16文キック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
十六文キックから転送)
Jump to navigation Jump to search
アンダーテイカーによるビッグ・ブーツ

16文キック(じゅうろくもんキック)は、プロレスにおける蹴り技の一種である。

この名称は日本人プロレスラーで最初にこの技を必殺技としたジャイアント馬場が使用した時にのみ適用され、一般的にはハイキック(ただし、横から蹴る本来のハイキックと区別するためフロント・ハイキックとも呼ぶ)と言われる。アメリカなどでは、ビッグ・ブート(Big boot、ビッグ・ブーツとも)という名称で呼ばれる。カウンターで使用された場合、カウンター・キックとも呼ばれる。

概要[編集]

ロープにスローイングした相手や、相手が走って向かってきたところにあわせて、片足を大きく上げ顔面に打ち付ける。馬場の利き足は右足だが、左足を高く上げて蹴る。理由は野球選手投手)出身である馬場の、右投げの投球フォームがもとになっており、「咄嗟にキックを出したら自然と左足で蹴っていた」と語っている。たまに右足で蹴ることもあったという。

主にカウンターで用いられ、全盛期ではこの技でフォールを奪えるほどの威力を誇った。他にも至近距離から出したり、自ら走り込んで繰り出すこともあった。

後年には「ただ突っ立って、反動で戻ってくる相手に足を当てているだけ」というような揶揄も生まれたが、実際のところ馬場のように真っ直ぐに立った状態で、片足を高く上げて相手を蹴るのは難しい。馬場とタッグを組んでいた時代の坂口征二も、馬場と同様のキックをよく行っていたが、腰が曲がり足も真っ直ぐ伸びていない場合が多かった。もっとも、馬場も最晩年になり体力の衰えが顕著になると、コーナーやロープにもたれかかった状態で仕掛けることが多くなった。

ビル・ロビンソンブルーザー・ブロディは、ロープから戻ってくる時に馬場の足をキャッチして16文キックを防いだことがある。

エピソード[編集]

この16文キックは馬場がアメリカで修行していた頃、スカル・マーフィーからアドバイスを受けて身につけたといわれる。日本での技の呼び名は、馬場の足のサイズに由来する。ジャイアント馬場の靴のサイズは、アメリカのサイズ規格の16号に相当した。当時の新聞記者が、この数字を昔の日本の靴などの大きさを示す(もん)と間違えて表記したことから、「16文キック」と呼ばれるようになった。なお、一文は約2.4cmである。これから計算すると、16文は約38.4cmになる(実際の馬場の足の大きさは32cm前後であったため、実際は約14文ということになる)。

日本国内のプロレスラーで馬場と並ぶような足の大きな選手は他におらず、都合16文キックは馬場のみが使う技となり(他の選手が使用した場合、後述する同型技の項目で挙げられた技名が用いられる)、日本国内での馬場の代名詞ともなった。例として、馬場が全日本プロレス中継で解説を務めた時に「十六文解説」と称されるなど。

同型技[編集]

フロント・ハイキック[編集]

国内ではこの名称で使用されることが多く、単に「ハイキック」と呼ばれることも多い。ただし、横方向から蹴りつける一般的なハイキックとはフォーム、効果が異なる。

ビッグ・ブーツ[編集]

ビッグ・ブート、ビッグ・ブーツ・キック、ビッグ・ブート・キックとも。高山善廣ケビン・ナッシュテスト等が使用。国内では長身の選手が繰り出したらこの名称を使ったりする。

キングコング・キック[編集]

ブロディ・キック、超獣キックとも。ブルーザー・ブロディのビッグブーツはこう呼ばれた。厳密には馬場やアンドレのキックとは蹴るときの動きが違う。現代ではプロフェッショナルレスリング・ワラビー矢野啓太が使用。

ジャンボ・キック[編集]

ジャンボ鶴田の使用するフロント・ハイキック。旧名15文キック。

顔面ハイキック[編集]

川田利明の使用する助走をつけての顔面へのフロント・ハイキック。川田が得意とする各種顔面蹴りの一つで、序盤の小技、繋ぎ技、流れを変える技などとして幅広く使用される。

18文キック[編集]

アンドレ・ザ・ジャイアントが馬場より足が大きいということで、アンドレのビッグ・ブーツがこう呼ばれることがあった。古舘伊知郎は、実況でこの技を『人間エグゾセミサイル』と形容していた。

スパイダー・キック[編集]

アーニー・ラッドのビッグ・ブートはこう呼ばれた。アントニオ猪木からピンフォールを奪ったこともあるラッドの必殺技。

カウンター・ハイキック[編集]

カウンター・キックとも。走ってくる相手に対するカウンターとして使用した場合に、この名で呼ばれることがある。

派生技[編集]

ケンカ・キック[編集]

ヤクザ・キックとも呼ばれる。蝶野正洋が使うフロントからのキック。助走をつけて自らの膝を曲げたままの状態で片足を前方へ突き出し、相手の顔面を足の裏の踵付近で擦り付けるように撃つのが特徴。見た目が映画などでヤクザが使う蹴りに似ていたのでヤクザキックと命名されたが、テレビや雑誌等で「ヤクザ」という名はコードに引っかかるなど、不適切なため、ヤクザ=喧嘩のイメージから「ケンカ・キック」と改称された。なお、前述以外のメディアではヤクザ・キックと呼称される場合もある。蝶野は派生技としてシャイニング・ウィザードと組み合わせた「シャイニングケンカキック」、望月成晃はジャンピング式で相手が一回転する程の勢いで蹴り飛ばす「スーパー・ケンカ・キック」、土井成樹は尻餅をついた相手を低空で蹴り飛ばす「バカタレ・スライディング・キック」を使用している。

ダイナミック・ハイキック[編集]

ダイナミック・キック、大開脚キックとも。田上明の助走をつけて大きくジャンプしてのフロント・ハイキック。コーナー最上段からのダイビング式もある。また、通常型のフロント・ハイキックもこの名称で呼ばれることがある。 ロマン・レインズは、相手の頭部をリング内からエプロンに突き出るように据え置き、自らは場外に降りてリングサイドを助走しジャンプしながらフロント・ハイキックを見舞う。自身はリングのエプロンに尻餅を付いて着地するタイプを使用する[1]

バイシクル・キック[編集]

日本語では二段蹴りとも呼ばれ、相手に向かって走りこみ、一度蹴り脚とは逆の脚を振り上げ、その直後に素早くその脚を引く動作と同時に蹴り足で地面を蹴り、ジャンプして相手の顔面にキックを叩き込む技である。使い手としてはビル・アーウィンスティーブ・ブラックマンテンサイ戸澤陽などがいる。WWEのシェイマスは、ブローグ・キックBrogue Kick)の名称で使用。

30文キック[編集]

ジャンボ鶴田とのタッグでの合体ビッグ・ブーツ。

もともと、鶴田は馬場とタッグを組む場合だけに、あくまでお付き合い技としてのフロント・ハイキックを打つ場合が多かったが、後に、シングル戦においてもつなぎ技として多用するようになった。それは、当初馬場に1文遠慮して15文キックと呼ばれていた。

なお、馬場は坂口征二とのタッグ「東京タワーズ」でも同様の技を出していた。

32文人間ロケット砲[編集]

ジャイアント馬場が使うドロップキックを指す。32文ロケット砲と言われることもある。

脚注[編集]

  1. ^ 週刊プロレス別冊『週刊プロレスEXTRA Vol.11 WWE完全攻略ガイド』ベースボールマガジン社、2014年、pp6。

関連項目[編集]