タトラT3R.PV

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タトラT3R.EVから転送)
タトラT3 > タトラT3R.PV
タトラT3R.PV
タトラT3R.EV
T3R.PVブルノ

T3R.EVブルノ
基本情報
種車 タトラT3
改造所 アライアンスTW
改造年 T3R.PV 2003年 -
T3R.EV 2002年 -
改造数 T3R.PV 83両
T3R.EV 5両
主要諸元
軌間 1,000 mm1,435 mm
電気方式 直流600 V
架空電車線方式
最高速度 65 km/h
車両定員 着席22人
最大138人
車両重量 17.26 t
全長 15,104 mm
車体長 14,000 mm
車体幅 2,500 mm
車体高 3,185 mm
主電動機 T3R.PV TV Progress(直流電動機)
T3R.EV TV Europulse(かご形三相誘導電動機
主電動機出力 T3R.PV 47 kw
T3R.EV 90 kw
出力 T3R.PV 188 kw
T3R.EV 360 kw
制御方式 T3R.PV 電機子チョッパ制御
T3R.EV VVVFインバータ制御
制動装置 回生ブレーキドラムブレーキ電磁吸着ブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3][4]に基づく。
テンプレートを表示

タトラT3R.PVは、チェコスロバキアなど世界各国の路面電車で使用されている電車の1形式。チェコスロバキア時代に製造された路面電車車両・タトラT3の台車や一部機器と新造車体・電気機器を組み合わせた車両である。この項目では、電気機器が異なるタトラT3R.EVも併せて解説する[1][2][3]

概要[編集]

1960年プラハ市電に導入された試作車を皮切りに東側諸国へ向けて大量生産が行われた路面電車車両・タトラT3は、1970年代後半以降車体の修繕や制御装置の交換などの近代化工事が各地で実施されている。特にチェコスロバキア(旧:チェコスロバキア)のタトラT3は2001年以降路面電車車両の製造・更新事業を展開するコンソーシアムであるアライアンスTW(Aliance TW team)によって多数の近代化工事が行われているが、その中で老朽化した車体をアライアンスTW製の「VerCB3」に載せ替えた車両は「T3R.PV」もしくは「T3R.EV」と呼ばれる[1][5]

「VerCB3」はアライアンスTWがタトラT3を基に開発した片運転台の高床車体で、前面の大型行先表示装置や左側面の通風孔の有無など一部の差異を除きT3と同じ外見を有するが、顧客からの要望に応じて前面形状や内装、防錆用プライマー塗料の使用など様々な変更に対応している。特にチェコオストラヴァ市電2004年から営業運転を開始したT3R.EVはフランティシェク・ペリカーンチェコ語版が手掛けた新設計の前面形状を有しており、アライアンスTWで新造された部分超低床電車にもこのデザインが受け継がれている。運転方法についてはT3の足踏みペダルから制御用ハンドルを用いた方式へと変更されている[1][2][6]

形式の違いは電気機器の差異によるものであり、T3R.PVにはIGBT素子を用いた電機子チョッパ制御方式の「TVプログレス」(TV Progress)が用いられる一方、超低床付随車VV60LFと連結運転を行う事を前提としたT3R.EVには、出力が増大したかご形三相誘導電動機を有するVVVFインバータ制御方式の「TVユーロパルス」(TV Europulse)が搭載されている。両形式とも電気機器の製造はチェコのセゲレツ(Cegelec)が手掛ける[4][7][8][9][10]

運用・導入都市[編集]

2002年にT3R.EVの試作車が製造された後、2003年以降両形式の量産が始まり、2020年の時点でT3R.PVが83両、T3R.EVが5両作られている。T3R.PVがチェコスロバキアのみならずクロアチアロシア連邦にも導入されている一方、T3R.EVは牽引するVV60LFの故障が多発した事や増備計画が部分超低床電車のヴァリオLFへ移行した事により少数の製造に留まっている。以下の表は、両形式を導入した都市や事業者を示したものである他、備考欄の「新デザイン」はフランティシェク・ペリカーンが手掛けた新設計の全面形状の事である[1][2][7][11]

T3R.PV・T3R.EV 導入都市一覧[1][2][3]
形式 導入国 都市 導入両数 備考
T3R.PV チェコ プラハ
(プラハ市電)
35両 [4]
リベレツ
(リベレツ市電)
12両
ブルノ
(ブルノ市電)
10両
プルゼニ
(プルゼニ市電)
2両
スロバキア ブラチスラヴァ
(ブラチスラヴァ市電)
5両
クロアチア オシエク
(オシエク市電)
17両 前面形状は新デザインを採用[2]
ロシア連邦 ヴォルゴグラード
(ヴォルゴグラード市電)
2両
T3R.EV チェコ ブルノ
(ブルノ市電)
4両
チェコ オストラヴァ
(オストラヴァ市電)
1両 前面形状は新デザインを採用
事業用車両へ改造予定[2]

ギャラリー[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f TRAM CASING VARCB3” (英語). Krnovské opravny a strojírny s.r.o.. 2020年2月4日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Libor Hinčica (2019年7月11日). “JEDINOU ČESKOU TRAMVAJ T3R.EV S DESIGNEM „PELIKÁN“ ČEKÁ PŘESTAVBA” (チェコ語). Československý Dopravák. 2020年2月4日閲覧。
  3. ^ a b c Libor Hinčica (2018年2月7日). “V KRNOVĚ OPRAVÍ LIBERECKÉ TRAMVAJE” (チェコ語). Československý Dopravák. 2020年2月4日閲覧。
  4. ^ a b c tramwaje - T3R.PV” (チェコ語). Opravna tramvají. 2020年2月4日閲覧。
  5. ^ a b 宇都宮浄人「海外のLRT事情・LRTをめざすチェコ ~路面電車製造の老舗の現状」『路面電車EX vol.13』、イカロス出版、2019年6月20日、107-113頁、ISBN 9784802206778 
  6. ^ 服部重敬「トラムいま・むかし 第6回 タトラカーが今も主役 チェコ・リベレツ」『路面電車EX 2017 vol.10』、イカロス出版、2017年10月20日、107頁、ISBN 978-4802204231 
  7. ^ a b Vario LF3” (チェコ語). Dopravní podnik Ostrava (2019年4月4日). 2020年2月4日閲覧。
  8. ^ TV Progress Traction Equipment for Tramcar Refurbishment” (英語). Cegelec. 2020年2月9日閲覧。
  9. ^ TV Europulse Traction Equipment” (英語). Cegelec. 2020年2月4日閲覧。
  10. ^ Zpráva o výsledcích šetření příčin a okolností vzniku mimořádné událo (PDF) (Report) (チェコ語). Drážní inspekce. 2012年12月1日. p. 29. 2020年2月4日閲覧
  11. ^ Pokusy s vlečnými vozy v Brně končí. Z tramvají budou odpočívárny a sklady” (チェコ語). Lidovky.cz (2016年6月8日). 2020年2月4日閲覧。
  12. ^ tramwaje - T3R.PLF” (チェコ語). Opravna tramvají. 2020年2月4日閲覧。
  13. ^ DALŠÍ NOVÁ „TÉ TROJKA“ V PRAZE” (チェコ語). Československý Dopravák (2017年5月19日). 2020年2月4日閲覧。