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'''エゾシマリス'''(蝦夷縞栗鼠、学名 ''Tamias sibiricus lineatus'')は、[[ネズミ目]][[リス科]][[シマリス属]]に属する[[リス]]の1種。[[ユーラシア大陸]]北部に分布する'''[[シマリス]]'''('''シベリアシマリス''')''Tamias sibiricus''の[[亜種]] |
'''エゾシマリス'''(蝦夷縞栗鼠、学名 ''Tamias sibiricus lineatus'')は、[[ネズミ目]][[リス科]][[シマリス属]]に属する[[リス]]の1種{{Sfn|川道|2002|p=74}}。[[ユーラシア大陸]]北部に分布する'''[[シマリス]]'''('''シベリアシマリス''')''Tamias sibiricus''の[[亜種]]{{Sfn|川道|2002|p=74}}。 |
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== 分布 == |
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[[日本]]国内では[[北海道]]全域と[[利尻島]]{{Sfn|川道|2002|p=74}}・[[天売島]]・[[焼尻島]]・[[礼文島]]・[[北方地域|北方領土]]に分布する{{Sfn|国立科学研究所}}。[[樺太]](サハリン)・[[極東ロシア]]および[[中華人民共和国]]([[中国]])[[中国東北部|北東部]]のごく一部にも分布する{{Sfn|川道|2002|p=74}}。 |
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== 形態 == |
== 形態 == |
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頭胴長 |
頭胴長は12 - 15センチメートル・尾長は11 - 12センチメートルで体重は71 - 116グラム{{Sfn|川道|2002|p=74}}。耳長が14 - 18ミリメートル・後足長が35 - 18ミリメートルである。体毛は茶色で、背中には5本の黒い縞がある{{Sfn|川道|2002|p=74}}。縞の間はクリーム色になり、腹と耳の先は白くなる。 |
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== 生態 == |
== 生態 == |
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=== 生息環境 === |
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[[海岸]]から高山帯までの[[森林]]に生息するが、開けた環境に多い。[[昼行性]]であり樹上でも生活するが、主に地上で活動する。[[樹木]]や[[植物]]の[[種子]]や[[昆虫]]、陸貝、小鳥の卵や雛を食べる。樹木の種子を、地面に埋めたり、冬眠巣に運び込んで貯蔵する。樹洞を巣にするが、地下にも落ち葉を運び込んで巣を作る。[[冬眠]]や繁殖は地下の巣で行う。北海道では、10月から翌年4月まで約200日間冬眠する。春に冬眠から目覚めると、新たに別の穴を掘って地上に出てくる。 |
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[[海岸]]沿いや都市近郊の[[森林]]から[[森林限界]]を超えた[[標高]]2,000メートルの高山にまで生息するが{{Sfn|川道|2002|p=74}}、開けた環境に多い。[[昼行性]]で日の出後しばらくしてから巣を出て日の入り前に戻り、夜間には活動しない{{Sfn|川道|2002|p=76}}。主に地上で活動するが木登りも上手である{{Sfn|川道|2002|p=74}}。 |
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=== 摂食行動 === |
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繁殖期は春から夏であり、年に1-2回出産する。1回に3-7頭、平均5頭の仔を産む。寿命は5-6年である。 |
