イソノキ

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イソノキ
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ類 rosids
: バラ目 Rosales
: クロウメモドキ科 Rhamnaceae
: イソノキ属 Frangula
: イソノキ F. crenata
学名
Frangula crenata (Siebold et Zucc.) Miq. (1867)[1]
シノニム
和名
イソノキ(磯の木)

イソノキ(磯の木[7]学名: Frangula crenata)とは、クロウメモドキ科イソノキ属落葉低木である。和名の由来は、多くは湿地を好み、根元が水に浸かるような場所に生えるので「磯の木」と名付けられたといわれる[7]。別名、ホソバイソノキ[1]、ホソバクロウメ[1]中国名は長葉凍綠(黃藥、鈍齒鼠李)[1]

分布・生育地[編集]

日本朝鮮半島中国の東アジア地域に分布し、日本では本州四国九州に分布する[8][9][10]。山地や丘陵、山野のやや湿った場所や湿地に自生する[8][9][10]。群落区分としては、イヌツゲハンノキ群集の植生区分種である[11]

特徴[編集]

落葉広葉樹低木(夏緑低木[11])で、高さ0.25 - 3メートル (m) になる[11][8][12]樹皮は灰褐色で縦に浅く裂ける[7]。一年枝は赤褐色で、はじめのうち毛があるが生長するとなくなり、小皮目がある[12][7]。枝は刺にはならず、短枝も発達しない[9]互生し、長さ6 - 12センチメートル (cm) の長楕円形で側脈が目立ち、葉縁に細かい鋸歯がある[8]。葉裏に細かい毛が生えている[12]

花期は初夏(6 - 7月ごろ)[12][7]両性花[9]は黄緑色で花径は5ミリメートル (mm) ほど、萼片が5枚つき、花弁のように見える[8][12]雄蕊は5個つく[8]

果期は7 - 9月[9]果実核果で、直径6 mmほどある球形で、未熟果は緑色から赤紫色に変わり、熟すと黒紫色になる[8][9]。中に2 - 3個の核がある[12][13]。核は灰色、倒卵形で背面に丸みがあり、腹面は縦に溝がある[9][13]。核の長さは約5 mm、幅約4 mm、厚さ約2.3 mmで、大きさは地域によって差がある[13]

冬芽は互生し、裸芽で褐色の毛に覆われている[7]側芽はかなり小さいが、頂芽は大きくて先が反り気味になる[7]。葉痕は楕円形や腎形で突き出しており、維管束痕が3個ある[7]

利用[編集]

中国では、根や根皮を薬用にして、解毒駆虫および皮膚病に用いられる[10]。含まれる成分として、エモディンクロサロビンラムニンなどを含有する[10]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Frangula crenata (Siebold et Zucc.) Miq. イソノキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月9日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rhamnus crenata Siebold et Zucc. var. yakushimensis Makino ex Masam. イソノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月9日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rhamnus crenata Siebold et Zucc. var. stenophylla Koidz. イソノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月9日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rhamnus crenata Siebold et Zucc. イソノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月9日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Frangula crenata (Siebold et Zucc.) Miq. var. stenophylla (Koidz.) Hondai イソノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月9日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Frangula crenata (Siebold et Zucc.) Miq. var. acuminatifolia (Hayata) Hatus. イソノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年9月9日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 180.
  8. ^ a b c d e f g 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 255.
  9. ^ a b c d e f g 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2018, p. 175.
  10. ^ a b c d 堀田満ほか編 1989, p. 896.
  11. ^ a b c 宮脇昭ほか編 1994, p. 295.
  12. ^ a b c d e f 邑田仁・米倉浩司編 2013, p. 9.
  13. ^ a b c 中山至大・井之口希秀・南谷忠志 2002, pp. 398–399

参考文献[編集]

  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、180頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『増補改訂 草木の種子と果実:形態や大きさが一目でわかる734種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2018年9月20日、175頁。ISBN 978-4-416-51874-8 
  • 中山至大、井之口希秀、南谷忠志『日本植物種子図鑑』東北大学出版会(仙台)、2002年2月25日、398 - 399頁。ISBN 4-925085-29-8 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、255頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 掘田満ほか 編『世界有用植物事典』平凡社、1989年8月25日、896頁。ISBN 4-582-11505-5 
  • 宮脇昭ほか 編『日本植生便覧 改訂新版』至文堂、1994年10月10日、295頁。ISBN 9784784301478 
  • 邑田仁・米倉浩司 編『APG原色牧野植物大図鑑II 〔グミ科~セリ科〕』北隆館、2013年3月25日、9頁。ISBN 978-4-8326-0974-7