随筆

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随筆(ずいひつ)とは、文学における一形式で、筆者の体験読書などから得た知識をもとに、それに対する感想思索思想をまとめた散文である。随想(ずいそう)、エッセイエッセー: essai[1], : essay[1])などともいう。「essai」の原義は「試み」であり、「試論(試みの論文)」という意味を経て文学ジャンルとなった。

ミシェル・ド・モンテーニュの『エセー』(1580年)がこのジャンル先駆者であり、欧米においては綿密な思索を基にした論文的なスタイルを念頭に置いてこの語を用いることがあるが、日本においては後述する江戸時代後期の日記的随筆のイメージもあって、もうすこし気楽な漫筆・漫文のスタイルを指して用いることがある。

著名な随筆文

日本における随筆の起源10世紀末に清少納言によって書かれた『枕草子』であるとされる[2]。枕草子における日常的風景に対する鋭い観察眼は「をかし」という言葉象徴される。その後も、鴨長明方丈記』や吉田兼好(兼好法師)徒然草』などの随筆作品が登場した[2]

江戸時代に入ると、文学的随筆だけでなく、考証や見聞録といった随筆が生まれた[2]。近世の随筆について、中村幸彦は『四庫全書』「雑家類」に基づき、学問を随筆風に述べる「雑考」(佐藤一斎言志四録』など)、思想的随筆を指す「雑説」(室鳩巣駿台雑話』など)、研究的考証的随筆を指す「雑品」(伴信友といった国学者の考証など)、先人の書物や見聞を集めた「雑纂」、諸書を集めた「雑編」(松浦静山甲子夜話』など)の5項目の分類を提示した[2]。この時代の代表的な随筆として、『玉勝間』(本居宣長)、『花月双紙』(松平定信)、『折たく柴の記』(新井白石)、『塩尻』(天野信景)などがある。

日本語以外の文化圏で日本語の「随筆」に相当する「Essay」の萌芽は古代ローマキケロセネカプルタルコスなどの作品に見ることができるが、本格的にこのような文学形態を創始したのはフランス思想家ミシェル・ド・モンテーニュであるとされる。フランス語で「試み」を意味する著書『エセー』(essai)において、身辺における様々な事物の考察を通し、自己の内面の探求を試みた。

出典

  1. ^ a b 新村出編『広辞苑』「エッセー」による直接の伝来元
  2. ^ a b c d 日本古典文学大辞典編集委員会『日本古典文学大辞典 第2巻』岩波書店、1984年1月、528-530頁。 

関連項目