小室一成

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小室一成(こむろ いっせい)は、日本の医師である。自他ともに認める東京大学医学部のプリンスと報道されている[1]

略歴[編集]

1982年東京大学医学部医学科卒業。1984年東京大学医学部附属病院第三内科に入局。1989年医学博士取得[2]。同年ハーバード大学医学部留学。1993年東京大学医学部第三内科助手。2001年千葉大学循環病態医科学教授。2009年より大阪大学大学院教授兼任。2012年より東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授。

学会の設立[編集]

2017年に日本腫瘍循環器学会を設立した[3]。また、日本循環器学会内に、基礎研究の活性化を目的とした日本循環器学会基礎研究フォーラムを誕生させた[4]

立法への関与[編集]

ディオバン事件で懸念された論文の責任著者であり[5][6][7]臨床研究法の成立[8]に寄与した。また、脳卒中・循環器病対策基本法の成立に向けた活動を行っている[9]

発表論文に関する告発や調査[編集]

東京大学医学系の循環器内科教授に就任した2012年頃から、以下に記すように発表論文についての告発や調査を何度も受けていることが幾度となく報道されている。これらの告発や調査に関して、首相官邸や東大病院長が動いたことも報じられている[10][11]。ただし、東京大学から論文不正の認定がなされたことは2018年4月現在では一度もない。

ディオバンの臨床研究論文[編集]

高血圧治療の降圧剤「ディオバン」の臨床研究データが改竄された事件(ディオバン事件)において一つの研究グループの責任者であったことから、由井芳樹による2012年4月14日付のLancet誌での指摘[12]を契機として千葉大学や厚生労働省や日本高血圧学会から調査をされた[5][6][7]。2014年7月に千葉大学は、小室らが虚偽の説明をして調査を混乱させたとする最終報告書を公表した。千葉大学は、論文の責任著者であった小室に処分をするよう現所属の東京大学に勧告し[13][14]、千葉大学に在籍し続けていた論文の共著者には戒告処分を行った[15][16]。これを受けて東京大学でもディオバン事件について調査が行われ、東大総長が「覚悟しておくように」と小室に伝えたとも報じられたが[17]、東京大学は研究不正行為はなかったとする報告書を2015年3月31日に発表した[18][19]。日本高血圧学会は、2015年3月27日に現時点では厳重注意処分とするという見解を発表した[20]。その後、小室はディオバンの臨床試験についてのメイン論文を「現存するデータでは適切に訂正することができないhonest errorがあるため、取り下げる」として撤回することに同意したと日本高血圧学会から2016年8月14日に発表された[21][22]。2016年10月12日に、参議院議員の櫻井充は、参議院議長への質問主意書において「東京大学では十分な調査が行われていない。ディオバン事件に関係した他大学が行ったように、東京大学は学内メンバーに加えて第三者を含むコンプライアンス委員会を設置して真相解明を図るとともに、責任者の適切な処分を行うべきと考える」と記載した[23]

11jigenによる基礎研究についての告発[編集]

2012年の後半ごろから、Cell誌やNature誌などの著名な雑誌に掲載された基礎研究の論文について、データの修正公告がいくつかなされていた[24][25]ディオバン事件に関する報道が盛んになり始めていた2013年3月ごろから、2ちゃんねるの生物板で、責任著者を務める基礎研究論文についての不自然な酷似画像の指摘が15報ほどなされ、11jigenはそれを修正公告が出ている論文についての疑義と共にまとめたウェブサイトを作成し、東京大学と千葉大学と文部科学省に2013年5月に告発した[26][27][28]。この告発についての調査結果については一切明らかになっていないが、いくつかの論文については告発後に修正公告が出されている[29][30][31][32][33]

Ordinary_researchersによる基礎研究についての告発[編集]

2016年8月29日付で、匿名のOrdinary_researchersから、基礎研究論文についての告発がなされた[34][35]。2017年8月1日に、東京大学は、調査の結果、不正行為を認定しなかったことを発表した[36][37][38][39]。東大の調査報告書の全文は、大部分が黒塗りの状態で公開された[40]。日経新聞は、調査報告は評判が悪く、東大は有力者に忖度して不正調査を行ったのではないかと主張する記事を配信した[41][42]近畿大学病理医である榎木英介講師は、もう次はないことを自覚するよう小室に促した[43]

脚注[編集]