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35種類以上の[[木|木本]]{{Refnest|group="注"|川道(2002)によれば採食の目撃回数の70%は木本からの採食である{{Sfn|川道|2002|p=74}}。}}・[[草本植物]]から[[種子]]・[[果実]]・[[花]]・[[芽]]・[[葉]]・[[樹液]]を食べるがキノコ類は食べない{{Sfn|川道|2002|p=74}}。早春には[[ササ]]の芽・[[カエデ]]の若葉を食べ、その後は[[ミズナラ]]の[[ドングリ]]や[[サクラ]]類・[[ヒカゲスゲ]]などの種子を食べ、高山に生息する個体は[[ハイマツ]]・[[ナナカマド]]の種子を主に食べる{{Refnest|group="注"|特に食物の72%は種子である{{Sfn|川道|2002|p=74}}。}}{{Sfn|川道|2002|p=74}}。基本的には植物食であるが[[昆虫]]([[ガ]]の[[幼虫]]・[[アリ]]の[[蛹]]や[[セミ]]・[[クワガタムシ]])や[[クモ]]・[[カタツムリ]]([[陸貝]])など無脊椎動物や[[シジュウカラ]]の卵・[[エナガ|シマエナガ]]の雛鳥など動物質の食物も機会があれば好んで食べ、特に子育て中の母リスは子供の成長期に積極的に食べる{{Sfn|川道|2002|p=74}}。木・草の種子は季節ごとに異なる種が異なる場所に存在するため、エゾシマリスは食物を求めて300メートル以上にわたり遠出する場合もある{{Sfn|川道|2002|p=74}}。秋の行動圏はメスが3,900㎡・オスが6,800㎡である{{Sfn|川道|2002|p=76}}。 |
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本種は食物を発見すると普通はその場で食べず口の中の頬袋に詰め込み{{Refnest|group="注"|頬袋に食物を詰め込む際は左右交互に詰め込み、ミズナラのドングリの場合は最大で合計6個(左右3個ずつ)収納することができる{{Sfn|川道|2002|p=74}}。}}、安全な場所に運んでから食べたり、地面に深さ2センチメートルの穴を掘って埋めたりする{{Sfn|川道|2002|p=74}}。後者の行為を「'''分散貯蔵'''」と呼び、活動期間中はどの月でも行われるが、特に冬眠前の10月に最も盛んに行われる{{Sfn|川道|2002|p=74}}。冬眠前に分散貯蔵しておいた食物は冬眠明け直後の4月 - 5月上旬(新芽が芽生える前)に食物の半分を占める重要な餌となるが、そのまま食べられず放置されたドングリは春に芽生える{{Sfn|川道|2002|p=74}}。また個体ごとに分散貯蔵する場所は決まっていないため、別の個体が埋めて貯蔵した餌を掘り出して食べたり再び貯蔵したりする場合があるほか、冬眠前に分散貯蔵しておいた食物が冬眠中に[[エゾリス]]・[[ネズミ]]類に食べられる場合もある{{Sfn|川道|2002|p=74}}。 |
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分散貯蔵以外にも冬眠用の巣穴内部に食物を貯蔵する「巣内貯蔵」も行うが、分散貯蔵・巣内貯蔵とも腐りやすい果実・動物質は避け、もっぱら種子のみを貯蔵する{{Sfn|川道|2002|p=74}}。 |
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=== 巣・冬眠=== |
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エゾシマリスは1年のほぼ半分を冬眠して過ごしている{{Sfn|川道|2002|p=75}}。冬眠期間は通常10月 - 翌年4月の5 - 7か月間だが{{Sfn|川道|2002|p=74}}、早い個体では9月上旬から冬眠を開始する{{Sfn|川道|2002|p=75}}。エゾシマリスは[[コウモリ]]・[[クマ]]などほかの冬眠動物と違い冬眠前に体脂肪を貯えない代わりに食物を貯蔵するが、貯蔵量は1つの巣で平均1,192グラム(冬眠日数1日当たり約6グラム)である{{Sfn|川道|2002|p=74}}。 |
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9月中旬ごろ、エゾシマリスは[[冬眠]]の準備として新しい冬眠用の巣を決め、食物・枯れ葉を巣穴の中に運び込む{{Refnest|group="注"|冬眠用の巣の位置は前年の冬眠巣から比較的(成獣オスは平均44メートル、成獣メスは平均30メートル)離れた場所を選ぶ{{Sfn|川道|2002|p=74}}。}}{{Sfn|川道|2002|p=74}}。冬眠巣は1本のトンネル(180センチメートルほど)の突き当たりに1つの巣室があり、巣室の3分の2は食物貯蔵庫になっており、その上に乾燥した枯れ葉でベッドを作る{{Sfn|川道|2002|pp=74-75}}。本種は冬眠開始時に出入り口のトンネルを内部から土で塞ぎ、捕食者や貯蔵食物を盗もうとする他のシマリス・ネズミ類の侵入を防ぐ{{Sfn|川道|2002|p=75}}。 |
