立直
立直(リーチ)は、麻雀において、聴牌(テンパイ)を宣言する行為、および、その宣言によって成立する役である。1翻。
立直の宣言を行うことを、「立直する」「立直をかける」のように表現する。
立直の宣言を行う際には、場に千点棒を出す(供託する)が、この点棒を立直棒(リーチぼう)と呼ぶ。
宣言後は手牌を変えることができないなどの制限が付くが、和了したときに立直という役が上乗せされるため、点数は高くなる。また、一発や裏ドラなどのメリットがあるため、現代の麻雀では少しでも聴牌の確率・スピード(牌効率という)を高めて立直をかけようとする傾向が強い。
条件
- 聴牌していること。
- 門前であること。すなわち、チー、ポン、明槓をしていないこと。
- トビ有りのルールならば、点棒を最低でも1000点持っていること。つまり立直棒として1000点を供託したときにハコを割ってしまうような場合、立直はできない。
- 壁牌(山)の残りが王牌を除いて4枚(三人麻雀では3枚)以上あること。すなわち立直を宣言した後で少なくとも1回の自摸が残されているということ。ただし、鳴きや暗槓が入って結果的に自摸の機会なく流局したとしてもペナルティはない。
後節#補足の節も参照のこと。
手順
- 打牌する直前に「リーチ」と明瞭に発声する。
- 河に牌を捨てる。このとき、牌を横向きに置く。
- 立直棒を供託する(卓の中央に置く)。
この手順を満たすと、立直の宣言が成立する。仮にリーチ宣言牌がポン、チーまたは明カンされた場合、プレイはもちろん続行するが、リーチが成立した印として次巡の捨て牌を横向きに置く。なお、リーチ宣言牌で他のプレイヤーがロン和了した場合は、立直は不成立となり、立直棒を供託しなくていい。
牌姿の例
上の牌姿はで和了の形であるが、なにもしない状態では役が無いため、現行の一翻縛りのルールでは他家の打牌で和了ることができない(ツモれば門前清自摸和という役で和了れる)。しかし立直をすれば、立直という役がつくため他家の捨て牌でも和了ることができる。立直し、かつ自身のツモ牌で和了った場合、少なくとも立直・門前清自摸和と二つの役が複合する。ただし、立直をかけた後は、手牌を変えることが許されないため、手変りの可能性を捨てることにもなる。例えばこの牌姿ではをツモることで一盃口に手変りする。を暗刻にすることで役牌という和了役を付けつつ待ち変えすることもできる。をツモることで待ちに受け変えることもできる。こうした手変りの可能性を考慮すれば、立直のタイミングには注意が必要である。
制約
立直を宣言した後、そのプレイヤーには次のような制約が課せられる。
- 打牌の選択(手牌の入れ替え)ができない。つまり、和了する場合と後述の暗槓する場合を除いて、自摸した牌をそのまま捨てなければならない。
- 他のプレイヤーが和了牌を捨てたとき、もしくは和了牌を自摸した時に、故意・過失を問わず和了しなかった場合、その後は振聴(フリテン)扱いとなる。
- どのプレイヤーも和了できずに流局(荒牌)した場合、他のプレイヤーに手牌を開示して、聴牌していたことを明示する必要がある。もし、聴牌していなかったら誤リーチとしてチョンボとなる(テンパイしていても手牌を開示したくない場合、チョンボを宣言すれば開示しなくても良いルールもある。また、団体によってはノーテン時に手牌を開示する必要が無く、不聴立直が禁止されていないルールもある)。
- チー・ポン・ミンカンができない。暗槓については認められるが、その場合でも、待ちが変わる場合や、面子構成が変わる場合のカンは認められない[注釈 1]。(団体やハウスによっては、立直後の暗槓が禁止されている場合もある)
リーチ後の暗槓が認められないケース
これらリーチ後の不正な暗槓は、和了ないし流局によって手牌が開示されて発覚した時点でチョンボとなる。したがって、手牌の開示のときに不正な暗槓が無かったかをチェックする必要がある。ただし、リーチ後の不正な暗槓があったとしても、ほかのプレイヤーが和了した場合は一般的に手牌を開示する義務はないため、チョンボにはならず和了者の和了が有効となる。なお、巷間の俗流ルールでは、これら不正とされるリーチ後の暗槓を認めている場合がある。他の細目も含め対局前にあらかじめ確認しておくのが望ましい。
メリット
主なメリットは点数の向上である。
- 立直を宣言するだけで1翻の役が成立する。満貫未満の手であれば点数を2倍にすることに相当する。
- 他の役が成立していなくても(立直という役が付くので)和了できるようになる。
- 立直をかけて一巡以内に和了した場合には、さらに一発という1翻役が成立する。詳細は一発を参照のこと。
