ハト科

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ハト科
ヒメモリバト
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: ハト目 Columbiformes
: ハト科 Columbidae
学名
Columbidae Leach1820
和名
ハト(鳩)

42属

ハト科(ハトか、学名 Columbidae)は、鳥類ハト目の科である。ハト(鳩)と呼ばれる。

特徴[編集]

分布[編集]

ハト科の鳥は、サハラ砂漠の最も乾燥した地域、北極圏最北部、南極大陸とその周辺の島々を除いた全世界のあらゆる場所に分布している[1]。ハト科は大海の孤島にも生息域を広げており、太平洋の東部ポリネシアチャタム諸島インド洋モーリシャスレユニオンセーシェル大西洋アゾレス諸島にまで生息している。

ハト科は地球上で居住可能なほとんどの地域に生息地を広げており、樹上性、陸生、半陸生であることもある。ハト科に属する様々な種はサバンナ草原砂漠疎林森林マングローブ林、さらには環礁の不毛な砂利の上にすら生息している[2]

ハト科に属する種のレベルでも、広い生息範囲を持つ種がいくつか存在する。ミミグロバトはコロンビアからフエゴ島に至る南アメリカ全域に生息しており[3]シラコバトはイギリスからヨーロッパ、中東、インド、パキスタン、中国に至る、不連続だが広大な生息域を持つ[4]。ワライバトはインド、パキスタン、中東からサハラ以南のアフリカにかけて生息している[5]。逆に、いくつかの種、特に島の固有種などでは、分布域は小さく制限されたものとなっている。キガシラヒメアオバトはフィジーカンダブ島のみに生息しており[6]、マミムナジロバトはカロリン諸島の中のチューク諸島ポンペイ島の2つの島のみに生息している[7]。そして、グレナダバトカリブ海グレナダ島のみに生息している[8]大陸に生息する種でも、いくつかの種は小さな生息域にとどまっているものがある。例としては、クロオビバトはオーストラリアアーネムランドのみに生息しており[9]、ソマリーヒメモリバトはソマリア北部の小さな地域にのみ生息する[10]。キガオハシリバトは、アルゼンチン北部のサルタサン・ミゲル・デ・トゥクマン周辺のみに生息している[11]

ハト科の中で最も広い地域に生息する種はカワラバトである[12]。この種は自然生息域が元々広く、イギリスとアイルランドから北アフリカヨーロッパアラビア中央アジア、インド、ヒマラヤ、さらに中国とモンゴルに至るまでの広大な地域に生息していた[12]。さらにこの種は家畜化されており、世界各地に導入された後野生化したため、生息域はさらに劇的に増大した[12]。この種は本来の生息域に加え、現在北アメリカの大部分に生息しており、さらに南アメリカやサハラ以南のアフリカ、東南アジア、日本、オーストラリア、ニュージーランドの都市や都市部にも生息している[12]。人類の介入によって生息域を拡大した種はカワラバト以外にも存在しており、いくつかの種は人類の元から逃れて本来の生息域以外の地に分布を広げ、またいくつかの種は人類活動によって変化した自然環境に入り込む形で生息域を拡大した[11][11]

形態[編集]

体形は頑丈で丸みを帯びる。頭部は小型。全身は柔らかい羽毛で密に覆われる。

嘴や後肢は短い。

卵は白い殻で覆われ、全長と比較すると相対的に小型である。多くの種は雌雄同色である。

生態[編集]

主に森林に生息するが、草原砂漠に生息する種もいる。鳴き声は単純である。

食性は植物食もしくは植物傾向の強い雑食で、植物の果実種子などを食べる。地表で採食を行う種が多い。嘴を水に指し入れ、頭を下にしたまま水を飲む事ができる。

繁殖形態は卵生。多くの種は樹上に木の枝を組み合わせた皿状の巣を作り、1回に1–2個の卵を年に数回に分けて産む種が多い。主にメスが営巣するが、巣材はオスが集めることが多い。卵から孵化した雛は、親が吐き出した食道の一部(そ嚢)からの分泌物(ピジョンミルクタンパク質を多く含む】)を食べて育つ(雛が成長すると、親が他の食物も一緒に与える)。

雛の成長にはタンパク質が必要なため、他の鳥類はタンパク質を多く含む食物、主に昆虫の幼虫(青虫)を雛に与えるため、春から夏にかけてしか繁殖しない。しかし、ハト科の鳥は上述のように自らのタンパク質を与えるため、春・夏に限らず、秋・冬にも繁殖することがある。

系統と分類[編集]

単型ハト目 Comunbiformes を構成する。かつてはサケイ科がハト目に含められ、ハト科はハト目ハト亜目 Columbae に分類されていた。ハト科はサケイ科とやや近縁ではあるが[13][14]姉妹群クイナモドキ科である可能性が高い[15]

