体M上のカルタン幾何学とするとき、H-主バンドル上定義されたカルタン接続は、自然に

というG-主バンドル上の-値1-形式

に拡張する事ができ[14]G-主バンドルの接続形式である[14]。逆にを任意のG-主バンドルとし、Q上定義された接続形式とするとき、H-部分バンドルであり、しかもであればωTPへの制限はP上のカルタン接続になる[15]

なお、モデル幾何学が「簡約可能」という条件を満たす場合は、上記のものとは別の形の関係性をカルタン接続と主接続は満たす。詳細は後述する。

無限小クライン幾何学による定式化[編集]

定義から分かるように、カルタン幾何学の定義は、およびHには依存しているが、Gには直接依存していない。これは、およびHM上のカルタン幾何学の局所的な構造を定めるのに対し、Gはクライン幾何学大域的な構造を定めるものであるため、Gが不要である事による。

リー代数に対応するリー群Gは一意ではなく[注 4]、これが原因で大域的な構造を定めるGはカルタン幾何学の定義に必須でないばかりか、一部の定理ではGを(に対応する)別のリー群に取り替える必要が生じてしまう。

そこでGに直接言及せず、を使ったカルタン幾何学の定式化も導入する。そのために以下の定義をする:

定義 ― リー代数とその部分リー代数の組無限小クライン幾何学[訳語疑問点]: infinitesimal Klein geometry[16]もしくはクライン対[訳語疑問点]: Klein pair[16]という。

Hをリー代数 とするリー群とし、さらに

Hの線形表現で、任意のに対し、への制限Hへの随伴表現と等しいものとする[注 5]。ここで上のリー代数としての自己同型全体の集合である。

このとき、組モデル幾何学という[17]

以下、特に断りがなければ、が効果的である事を仮定する[注 6]。ここで効果的であるとは、に含まれるのイデアルがのみである事を意味する。GHに対応するリー群とすると、が効果的である事は、とするとき、K離散群になる事と同値である[18]

定義 (無限小クライン幾何学によるカルタン幾何学の定義) ―  Mを多様体とし、をモデル幾何学とし、

このとき、組Hを伴うをモデルとするM上のカルタン幾何学: Cartan geometry on M modeled on with H)という[12]

カルタン幾何学としてのクライン幾何学[編集]

本節ではカルタン幾何学の最も簡単な例として、クライン幾何学のカルタン幾何学としての構造を調べる。をクライン幾何学とし、とし、とする。ここでGの単位元eの同値類である。このとき

は自然にH-主バンドルとみなせる。G上のモーレー・カルタン形式がカルタン接続の定義を満たす事を示せるので、をモデルとするカルタン幾何学になる。

局所クライン幾何学とその上のカルタン幾何学[編集]

リー群Gとその閉部分リー群の組を考える[注 7]G離散部分群で、へのGからの作用への制限が効果的なものを考える(が効果的な事はである事と同値である)。このとき、による商集合を考える。Mが連結なとき、局所クライン幾何学: locally Klein geometry)という[20]

局所クライン幾何学M上に以下のようにカルタン幾何学を定義できる。まずが効果的なのでとすると、商写像

には自然にH-主バンドルの構造が入る[注 8]。またG上のモーレー・カルタン形式はその定義より左不変なので、商写像に対し

を満たす一意な-値1-形式をとする事で、にカルタン接続がwell-definedされ、上にをモデルとするカルタン幾何学が定義できる[20]

カルタン幾何学の(局所)幾何学的同型[編集]

2つのカルタン幾何学の間の(局所的および大域的な)同型概念を以下のように定義する:

定義 ― をモデル幾何学とし、M1M2を多様体とし、をそれぞれをモデル幾何学とするM1M2上のカルタン幾何学とする。

バンドル写像

がはめ込みであり、によるの引き戻しが

となるものをカルタン幾何学間の局所幾何学的同型: local geometric isomorphism)という[21]。とくにfが(可微分)同相写像であれば、幾何学的同型: geometric isomorphism)という[21]

定数ベクトル場と普遍共変微分[編集]

任意のに対しては同型写像であるので、TPωにより

という同一視ができ、TPベクトルバンドルとして自明である。

よって特にを各に対してωの逆写像でTpPに移すことで、TP上のベクトル場を作る事ができる。

定義 (定数ベクトル場) ― に対し、を各点を対応させるベクトル場とする。

このベクトル場を定数ベクトル場[訳語疑問点]: constant vector field)という[22][注 9]

定数ベクトル場を用いると、以下の「普遍共変微分」を定義できる:

定義 (普遍共変微分) ―  Vをベクトル空間とし、を(滑らかな)写像とする。このとき、fにベクトル場(は接ベクトル空間の元なので自然に微分作用素とみなしたもの)を作用させた

fAによる普遍共変微分[訳語疑問点]: universal covariant derivative)という[23]

モデル幾何学が「簡約可能」という条件を満たす場合は、普遍共変微分は通常の共変微分を導く。これについては後述

接バンドル[編集]

