鬼子母神
鬼子母神(きしもじん/きしもしん)、梵: हारिती [Hārītī]、ハーリティー)は、仏教を守護するとされる夜叉で女神の一尊。梵名ハーリティーを音写した訶梨帝母(かりていも)とも言う[1]。
三昧耶形は吉祥果(ザクロの実。種が多いことから多産・豊穣の象徴)。種子(種字)はウーン(huuM)。
概説
夜叉毘沙門天(クベーラ)の部下の武将般闍迦(パンチーカ、散支夜叉、半支迦薬叉王[1])の妻で、500人(一説には千人[2]または1万人[3])の子の母でありながら、常に他人の子を捕えて食べてしまうため、釈迦は彼女が最も愛していた末子・愛奴児(ピンガーラ、プリンヤンカラ 嬪伽羅、氷羯羅天、畢哩孕迦[1])を隠して子を失う母親の苦しみを悟らせ、仏教に帰依させた。以後、仏法の護法善神となり、子供と安産の守り神となった[3]。盗難除けの守護とも言われる。
インドでは、とりわけ子授け、安産、子育ての神として祀られ、日本でも密教の盛行に伴い、小児の息災や福徳を求めて、鬼子母神を本尊とする訶梨帝母法が修せられたり、上層貴族の間では、安産を願って訶梨帝母像を祀り、訶梨帝母法を修している。
また、法華経では十羅刹女(じゅうらせつにょ)とともに鬼子母神が、法華信奉者の擁護と法華信仰弘通を妨げる者の処罰を誓っていることから、日蓮はこれに基づき文字で表現した法華曼荼羅に鬼子母神の号を連ね、鬼子母神と十羅刹女に母子の関係を設定している。このことが、法華曼荼羅の諸尊の彫刻化や絵像化が進むなかで、法華信奉者の守護神としての鬼子母神の単独表現の元となった。
その像は天女のような姿をし、子供を1人(末子の愛好とされる)抱き、右手には吉祥果(ザクロ)を持つ。吉祥果は人肉の味がするため、鬼子母神が他人の子を食べるのを止めさせるために釈迦が代わりに与えたから、とも言われるが、これは後になって付け加えられた話である。
鬼子母神を祀る寺院
鬼子母神は、法華経の守護神として日蓮宗・法華宗の寺院で祀られることが多く、「恐れ入谷の鬼子母神」で知られる、東京都台東区入谷の鬼子母神(真源寺)、東京都豊島区雑司が谷の法明寺鬼子母神堂、千葉県市川市の遠寿院(法華経寺塔頭)の鬼子母神が有名である(江戸三大鬼子母神)。
縁日は毎月8の付く日(8日,18日,28日)である。また、お会式に併せて大祭を行う寺もある。なお、「鬼子母神」の「鬼」の表記について、寺院によっては、第一画目の点がない字を用いる場合がある。これは、鬼子母神が釈尊に説教され改心し、角を外した、という理由による。参照
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鬼子母神像(鎌倉時代)
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法明寺鬼子母神堂(東京都豊島区)
西遊記
西遊記の雑劇である元曲の『雜劇·楊景賢·西遊記·第三本[4]』第十二折鬼母皈依、『鬼子母掲鉢記』、『西天取経』(呉昌齢)第12齣の鬼母帰依などでは愛奴児が三蔵法師を捕まえており、そこに登場した釈迦如来に帰依する。雜劇·楊景賢·西遊記·第三本では愛奴児の別称が紅孩児となっている。明以降の西遊記では紅孩児の回で観音菩薩のところで一箇所取次ぎに顔をだすのみになった。