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メスの冬眠期間は成獣で平均211日・若い個体で平均194日の一方、オスはメスより短く成獣で平均180日・若い個体で平均169日である{{Sfn|川道|2002|p=75}}。メスは毎年冬眠巣の位置を変えるほか、小さい体の割に行動圏が広いため、オスは確実に交尾するため自分の行動圏内のどこでメスが冬眠するかを確認してから冬眠に入ると考えられている{{Refnest|group="注"|成獣オスはメスのほぼすべて(約98%)が冬眠巣を決めた後から冬眠を開始する{{Sfn|川道|2002|p=75}}。また、オスはメスより早く冬眠から覚める方が交尾の機会が増える{{Sfn|川道|2002|p=76}}。}}{{Sfn|川道|2002|p=76}}。また夏生まれの若い個体は成獣より1か月ほど遅く冬眠に入るため、冬眠に入る順番はほぼ毎年「成獣メス→(約12日後)成獣オス→若メス→若オス」の順となる{{Sfn|川道|2002|p=75}}。成獣メスは平均気温7℃、成獣オス・若メスは4℃、若オスは0℃を切るころまでにほとんどの個体が冬眠に入るため、平均気温が0℃以下になるとエゾシマリスは地上から姿を消す{{Sfn|川道|2002|p=75}}。 |
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冬眠中は体温が低下し、脈拍・呼吸数とも少なくすることでエネルギーの消費を節約するが{{Refnest|group="注"|活動期の体温は37 - 38℃である一方で冬眠中は2.8℃ - 8℃にまで低下し、呼吸数も3分あたり2 - 4回に低下する{{Sfn|川道|2002|p=75}}。}}、10日に1回程度は体温が上昇して目を覚まし、貯蔵した食物を食べたり、トンネル内のトイレで尿・糞を排泄したりする{{Sfn|川道|2002|p=75}}。 |
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冬眠中の死亡率は5パーセント以下と非常に低い一方、活動期間中には雌雄とも半数が姿を消す{{Sfn|川道|2002|p=75}}。冬眠を終えて目覚める時期は春の雪解け時期で、地上へ向けて新しいトンネルを掘り、冬眠前の出入り口から平均2メートル離れた場所から地上に出る{{Sfn|川道|2002|p=75}}。オスはメスより冬眠期間が短く{{Sfn|川道|2002|p=75}}、より早く冬眠から目覚めるため、最初のメスが冬眠を終えて地上に現れるころにはオスの約89%が既に活動を開始している段階である{{Sfn|川道|2002|p=76}}。 |
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=== 繁殖行動 === |
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前年夏に生まれたオスの睾丸は冬眠中に発達し、翌春までには繁殖が可能になる{{Sfn|川道|2002|p=76}}。メスは冬眠から目覚めて平均3日後に発情する{{Sfn|川道|2002|p=76}}。 |
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本種は通常日の出後しばらくしてから巣穴を出るが、繁殖期のオスは日の出直後から巣を出てメスの巣を訪ね歩く{{Sfn|川道|2002|p=76}}。 |
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4 - 5月に求愛して春から夏に出産する{{Sfn|国立科学研究所}}。年に1回繁殖し、妊娠期間は約30日である{{Sfn|川道|2002|p=74}}。メスは活動期間(平均156日)の半分以上を妊娠(約30日)・子育て(約60日)に費やすため、北海道では年1回しか繁殖できないことから、春1日しかない交尾日に確実に妊娠する必要がある{{Sfn|川道|2002|p=76}}。そのため、目覚めてから約3日後に交尾日を迎えると最大9党のオスと交尾するが、これは確実に妊娠するため複数のオスと複数回交尾するためと考えられる{{Sfn|川道|2002|p=76}}。交尾日を迎えてもオスと出会えないメスは発情声(鳴き声)を連続して上げ、オスを呼び寄せる{{Sfn|川道|2002|p=76}}。 |
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オス同士は交尾の順番を巡って激しく争うが、年齢による順位は常に「2歳>3歳・4歳>1歳」である{{Sfn|川道|2002|p=76}}。通常は順位の高いオスが優占的に交尾するが、毎年年齢に伴い順位が入れ替わるため、母親の行動圏付近に定着した若メス(娘)が父親と[[近親交配]]する可能性は低い{{Sfn|川道|2002|p=76}}。 |
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地下の巣で1回に3 - 7頭の仔を出産する{{Refnest|group="注"|出産場所は約半数が冬眠巣であるが、もう半数は冬眠巣から新たな地下巣に移動してから出産する{{Sfn|川道|2002|p=76}}。}}{{Sfn|川道|2002|p=76}}。新生子は体重3 - 4グラムで眼・耳とも開いておらず赤裸だが、数日後に皮膚に黒い線が現れ、そこから黒い縞模様の毛が生える{{Sfn|川道|2002|p=76}}。 |
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=== 天敵・寿命 === |