本節ではカルタン幾何学が定義された多様体の接バンドルの構造を調べる。そのために以下の定義をする。

をモデル幾何学とするM上のカルタン幾何学とする。Hへの作用を定義するが、への制限は上の随伴表現である(のでを保つ)ことから、Hへの作用を誘導する。またHH-主バンドルPに作用していたので、これの作用により、ベクトルバンドル

を定義できる。実はこのベクトルバンドルは接バンドルと同型である:

定理 (接バンドルと無限小クライン幾何学の関係) ― ベクトルバンドルとしての同型

が成立する[24]

具体的には写像

well-definedであり、ベクトルバンドルとしての同型写像である[24]。ここでは同型写像の逆写像に移したものである。

曲率[編集]

定義[編集]

クライン幾何学をカルタン幾何学とみなした場合、カルタン接続はモーレー・カルタン形式ωGと等しいので、カルタン接続は構造方程式

を満たすが、一般のカルタン幾何学は構造方程式を満たすとは限らない。そこで以下の量を考える:

定義 (曲率) ―  カルタン接続ωを持つ多様体M上のカルタン幾何学に対し、P上の-値2-形式

をカルタン幾何学曲率: curvature)という[12]

Ωは(局所)クライン幾何学からのズレを表す量であると解釈でき、明らかにクライン幾何学や局所クライン幾何学の曲率は恒等的に0である。

曲率は以下を満たす:

定理 (カルタン接続のビアンキ恒等式) ― カルタン接続ωとその曲率Ωは下記の恒等式(ビアンキ恒等式: Bianchi identity)を満たす[25]

のファイバーPuにはH単純推移的に作用するので、をfixして、によりHPuを同一視すると、TPu上にモーレー・カルタン形式ωHが定義できる。しかもωHの取り方に依存しないことも容易に証明できる。実は曲率のPuへの制限はωHに一致する。

定理 ― 任意のに対し、曲率ΩTPuへの制限はTPu上のωHに一致する。よって特に、任意のに対し、である。

なお、実はvwの少なくとも一方がTpPuに属していれば、である事が知られている[26]。よって特に次が成立する:

定理 ― M上の-値2-形式Ω'が存在し、任意のと任意のに対し、以下が成立する[26]

このΩ'は次節で導入する曲率関数を用いる事で具体的に記述できる。

曲率関数[編集]

同型写像であったことから、写像の合成

を定義できる。またすでに述べたようにvwの少なくとも一方がTpPuに属していれば、である事が知られている[26]事から、この写像は上の写像をwell-definedに誘導する。

定義 ―  上に誘導する写像

をカルタン幾何学曲率関数: curvature function)という[27]

曲率M上の-値2-形式Ω'を誘導する事を前に見た。このΩ'は曲率関数を使って以下のように書き表す事ができる。

捩率[編集]

さらに以下の定義をする:

定義 (捩率) ―  曲率Ωを商写像

と合成したP上の-値2-形式となる。をカルタン幾何学捩率: torsion)といい[注 10][12]P上恒等的に0になるカルタン幾何学捩れなし: torsion free)であるという[12]

モデル幾何学がアフィン幾何学である場合は、この捩率はアフィン接続の捩率テンソルに一致する。詳細は後述。

標準形式[編集]

本節の目標は、商写像

とカルタン接続の合成の幾何学的意味を説明する事である。

まず、は以下のように特徴づける事ができる:

定理 (の特徴づけ) ― は下記を可換にする唯一の写像である:

ここでを対応させる写像である。


上記の特徴付けから、の幾何学的意味は同型に関係しているので、この同型の幾何学的意味を見る。にベクトル空間としての基底をfixし、同型

によるの像をとすると、の基底をなす。

よって特に、とすると、FM上のフレームバンドル英語版(=各点のファイバーがTMの基底からなるバンドル)になる[28]

一般には対応

全単射ではないが、の定義から、カルタン幾何学が下記の意味で「一階」であれば、この写像は全単射になる:

定義 ―  随伴表現

が忠実なとき、クライン幾何学(およびをモデルに持つカルタン幾何学)は一階[訳語疑問点]: first order)であるといい、そうでないとき高階[訳語疑問点]: higher order)であるという[29]

以上の準備のもと、を幾何学的に意味付ける:

定理 (の解釈) ― 記号を上と同様に取り、カルタン幾何学が一階であるとする。このとき、の基底という同一視を行うと、に対し、

は基底を成分表示したときの係数を対応させる値1-形式であるとみなせる[30][注 11]

上記のような、となるを対応させる-値1-形式をフレームバンドル上の標準形式: canonical form)という[31]。上述の定理はカルタン幾何学が一階であればは標準形式として意味づけられる事を保証する。

簡約可能なモデル幾何学に対するカルタン幾何学[編集]

