ロック・ザ・カスバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
ロック・ザ・カスバ
ザ・クラッシュシングル
初出アルバム『コンバット・ロック
B面 ロング・タイム・ジャーク
リリース
規格 7インチ/12インチシングル、CD
録音 1982
ジャンル パンク・ロックロック
時間
レーベル CBS
エピック 北米
作詞・作曲 ザ・クラッシュ[1]
ザ・クラッシュ シングル 年表
ステイ・オア・ゴー
(1982)
ロック・ザ・カスバ
(1982)
ストレイト・トゥ・ヘル
(1982)
ミュージックビデオ
「Rock the Casbah」 - YouTube
テンプレートを表示

ロック・ザ・カスバ」(Rock the Casbah)は、ザ・クラッシュ1982年のアルバム『コンバット・ロック』の収録曲。後にシングル・カットされ、バンドで唯一全米シングルチャートのトップ10にランクイン、ビルボードでは最高位8位となった[2]

曲の由来[編集]

一説では、ホメイニ政権下のイランロックが禁止されていたことに影響を受けたという[2]。 「カスバを動かせ」の影響で人民が禁を無視し始めた。王は禁を冒す者を戦闘機で爆撃するよう命ずるが、パイロットは命令を拒否し、コックピットの無線機でロックを聴く。こういった状況を寓話作家が語る。

曲中ではイランを含め、いかなるイスラーム教国の名も出していない。歌詞ではアラビア語ヘブライ語ウルドゥー語北アフリカの用語が使われている。たとえば「シャリーフ」、「ベドウィン」、「シャイフ」、「カーシェール」、「ラーガ」、「ムアッジン」、「ミナレット」そして「カスバ」である[3][4]

ベスト・アルバム『クラッシュ・オン・ブロードウェイ』の解説によると、この曲はバンドのマネージャー、バーニー・ローズが、バンドがアルバムに用意した過度に長い曲に対し、ふざけて「どの曲もこんな、ラーガ(長さと複雑さで有名なインドの音楽様式)のように長くなくちゃいけないのか?」とこぼしたことに端を発する。ストラマーは、後に「王はブギーマンに言った、『ラーガをやめろ』」という行を冒頭に付け加えた。残りの歌詞はすぐ後に続く[5]

この曲は、ドラマーのトッパー・ヒードンが単なるパーカッション奏者を越え、作曲もこなした数少ない曲の1つである[2]。イントロは彼が以前から温めていたピアノフレーズで始まり、曲になる以前、リハーサルの合間に遊びで録音されていたもの。2000年のドキュメンタリー映画『ウェストウェイ・トゥ・ザ・ワールド』で、彼がドラム、ベース、ピアノを演奏したことを明かしている。ヒードンは、単にバンドのために演奏していると思っていたものが、知らずに録音されていたと主張している。レコードのために必要なものはギターとボーカルのパートが残っているのみであった[6]

ミュージック・ビデオ[編集]

クラッシュは、数曲で低予算のヴィデオを作ったが、その中で「ロック・ザ・カスバ」の物は特に印象的である。テキサス州オースティンで撮られたこのビデオには、バーニー・ローズ演じるアラブ人と Mark "Frothler" Helfont 演じるハシド派ユダヤ人がアルマジロに追いかけられながら車上で踊る。そして油井の前で演奏するクラッシュの映像が織り込まれる。ヴィデオのユーモラスな演出は曲調にあっており、アラブ人とユダヤ人のおどけた様子からは、イスラエルとアラブの良好な関係への願いがうかがえる[2]

このビデオに登場するのは初期ドラマーのテリー・チャイムズ。ヒードンは曲の発売前に麻薬中毒でバンドを去っている[2]。ヒードンは「自分の場所で自分の曲を他人が演っている」のを見るのが苦痛であると漏らした。そして、深い鬱状態と薬物依存の悪循環へと陥っていく。

シングル[編集]

アメリカ盤シングルでは、アルバムのものと異なるミックスが行われている[2]。シングル版ではベースの音がよりはっきりしている。そして3コーラス目の終りの「jive」はデジタル・ディレイ処理で数秒間持続する。このシングルヴァージョンがヴィデオで使われている。

数度のシングルリリースの度に使われたカップリング曲「ムスタファ・ダンス」は、この曲のインストルメンタル・リミックスである。

発売されたシングル[編集]

シングルはジャケット、規格、カップリング曲を変えて何度も再発売された(下表参照)[7]

カップリング曲 規格 レーベル 注記
1982 ロック・ザ・カスバ 45回転7インチ Epic 34-03245 カナダの旗 カナダ/アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 プロモーション
1982 ムスタファ・ダンス 45回転12インチ CBS 07.5P-191 日本の旗 日本 -
1982 ムスタファ・ダンス 45回転7インチ Epic 49-03144 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 -
1982 ムスタファ・ダンス 45回転12インチ Epic 49-03144 カナダの旗 カナダ -
1982 ムスタファ・ダンス 45回転7インチ CBS A112479 イギリスの旗 イギリス ピクチャー・ディスク
1982 レッド・エンジェル・ドラグネット 45回転7インチ Epic 34-03245 カナダの旗 カナダ -
1982 ロング・タイム・ジャーク 45回転7インチ Epic 34-03245 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 青いダイカット・スリーヴ
1982 ムスタファ・ダンス 45回転12インチ CBS A 13-2479 イギリスの旗 イギリス -
1982 ロング・タイム・ジャーク 45回転7インチ Epic 15-05540 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 -
1991 ムスタファ・ダンス 45回転7インチ Columbia 656814-7 イギリスの旗 イギリス 再発売
1991
  1. ムスタファ・ダンス
  2. マグニフィセント・ダンス
45回転12インチ Columbia 656814-6 イギリスの旗 イギリス -
1991
  1. ムスタファ・ダンス
  2. マグニフィセント・ダンス
CD Columbia 656814-2 イギリスの旗 イギリス -