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天敵は[[キタキツネ]]・[[オコジョ]]([[エゾオコジョ]])・[[イイズナ]]([[キタイイズナ]])・[[エゾクロテン]]・[[ニホンイタチ]]・[[シマヘビ]]・[[猛禽類]]である{{Sfn|川道|2002|p=74}}。尾の皮膚は鼻骨から抜けやすくなっており、天敵に襲われた際には捕食者の口に自切した尾の毛・皮だけを残して生き延びることもある一方、年齢の高い個体には尾が短くなった個体も多い{{Sfn|川道|2002|p=74}}。 |
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寿命は野生下ではオスで最長5年・メスで6年だが、飼育下では最長9年の記録がある{{Sfn|川道|2002|p=74}}。 |
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== 種の保全状態評価 == |
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[[ペット]]として入ってきた'''チョウセンシマリス''' ''Tamias sibiricus barberi'' が、[[札幌市]]内など北海道の一部で[[野生化]]しており、本種と同じくシマリスの亜種であることから、交雑や競争が生じていることが懸念されている。 |
[[ペット]]として入ってきた'''チョウセンシマリス''' ''Tamias sibiricus barberi'' が、[[札幌市]]内など北海道の一部で[[野生化]]しており、本種と同じくシマリスの亜種であることから、交雑や競争が生じていることが懸念されている。 |
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* {{Cite book|和書|author=川道美枝子|editor=[[日高敏隆]](監修)・[[川道武男]](編集)|chapter=エゾシマリス|pages=74-77|title=日本動物大百科 哺乳類I|volume=第1巻|edition=初版第3刷|date=2002年3月22日・初版第3刷発行|origdate=1996年2月21日・初版第1刷発行|publisher=[[平凡社]]|isbn=978-4582545517|ref={{SfnRef|川道|2002}}}} |
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*小宮輝之 『日本の哺乳類』 学習研究社<フィールドベスト図鑑>、2002年、P16 |
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* {{Cite book|和書|author=[[小宮輝之]]|series=フィールドベスト図鑑|chapter=|page=16|title=日本の哺乳類|edition=|date=2002-03-29|publisher=[[学習研究社]]|isbn=978-4054013742|ref={{SfnRef|小宮|2002}}}} |
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*石井信夫 阿部 永 監修 『改訂2版 日本の哺乳類』 東海大学出版会、2008年、P121 |
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* {{Cite book|和書|author=[[石井信夫]]|editor=[[阿部永]](監修)・[[自然環境研究センター]](編集)|chapter=|page=121|title=日本の哺乳類|edition=改訂2版|date=2008年7月5日・第1刷発行|origdate=1994年12月20日・初版第1刷発行 / 2005年7月20日・改訂版第1刷発行|publisher=[[学校法人東海大学出版会|東海大学出版会]]|isbn=978-4486018025|ref={{SfnRef|石井|2008}}}} |
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* {{Cite web|url=https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/10080.html|title=シマリス|accessdate=2020-01-28|publisher=[[国立環境研究所]]|website=侵入生物DB|language=ja|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200128134520/https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/10080.html|archivedate=2020-01-28|ref={{SfnRef|国立科学研究所}}}} |