本節ではモデル幾何学が「簡約可能」という性質を満たす場合にが対するカルタン幾何学の性質を見る。具体的にはモデル幾何学がユークリッド幾何学やアフィン幾何学の場合には簡約可能になる。

定義[編集]

まず簡約可能性を定義する:

定義 ―  モデル幾何学簡約可能[訳語疑問点]: reductive)であるとは、作用により不変な部分ベクトル空間が存在し、を満たす事を言う[32][33][34][注 12]

なお、の取り方は一意とは限らないので注意されたい。

Gが2つのリー群の半直積で書けている場合は、GHに対応するモデル幾何学は、Bのリー代数をとして選ぶ事で簡約可能である[35]

よって特にユークリッド幾何学の等長変換群直交群と平行移動のなす群の半直積で書けるので対応するモデル幾何学は簡約可能である。アフィン幾何学も同様である。

カルタン接続の分解[編集]

をモデル幾何学にする多様体M上のカルタン幾何学とする。モデル幾何学が、と簡約可能なとき、の元はの元との元の和で一意に表現できるので、カルタン接続

のように「部分」と「部分」の和で書ける。この分解を用いると、カルタン接続と主接続の接続形式との関係性を以下のように記述できる:

定理 (簡約可能な場合のカルタン接続と接続形式の関係) ― と簡約可能なモデル幾何学とし、Mを多様体とし、H-主バンドルとする。

このときP上のカルタン接続ωと分解すると、 P上の主接続の接続形式の定義を満たす[36]

したがって、簡約可能なモデル幾何学の場合にはカルタン接続から主接続の接続形式が得られることになる。

一方、

によりと同一視すると、と同一視でき、前述のように(カルタン幾何学が一階であれば)は標準形式であるとみなせる。

したがって分解はカルタン接続接続形式と標準形式に分解するものであるが、実は逆に接続形式と標準形式からカルタン接続を復元できる:

定理 (一階で簡約可能な場合における接続形式からカルタン接続の再現) ― を一階のクライン幾何学で対応するリー代数の組と簡約可能なものとする。Mを多様体とし、TMの主バンドルとし、PH-フレームバンドルF前述の方法で同一視する。 さらにγP=F上の接続形式とし、θFの標準形式とする。

このとき、

P=F上のカルタン接続の公理を満たす[36][注 13]

前述した、カルタン接続から接続形式と標準形式とに分解する定理とは丁度「逆写像」の関係にあり、簡約可能で一階の場合はカルタン接続は接続形式と標準形式との組と1対1に対応する[36]

Koszul接続[編集]

モデル幾何学が簡約可能である場合、上述したようにカルタン接続ωから定義されるH-主バンドルPの接続形式になる。ベクトル空間V上のH線形表現があれば、ベクトルバンドルとしての接続(Koszul接続)の一般論から、接続形式M上のベクトルバンドルにKoszul接続を定める[37]

よって特に、接バンドルは

と書けたので、TM上のKoszul接続、すなわちアフィン接続を定める。

このことから分かるようにモデル幾何学がアフィン幾何学でなくても、簡約可能でありさえすればアフィン接続を誘導する。

しかし特にモデル幾何学がアフィン幾何学であれば、アフィン変換群G上の随伴表現は上のアフィン変換になる事を示す事ができ、この意味においてはアフィン空間のバンドルとなる。後述するように、この事実が例えばモデルがユークリッド幾何学の場合には重要になる。

普遍共変微分との関係[編集]

をベクトル空間V上のH線形表現とし、M上のベクトルバンドルに定めるKoszul接続をとする。

Eの切断sに対し、となるが一意に存在し、fsPからVへの関数とみなせる。

定理 ― M上の任意のベクトル場Eの任意の切断sに対し、以下が成立する:

ここでとなるPの接ベクトルである[37][注 14] [注 15]

上記のようにはKoszul接続と関係するが、それに対しの方は自明なものになってしまう:

定理 ― M上の任意のベクトル場Eの任意の切断sに対し、以下が成立する[38]

ここでγ*Eを定義する線形表現が誘導する写像上の線形写像である。

曲率の分解[編集]

本節ではモデル幾何学と簡約可能でしかも

となっている場合、すなわちとしての部分リー代数になっているものを取れる場合に対し、曲率の「部分」と「部分」を具体的に書き表す。

先に進む前にこの条件を満たすモデル幾何学の具体例を述べる。例えばに対応するリー群Gが2つのリー群の半直積で書けている場合に、としてBのリー代数を取れば上述の条件を満たす。特に、モデル幾何学がアフィン幾何学である場合は、アフィン変換群は線形変換と平行移動のなす群の半直積で書け、しかもBのリー代数とすると、

というより強い条件が成立する。モデル幾何学がユークリッド幾何学の場合も同様である。

曲率Ωに値を取るので、曲率を

と「部分」と「部分」に分解する。商写像が同型になることから、という同一視をすると、

カルタン幾何学の捩率に対応する事が分かる。

とくにアフィン幾何学をモデルとするカルタン幾何学の場合、はアフィン変換群の並進部分であるに対応するリー代数であるので、アフィン幾何学をモデルとする場合、捩率とは並進に関する曲率であるとみなせる。