ハト科は3つの系統に分かれ[16]、Pereira et al. (2007) では Clade A・Clade B・Clade C と仮称されている。Clade A・Clade B 内の系統関係はよくわかっているが、最大の Clade C は類縁関係の不確かないくつかの小系統からなる。Clade B は新熱帯区中南米)固有である。Clade C はエチオピア区東洋区オーストラリア区オセアニアを含む旧世界の熱帯)に生息しオーストラリア区起源、Clade A は新旧両世界の熱帯に生息し新熱帯区起源のようである[16]

系統 従来の亜科 現生属
Clade C アオバト亜科 Treroninae 10属
カンムリバト亜科 Gourinae 01属
ゴクラクバト亜科 Otidiphabinae 01属
オオハシバト亜科 Didunculinae 01属
ドードー科 Raphidae 絶滅
カワラバト亜科 Columbinae 13属
Clade B 04属
Clade A 12属

従来の一般的な分類ではカワラバト亜科 Columbinae・アオバト亜科 Treroninaeカンムリバト亜科 Gourinaeオオハシバト亜科 Didunculinae の4亜科またはゴクラクバト亜科 Otidiphabinae を加えた5亜科に分けられ[16]、さらに従来別科とされていたドードー科 Raphidae を含む。このほかにも、亜科の構成が異なったり、オオハシバト科 Didunculidae やアルキバト科 Claraviidae を分離するなど、さまざまな説があった。しかしこれらの説は系統を反映していない。単型でないカワラバト亜科とアオバト亜科は単系統ではなく、Clade A と Clade B はカワラバト亜科に含まれ、Clade C は残りのカワラバト亜科・他の4亜科・ドードー科からなる。

系統樹は Pereira et al. (2007)[16]より。他のソースによるものは出典付きで配した。サンプリングされていない属には「?」を付けた。Clade C のうちカワラバト亜科 Columbinae とアオバト亜科 Treroninae に属する枝には [Co] と [Tr] を記した。

ハト科
Clade C
[Tr]

ミヤマバト属 Gymnophaps

カミカザリバト Lopholaimus

? Cryptophaps [14]

ニュージーランドバト属 Hemiphaga

ヒメアオバト属 Ptilinopus (incl. Drepanoptila & Alectroenas [14])

ミカドバト属 Ducula

[Co]

シッポウバト Oena

アオフバト属 Turtur

キンバト属 Chalcophaps

[Tr]

テリアオバト属 Phapitreron

[Tr]

アオバト属 Treron

ドードー科

ドードー属 Raphus

ロドリゲスドードー Pezophaps

[Co]

ミノバト属 Caloenas

オオハシバト Didunculus

カンムリバト属 Goura

[Co]

? †カンザシバト Microgoura [17]

ゴクラクバト Otidiphaps

[Co]

ハシブトバト Trugon

[Co]

イワバト属 Petrophassa

ニジハバト属 Phaps

レンジャクバト Ocyphaps

? Geophaps [18]

チョウショウバト属 Geopelia

ウォンガバト Leucosarcia

ヒムネバト属 Gallicolumba

ハシナガバト属 Henicophaps

Clade B

スズメバト属 Columbina

ハシリバト属 Metriopelia

オナガハシリバト Uropelia

アルキバト属 Claravis

Clade A

オナガバト属 Macropygia

カオジロクロバト属 Turacoena

マイヒメバト属 Reinwardtoena

カワラバト属 Columba

キジバト属 Streptopelia

Nesoenas [19]

Spilopelia [19]

Patagioenas

リョコウバト Ectopistes [20]

アメリカシャコバト属 Leptotila

ハジロバト属 Zenaida

アメリカウズラバト属 Geotrygon

? クロヒゲバト Starnoenas [17]

クイナモドキ科

サケイ科

分類[編集]

現生属と種数は国際鳥類学会議 (IOC) による[21]。42属321種が現生する。

Clade A[編集]

Clade B[編集]

Clade C[編集]

カワラバト亜科 Columbinae(部分)[編集]

アオバト亜科 Treroninae[編集]

単型亜科[編集]

ドードー科 Raphidae[編集]

レッドリスト[編集]

上記のとおり、開発による生息地の破壊、羽毛目的の乱獲、人為的に移入された動物による捕食などにより、すでに絶滅してしまった種や、生息数が減少し絶滅が危惧されている種も散見される。

ギャラリー[編集]

出典[編集]