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== 関連項目 == |
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2020年1月29日 (水) 15:31時点における版
エゾシマリス | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Tamias sibiricus lineatus (Siebold, 1824) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
エゾシマリス |
エゾシマリス(蝦夷縞栗鼠、学名 Tamias sibiricus lineatus)は、ネズミ目リス科シマリス属に属するリスの1種[1]。ユーラシア大陸北部に分布するシマリス(シベリアシマリス)Tamias sibiricusの亜種[1]。
分布
日本国内では北海道全域と利尻島[1]・天売島・焼尻島・礼文島・北方領土に分布する[2]。樺太(サハリン)・極東ロシアおよび中華人民共和国(中国)北東部のごく一部にも分布する[1]。
形態
頭胴長は12 - 15センチメートル・尾長は11 - 12センチメートルで体重は71 - 116グラム[1]。耳長が14 - 18ミリメートル・後足長が35 - 18ミリメートルである。体毛は茶色で、背中には5本の黒い縞がある[1]。縞の間はクリーム色になり、腹と耳の先は白くなる。
生態
生息環境
海岸沿いや都市近郊の森林から森林限界を超えた標高2,000メートルの高山にまで生息するが[1]、開けた環境に多い。昼行性で日の出後しばらくしてから巣を出て日の入り前に戻り、夜間には活動しない[3]。主に地上で活動するが木登りも上手である[1]。
摂食行動
35種類以上の木本[注 1]・草本植物から種子・果実・花・芽・葉・樹液を食べるがキノコ類は食べない[1]。早春にはササの芽・カエデの若葉を食べ、その後はミズナラのドングリやサクラ類・ヒカゲスゲなどの種子を食べ、高山に生息する個体はハイマツ・ナナカマドの種子を主に食べる[注 2][1]。基本的には植物食であるが昆虫(ガの幼虫・アリの蛹やセミ・クワガタムシ)やクモ・カタツムリ(陸貝)など無脊椎動物やシジュウカラの卵・シマエナガの雛鳥など動物質の食物も機会があれば好んで食べ、特に子育て中の母リスは子供の成長期に積極的に食べる[1]。木・草の種子は季節ごとに異なる種が異なる場所に存在するため、エゾシマリスは食物を求めて300メートル以上にわたり遠出する場合もある[1]。秋の行動圏はメスが3,900㎡・オスが6,800㎡である[3]。
本種は食物を発見すると普通はその場で食べず口の中の頬袋に詰め込み[注 3]、安全な場所に運んでから食べたり、地面に深さ2センチメートルの穴を掘って埋めたりする[1]。後者の行為を「分散貯蔵」と呼び、活動期間中はどの月でも行われるが、特に冬眠前の10月に最も盛んに行われる[1]。冬眠前に分散貯蔵しておいた食物は冬眠明け直後の4月 - 5月上旬(新芽が芽生える前)に食物の半分を占める重要な餌となるが、そのまま食べられず放置されたドングリは春に芽生える[1]。また個体ごとに分散貯蔵する場所は決まっていないため、別の個体が埋めて貯蔵した餌を掘り出して食べたり再び貯蔵したりする場合があるほか、冬眠前に分散貯蔵しておいた食物が冬眠中にエゾリス・ネズミ類に食べられる場合もある[1]。
分散貯蔵以外にも冬眠用の巣穴内部に食物を貯蔵する「巣内貯蔵」も行うが、分散貯蔵・巣内貯蔵とも腐りやすい果実・動物質は避け、もっぱら種子のみを貯蔵する[1]。
巣・冬眠
エゾシマリスは1年のほぼ半分を冬眠して過ごしている[4]。冬眠期間は通常10月 - 翌年4月の5 - 7か月間だが[1]、早い個体では9月上旬から冬眠を開始する[4]。エゾシマリスはコウモリ・クマなどほかの冬眠動物と違い冬眠前に体脂肪を貯えない代わりに食物を貯蔵するが、貯蔵量は1つの巣で平均1,192グラム(冬眠日数1日当たり約6グラム)である[1]。
9月中旬ごろ、エゾシマリスは冬眠の準備として新しい冬眠用の巣を決め、食物・枯れ葉を巣穴の中に運び込む[注 4][1]。冬眠巣は1本のトンネル(180センチメートルほど)の突き当たりに1つの巣室があり、巣室の3分の2は食物貯蔵庫になっており、その上に乾燥した枯れ葉でベッドを作る[5]。本種は冬眠開始時に出入り口のトンネルを内部から土で塞ぎ、捕食者や貯蔵食物を盗もうとする他のシマリス・ネズミ類の侵入を防ぐ[4]。
メスの冬眠期間は成獣で平均211日・若い個体で平均194日の一方、オスはメスより短く成獣で平均180日・若い個体で平均169日である[4]。メスは毎年冬眠巣の位置を変えるほか、小さい体の割に行動圏が広いため、オスは確実に交尾するため自分の行動圏内のどこでメスが冬眠するかを確認してから冬眠に入ると考えられている[注 5][3]。また夏生まれの若い個体は成獣より1か月ほど遅く冬眠に入るため、冬眠に入る順番はほぼ毎年「成獣メス→(約12日後)成獣オス→若メス→若オス」の順となる[4]。成獣メスは平均気温7℃、成獣オス・若メスは4℃、若オスは0℃を切るころまでにほとんどの個体が冬眠に入るため、平均気温が0℃以下になるとエゾシマリスは地上から姿を消す[4]。