構造方程式[編集]

曲率の定義から、

が成立するので、仮定を使うと以下が成立する事が分かる:

定理 (分解した場合の構造方程式) ― 

が接続形式に対応している事から、上記の定理の1つ目の式は、接続形式が定義する主接続に対する第二構造方程式である事がわかる。よって特に、は主接続の曲率形式である事がわかる。したがって

一方2本目の式においてに一致し、標準形式θとして解釈できるので、モデル幾何学がアフィン幾何学である場合のようにであれば、2本目の式は

となり、第一構造方程式に対応している事が分かる。よってこの場合の捩率は接続形式TMによって定まる主接続の捩率テンソルに一致する。

ビアンキ恒等式[編集]

前述したカルタン接続のビアンキ恒等式

を「部分」と「部分」に分解することで以下の定理が結論づけられる:

定理 (分解した場合のビアンキ恒等式) ― 

が接続形式に対応している事から、上記の定理の1本目の式は接続形式が定義する主接続に関する第二ビアンキ恒等式である。

一方、2本目の式は、構造方程式の場合と同様、モデル幾何学がアフィン幾何学のようにを満たせば、

第一ビアンキ恒等式に一致する。

曲線の発展[編集]

P上の発展[編集]

をモデルとするM上のカルタン幾何学とし、を区間上定義されたP上の曲線とするt[a,b]上の点とすると、にはカルタン接続ωによりの元が対応している。次の事実が知られている:

定理・定義 ― 記号を上述のように取り、gGの元とするとき、G上の曲線で、任意のに対し、

が成立し、しかもを満たすものがが一意に存在するが成立する[39]。ここでGのモーレー・カルタン形式である。

曲線を曲線gからのωに関する発展(: development)という[39][注 16]

モーレー・カルタン形式は、G上の接ベクトルをGの作用によりに移す変換であったので、上記の定理はGの作用による移動を除いてに一致する事を意味する。

上記の定理の直観的な意味を説明する。クライン幾何学においてGは等質空間における同型写像のなす群であったので、そのリー代数の元は上の「無限小同型変換」、すなわち同型写像の微分とみなせた。

カルタン幾何学の付与された多様体Mとは「一次近似」がクライン幾何学に見える空間であり、TpPの元vpはカルタン接続によりの元と対応しており、における「無限小同型変換」を意味していた。

上記の定理は曲線に沿って「無限小同型変換」であるの元を束ねていくとその「積分曲線」として同型変換であるGの元があらわれる事を意味している。

もしMそのものであれば、この同型変換は実際にM上の同型変換になる事を後述する。

M上の発展[編集]

補題 ― M上の曲線とし、を曲線とする。このとき、の発展の発展は以下を満たす[40]

Gからへの商写像とすると、上記の補題から次が成立する:

定理・定義 ― M上の曲線とし、xの元とする。を満たすP上の曲線とを満たすを任意に選んでgからの発展を作り、上の曲線

を考えると、gの取り方によらずwell-definedである。

曲線におけるxからのωに関する発展: development)という[41]

ホロノミー[編集]

Mが連結であるとし、を満たすをfixし、u0を基点とするM上の閉曲線とする。を満たすP上の閉曲線p0を基点とするものとすると、前述した補題から、の単位元からの発展の終点の取り方によらず等しい。そこで以下のような定義をする:

定理・定義 ― 記号を上のように取り、u0を基点とする閉曲線全体の空間英語版とする。このとき、

の終点

は閉曲線の結合に関して準同型であり、Gの部分群をなす。

を閉曲線cの基点u0のリフトp0に関するホロノミー: holonomy with respect to p0[41]といい、p0に関するM上のカルタン幾何学ホロノミー群: holonomy group of with respect to p0[41][注 17]という。

ホロノミー群は基点やそのリフトを取り替えても、共役を除いて一意に定義できる。実際、基点u0のリフトp0を別の点p0h, where に取り替えると、ホロノミーはを満たす[41]。また基点u0を別の基点u1に変えると、を満たすが存在する[41]

の元のうち、0-ホモトープな閉曲線全体正規部分群になる[41]制限ホロノミー群: restricted holonomy group)という[41]

写像基本群からの群準同型写像

をwell-definedに誘導する。上記の写像をカルタン幾何学モノドロミー表現: monodromy representation of )という[41]

一般化円と測地線[編集]

定義 ― なんらかのに対し、定数ベクトル場(定義は前述[注 9]の積分曲線をMに射影したものをM上の一般化円[訳語疑問点]: generarized circle)という[41]

またと簡約可能なとき、なんらかのに対し、定数ベクトル場の積分曲線をMに射影したものをM上の測地線: geodesic)という。

特にクライン幾何学に対し、上の一般化円は、の元の1-パラメーター変換群の軌跡[注 18][注 19]への射影である[41]。よって「一般化円」という名称であるが、ユークリッド幾何学での「一般化円」は螺旋になる事もあるので注意されたい[注 20]