- 立直をかけて和了した場合、ドラ表示牌の下の牌もドラ表示牌として扱われる。これを裏ドラという。同様に槓ドラの下の牌もドラ表示牌(槓ウラ)とするルールも一般的である。裏ドラ(および槓ウラ)により、さらなる点数の上乗せが期待できる。ただし、和了するまでどの牌が裏ドラ(槓ウラ)になっているかはわからないため、偶然性が高い。
- 聴牌していることを周知するため、対戦相手はそれを踏まえて打牌をする事が多く、オリに回る(和了することを諦めて安全牌を切る)ことも少なくない。そのため、相手の和了の可能性を少なくすることができる。
デメリット
主なデメリットは、自分が聴牌であることを周知させてしまう点と、打牌の選択ができなくなる点である。
- 聴牌していることを周知するため、対戦相手の打牌が慎重になり、ロン和了の可能性が低くなる。ダマテンの場合なら容易に和了できていたはずが、立直したことによって和了しにくくなるといったケースも少なくない。
- 打牌の選択ができないため、危険牌でも捨てなければならない。したがって、放銃の危険性が高まる。いわゆる「降りる」ことができない。
- 供託した1000点(立直棒)は、自分が和了しなかった場合には戻ってこないため、終盤などで順位争いに影響を及ぼすことがある。
- リーチ後にロン牌を見逃すとフリテン扱いになり、その後はロン和了ができなくなるため、特定の待ち牌で和了したい場合や特定の相手からロン和了したい場合には不利になる可能性もある。ただしオンライン麻雀等のコンピューター麻雀においては基本的に相手が当たり牌を捨てた時に和了するしないの選択の機会が自動的に発生したり、フリテンの時はロン和了ができないようになるソフトもあるなど、和了牌の意図しない見逃しやフリテンチョンボの発生が起こりにくくなっている。
- リーチをすると手牌を一切変更できなくなるため、現在よりも点数の高い手役を作ったり、和了しやすい待ちに変えたりする機会がなくなる。
立直棒の取り扱い
立直したプレイヤーが供託した1000点(立直棒)は、その局に和了した者(立直した本人とは限らない)が取得する。なお、流局した場合は次の局に繰り越される(次の局に和了した者が取得する)。
補足
- 4人全員が立直をかけた場合、四家立直として流局となる(四家立直による途中流局を認めないルールもあり、その場合は続行される)。
- 一般的には少なくともツモが残り1回残っていなければ立直できないが、ルールによっては、王牌を除く壁牌が残り3枚以下の状態(つまり残りのツモが残されていない巡目)での立直を認めることもある。
- トビ有りのルールの場合、残り1000点未満の状態からは立直ができない。立直した時点でハコを割ってしまうからである。残りちょうど1000点の場合に立直が掛けられるか否かについては扱いがいくつかに分かれる。「ちょうど0点は続行、マイナスになった時点でトビ」とする取り決めなら、残り1000点からでも立直できる。「ちょうど0点はトビ」とする取り決めなら、残り1000点からは立直できない(その場合は残り1100点以上持っていなければ立直できないということになる)。ただし「ちょうど0点はトビ」のルールでも、立直をかけて一時的に0点になるのを認めているルールもある。その場合、立直を掛けて残り0点になり、そのまま流局して4人テンパイであればその時点でトビとなる[1][2]。
- 10000点棒や5000点棒しかない場合、それを立直棒とするが、他のプレイヤーが1000点棒に両替するのが一般的である(このとき、100点棒を10本出すことで立直棒とするプレイヤーもいる)。このような立直はマナー違反であるため、点棒収受時に手元に立直棒が残るようにしておくことが望ましい。
- ルールに基づいたリーチであるか確認するため、立直をかけた本人以外が和了した場合にも手牌を開示させるというルールもある。
- 立直後に理牌をすると、不正の疑いをかけられる可能性があるため、理牌を済ませてから立直を宣言するのが望ましい。
- コンピューターゲームにおいては立直をかけるとBGMが緊迫したものに変化するものなどの演出が施されることもある。
立直のバリエーション
引っかけ立直
通常の両面待ちの場合、捨て牌に4があれば14待ちと47待ちは無い。同じく5が捨てられていれば、25待ちも58待ちも無く、6が捨てられていれば36待ちも69待ちも無い。従って、4に対する1と7、5に対する2と8、6に対する3と9は、両面待ちに関しては安全であると言える。こうした通念を逆手にとって、4に対する1と7、5に対する2と8、6に対する3と9をカンチャン・シャンポン・単騎で待ちにすることをスジ待ちと言い、スジで待つリーチを引っかけ立直という。