冬眠中は体温が低下し、脈拍・呼吸数とも少なくすることでエネルギーの消費を節約するが[注 6]、10日に1回程度は体温が上昇して目を覚まし、貯蔵した食物を食べたり、トンネル内のトイレで尿・糞を排泄したりする[4]。
冬眠中の死亡率は5パーセント以下と非常に低い一方、活動期間中には雌雄とも半数が姿を消す[4]。冬眠を終えて目覚める時期は春の雪解け時期で、地上へ向けて新しいトンネルを掘り、冬眠前の出入り口から平均2メートル離れた場所から地上に出る[4]。オスはメスより冬眠期間が短く[4]、より早く冬眠から目覚めるため、最初のメスが冬眠を終えて地上に現れるころにはオスの約89%が既に活動を開始している段階である[3]。
繁殖行動
前年夏に生まれたオスの睾丸は冬眠中に発達し、翌春までには繁殖が可能になる[3]。メスは冬眠から目覚めて平均3日後に発情する[3]。
本種は通常日の出後しばらくしてから巣穴を出るが、繁殖期のオスは日の出直後から巣を出てメスの巣を訪ね歩く[3]。
4 - 5月に求愛して春から夏に出産する[2]。年に1回繁殖し、妊娠期間は約30日である[1]。メスは活動期間(平均156日)の半分以上を妊娠(約30日)・子育て(約60日)に費やすため、北海道では年1回しか繁殖できないことから、春1日しかない交尾日に確実に妊娠する必要がある[3]。そのため、目覚めてから約3日後に交尾日を迎えると最大9党のオスと交尾するが、これは確実に妊娠するため複数のオスと複数回交尾するためと考えられる[3]。交尾日を迎えてもオスと出会えないメスは発情声(鳴き声)を連続して上げ、オスを呼び寄せる[3]。
オス同士は交尾の順番を巡って激しく争うが、年齢による順位は常に「2歳>3歳・4歳>1歳」である[3]。通常は順位の高いオスが優占的に交尾するが、毎年年齢に伴い順位が入れ替わるため、母親の行動圏付近に定着した若メス(娘)が父親と近親交配する可能性は低い[3]。
地下の巣で1回に3 - 7頭の仔を出産する[注 7][3]。新生子は体重3 - 4グラムで眼・耳とも開いておらず赤裸だが、数日後に皮膚に黒い線が現れ、そこから黒い縞模様の毛が生える[3]。
天敵・寿命
天敵はキタキツネ・オコジョ(エゾオコジョ)・イイズナ(キタイイズナ)・エゾクロテン・ニホンイタチ・シマヘビ・猛禽類である[1]。尾の皮膚は鼻骨から抜けやすくなっており、天敵に襲われた際には捕食者の口に自切した尾の毛・皮だけを残して生き延びることもある一方、年齢の高い個体には尾が短くなった個体も多い[1]。
寿命は野生下ではオスで最長5年・メスで6年だが、飼育下では最長9年の記録がある[1]。
種の保全状態評価
- 情報不足(DD)(環境省レッドリスト)
ペットとして入ってきたチョウセンシマリス Tamias sibiricus barberi が、札幌市内など北海道の一部で野生化しており、本種と同じくシマリスの亜種であることから、交雑や競争が生じていることが懸念されている。
脚注
注釈
- ^ 川道(2002)によれば採食の目撃回数の70%は木本からの採食である[1]。
- ^ 特に食物の72%は種子である[1]。
- ^ 頬袋に食物を詰め込む際は左右交互に詰め込み、ミズナラのドングリの場合は最大で合計6個(左右3個ずつ)収納することができる[1]。
- ^ 冬眠用の巣の位置は前年の冬眠巣から比較的(成獣オスは平均44メートル、成獣メスは平均30メートル)離れた場所を選ぶ[1]。
- ^ 成獣オスはメスのほぼすべて(約98%)が冬眠巣を決めた後から冬眠を開始する[4]。また、オスはメスより早く冬眠から覚める方が交尾の機会が増える[3]。
- ^ 活動期の体温は37 - 38℃である一方で冬眠中は2.8℃ - 8℃にまで低下し、呼吸数も3分あたり2 - 4回に低下する[4]。
- ^ 出産場所は約半数が冬眠巣であるが、もう半数は冬眠巣から新たな地下巣に移動してから出産する[3]。
出典
参考文献
- 川道美枝子 著「エゾシマリス」、日高敏隆(監修)・川道武男(編集) 編『日本動物大百科 哺乳類I』 第1巻(初版第3刷)、平凡社、2002年3月22日・初版第3刷発行(原著1996年2月21日・初版第1刷発行)、74-77頁。ISBN 978-4582545517。
- 小宮輝之『日本の哺乳類』学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2002年3月29日、16頁。ISBN 978-4054013742。
- 石井信夫 著、阿部永(監修)・自然環境研究センター(編集) 編『日本の哺乳類』(改訂2版)東海大学出版会、2008年7月5日・第1刷発行(原著1994年12月20日・初版第1刷発行 / 2005年7月20日・改訂版第1刷発行)、121頁。ISBN 978-4486018025。
- “シマリス”. 侵入生物DB. 国立環境研究所. 2020年1月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月28日閲覧。