カワラバト属

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カワラバト属
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: ハト目 Columbiformes
: ハト科 Columbidae
亜科 : カワラバト亜科 Columbinae
: カワラバト属 Columba
Linnaeus, 1758
シノニム

Aplopelia Bonaparte, 1855 (but see text)
Trocaza Bonaparte, 1854

33-35種

カワラバト属(Columba)は、中型から大型のハトが属する分類である。英語の"dove"や"pigeon"という言葉は、各々小型と大型のものを指す。カワラバト属の種は、一般的に"pigeon"と称し、多くの場合はwood-pigeonsと呼ばれる。レース鳩クジャクバト等、繁殖される家畜鳩の大部分はカワラバト属であり、そのうちの一部は野生化している。

この属は旧世界原産であると考えられているが、いくつかの種は、アメリカ等、元の生息域の外に導入された。

語源[編集]

属名のColumbaは、ラテン語で小型のハトを意味するcolumba'に由来する[1]。これは、雄の鳩を表すcolumbasの女性形である[2]。またこれ自体は、「ダイバー」を意味するギリシャ語であるκόλυμβος (kolumbos)をラテン語化したものである[3]。さらにこの言葉は、「潜る、飛び込む、泳ぐ」を意味するギリシャ語の動詞κολυμβάω (kolumbaō)に由来する[4] The feminine form of kolumbos, κολυμβίς (kolumbis), "diver",[5]。女性形のκολυμβίς (kolumbis)は、飛行中に翼が「泳ぐ」ような動きをすることから、アリストパネスらにより名付けられた[6]

分類[編集]

カワラバト属の分類は、カール・フォン・リンネにより、1758年出版の『自然の体系』第10版により導入された[7]。1825年にニコラス・エイルウォード・ビガーズヒメモリバトタイプ種に指定した[8]

かつてカワラバト属とされていたアメリカの種は、現在ではPatagioenas属に再分類されている。このアメリカの放散が異なる系統に属するという主張は、分子的な証拠に裏付けられている。実際、Patagioenas属は、カワラバト属とキジバト属の間の基部系統となっている。キジバト属やマイナーなNesoenas属、Stigmatopelia属の系統とともに温帯ユーラシアでは支配的に進化的放射適応放散)するが、熱帯地域にも生息する。現在はこの属の下に置かれているアフリカのいくつかのハトの分類学的位置づけについては、さらなる研究が必要である。これらはカワラバト属の通常の種よりも小さいため"dove"と呼ばれるが、その他のいくつかの点で異なっており、これらはアカアシバト属に分離すべきものかもしれない。典型的なハトの系統は、中新世後期、恐らく約7-800万年前に最も近い近縁から分岐した[9][10]

[編集]

オリーブバト (C. arquatrix)
カノコモリバト (C. elphinstonii)
絶滅種Lord Howe pigeon (C. vitiensis godmanae)は、旅行者の報告からのみ知られている

この属に35種が知られており、そのうち2種は既に絶滅している[11]

化石C. omnisanctorumは、イタリアガルガーノ半島及びその周辺で、鮮新世前期(5300-3600万年前)の地層から出土している。ほぼ同時代または鮮新世中期(3600-2600万年前)のハヤブサ属とされている化石も同じ種または別種のハトである可能性があり、Columba pisanaという学名が与えられた。

C. melitensisは、マルタ更新世後期の地層から出土した化石種である。1891年にリチャード・ライデッカーが記載した烏口骨のみが知られているが、現生種のものとは確実に異なっている。ブルガリアヴルシェツクロアチアのŠandaljaの鮮新世後期から更新世初期の地層からは、未分類の化石種も見つかっている[12]

別の化石種であるC. congiは、中華人民共和国周口店地区洞窟の更新世初期の地層から見つかっている。現存種の祖先に当たるか否かについては、更なる研修が必要である。モーリシャス固有種で絶滅種のColumba thiriouxiは、2011年に記載されたが、種としての妥当性については異論があり、一般的には種として認められていない。ホロタイプは、1910年に収集された右足根骨である。

出典[編集]

  1. ^ columba, Charlton T. Lewis, Charles Short, A Latin Dictionary, on Perseus
  2. ^ columbus, Henry George Liddell, Robert Scott, A Greek-English Lexicon, on Perseus
  3. ^ κόλυμβος, Henry George Liddell, Robert Scott, A Greek-English Lexicon, on Perseus
  4. ^ κολυμβάω, Henry George Liddell, Robert Scott, A Greek-English Lexicon, on Perseus
  5. ^ κολυμβίς, Henry George Liddell, Robert Scott, A Greek-English Lexicon, on Perseus
  6. ^ Aristophanes, Birds, 304, on Perseus
  7. ^ Linnaeus, Carl (1758) (Latin). Systema Naturae per regna tria naturae, secundum classes, ordines, genera, species, cum characteribus, differentiis, synonymis, locis. 1 (10th ed.). Holmiae (Stockholm): Laurentii Salvii. p. 162. https://biodiversitylibrary.org/page/727069 
  8. ^ Vigors, Nicholas Aylward (1825). “Observations on the natural affinities that connect the orders and families of birds”. Transactions of the Linnean Society of London 14 (3): 395–517 [481]. doi:10.1111/j.1095-8339.1823.tb00098.x. https://biodiversitylibrary.org/page/752859. 
  9. ^ Johnson, K.P.; De Kort, S.; Dinwoodey, K.; Mateman, A.C.; Ten Cate, C.; Lessells, C.M.; Clayton, D.H. (2001). “A molecular phylogeny of the dove genera Streptopelia and Columba”. Auk 118 (4): 874–887. doi:10.1642/0004-8038(2001)118[0874:AMPOTD]2.0.CO;2. 
  10. ^ Cheke, Anthony S. (2005). “Naming segregates from the Columba–Streptopelia pigeons following DNA studies on phylogeny”. Bulletin of the British Ornithologists' Club 125 (4): 293–295. https://www.researchgate.net/publication/288838416. 
  11. ^ Pigeons”. IOC World Bird List Version 10.1. International Ornithologists' Union (2020年). 2020年3月1日閲覧。
  12. ^ Mlíkovský (2002): pp.221-222.
  • Mlíkovský, Jirí (2002): Cenozoic Birds of the World, Part 1: Europe. Ninox Press, Prague. ISBN 80-901105-3-8 PDF fulltext