と簡約可能なとき、に属する元のG上の1-パラメーター変換群の軌跡[注 18]への射影を直線: straight line)という。

この事実を使うと、一般化円と測地線は以下のように言い換える事ができる:

定理 ―  をモデルとするクライン幾何学の定義された多様体M上の曲線が一般化円になる必要十分条件は、その一般化円の発展が上の一般化円になる事である。

同様にと簡約可能なとき、M上の測地線(: geodesic)となる必要十分条件は、の発展上の直線である事である[41]

前述したように、が簡約可能なときは、TM上にアフィン接続が定義できるので、となる曲線を測地線として定義する事もできる。この2つの測地線の定義は同値である。

定理 ―  と簡約可能であるとし、カルタン接続ωと分解したときPの主接続(の接続形式)TMに誘導するアフィン接続をとする。

このとき、M上の曲線上述したカルタン幾何学における測地線である必要十分条件は、以下が成立する事である:

クライン幾何学との関係[編集]

カルタン幾何学はクライン幾何学をモデルとしており、しかも(局所)クライン幾何学はカルタン幾何学として平坦: flat)、すなわち曲率が恒等的に0である事を前述した。

本章はこの逆向きについて述べる。すなわち平坦なカルタン幾何学がいかなる条件を満たせば局所クライン幾何学と等しいかを特定するのが本章の目標である。

ダルブー導関数の一般論から、以下が従う:

定理 ― を対応するリー代数の組が効果的なクライン幾何学とする。Mを多様体とし、をモデルとするM上のカルタン幾何学とする。

このとき、M普遍被覆空間に主バンドルとカルタン接続ωを引き戻したものをそれぞれとする。

このとき上のをモデルとするカルタン幾何学となり、局所幾何学的同型

が存在する[44]

よって特に、Mの点uの十分小さい開近傍を取り、上にを制限したは(Uへのリフトを考えることで)局所幾何学的同型を持つことが分かる[45]

このように被覆空間を考えたり、あるいは各点の開近傍に制限したりすれば、平坦なカルタン幾何学がクライン幾何学に局所幾何学的同型である事を示す事ができる。しかしこれだけではM自身が(局所)クライン幾何学と幾何学的同型になるか否かはわからない。

そこで本章ではまずM自身が局所クライン幾何学と幾何学的同型になる条件を定式化し、次にこれらの条件を満たす平坦なカルタン幾何学が局所クライン幾何学と幾何学同型になる事を見る。

条件[編集]

本節では平坦なカルタン幾何学が局所クライン幾何学と同型であるための条件である「幾何学的向き付け可能性」と「完備性」を定義する。

幾何学的向き[編集]

幾何学的向きを定義するため、まず記号を導入する。Mを多様体とし、をモデル幾何学とするM上のカルタン幾何学とし、Gに対応するリー群の一つとすると、その随伴表現はリー群間の写像なので[注 21]、対応するリー代数間の写像

を誘導する。adはリー代数に対応するリー群Gの取り方によらずwell-definedであり、

が成立する[46]adとカルタン接続の合成

を考え、以下の定義をする:

定義 ― 記号を上と同様に取り、を取る。クライン幾何学に対し、が基点に関して幾何学的な向きを保つ: geometrically orientation preserving with respect to the base point p)とは、pphを結ぶP上の曲線で以下の条件を満たすものが存在する事を言う[47][注 22]

に関する単位元からの発展の終点がになる

定理・定義 ― Pが連結であれば幾何学的向き付けの定義はpに依存しない[47]Pが連結なとき、幾何学的向き付け可能なHの元全体の集合をと書く[47]

adの定義より、曲線Pのファイバー内にあれば、その発展の終点は必ずになる。よってを単位元eを含むH連結成分とすると

が成立する。

しかし上記の定義は曲線がファイバー内に収まる事は仮定しておらず、よって一般にはHorの方がHeより大きいこともある。なお、Pが連結であれば、HorH正規部分群になる事が知られている[47]

定義 ― Mを多様体とし、をモデル幾何学とするM上のカルタン幾何学でPが連結であるものする[注 23]

  • H-バンドルPHor-部分主バンドルを持つとき、幾何学的に向き付け可能: geometrically orientable)であるという[48]
  • PHor-部分主バンドル(もしあれば)をP幾何学的向き: geometrically orientation)という[48]
  • M幾何学的向き付け被覆: geometrically orientation cover)という[48]
  • のとき、カルタン幾何学幾何学的に向き付けられている: geometrically oriented)という[48]

次が成立する:

定義 ― 局所クライン幾何学(に定まるクライン幾何学)は、Gが連結なら幾何学的向き付け可能である[48][注 24]

完備性[編集]

Mを多様体とし、をモデル幾何学とするM上のカルタン幾何学とする。

定義 ― が以下を満たすとき、完備: complete)であるという[12][注 25]

