英雄称号

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英雄称号(えいゆうしょうごう)とは、国家の英雄(功労者)に対して授与される栄誉称号[1]。主に共産圏の国において制定されている。後述のとおり、必ずしも普通名詞としての「英雄」(チンギス・ハンナポレオンのような)に授与されるとは限らず、ソ連邦英雄などは1万人以上に称号が授与されている。

主な英雄称号

旧・ソビエト連邦

ソビエト社会主義共和国連邦では、「ソビエト連邦英雄」、「社会主義労働英雄」の称号を定めていたほか、10人の子を産んだ母親には「母親英雄」の称号が贈られた。また、国家建設や防衛に大きな功労をあげた都市に対しては「英雄都市」の称号を授与している。ソ連時代にはゴルバチョフ連邦大統領からクーデターを阻止する上で功績のあったエリツィンロシア共和国大統領に英雄称号贈呈の打診があったが、エリツィンはこれを辞退している[2]ソ連崩壊後、「ソビエト連邦英雄」称号は「ロシア連邦英雄」称号として制度が持続され、チェチェン紛争従軍兵士などに授与されているほか、ウクライナベラルーシカザフスタンウズベキスタンアゼルバイジャンなどの旧ソ連諸国でも同様の英雄称号が制定されている。

中華人民共和国

中華人民共和国においても英雄称号が定められている。朝鮮戦争時、功績のあった中国人民志願軍軍人には、戦闘英雄称号(特級、一級、二級)が授与された。2008年には四川大地震にて、被災した乳児に授乳した女性警察官 蒋暁娟巡査に英雄称号が贈られている。

旧・モンゴル人民共和国

モンゴル人民共和国(現・モンゴル国)においても、ソビエト連邦と同様に「モンゴル人民共和国英雄称号」、「社会主義労働英雄称号」が定められていた。

朝鮮民主主義人民共和国

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)では、英雄称号は最高称号と位置づけられている。下位には、人民称号と功勲称号がある。同国の英雄称号には等級があり、最高位は1950年6月30日に制定された「朝鮮民主主義人民共和国共和国英雄称号」であり、社会主義体制の発展に寄与した者へ授与される。これに次ぐ位が1951年7月17日に制定された「朝鮮民主主義人民共和国労力英雄称号」で、経済建設などで卓越し、功労を立てた者などに授与される。

ちなみに「朝鮮民主主義人民共和国共和国英雄称号」および「労力英雄称号」を授与される際、同時に国旗勳章1級も与えられる。また、2回の授与の場合は「二重英雄」、3回の授与の場合は「三重英雄」と称される。この「三重英雄」には同国主席の金日成、その後継の総書記である金正日がいる。 在日朝鮮人3世である、元プロボクサーで元WBCスーパーフライ級世界チャンピオン徳山昌守も朝鮮民主主義人民共和国労力英雄の称号を授与されている。

具体的な授与例としては、1995年米軍ヘリを撃墜した朝鮮人民軍士官に英雄称号が授与されたほか、2013年には朝鮮労働党首脳部を不意の状況から危機を救ったとして同国の女性交通警察官リ・ギョンシムに英雄称号が授与された。但し、この称号授与の理由となった、党幹部を救ったという事績は朝鮮中央放送による発表のみでその全貌については謎に包まれている[3]

ベトナム社会主義共和国

ベトナム社会主義共和国では、武勲を対象とした「人民武装力量英雄vi:Anh hùng lực lượng vũ trang nhân dân)称号」、「ベトナム労働英雄(Anh hùng Lao động Việt Nam)称号」が定められている。

旧・ドイツ民主共和国

ドイツ民主共和国(東ドイツ)では、最高級の栄誉称号としてドイツ民主共和国英雄(Held der DDR)の称号が定められていた。同国の指導者だったヴィリー・シュトフエーリッヒ・ホーネッカーの他、ソ連の共産党書記レオニード・ブレジネフに対して、3度贈られたとする記録がある。また、ドイツ人初の宇宙飛行士となったジークムント・イェーンがソユーズ29号で帰還を果たすと同乗していたヴァレリー・ブィコフスキーなどのロシア人宇宙飛行士に対しても送られた。

ブルガリア人民共和国

上記、ソ連のレオニード・ブレジネフに対して、ブルガリア人民共和国英雄の称号が3度贈られている。

チェコスロバキア社会主義共和国

上記、ソ連のレオニード・ブレジネフに対して、チェコスロバキア社会主義共和国英雄の称号が3度贈られている。

キューバ共和国

2001年、キューバ人民権力全国会議はアメリカで親カストロ派として活動しアメリカからスパイとして逮捕されたヘラルド・エルナンデス・ノルデロら5名に共和国英雄の称号を授与した。

カザフスタン共和国

カザフスタンでは、1993年に「人民英雄」(Халық қаһарманы)称号が制定された。制度はソ連邦英雄とほぼ同じで、人民英雄の称号と共に、金星勲章と「祖国」(Отан)勲章が授与される。

旧ユーゴスラビア

ユーゴスラビアでも国家への功労ある者に英雄称号が授与されていたが、1999年に国連軍の空爆を受けた際、死傷者数を秘匿するために、従軍中に戦死した者への称号追贈を停止したことがメディアでも報じられた[1]

トルクメニスタン

サパルムラト・ニヤゾフ初代大統領が「トルクメニスタン英雄」称号を6回受賞。

脚注

  1. ^ a b 1999年の読売新聞の報道では、旧ユーゴスラビアで戦死者に対する「人民英雄」の栄誉称号追贈を停止したことを報じており、英雄称号を栄誉称号として表現している。「「ユーゴ軍死者は1800人」空爆開始後コソボ駐留軍が初言及」『読売新聞』1999年6月3日東京朝刊7頁参照。
  2. ^ 「「英雄称号はいらない!」 エリツィン氏がゴ大統領の申し出を拒否」『読売新聞』1991年8月26日東京夕刊2頁参照。
  3. ^ 「北朝鮮「英雄」謎の功績」『読売新聞』2013年5月11日東京朝刊7頁参照。

参照文献

  • 『読売新聞』1991年8月26日東京夕刊
  • 『読売新聞』1999年6月3日東京朝刊
  • 『読売新聞』2013年5月11日東京朝刊

関連項目