振聴立直
フリテンの状態でかける立直をフリテン立直という。基本的には通常のリーチと同じ扱いだが、フリテンであるためにロン和了ができずツモで和了るしかない。フリテン立直を敢行する例としては、以下の例が考えられる。
なお、フリテン立直自体を禁止しているルールもある。その場合、流局もしくはツモ和了など発覚した時点でチョンボとなる。
- この場合、和了役はツモのみだが、点棒状況・局の進み具合から手牌のを捨ててフリテン立直を敢行する事も考えられる。成功して高目を引けば倍満まで見える。
ダブル立直
最初の打牌で立直することをダブル立直といい、1翻増しの2翻となる。ただし、その前にポン、チー、明カンがあった場合は、第一打牌で立直してもダブル立直とは認められない。漢字で二重立直とも書き、一般的には略して「ダブリー」と呼ばれる。第一ツモの時点で少なくとも聴牌していなければならないため、発生頻度は低い。
オープン立直
オープンリーチは、リーチする際に手牌を他家に公開することにより、通常のリーチを1翻増しとするローカルルールである。通常のリーチ1翻+オープン1飜で2翻役として扱われる。開立直と漢字で書いて「オープンリーチ」と読ませる表記になっていることもある。また、略して「プンリー」と呼ばれることもある。
手牌の待ちの部分あるいは手牌全体を公開することによって、和了牌が何であるかを他家に明示した状態で立直する。オープンするか否かは打ち手の自由だが、多面張でテンパイした場合など、ツモ和了の公算が大きい場合は、通常のリーチではなくオープンリーチにしたほうが期待値が高くなる。なお、通常のリーチと同じく、オープンリーチ以後は手牌の形を変えることが出来ない。
オープンリーチを受けた他家は、ルール上、オープンリーチの和了牌を場に捨てることができない。手牌すべてが当たり牌になるなどしてやむを得ずオープンリーチに振り込んだ場合や、あるいは不注意からオープンリーチの当たり牌を切ってしまった場合などは、オープンリーチの手牌の中身に関わらず(つまりたとえオープンリーチのみの手牌であっても)役満払いとなる。一方、別のリーチ者がオープンリーチに振り込んだ場合は、役満払いは適用されず、オープンリーチは2飜として計算される。
(例)オープンリーチに振り込まざるを得ないケースの牌姿例
テンパイ形と待ち牌が見えているので、オープンリーチありのルールでは、リーチ後のゲームバランスが通常のルールとは大きく異なってくる。通常のルールなら、リーチに対して切りづらい危険牌は複数ある。しかしオープンリーチに対しては、分かっている当たり牌を切りさえしなければそれでよく、当たり牌を余らせさえしなければ、回し打ちをする必要も降りる必要もない。加えて上の牌姿例のような惨事が発生する可能性もあり、かつその可能性は無視できるほど小さいものではない。そのためオープンリーチは、数あるローカル役の中でも最も大きくゲームの性質を変えてしまう役であると言える。
- オープンリーチする理由
- 多面待ちでツモ和了の公算が大きい場合など、さらなる翻数アップを狙う。ツモの複合も考えれば、手役+3翻となる。
- フリテンなのでツモるしかない(ただし、フリテンの時はオープンできないルールもある)
- 上の牌姿例のように3副露もしくは4副露した者がいて、その者からのロン和了が期待できる(成功すれば前述の通り役満払いになる)
- 先にリーチしている者がいて、その者からの直撃ロン和了が期待できる(点棒状況的にその者から直撃したい場合など)
- オープンリーチに関する細目やレアケースなど
- 手牌がすべて当たり牌になってオープンリーチへの振り込みが確定してしまった者が、故意にチョンボをして損失を満貫分に抑えようとするのを回避するため、オープンリーチありのルールでは故意のチョンボを満貫払いではなく役満払いにすることがある。
- フリテンのオープンリーチに対しては、他家はその和了牌を場に捨てることができる。これは、オープンリーチの和了牌を捨ててはいけないという制約よりも、フリテンの制約のほうが優先されるためである。
- ダブル立直をオープンした場合、オープンとダブルの両方の効果が加算される。「オープン」+「ダブル」+「立直」で3飜とするのが「1飜増し」の定義通りだが、オープンリーチのダブル(2倍)で4飜とすることもあるようである。
- 国士無双の十三面待ちや九蓮宝燈の九面待ちなど役満の手をオープンリーチして振り込みが発生した場合、手牌の分とオープンへの振り込みの分を複合させてダブル役満とするか否かは、取り決め次第である。また、オープンリーチに手役やドラ・裏ドラ等がのりまくるなどして数え役満になったケースでも、手役分と振り込み分を両方カウントしてダブル役満とするか否かは、取り決め次第である。