任意のに対し、定数ベクトル場(定義は前述の積分曲線は任意のおよび任意のに対して定義可能である。

定理 ― 局所クライン幾何学(に対応するカルタン幾何学)は完備である。

定式化[編集]

完備かつ平坦で幾何学的に向き付可能なカルタン幾何学は局所クライン幾何学と幾何学的同型になる:

定義 ― Mを連結な多様体とし、をモデル幾何学とし、M上のをモデルとする平坦かつ完備で幾何学的に向き付けられたカルタン幾何学とする。

このとき、をリー代数とする連結なリー群GH閉部分群として含むものと、Gの部分群Γで局所クライン幾何学とその上のカルタン幾何学構造Mとその上のカルタン幾何学と幾何学的同型になる[50][注 21]

なお、すでに見たように局所クライン幾何学は平坦かつ完備であり、しかもGが連結であれば局所クライン幾何学はカルタン幾何学として向き付け可能であるので、連結なGを考える場合は、これ以上条件を減らす事はできない。 なお、Gを固定すると、上述の定理が存在を保証するΓは共役を除いて一意に定まる:

定義 ― をモデルに持つ2つの局所クライン幾何学とする。

このとき、M1M2がクライン幾何学として幾何学的同型であれば、あるが存在し、であり、しかもM1M2gの左からの作用から誘導される[51]

ユークリッド幾何学をモデルとするカルタン幾何学[編集]

本章ではモデル幾何学がユークリッド幾何学の場合を考える。すなわち、モデルとするクライン幾何学がユークリッド空間上の等長変換群と直交群の組である場合の、多様体M上のカルタン幾何学を考える。

標準的な計量[編集]

本節では以下の定理を示す:

定理 ― ユークリッド幾何学をモデルとするカルタン幾何学には、Mに標準的なリーマン計量が定数倍を除いて一意に定まる[52][注 26]

これを示すため、の性質を調べる。は随伴表現Adによりに作用するが、におけるは原点を中心とする回転として、は平行移動としてに作用する事を簡単な計算により確かめられる。

よって上にはにより不変な内積が定数倍を除いて一意に定まる。前述したようにであるので、に対し、写像

が定義できる。

そこでに対しTuMの計量をを任意に選んで

for

により定義するとによらずwell-definedされる事が知られており[52]M上にリーマン計量gが定まる。

アフィン接続[編集]

と半直積で書けるので、リー代数の組を使って簡約可能であり、しかもは一階である。

よって前述のようにカルタン接続ωを「部分」と「部分」に分けてと書くことができ、は主バンドルP上の接続形式になり、が標準形式となる。逆にからωが復元できる事もすでに示した。

接続形式TMに誘導するアフィン接続を定義する事ができ、は以下を満たす:

定理 ― は標準的な計量と両立する。すなわち前節で定義した標準的なリーマン計量gに対し、

M上の任意のベクトル場XYZに対して成立する。

しかしの捩率は0とは限らない[53]。もしの捩率が0であれば[注 27]リーマン幾何学の基本定理より、レヴィ・チヴィタ接続に一致する。

以上の考察から、カルタン幾何学の立場から見るとリーマン幾何学とは、ユークリッド幾何学をモデルとするカルタン幾何学で捩率が0のものとして(計量の定数倍を除き)特徴づけられる幾何学である。

リーマン多様体の発展[編集]

上述のようにリーマン多様体にはユークリッド幾何学をモデルとする捩れのないカルタン幾何学の構造が入る。

滑りとねじれのない転がし(再掲)

m次元リーマン多様体M上に曲線を取り(図の青の線)、に沿ってMm次元平面上を「滑ったり」「ねじれたり」することなく転がした[注 28]ときにできる曲線の軌跡をとする(図の紫の線)。

このとき、次が成立することが知られている:

定理 ―  記号を上述のように取る。このとき、等質空間への発展に一致する[54]

また、Mm次元平面上滑りもねじれもなく転がすと、時刻tに接した瞬間にに重なるので、自然に写像

が定義できる。この写像を使うと、Mのレヴィ・チヴィタ接続の幾何学的意味を述べることができる:

定理 ―  に沿ったM上のベクトル場とすると、以下が成立する[54]

すなわち、曲線に沿ったの共変微分をに移したものは、を移したものを通常の意味で微分したものに一致する。

よって特に以下が成立する:

