生存権
生存権(せいぞんけん、フランス語: droit à la vie、ドイツ語: Recht auf Leben、英語: right to life)とは、人間が人間らしく生きるのに必要な諸条件の確保を、国家に要求する権利である[1]。
概要
生存権とは、人間が人間らしく生きるのに必要な諸条件の確保を要求する権利[2]のことであり、もっと簡潔に言うと、人間が人間らしく生きる権利[3]のことである。人間が生きることそれ自体は「生命権」という問題であるが、生存権というのは(それと同じというわけではなく、それ以上のものであり)人が、一定の社会関係のなかで、健康で、そして文化的な生活を営む権利があるとするものである[3]。
生存権をより具体的に言うと、人には、教育を受ける機会が与えられ、働く(勤労、仕事の)機会が与えられ、様々な社会保障によって、健全な環境のもとに、心・身ともに健康に生きる権利がある、ということである。そして国民にこの生存権があるということは、すなわち、国家・政府のほうには、国民に、人らしい生活を保障する義務がある、ということを意味する。(このようなわけで、政府の暴走を抑止し、政府の国民に対する義務を明確化する役割を荷う法規である憲法にそれが明記されることがあるわけで、日本国憲法では第25条などにこの権利の保障に関する記述が盛り込まれているわけである[3])
歴史
1776年、アメリカ独立宣言は「生命、自由および幸福追求において」全ての人がある特定の排することのできない権利を有すると宣言した。
1919年制定のドイツのヴァイマル憲法が生存権の具現化の先駆けとされる。
1947年(昭和22年)施行の日本国憲法では、第25条1項において「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定めている[4]。生存権保障は、GHQ草案にはなかったが、社会政策学者出身の衆議院議員・森戸辰男による発案で、第25条として盛り込んだ[5]。
1948年、国際連合総会によって採択された世界人権宣言は、第3条において「人は全て、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する」と謳っている。
1949年に旧西ドイツで制定されたドイツ連邦共和国基本法では、人間の尊厳の原理が最高とみなされている。
1950年、欧州評議会によって採択された欧州人権条約は、第2条において生存権を保障している。法の支配に則った処罰と防衛、逃亡中の容疑者の逮捕や暴動と謀反の抑圧がなされるように規定がなされた。この権利は国家の生存を脅かす緊急事態の場合の免責(第15条)であっても犯すことができない。なお死刑については欧州人権条約第13議定書によって全面的に禁止されるに至る。
カトリック教会は家族の権利憲章を主張し、その中で生存権は人間の尊厳によって直接示唆されると謳っている。
1966年、国連総会によって採択された市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の第6条においても生存権は保障されている。この生存権は国民の生存の脅かす緊急事態の場合に認められる違反(第6条)の状況であっても犯すことが許されない。この項目は欧州人権条約の影響を受けて制定された。