- オープンリーチをする以前からリーチをしていた者の振込みは通常払いとすることがある。また、オープンリーチ以後にリーチをした者の振込みを、通常払いとするルールと役満払いとするルールの両方がある。これに関しても取り決め次第である。
即立直
即立直とは、聴牌した直後に立直すること。一般的には「即リー」と呼ばれる。
即リーは、少しでも早く立直することによって、相手に圧力をかける効果がある反面、手変わりの可能性を捨てることになるため、必ずしも有利な作戦とはいえない。より良い待ちや高い手役に変化する可能性が残されている場合、聴牌しても即リーせずに様子を見る場合も多い。一方、待ちや手役が変わる可能性が少ない場合や、立直しか役がなく、立直をかけないと和了できない場合は、聴牌したと同時に立直をかけることも多い。
追っかけ立直
追っかけ立直とは、他家が立直している状態で立直すること。
追っかけ立直のメリットは、先に立直をしている者は降りるという選択肢がない点である。したがって、追っかけ立直をすることで、先に立直した者を強制的に戦いに参加させることができる。先に立直をした者よりも自分の方が待ちが広い、または手が高いと予想される場合は、有力な戦法となる。その反面、先に立直をした相手は降りることがないため、必然的に乱戦となる。したがって、自分の手が安い場合や待ちが狭い場合は、メリットよりもデメリットの方が大きくなる可能性がある。
歴史
現在の中国麻雀は立直という役を採用していない。しかし立直の起源は中国の東北地方、かつての満州にあるという説がある[3]。関東軍の将校らの間で遊ばれていた満州麻雀のリーチのルールが、戦後、満州からの引揚者によって本土に伝えられたのだという[3][4]。さらに現在の立直は、1953年に日本麻雀連盟の天野大三が提唱し、世間に広まった[5]。立直を初めて成文化したこの「報知ルール」の制定は、戦後の麻雀ルールに大きな影響を与えたと言われる[6]。なお、リーチの語源が英語のreachであるという話は、デタラメあるいはこじ付けの類であるという[4]。
「立直」の英語表記には日本語のローマ字による「riichi」[7]やピンインによる「li-zhi」が用いられるが、団体によっては「call」(宣言の意)と表記することもある。
本来、立直という役は、現在のダブル立直と同じものであった[4]。つまり、局の最初の打牌の時にしか宣言できないものであった。時代が下るにつれて、局の最初の打牌でなくとも宣言できるというルールが考案されたが、当初はそれを「途中リーチ」と呼んで本来の立直(現在のダブル立直)と区別していた。この「途中リーチ」のルールが戦後急速に広まった結果、途中リーチのほうを「立直」と呼ぶようになり、それと区別するためにダブル立直という語が生まれた。
なお、この「途中リーチ」があまりにも特徴的であったため、当時普及しつつあったルールを総称してリーチ麻雀と呼ぶようになり、これがほぼそのまま現在のルールに受け継がれている。
転用
「立直」の語は以下に転用されている。
- パチンコで、図柄の変動によって大当たりを期待させるアクションを「リーチ」と呼ぶ。リーチ (パチンコ)を参照。
- パチスロでは、ボーナスが成立した時のみ特別な制御で出現する出目を、リーチ目という。
- ビンゴゲームで、ある1つのマスに印がつけば1列に印がそろうようになる状態を「リーチ」と呼ぶ。リーチ (ゲーム)を参照。
- その他「落第にリーチがかかった」などと、ある状態が達成される寸前であることを「リーチ」と呼ぶ。
いずれも普通カタカナで書かれる。
脚注
注釈
出典
- ^ 雀龍門 - 対局ルール 2010-05-09閲覧
- ^ 麻雀格闘倶楽部 - 対局ルール 2010-05-09閲覧
- ^ a b 浅見了. “ハルピン麻雀”. 2011年1月12日閲覧。
- ^ a b c 浅見了 (2004年2月10日). “立直の意味”. 2011年1月12日閲覧。
- ^ 「麻雀新撰組 in the 70s'」『近代麻雀』第30巻第7号、竹書房、2008年3月、14ページ。
- ^ 井出洋介監修『平成版 麻雀新報知ルール』報知新聞社、1997年、ISBN 9784831901187、p22。
- ^ ヨーロッパ麻雀協会. “Riichi Rules for Japanese Mahjong”. 2011年1月12日閲覧。2008年にヨーロッパ麻雀協会の主催で開催された日本式リーチ麻雀の大会「2008ヨーロッパリーチ選手権」の公式ルール。Riichiの表記が使われている。