オニイトマキエイ

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オニイトマキエイ
Manta birostris-Thailand3.jpg
Manta birostris
保全状況評価[1]
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 NT.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
亜綱 : 板鰓亜綱 Elasmobranchii
: トビエイ目 Myliobatiformes
: トビエイ科 Myliobatidae
: オニイトマキエイ属 Manta
: オニイトマキエイ M. birostris
学名
Manta birostris
(Walbaum, 1792)
英名
Manta ray

オニイトマキエイ(鬼糸巻鱏、鬼糸巻鱝)Manta birostris英名Manta rayマンタ・レイ)は、トビエイ目トビエイ科Myliobatidaeに属する世界最大のエイマンタと呼ばれることが多い。大きいものでは体の横幅8m、体重3tに達する。熱帯のごく表層を遊泳し、泳ぎながらプランクトンを食べる。ダイビングのほか、いくつかの水族館でも見ることができる。毒針は無い。

分布[編集]

世界中の熱帯亜熱帯海域、とくにサンゴ礁周辺に生息する。普段は外洋の表層を遊泳するが、沿岸域でも見られる。日本近海では、石垣島の周辺海域でよく見られる。

形態[編集]

人の大きさと比べる

巨大な体躯で、魚類の中でも最大級の大きさを誇る。オニイトマキエイの大きさは頭から尾の先までではなく、胸鰭の横幅(体盤)で表すのが一般的である。平均的な個体では、3m~5m だが、FishBase(外部リンク参照)によると、最大で8mに達するという。また、体重は3tにもなる。

体の形は他のイトマキエイ類と同じく扁平な菱形で、細長いを持つ。体色は基本的に背側が黒色、腹側が白色だが、各々の個体によって異なる斑点や擦り傷などが見られ、個体識別の際の目印となっている。まれに全身が黒色の個体も見られ、ダイバーの間ではブラック・マンタと呼ばれている。

頭部先端の両側には、胸鰭由来の頭鰭(とうき)と呼ばれるヘラ状の特殊な鰭が一対ある。これは、伸ばしたり丸めたりと自由に形を変形でき、餌を取るのに役立っているものと考えられている。またプランクトン食という摂餌形態に対応して、他のエイと異なり、の正面に開く。

生態[編集]

正面から見たオニイトマキエイ

マンタの生態は、まだまだ不明な点が多い。

泳ぐときは大きな胸鰭を上下に羽ばたくように動かし、比較的ゆっくりと進む。しかし餌となるプランクトンの集団を見つけたときは速いスピードで、何度も宙返りするように上下方向に旋回を行う。このときは大きな口を開けて海水と一緒にプランクトンを吸い込み、でプランクトンだけを濾しとって余分な海水は鰓裂から排出する。またダイバーの出す気泡に反応して、このような旋回行動を見せることもある。他の特異な行動として、ときおり海面からジャンプすることが知られている。何トンもの巨体が空中に舞うのだから相当なエネルギーが必要なはずであるが、何のための行動なのかはよく分かっていない。寄生虫を振り落とすためとも、子どもを出産するためともいわれ、様々な説が飛び交っている。

小魚を従える

大海原を回遊するオニイトマキエイは単独で行動し、数尾のコバンザメブリモドキを従えていることが多い。こうした魚は大きなオニイトマキエイにくっつくか寄り添うかして、長距離を移動する。旅の間は主人の食べ残しや糞、体についた寄生虫などを食べて栄養を得ている。

沿岸域では群になって泳ぐオニイトマキエイも見られる。これは繁殖のために集まっているものと考えられ、イワシなどのように敵から身を守るのが目的ではない。体の大きなオニイトマキエイにはほとんど天敵がおらず、ホホジロザメイタチザメなど、大型のサメでも襲ってこない限り、食われる心配はないからである。

繁殖は卵胎生で、一度に1~2尾[2]の子どもを産む。子どもは産まれたときすでに大きく、体盤幅1m~1.2m、体重50kg前後である。その後も急激に成長し、およそ10年で成熟する。寿命は20年以上と見積もられている。

2007年6月17日、沖縄美ら海水族館で飼育されているマンタが、メスの赤ちゃんを出産した[3]。飼育環境下での出産は世界初といわれ、生態の研究が進むものと期待されていたが、6月21日の朝に死んでいるのが確認された。死因は父親エイに追いかけられ、水槽の壁にぶつかり、その時に生じた打撲や傷が原因とみられる。なお、同水族館では2008年6月17日にも出産に成功している。