政治的影響[編集]

この曲は湾岸戦争で米軍の非公式テーマソングとなった。これは曲中の「ミナレットを爆撃しろ」という行が影響を与えている[2]。開戦時にAFNで最初に流された曲でもある。これはバンドの反戦的な立場に対して皮肉的なエピソードである。 ジャーナリストのヘスース・アリアスは「ストラマーは米軍が爆弾に "Rock the Casbah" と記していたというニュースを見て『まさか、俺の曲がアメリカ軍の死のシンボルになるなんて』と涙した。」と語った[8]

2006年に、保守的な「ナショナル・レヴュー」が発表した「保守的ロック曲」50曲の20位に選ばれた。湾岸戦争中の頻繁なリクエストを受けてのことである[9]。湾岸戦争時の人気にも関わらず、あるいはそのせいで「9.11以降クリア・チャンネルで不適切指定された楽曲リスト」の一曲に選出された[10]

順位[編集]

チャート 最高順位 日付
全英シングルチャート 30 1982
ビルボード・ホット100 8 1982
全英シングルチャート 15 1991
アイルランドシングルチャート 10 1991年4月

脚注[編集]

  1. ^ トッパー・ヒードンがメインのピアノリフを書いたと言われているが、バンド名でクレジットされている
  2. ^ a b c d e f g Rock the Casbah by The Clash Songfacts (PHP)”. Songfacts. 2008年1月20日閲覧。
  3. ^ Rock the Casbah”. Combat Rock Lyrics. londonsburning.org. 2008年1月20日閲覧。
  4. ^ THE CLASH - ROCK THE CASBAH LYRICS (NSF)”. sing365.com. 2008年1月20日閲覧。
  5. ^ ザ・クラッシュ. クラッシュ・オン・ブロードウェイ (CD). ニューヨーク: エピック. 
  6. ^ ドン・レッツ;リック・エルグッド、ジョー・ストラマーミック・ジョーンズポール・シムノントッパー・ヒードンテリー・チャイムズザ・クラッシュ. ウェストウェイ・トゥ・ザ・ワールド (ドキュメンタリー). ニューヨーク: ソニー・ミュージックエンタテインメント; ドリスモ; アップタウン・フィルムズ.. ISBN 0738900826 
  7. ^ Rock the Casbah / Mustapha Dance by The Clash : Reviews and Ratings - Rate Your Music”. rateyourmusic.com. 2007年12月27日閲覧。
  8. ^ ロンドン・コーリング/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー (DVD). 東北新社.. 該当時間: 1:37:45 - 1:38:16 
  9. ^ ジョン・J・ミラー (2006年5月26日). “John J. Miller on Music on National Review Online”. Rockin' the Right ? The 50 greatest conservative rock songs.. ナショナル・レヴュー・オンライン. 2006年6月13日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年1月20日閲覧。 “20. “Rock the Casbah,” by The Clash.
    After 9/11, American radio stations were urged not to play this 1982 song, one of the biggest hits by a seminal punk band, because it was seen as too provocative. Meanwhile, British Forces Broadcasting Service (the radio station for British troops serving in Iraq) has said that this is one of its most requested tunes.”
  10. ^ Songs with Questionable Lyrics”. hitsdailydouble.com. 2008年1月20日閲覧。 “The Clash "Rock the Casbah"”

参考文献[編集]

  • パット・ギルバート (2005) [2004]. Passion Is a Fashion: The Real Story of The Clash (第4版 ed.). ロンドン: オーラム・プレス. ISBN 1845131134. 
  • マーカス・グレイ (2005) [1995]. The Clash: Return of the Last Gang in Town (改訂第5版 ed.). ロンドン: ヘルター・スケルター. ISBN 1905139101. 
  • ジョニー・グリーン; ゲイリー・ベーカー (2003) [1997]. A Riot of Our Own: Night and Day with The Clash (第3版 ed.). ロンドン: オリオン. ISBN 0752858432. 
  • ボブ・グルーエン; クリス・セールウィクズ (2004) [2001]. ザ・クラッシュ (第3版 ed.). ロンドン: オムニバス. ISBN 1903399343. 
  • クリス・ニーズ (2005-01-25). Joe Strummer and the Legend of the Clash. ロンドン: プレクサス. ISBN 085965348X. 
  • キース・トッピング (2004) [2003]. ザ・コンプリート・クラッシュ (第2版 ed.). リッチモンド: レイノルズ&ハーン. ISBN 1903111706. 

外部リンク[編集]