 ―  における接ベクトルM上曲線に沿って(レヴィ・チヴィタ接続の意味で)平行移動したものをとするとき、におけるベクトルまで通常の意味で平行移動したものはに等しい[54]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ #Sharpe p.61.
  2. ^ #Erickson 4.1節
  3. ^ #Tu p.247.
  4. ^ #Wendl3 p.89.
  5. ^ #Tu p.123.
  6. ^ a b #Tu p.198.
  7. ^ 中央大学大学院理工学研究科 数学特別講義第三 微分形式の可積分性”. p. 50. 2023年6月27日閲覧。
  8. ^ #小林 p.59.
  9. ^ #Erickson-2 p.3.
  10. ^ #Sharpe p.151.
  11. ^ #Erickson-2 p.7.
  12. ^ a b c d e f g #Sharpe p.184.
  13. ^ #Kobayashi p.127-128.
  14. ^ a b #Kobayashi p. 128.
  15. ^ #Sharpe p.365.
  16. ^ a b #Sharpe pp.156.
  17. ^ a b #Sharpe p.174.
  18. ^ #Sharpe p.157, 166.
  19. ^ #Sharpe p.154.
  20. ^ a b #Sharpe pp.154, 207, 213.
  21. ^ a b #Sharpe p.185.
  22. ^ #Alexandre p.65.
  23. ^ #Sharpe p.194.
  24. ^ a b #Sharpe p.188.
  25. ^ #Sharpe p.193.
  26. ^ a b c #Sharpe p.187
  27. ^ #Sharpe p.191.
  28. ^ #Sharpe p.191.
  29. ^ #Sharpe pp.164, 191.
  30. ^ #Sharpe p.191.
  31. ^ #Kobayashi-Nomizu-1 p.118.
  32. ^ a b c #Sharpe pp.151, 197.
  33. ^ #Erickson p.35.
  34. ^ #Alexandre p.39.
  35. ^ #Alexandre p.39.
  36. ^ a b c #Sharpe pp.362-364.
  37. ^ a b c #Sharpe p.199.
  38. ^ #Sharpe pp.196-197.なお、p.197の「ρ」はXの元であることから「ρ*」の誤記であると判断。
  39. ^ a b #Sharpe p.119.
  40. ^ #Sharpe pp.208.
  41. ^ a b c d e f g h i j k l m #Sharpe pp.209-211.
  42. ^ #Alexandre p.69.
  43. ^ #Sharpe-2 p.67.
  44. ^ #Alexandre p.68.
  45. ^ #Sharpe p.212.
  46. ^ #Sharpe p.111.
  47. ^ a b c d #Sharpe pp.203-205.
  48. ^ a b c d e f g #Sharpe p.207.
  49. ^ #Sharpe-2 p.66
  50. ^ #Sharpe p.213.
  51. ^ #Sharpe p.216.
  52. ^ a b #Sharpe p.238.
  53. ^ #Sharpe p.234.に捩率が0の場合とそうでない場合にわけて考える旨の記載がある。
  54. ^ a b c #Sharpe pp.386-387.

注釈[編集]