  1. ^ Columbidae (doves and pigeons)”. Animal Diversity Web. 2019年11月21日閲覧。
  2. ^ Pigeons and Doves (Columbidae) – Dictionary definition of Pigeons and Doves (Columbidae)”. www.encyclopedia.com. 2019年11月21日閲覧。
  3. ^ Zenaida auriculata (eared dove)”. Animal Diversity Web. 2019年11月22日閲覧。
  4. ^ Eurasian collared dove (Streptopelia decaocto) detail”. natureconservation.in (2019年2月5日). 2019年11月22日閲覧。
  5. ^ Laughing Dove This Bird Is Native To Subsaharan Africa The Middle East And India Where It Is Known As The Little Brown Dove It Inhabits Scrubland And Feeds On Grass Seeds And Grain Stock Photo”. www.gettyimages.in. 2019年11月22日閲覧。
  6. ^ Whistling Fruit Doves”. www.beautyofbirds.com. 2019年11月22日閲覧。
  7. ^ Gibbs, David (2010). Pigeons and Doves: A Guide to the Pigeons and Doves of the World. Bloomsbury Publishing. ISBN 978-1-4081-3555-6. https://books.google.com/?id=JMGkAwAAQBAJ&pg=PA406. 
  8. ^ Grenada Dove (Leptotila wellsi) - BirdLife species factsheet”. datazone.birdlife.org. 2019年11月22日閲覧。
  9. ^ Schodde, Richard; Mason, I. J. (1997). Aves (Columbidae to Coraciidae). Csiro Publishing. ISBN 9780643060371. https://books.google.com/?id=lK_tb2TICq8C&pg=PA60 2019年11月22日閲覧。. 
  10. ^ Somali Pigeon (Columba oliviae)”. www.hbw.com. 2019年11月22日閲覧。
  11. ^ a b c Baptista, L. F.; Trail, P. W.; Horblit, H. M. (1997). “Family Columbidae (Doves and Pigeons)”. Handbook of birds of the world. 4: Sandgrouse to Cuckoos. Barcelona: Lynx Edicions. ISBN 978-84-87334-22-1. 
  12. ^ a b c d Rock Pigeons (Columba livia) aka Feral or Domestic Pigeons”. www.beautyofbirds.com. 2019年11月22日閲覧。
  13. ^ Ericson, Per G. P.; Anderson, Cajsa L.; et al. (2006), “Diversification of Neoaves: integration of molecular sequence data and fossils”, Biol. Lett. 2 (4): 543–547, doi:10.1098/rsbl.2006.0523, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1834003/ 
  14. ^ a b c d Gibb, Gillian C.; Penny, David (2010), “Two aspects along the continuum of pigeon evolution: A South-Pacific radiation and the relationship of pigeons within Neoaves”, Mol. Phylogenet. Evol. 56 (2): 698–706, doi:10.1016/j.ympev.2010.04.016 
  15. ^ Hackett, S. J.; Kimball, Rebecca T.; et al. (2008), “A Phylogenomic Study of Birds Reveals Their Evolutionary History”, Science 320: 1763–1768 
  16. ^ a b c d Pereira, S. L.; Johnson, K. P.; et al. (2007), “Mitochondrial and Nuclear DNA Sequences Support a Cretaceous Origin of Columbiformes and a Dispersal-Driven Radiation in the Paleogene”, Syst. Biol. 56 (4): 656–672, doi:10.1080/10635150701549672, http://sysbio.oxfordjournals.org/cgi/content/full/56/4/656 
  17. ^ a b “Dietary and sexual correlates of carotenoid pigment expression in dove plumage”, Condor 105 (2): 258–267, (2003), doi:10.1650/0010-5422(2003)105[0258:DASCOC]2.0.CO;2 
  18. ^ a b Christidis, Les; Boles, Walter E. (2008), “Family Columbidae”, Systematics and Taxonomy of Australian Birds, CSIRO Publishing, ISBN 9780643096028 
  19. ^ a b Cheke, Anthony S. (2005), “Naming segregates from the Columba–Streptopelia pigeons following DNA studies on phylogeny”, Bull. B.O.C. 125 (4): 293–295, オリジナルの2011年7月10日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20110710143423/http://www.dodobooks.com/files/Cheke2005PigeonNames.pdf 
  20. ^ Johnson, K. P.; Clayton, D. H.; et al. (2010), “The flight of the Passenger Pigeon: Phylogenetics and biogeographic history of an extinct species”, Mol. Phylogenet. Evol. (in press), doi:10.1016/j.ympev.2010.05.010 
  21. ^ Gill, Frank; Donsker, David, eds. (2010), “Sandgrouse & pigeons”, IOC World Bird Names (version 2.5), http://www.worldbirdnames.org/n-sandgrouse.html 

参考文献[編集]

  • 小原秀雄浦本昌紀太田英利松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社2000年、185–186頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』、講談社、2000年、101、198–199頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』、講談社、2000年、180頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 東南アジアの島々』、講談社、2000年、84–86、162–167頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ7 オーストラリア、ニューギニア』、講談社、2000年、58–62、177–180頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ2 アマゾン』、講談社、2001年、78、135–136頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ3 中央・南アメリカ』、講談社、2001年、72–73、193–196頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ8 太平洋、インド洋』、講談社、2001年、96–98、197–202頁。
  • 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科8 鳥II』、平凡社1986年、60–65頁。
  • 中村登流監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社1984年、68–69頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館2002年、70–71、110、144、152、172、174–175頁。

関連項目[編集]

  • 日本にいるハト目ハト科の下位の9種とも13種とも言われるハトの歴史や生態についての記事
  • カワラバト 学術名カワラバト、日本で一般的なハトの種。
  • 伝書鳩 数百年にわたり品種改良された種。