イカリソウ

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イカリソウ
Epimedium grandiflorum 2.jpg
イカリソウの花
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : モクレン亜綱 Magnoliidae
: キンポウゲ目 Ranunculales
: メギ科 Berberidaceae
: イカリソウ属 Epimedium
: イカリソウ E. grandiflorum
学名
Epimedium grandiflorum C.Morren
var. thunbergianum (Miq.) Nakai (1944)
英名
barrenwort、bishop's hat、fairy wings、horny goatweed

イカリソウ(碇草、錨草 Epimedium grandiflorum var. thunbergianum)はメギ科イカリソウ属 の落葉多年草。地方によって、カグラバナヨメトリグサともよばれる[1]。中国植物名は淫羊藿(いんようかく)[1]

特徴[編集]

日本の東北地方南部より南の太平洋側と四国など各地の丘陵や山裾の雑木林など山野に分布し、樹陰に自生する[2]。イカリソウ属は25種ほどがアジアから南ヨーロッパにかけて分布する。英語名はbarrenwort、bishop's hat、fairy wings、horny goatweedなど。

春の4月から5月にかけ、吊り下がった薄紅紫色のが咲き、4枚の花弁が、中に蜜をためる距を突出し、ちょうど船の錨のような形をしているためこの名がある[1][2]。 根茎は横にはって多数のひげ根を出す[3]。数本の茎を出し、茎部には鱗片がある[3]。根出葉には長い葉柄がつき、2回3出複葉である[3]の先が3本の葉柄に分かれ、それぞれに3枚の小葉がつくため、三枝九葉草(さんしくようそう)の別名がある[2][注釈 1]。小葉は全体が卵形で、先が尖って基部は心臓型をしており、葉縁に刺毛状の細かい鋸歯がある[3]

園芸用や薬用に栽培されることもある。浅根性で乾燥に弱く、半日陰の肥沃土を好む性質があり、繁殖は秋から初冬にかけて株分けにより行われる[3]

利用[編集]

生薬[編集]

薬効は、インポテンツ(陰萎)、腰痛のほか[1]、補精、強壮、鎮静ヒステリーに効用があるとされる[4]

全草は淫羊霍(いんようかく、正確には淫羊藿)という生薬精力剤として有名である[5]。淫羊霍とは、5 - 6月頃の開花期に茎葉を刈り取って天日干しにしたもので、市場に流通している淫羊霍は、イカリソウの他にも、トキワイカリソウキバナイカリソウ、海外品のホザキノイカリソウ(ホザキイカリソウ)も同様に使われる[1][2]。本来の淫羊霍は中国原産の同属のホザキノイカリソウ E. sagittatum (Sieb. et Zucc.) Maxim.(常緑で花は淡黄色)で[3]、名はヒツジがこれを食べて精力絶倫になったという伝説による[注釈 2]。ホザキノイカリソウの淫羊霍に対して、イカリソウの方を和淫羊霍とすることもある。

イカリソウの茎葉には有効成分としてはイカリインというフラボノイド配糖体と、微量のマグノフィリンというアルカロイドなどが含まれ、苦味の成分ともなっている[2]。充血を来す作用があり、尿の出を良くする利尿作用もあるとされている[2]

イカリインには実際に次のような効果が示されている。

これらにより平滑筋が弛緩し陰茎などの血流が増えると考えられる。PDE-5の阻害は(かなり弱いが)バイアグラと共通の作用である。マウスを用いた実験で、男性ホルモン様の作用が報告されている[2]

民間利用では、滋養強壮に淫羊霍を粗く刻み、1日量5 - 10グラムを約500 - 600 ccの水で30分ほど半量になるまで煎じて、食間に3回に分けて温服される[1][2][3]。また低血圧、不眠症に焼酎(ホワイトリカー)1.8リットルあたり淫羊霍70 - 150グラムを入れて寝かせた後、就寝前の滋養薬酒として1日1回お猪口1杯程度を目安に、水や湯で割って飲用もされる[1][2]。体を温める作用があることから、手足の冷え症や、冷えから来る腰痛症、下半身が疲れやすい人のインポテンツによいとされる一方で、火照りやすい人やのぼせやすい人への服用は禁忌である[1]

日本の近縁種[編集]

近縁種に常緑のトキワイカリソウ、花が淡黄色のキバナイカリソウなどがある。日本海側に自生するトキワイカリソウは、常緑で冬季に落葉しない[2]という特徴があり、常盤(ときわ)は常緑の意味合いがある。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 本来、「三枝九葉草」は中国における呼び名で、ホザキノイカリソウに対する中国植物名[1]
  2. ^ 中国の『本草綱目』(1578年)に、「西川(せいせん、地名)に淫羊(発情した羊)あり、この藿(かく、花蕾)を食べて、一日百編交合す。」と記され、これ故に淫羊藿と名付けたとされる[2]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i 貝津好孝 1995.
  2. ^ a b c d e f g h i j k 田中孝治 1995.
  3. ^ a b c d e f g 馬場篤 1996.
  4. ^ 馬場篤 2016.
  5. ^ 本山荻舟『飲食事典』平凡社、1958年12月25日、28頁。

参考文献[編集]

  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈フィールド・ガイドシリーズ 16〉、1995年7月20日、204頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、62頁。ISBN 4-06-195372-9
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光舎、1996年9月27日、20頁。ISBN 4-416-49618-4
  • Liu WJ et al. Effects of icariin on erectile function and expression of nitric oxide synthase isoforms in castrated rats. Asian J Androl. 2005 Dec;7(4):381-8.
  • Xin ZC et al. Effects of icariin on cGMP-specific PDE5 and cAMP-specific PDE4 activities. Asian J Androl. 2003 Mar;5(1):15-8.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]