また、脳化指数が高く、魚類の中では最も知能が高い種の一つと考えられている[4]

人との関わり[編集]

ダイバーの間では非常に高い人気を誇る。性格はおとなしく、好奇心が旺盛で人なつこい。場所によっては生息密度も高く、あまりダイビングの経験がなくとも、大きなオニイトマキエイとの海中遊泳を比較的手軽に楽しむことができる。

オニイトマキエイを飼うにはかなりの広いスペースが必要だが、水族館の大型水槽展示が普及するにつれ、オニイトマキエイを飼育・展示することも可能になってきている。沖縄美ら海水族館海遊館[5] [6] [7] [8] などは大型水槽設備が充実しており、世界最大の魚ジンベエザメと一緒の展示が目立つ。

古代ペルーモチェ文化の遺跡からは、本種をかたどった鐙型注口土器が出土している[9]

大きな体格、ゆったりした遊泳速度、海面近くを泳ぐ性質のため、本種は漁師の格好の標的となりやすい。フィリピンメキシコモザンビークマダガスカルインドスリランカブラジルタンザニアインドネシアでは漁獲されている。地元では、主にヒレ、肝臓、肉、鰓弁が消費されているが、近年東洋医学の薬剤として乾燥したオニイトマキエイの鰓弁の需要が高まっており、東南アジアと東アフリカにおける漁の性質が自給から商業ベースに変化してきている。マグロなど他の魚を対象とした網にかかったり、サメ除けのネットにからまって命を落とすこともある。

本種の漁獲が行われている南シナ海フィリピン海スールー海、メキシコの西海岸、スリランカ、インド、インドネシアでは、個体数の減少が報告されている。繁殖、出産、幼魚の成長に欠かせない沿岸域での漁業、水質汚染、沿岸の開発、エコツーリズム個体群に与える影響はよくわかっていない。一回の産仔数が少なく、繁殖力が弱いことから、一度、個体群数が下落すると、回復には時間がかかると推測される。ハワイ諸島ヤップ島付近に生息する個体群は生息域から遠くに移動しないことがわかっており、局地的に絶滅の危機に陥った場合、別の個体群からの個体の移入によって個体群が自然に復活することは難しいと考えられる。[1]

近縁種[編集]

オニイトマキエイ属 Manta には以下の4種が知られている。

  • オニイトマキエイ Manta ray M. birostris (Walbaum, 1792)
  • ナンヨウマンタ  M. alfredi (Krefft, 1868)
  • M. raya (Baer, 1899)
  • M. ehrenbergii (Muller&Henle, 1841)

参考文献[編集]

  1. ^ a b Marshall et al (2006). Manta birostris. 2006. IUCN Red List of Threatened Species. IUCN 2006. www.iucnredlist.org. Retrieved on 29 August 2007.
  2. ^ 魚類の中では、シロワニと並んで最も数が少ない。
  3. ^ [1]
  4. ^ Andrea Ferrari,Antonella Ferrari、『サメ・ガイドブック』、阪急コミュニケーションズ、2008年、p197
  5. ^ 沖縄美ら海水族館、海遊館、エプソン 品川アクアスタジアムで2012年4月現在飼育されている種は「オニイトマキエイ」ではなく「ナンヨウマンタ」である。
  6. ^ 沖縄美ら海水族館http://oki-churaumi.jp/book/board?id=511
  7. ^ 海遊館http://www.kaiyukan.com/topics/2010/08/topic_000705.html
  8. ^ 2009年12月、研究者らによって従前、和名で「オニイトマキエイ」と呼ばれていた種には2種が存在する事を認める研究論文が発表され、それぞれの種に「Manta birostris」、「Manta alfredi」の学名が与えられた。これを受け、沖縄美ら海水族館、海遊館がそれぞれ飼育固体について再調査した結果、飼育している種は「Manta alfredi」と判明し、この種の和名に「ナンヨウマンタ」を用いる事になった。従前から「オニイトマキエイ」と呼ばれていた種は学名「Manta birostris」の方であり、沖縄美ら海水族館、海遊館で飼育している種とは異なる種である事になった。
  9. ^ Berrin, Katherine & Larco Museum. The Spirit of Ancient Peru:Treasures from the Museo Arqueológico Rafael Larco Herrera. New York: Thames & Hudson, 1997.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]