  1. ^ 「ペテン師」だらけの東大医学部 止まらない論文捏造の「連鎖」 雑誌選択 2013年8月号 2017年9月8日閲覧
  2. ^ 博士論文書誌データベースによる
  3. ^ 一般社団法人日本腫瘍循環器学会”. 日本腫瘍循環器学会. 2018年3月28日閲覧。
  4. ^ 第1回日本循環器学会基礎研究フォーラム”. The 1st JCS Council Forum on Basic CardioVascular Research. 2018年3月28日閲覧。
  5. ^ a b 河内敏康、八田浩輔「偽りの薬 バルサルタン臨床試験疑惑を追う」毎日新聞科学環境部、2014年 ISBN 978-4620322827
  6. ^ a b 日本医事新報 No.4808 2016年6月18日号 ディオバン事件―問題点と教訓を考える 2016年12月6日閲覧
  7. ^ a b 赤い罠 ディオバン臨床研究不正事件 桑島巌 2016/9/16 日本医事新報社 ISBN 978-4784944477
  8. ^ 臨床研究法について”. 厚生労働省. 2018年3月28日閲覧。
  9. ^ 脳卒中・循環器病対策基本法の今国会での成立を求める患者・家族・医療関係者の会 2017.4.19 参議院議員会館 2017年9月9日閲覧
  10. ^ 「籠城」続ける東大医学部教授に官邸が「徹底的処分」を示唆 2014年11月13日 月刊集中 2017年9月8日閲覧
  11. ^ 露呈の連鎖止まらぬ「研究不正」ががん医療分野へも波及 2014年1月1日 月刊集中 2017年9月8日閲覧
  12. ^ The Lancet, Volume 379, Issue 9824, Page e48: (Concerns about the Jikei Heart Study)(由井芳樹)ランセット (The Lancet) 誌 2012年4月14日
  13. ^ 千葉大学VART最終報告 東大・小室教授ら「虚偽説明で調査混乱、長期化」 処分求める ミクスonline 2014/07/16 2017年9月8日閲覧
  14. ^ [「東大教授ら虚偽の説明、処分を」千葉大調査委] 読売新聞 2014年7月15日 2017年9月9日閲覧
  15. ^ 千葉大、教授を戒告処分、ディオバン問題で 「研究不正」でなく「信用失墜」が理由 m3.com 2014年10月21日 2017年9月8日閲覧
  16. ^ 千葉大、論文著者を処分 ノバルティス問題巡り 日経新聞 2014/10/20付 2017年9月9日閲覧
  17. ^ ついに刑事告発に至った論文捏造事件の「転機」 月刊集中 2013年12月1日 2017年9月8日閲覧 http://www.fujisan.co.jp/product/1281690243/b/960232/ http://www.fujisan.co.jp/library/viewer/960233/sample
  18. ^ 臨床研究「Valsartan Amlodipine Randomized Trial」に関する調査結果概要 東京大学 平成27年3月31日 2017年9月8日閲覧
  19. ^ 「小室氏処分の権限なし」、東大と千葉大 東大が「研究不正なし」の報告書、言い分食い違いも m3.com 2015年4月2日 2017年9月8日閲覧
  20. ^ 東大・小室教授を厳重注意、高血圧学会 「現時点では」と断り、ディオバン裁判見守る構え m3.com 2015年3月31日 2017年9月8日閲覧
  21. ^ 日本高血圧学会、VART主論文を撤回 東大小室教授「honest error」として取り下げを申し出 m3.com 2016年8月15日 2017年9月8日閲覧
  22. ^ 東大教授の論文取り消し…高血圧治療薬の研究で不正 2016年8月16日 読売新聞 2017年9月8日閲覧
  23. ^ 東京大学の研究不正の調査のあり方に関する質問主意書 参議院 2016年10月12日 2016年12月7日閲覧
  24. ^ ERRATUM: Complement C1q Activates Canonical Wnt Signaling and Promotes Aging-Related Phenotypes 3 August 2012 Cell 2017年9月8日閲覧
  25. ^ Corrigendum: Mitochondrial DNA that escapes from autophagy causes inflammation and heart failure 19 September 2012 Nature 2017年9月8日閲覧
  26. ^ Suspicions Raised About Another Japanese Cardiovascular Researcher Forbes 2013年5月10日 2016年12月7日閲覧
  27. ^ 〈クスリの闇第4弾!〉「疑惑の降圧剤バルサルタン」&「保険診療費」に群がった学者を直撃 FRIDAY 講談社 2013年6月14日号 2016年12月6日閲覧
  28. ^ 《日本のサンクチュアリ》「科学研究費」の闇 不正にまみれた「学者ムラ」 雑誌選択 2013年7月号 2017年9月8日閲覧
  29. ^ [1] Nature, 2014年2月12日 2017年8月25日閲覧
  30. ^ [2] Journal of Biological Chemistry, 2013年12月27日 2017年8月25日閲覧
  31. ^ [3] Nature Medicine, 日時不明 2017年8月25日閲覧
  32. ^ 臨床試験をめぐるノバルティスと東大の「不適切な関係」 月刊集中 2014年3月1日 2017年9月9日閲覧 http://www.fujisan.co.jp/product/1281690243/b/1084409/ http://www.fujisan.co.jp/library/viewer/1084410/sample
  33. ^ 「当事者性」を欠いたまま、未体験ゾーンに突入する東大医学部 月刊集中 2014年10月7日 2017年9月8日閲覧
  34. ^ [4] Ordinary_researchers 2016年8月29日 2016年12月7日閲覧
  35. ^ 東大、論文不正疑惑の第二弾受け予備調査 m3.com 2016年9月5日 2016年12月7日閲覧
  36. ^ 東大論文不正 16カ所 渡辺教授の処分検討 報告書発表 毎日新聞 2017年8月2日 2017年8月17日閲覧
  37. ^ 「不適切な加工が常態化」 “スター科学者”の実像に揺れる学界 産経新聞 2017年8月1日 2017年8月17日閲覧
  38. ^ 東大・分生研教授ら、5報の論文で不正行為 調査結果を公表、医学系研究科5教授は不正なし m3.com 2017年8月2日 2017年8月17日閲覧
  39. ^ University of Tokyo probe says chromosome team doctored images ScienceInsider 2017年8月1日 2017年8月17日閲覧
  40. ^ 22報論文に関する調査報告 東京大学 2018年3月17日閲覧
  41. ^ 有力者に忖度する東大論文不正調査 公正な研究の壁に 日本経済新聞電子版 永田好生 2017年8月28日 2017年8月29日閲覧
  42. ^ 日本経済新聞 朝刊 2017年8月28日 2017年8月28日閲覧
  43. ^ Vol.174 東大研究不正調査発表~医学部教授をおとがめなしにした東大が失ったもの 医療ガバナンス学会 2017年8月18日 2017年8月18日閲覧

関連事項[編集]