  1. ^ カルタン幾何学を説明した日本語の文献が見つからなかったので、本項の専門用語はいずれも本項執筆者が暫定的に訳したものである。
  2. ^ 厳密には、M上の人と同一視できるのは、基底が右手系の場合だけで、左手系の場合はその人を"左右反転"する必要があるが、以後この問題は無視する
  3. ^ この定義ではという同一視を用いている。ここでeGの単位元である。
  4. ^ G被覆空間とすると、Gは同型なリー代数を持つ。
  5. ^ [17]ではAdにこれ以上の仮定を課していないが、実際の議論ではAdに対応するリー群Gの随伴表現への制限である事を用いているので、以下、本項でもこれを仮定する。なお、随伴表現に対応するリー群Gの取り方に依存せずwell-definedである。
  6. ^ #Sharpe p.174によれば、この仮定は必須ではないが、この仮定を外しても特に得られるものはないとの事である。
  7. ^ クライン幾何学の定義ではが連結な事を仮定していたが、ここでそれは仮定しない[19]
  8. ^ が効果的でないと、の各ファイバーはと同型なものになってしまうため、H-主バンドルにならない。
  9. ^ a b クライン幾何学の場合はM上の左不変ベクトル場に相当する[43]
  10. ^ 「捩率」という言葉にはアフィン接続の「捩率」曲線の「捩率」という2つの異なる意味があるが、ここでいう捩率は前者に相当するものである。アフィン接続の捩率との関係は後述する。
  11. ^ カルタン幾何学が一階である事を利用しているのはの単射性を保証する部分だけであり、それ以外の部分は一階でなくても成立する。
  12. ^ なお、リー代数の分野では、が半単純なイデアルとアーベルなイデアルの直和で書けるときに簡約可能であると呼ぶが、本項で挙げた定義はこの簡約可能性とは別概念である[32]。なお、単射で、しかもがこの意味で簡約可能であれば、は本項の意味で簡約可能である[32]
  13. ^ なお、#Sharpe pp.364-365.は「接続形式⇒カルタン接続」の方ではを仮定しているが、証明を読めば分かるように、実際にはこの仮定は必要ない。#Sharpeもp.362.の定理のステートメントではこの仮定に触れておらず、単なるミスと思われる。また#Sharpeもp.362.ではカルタン形式をと表記しているが、この形に書けるのはユークリッド幾何学(もしくはより一般にアフィン幾何学)をモデル幾何学としている場合であり、一般の簡約可能なモデル幾何学の場合は必ずしもこの形に書けないので、ここもミスと判断した。
  14. ^ なおこの式の右辺は文献[37]では、Xの水平リフトをYとしてとしているが、これは本項で挙げたに等しい。理由は以下の通りである。まず普遍共変微分の定義よりであり、水平リフト(詳細は接続 (ファイバー束)を参照)とはとなるYの中でとなるもののことである。 そして本項のとなり、しかものうち水平成分の方向のみを考えているので、。以上のことからである。
  15. ^ なお、に対しとなるpは複数あるため、 としてどのpにおける接ベクトルを取るかの自由度があるが、どのpにおける接ベクトルを選んでも結果は変わらない。
  16. ^ ここでは#Sharpe p.209.にあわせて「曲線の発展」という言い方にしたが、同書p.119.では同じ概念を「の発展」(: development of ω along starting at g)という言い方をしている。前者がカルタン幾何学の説明であるのに対し、後者はダルブー導関数の説明に関するものである事が言い方を変えている理由であると思われるので、ここでは前者の言い方を採用した。
  17. ^ 文献[41]ではの定義域をループ空間ではなく基本群としているが、はホモトピー不変ではないので、定義域はループ空間であると判断。なお、文献[42]では定義域を基本群としているが、これはこの文献ではカルタン幾何学が平坦な事を仮定している為、がホモトピー不変になるからである。
  18. ^ a b すなわち、に対し、Aを通るG上の左不変ベクトル場によるgからの1-パラメーター変換の軌跡の事。
  19. ^ [41]には「Gの元の1-パラメーター変換群」とあるが1-パラメーター変換群はリー代数に対して定義するものなので「の元の1-パラメーター変換群」の誤記と判断。
  20. ^ ユークリッド空間の合同変換群のリー代数からを選び、の積分曲線のへの射影を考えると螺旋になる。
  21. ^ a b すでに指摘したように、モデル幾何学 Adに対応するリー群Gの随伴表現である事が暗に仮定されている。
  22. ^ 発展の定義はωがカルタン接続の場合に対して与えたが、一般にリー代数に値を取る1-形式に対しても同様にして発展の存在一意性を示すことができるので、「に関する発展」という言葉は意味を持つ。一般の場合の定理のステートメントはダルブー導関数の項目を参照。
  23. ^ 文献[48]ではPの連結を明示的には仮定していないが、Pが連結ではないとHorの定義が基点に依存してしまうため、暗に仮定されていると判断した。
  24. ^ 文献[48]のステートメントではGの連結性を明示していないが、証明中でGの連結性を使っているため、連結性を明記した。
  25. ^ #Sharpeでは、まず一般の1-形式ωに対し完備性を定義し、カルタン接続ωが完備な事をもってカルタン幾何学の完備性を定義している。ここでP上1-形式ωが完備であるとは、以下を満たす事を言う(#Sharpe pp.69. 129):P上の任意のベクトル場Xに対し、によらず定数であれば、任意のおよび任意のに対しが定義可能である。ωがカルタン接続であれば、が定数となるベクトル場とはすなわち、for と書けるベクトル場の事であるので、ここで挙げた定義と一致する。なお文献[49]ではAが時間変化する事を許すより強い完備性の定義を採用している(が、両定義の関係については明記されていないので不明)。
  26. ^ ここでいう「定数倍を除いて一意」とは2つの計量gg'に対し、Mの点uに依存しない定数kが存在し、となるという意味である。
  27. ^ ユークリッド幾何学をモデルとするカルタン幾何学の場合にカルタン幾何学の意味での捩率がKoszul接続の捩率テンソルと同一な事はすでに示した
  28. ^ 英語では、「捩率」はtorsion、「ねじれのない転がし」の「ねじれ」はtwistであり、両者は無関係な概念である。

参考文献[編集]

カルタン幾何学関連の文献[編集]

  • Richard Sharpe (1997/6/12). Differential Geometry: Cartan's Generalization of Klein's Erlangen Program. Graduate Texts in Mathematics. 166. Sprinver. ISBN 978-0387947327 
  • Richard Sharpe (2002). An introduction to Cartan Geometries. Proceedings of the 21st Winter School "Geometry and Physics". pp. 61-75 
  • Jacob W. Erickson. “A Visual Invitation to Cartan Geometries”. University of Maryland. 2023年11月13日閲覧。
  • Jacob W. Erickson (2023年5月2日). “A method for determining Cartan geometries from the local behavior of automorphisms”. arXiv. 2023年11月13日閲覧。
  • Raphaël Alexandre and Elisha Falbel (2023年2月17日). “Introduction to Cartan geometry”. 2023年11月13日閲覧。
  • Shoshichi Kobayashi (1994/12/1). Transformation Groups in Differential Geometry. Classics in Mathematics. Springer. ISBN 978-3540586593 

カルタン幾何学以外の文献[編集]