百戦百勝

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百戦百勝
働き一両 考え五両
著者 城山三郎
イラスト 上西康介(装丁)
発行日 1974年9月10日
発行元 日本経済新聞社
ジャンル 経済小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 上製本
ページ数 332
コード ISBN 4-532-09701-0
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百戦百勝』(ひゃくせんひゃくしょう:副題 働き一両 考え五両)は、城山三郎による長編小説。1973年秋から1974年夏にかけて、新潟日報徳島新聞北日本新聞をはじめとする地方紙数紙に連載されていた。

概要[編集]

春山豆二を主人公とする長編の経済小説である。

主な登場人物[編集]

春山 豆二
主人公。春山証券社長。
麻布三河台の邸宅に住む。愛車は大型のリンカーン
相撲取りのような大男。下り目と下り眉、大きな福耳の持ち主。丸刈りに近い銀髪頭は八分どおり禿げている。大食漢で、米の飯が大好き。昼食は決まってチャーハンを2人分食べる。
長男は夭折しているが、次男の豆次郎は春山証券の専務。三男の豆造は倉庫会社の社長。四男の豆四郎は海運会社の社長をそれぞれつとめている。
兜町での愛称は「春豆」。社内では、毎日決まった日課をこなしているので、「モノレール」というあだ名がつけられている。
正月から投資信託を売り歩くなど、商売熱心。会話において、「電話3分、お客5分」の例外を認めない。
戦前の米相場では、「売り方の英雄」として通っていた。用意は周到で粘り強い戦い方をする。
春山 冬子(旧姓 萩野)
豆二の妻。
いつも着物を着ている。
観察力と注意力に優れる。読書好き。を愛する。が嫌い。
女学生時代は川上貞奴を思わせる美貌だった。
友人の紹介で主人公と知り合う。
お嬢様育ちのせいかのんびりとした性格だが、芯が強い上に勘が鋭いため、主人公は頭が上がらない。
春山 修造
豆二の父。
越後上州の国境に近い山村で、農家を営む。息子2人、娘3人の子だくさん。
大きな蔵を三つも持つ代々の豪農だったが生糸相場で失敗し、わずかな桑畑と大豆小豆の畑、それに猫の額ほどの水田を所有するだけとなった。
人がよく、気のいい男だが、ちゃらんぽらんなところがある。
「まめに生き、まめに働く」という意味を込めて、主人公に豆二と名づける。また主人公に父・栄造から教わった、「働き一両、考え五両」の意味を伝えた。
お安
東京都日本橋のオフィス街にあるビルのオーナー兼管理人兼掃除婦。
灰色のざんばら髪で、こけた頬に歯のかけた口をもつ老婆。くたびれた羊羹色の着物。磨り減った下駄を履く。大阪弁を話す。
テレビの公開番組を見に行くのがただひとつの楽しみ。
自分が所有するビルエレベーターで遊んだり、他人の寿命や運命を勝手にトランプで占うなど、子供っぽい一面があるが、金銭に関しては独特の信念を持っている。
投資信託を売りに来た豆二に、「何かで震えあがったあと、最後には吉となる」と予言した。
増富 三六
相場師。修造の知人。日焼けをしているが皺が多く、不作の年の小豆のような顔をしている。小柄で、体重も主人公の半分ぐらいしかない。
米相場で勝利を収め、主人公を羨ましがらせるほどの大散財をした。
主人公の大きな耳をほめ、よく使えと助言した。
東京深川の米問屋「屋島商店」に、主人公を紹介した。
のちに石井定七軍団の一員として活躍する。相場での戦術は、主人公と正反対の買い専門。
鈴木 弁蔵
実業家。横浜肥料を手広く商っている。世間では「鈴弁」で通っている。
白髪のやせた老人。がっしりした顎を持つ。吉良上野介のようだ、と主人公に思われている。
深川の米問屋の小僧上がり。
増富三六の家で、株の相談に来ていたときに主人公と知り合う。
石井 定七
相場師。大阪の横堀に住み、「横堀将軍」のあだ名を持つ。
40歳半ば。がっしりとした濃く太い眉、柔道選手のようにつぶれた耳、への字に結んだ大きな口で、大入道を思わせる風貌。
大正10年の米相場で、圧倒的な資金力を背景に買い手に回った。
伊東 ハンニ(本名 松尾正直)
相場師。「黒頭巾」、「昭和の天一坊」の異名を持つ。
年齢、出生ともに不詳。名古屋で新聞記者をしている中、相場の世界に入った。
第一次世界大戦直後の企業勃興期に幽霊会社を設立し、出資者を公募。払込金を集めたところで全額懐に入れ、消息を絶つ。
巧妙な手口で相場を支配しようと画策する。

関連書籍[編集]

関連項目[編集]